2016年9月12日月曜日

スーサイド・スクワッド

(Suicide Squad)

 DCコミックスに登場する悪役ばかりを集めたスピンオフ企画が映画化されました。DCコミックス版クロスオーバー作品としては、『マン・オブ・スティール』(2013年)、『バットマン vs スーパーマン/ジャスティスの誕生』(2016年)に続く、シリーズ三作目という位置づけになります(一作目はスーパーマン単体の作品でもありますが)。
 ようやくDCコミックスの映画化製作も軌道に乗り始めたようで嬉しいデスね。今後もマーベル・コミックスに負けないように頑張って戴きたいです。

 ヒーロー単体作品の映画化よりも統一世界観のクロスオーバー作品を優先していこうというマーベルとは真逆のアプローチが成功しております(危ない橋を渡っている気はしますが)。
 この先は『ワンダーウーマン』を挟んで、遂に『ジャスティス・リーグ』となるそうなので、とりあえずそこまでは失速しないで下さい(お願いだから)。アベンジャーズに負けるな。

 本作の監督はデヴィッド・エアー。脚本も御自身で書いておられます。
 キアヌ・リーブス主演の犯罪サスペンス『フェイクシティ/ある男のルール』(2008年)や、ブラッド・ピット主演の戦争もの『フューリー』(2014年)の監督さんですが、アメコミにも造詣が深かったようです。
 製作総指揮にザック・スナイダーの名前も挙がっておりますが、シリーズを通して作品の雰囲気がきちんと維持されているのが嬉しいデスね。

 本作では時系列的にも前二作に続く背景が描かれていて、スーパーマンが登場して世間を騒がせ、そしてスーパーマンがいなくった(一時的にね)あとの世界が舞台となります。
 もはやメタヒューマンの存在は公然となり、政府としても対策を講ぜざるを得ない。最初のメタヒューマン(スーパーマン)は善人だったが、次もそうとは限らない。もしも第二のスーパーマンが悪人であったなら、どうすればいいのか。
 メタヒューマンに対抗できる組織が必要だ。

 マーベル・コミックスには国家的な組織として「シールド」が登場しますが、DCコミックスの方にも「アルゴス」なる組織が登場します。マーベルにあるものは、大抵、DCにもあるんですよ。
 本作に於いて、このアルゴスの長官アマンダ・ウォーラーを演じているのは、オスカー女優ヴィオラ・デイヴィスです。コミックスだと結構、美形に描かれていますが、実写だと強面と貫禄の方が強烈な配役デスね。
 これくらいインパクトがないと、シールド長官ニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソンには対抗できないか。どうしてどちらの組織も黒人をトップに描きたがるんですかね(大人の事情かしら)。

 さて、アルゴスとしては実戦に投入する実働部隊も揃えねばならない。アマンダ・ウォーラーはこれを「タスク・フォースX」と呼んでおります。
 設立意図は理解出来ますが、その為にかき集めた連中が悪党揃いというのが笑えますね。まぁ、超能力を得た人間は、欲望に負けて犯罪に走る輩の方が多いのであろうから、ヒーローよりもヴィランの方が数が多いのだろうとは察せられますが(笑)。
 それにメタヒューマンに対抗するなんて危険な任務は、命が幾つあっても足りるものでは無いので、最初から犯罪者をメンバーにしておけば、殉職しても気が楽だ。ヴィオラ・デイヴィス曰く、「悪をもって悪を制す」のだ。どこかで耳にしたような台詞ですね。

 ロバート・アルドリッチ監督の『特攻大作戦』(1967年)は漢のバイブルでありますし(ですよね?)、望月三起也の『ワイルド7』なんてのも容易く思い浮かぶところであります。
 任務の過酷さが「自殺も同然」であるから、付いた仇名が「スーサイド・スクワッド(自殺部隊)」。正式名称の「タスク・フォースX」よりも通りが良くなりました。
 個人的には、隊員を「使い捨て」にすることが前提であるので「エクスペンダブルズ」と呼んだ方がピッタリすると思うのですが、まぁ、世の中には既にそのような名前の作品もありまして、後発はネーミングにも苦労します。
 指示に従わぬ犯罪者共の首に「爆弾付チョーカー」を嵌めて強制するのはB級のお約束。

 本作でかき集められる悪党達は、デッド・ショット、ハーレイ・クイン、キャプテン・ブーメラン、ディアブロ、キラー・クロック、エンチャントレス、スリップ・ノットといった面々。『バットマン』に登場した悪投をメインに固められています。
 これはやむを得ないか。『フラッシュ』や『ワンダーウーマン』といった単体作品がないので、『バットマン』出身者を多用せざるを得ないのは判ります。これに部隊を指揮する軍人を含めて総勢八名で構成……と云うのが、冒頭で語られる当初の構成でありました。

 本作ではそれぞれの役を、ウィル・スミス、マーゴット・ロビー、ジェイ・コートニー、ジェイ・ヘルナンデス、アドウェール・アキノエ=アグバエ、カーラ・デルヴィーニュ、アダム・ビーチが演じております。隊長となるフラッグ大佐役がヨエル・キナマン(新生ロボコップがこんなところに)。
 しかし『バットマン』出身の悪党の中で、一番有名なヤツが入っておりませんですね。
 ジョーカーはどうした。

 実は本作ではジョーカーにあまり出番はありませんです。ジャレッド・レトが配役されたことで前評判も高く、前任者であるヒース・レジャーを越えられるのかと興味津々で劇場に足を運んだのですが、そこはちょっと期待外れでありました。
 そもそも本作の主役は、ウィル・スミスとマーゴット・ロビーなのです。デッド・ショットとハーレイ・クインが一番目立つし、活躍もするのであって、ジョーカーの出番はほとんどない。
 ジャレッド・レトの役作りに文句があるワケでは無いです。これはこれで個性的なジョーカーであると思いますが、いかんせん本筋のストーリーに関係してこない。専ら活躍するのは恋人であるハーレイ・クインばかり。

 まぁ、ジョーカーも刑務所に収監された恋人を救おうと、裏で色々と活動したりもしますが、そこは本筋ではないので描写もアッサリしたものです。ヒース・レジャーの体現した狂気はなかなか越えられんか。
 これについては、ハーレイ・クインを登場させたことで、あの『ダークナイト』(2008年)で見た悪意の塊のようなジョーカーの凄みが半減してしまったとも云えます。「恋するジョーカー」と云うのも新しいですけどね。
 出番が少ないので、エキセントリックな性格もあまり強調できないのがツラい。

 ぶっちゃけ、『バットマン vs スーパーマン』に登場したジェシー・アイゼンバーグ演じるレックス・ルーサーとあまり差別化が図られていないようでもあります。
 この先、『ジャスティス・リーグ』が結成された暁には、スーパーヒーロー同士の共演は当然としても、スーパーヴィランの側もちゃんと共演して戴きたいのですが、このシリーズでジェシー・アイゼンバーグとジャレッド・レトを並べても大丈夫なのか。どちらもエキセントリックな性格だし、甲高い笑い声だし(個人的には「ジェシー・アイゼンバーグのジョーカー」と云うのもちょっと観てみたかった)。

 でもその分、本作に於いてはハーレイ・クインの魅力が炸裂しまくりなので、ジョーカーの出番が少なくてもあまり残念ではありません。「スーサイド・スクワッド」の中では数少ない女性メンバーですが、間違いなく最弱でありましょう。
 他のメンバーは神業とも云える技能や超能力の持ち主ですが、ハーレイ・クインには何もない(イカレたねーちゃんであるだけ)。主兵装は「バット(木製)」のみ。
 しかしそれでも本作中で魅せるマーゴット・ロビーの魅力は大変素晴らしく、本作のヒロインであると断言して差し支えないでしょう。
 『ターザン : REBORN』(2016年)では、ターザンの貞淑な妻ジェーンを演じていたのに、一転して本作ではイカレたビッチを演じております。でもビッチの方が可愛いとはこれ如何に。これがビッチ萌か。

 冒頭でヴィオラ・デイヴィスが部隊設立を説明する下りがありまして、各メンバーを紹介してしていきます。
 一人、登場するたびに技能を紹介し、各人のアップと共に名前と犯罪歴等が字幕で表示される。しかもかなりコミック的な演出であるのが笑えます。
 逮捕時の経緯まで語られますので、本作ではバットマンやフラッシュもチラ見せ的に登場します。バットマン役のベン・アフレックでシリーズを繋ごうという演出か。
 でも今回もまたフラッシュ(エズラ・ミラー)の出番はワンカットのみ。「他にもメタヒューマンが存在するのだ」と云う予告扱いにされるのはよろしいのデスが、早いところフラッシュ単体の作品が制作されないものでしょうか(先にTVドラマとして制作されていますから、まったくの無名ではないか)。

 犯罪者ではないメンバーとして、エンチャントレスが挙げられておりまして、これが一番異色のキャラクターですね。
 演じているカーラ・デルヴィーニュはイギリスの女優さんだそうで、キーラ・ナイトレイとジュード・ロウが共演した『アンナ・カレーニナ』(2012年)にも出演していたそうですが印象薄いです。
 『アンナ・カレーニナ』のジョー・ライト監督は次作『PAN/ネバーランド、夢のはじまり』(2015年)でもカーラ・デルヴィーニュを人魚役に配役しておりました。

 エンチャントレスは「六千年前の古代の魔女」であると説明され、思いっきりオカルトの香りを振りまいております。いきなりこんなキャラを出してきて大丈夫なのかと心配でしたが、デヴィッド・エアー監督はなかなか巧くまとめておりました。
 劇中で描かれる太古の魔法が作り出すカラクリが、クリプトン星の超科学の産物かと見紛うような代物で、オカルトと云えども「ある種の科学的法則に則っている」と伺わせてくれます。
 明らかにエンチャントレスもまた、メタヒューマンであると云う描かれ方です。
 カーラ・デルヴィーニュはエンチャントレス本人と、エンチャントレスに取り憑かれたジューン・ムーン博士の一人二役を演じていて、落差の激しい特殊メイクが印象的でした。

 オカルトめいたキャラではありますが、エンチャントレスの振りまくダークな雰囲気が、マーベルの『アベンジャーズ』とは異なる赴きですね。
 考えてみれば、シリーズの次回作(予定)の『ワンダーウーマン』もまた、神話的な背景を持つキャラですから、割とイメージが繋がりやすいように配慮されているように思えます。

 犯罪者でないメンバーとしては、隊長役のヨエル・キナマンと、その護衛役として登場するカタナもいます。カタナを演じている福原かれんは日系アメリカ人の女優さんだそうですが、本作が映画初出演だそうな。
 劇中では割とネイティブな日本語台詞を口にする場面もありました。まぁ、ちょっと違和感あるような演技ではありますが、日本刀で何でもぶった斬る暗殺者ですから、そこがちゃんと描けていたので良しとしましょう。
 これまた先日観たマーベルの『X-MEN : アポカリプス』(2016年)に登場したサイロック(オリヴィア・マン)と、かなりキャラがカブっておりますが、元々DCとマーベルはキャラが被りまくりなので仕方ないか。

 本作では、エンチャントレスとその弟、及びディアブロがオカルト又は超能力系のキャラクターとして登場し──ディアブロは火焔能力者──、メタヒューマンとして描かれております。キラー・クロックも辛うじてメタヒューマンの範疇でしょうか(怪力だし)。
 が、それ以外は特殊技能を持った普通の人間であり、その筆頭がウィル・スミス演じるデッドショット。百発百中の凄腕スナイパーとして登場し、劇中でも神業的な狙撃の腕を披露してくれます。
 ウィル・スミスが演じているので、コミック的なスコープ付のマスクは描かれないのかと思われましたが、やっぱり途中でマスクが出てきました。いや、でも、無理してマスク被らなくても良かったですね。
 マスクなしのウィル・スミスが片眼に赤いモノクル的なスコープを付けているのが、一番似合っていましたので、映画版のデッドショットはこれを基本形にして戴きたいです。

 尤も、本作に於けるデッドショットは娘を愛する家庭的な父親の側面も持っていて、あまり悪人らしくありません。暗殺稼業も仕事と割り切ってやっていますが、娘の前では殺人を躊躇う場面もあって、原作コミックスのような寡黙かつ非情なキャラクターにはなっておりません。
 この先、「愛する者を失って」そのような変貌を遂げるのか、気になるところではありますが、そもそもギャラの高いウィル・スミスを何度も登場させられるのかと云う点が問題であるように思われます。
 マーゴット・ロビーのハーレイ・クインと並んで、もう一方の主人公でもありますし、本作ではまだ善人要素が残っているデッドショットでしたが、これはこれで。

 さて、エンチャントレスもスーサイド・スクワッドの主戦力として構想していたアマンダ・ウォーラー長官でしたが、狡猾な魔女がいつまでも只の人間に従っているわけもなく、割と簡単に裏切られて反旗を翻されます。
 実は本作のラスボスがエンチャントレスだったと云う構図でありまして、結成と同時に裏切り者が街を破壊し始め、スーサイド・スクワッドの初任務はアマンダ・ウォーラー長官を救出してエンチャントレスの暴走を食い止めるというもの。
 部隊最強のメンバーを敵に回して、残り全員が束になって勝てるのか。
 デッドショットとディアブロの能力が頼みの綱だろうと思われましたが、バットを振り回してエンチャントレスに立ち向かうハーレイ・クインの勇姿にクラクラしました。やはりビッチ萌だ。

 紆余曲折の末、エンチャントレスを倒すスーサイド・スクワッドでありますが、部隊運用の問題を突かれて政治的窮地に陥るウォーラー長官に助け船を出すのが、大富豪ブルース・ウェイン(ベン・アフレック)であったと云うエピローグが付いてきます。
 交換条件に政府の持つメタヒューマンの情報を要求し、着々と仲間集めに邁進している様子が伺えます。そしてスーサイド・スクワッドを解散させないなら「我々」が解散させるぞと、脅し文句のような台詞を口にして去って行くベン・アフレックでありますが、果たして本当にジャスティス・リーグは結成されるのか。
 とりあえず次作の『ワンダーウーマン』も期待して待ちたいと思います。




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