2013年6月8日土曜日

エンド・オブ・ホワイトハウス

(Olympus has Fallen)

 今までも殺人事件が発生したり、宇宙人に破壊されたり、色々と災難を被ることの多いアメリカ合衆国大統領官邸でありますが、この度は遂に北朝鮮テロリストに占拠されるという事態までが発生してしまいました。

 類似の映画がほぼ同時期に製作されてしまうのはよくあることで、近年でも『スノーホワイト』(2012年)と『白雪姫と鏡の女王』(同年)な白雪姫映画とか、『スカイライン/征服』(2010年)と『世界侵略 : ロサンゼルス決戦』(2011年)な円盤侵略映画が思い浮かびます。
 『リンカーン/秘密の書』(2012年)と『リンカーン』(同年)は……ちょっとチガウか。
 『オブリビオン』(2013年)と『アフター・アース』(同年)も、少しカブッてますか。
 本作にも対になるようなライバル作品、『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)がありまして、同じようにホワイトハウスが武装勢力に占拠されます(今夏公開予定)。このネタは旬なのか。

 ともあれ、本作はアクション・スリラー映画としては、なかなか良く出来ておりました。
 派手な戦闘シーンに、緊迫したサスペンス描写、リアルな国際情勢を取り入れ、圧倒的な敵に対して一人のオヤジが孤立無援の戦いを挑む……まさにホワイトハウス版『ダイ・ハード』(1988年)な趣です。
 かつて任務に失敗した苦い過去を背負った主人公が、危機に際して再び立ち上がると云う男燃えな設定もお約束デスねえ。

 本作の監督はアントワーン・フークア。たまに『キング・アーサー』(2004年)なんてのも撮ってしまいますが、『ザ・シューター/極大射程』(2006年)は好きな作品です。
 男臭漂う主演は、ジェラルド・バトラー。本作でも立派な胸板を披露してくれます。
 そして脇を固める俳優陣もまた豪華。やはり大統領と閣僚の配役には力が入っております。

 まず、大統領役が、アーロン・エッカート。
 下院議長役が、モーガン・フリーマン。
 国防長官役が、メリッサ・レオ。
 シークレットサービス長官役が、アンジェラ・バセット。

 アーロン・エッカートが大統領と云うのも新鮮です。若いながらも風格が感じられます。
 モーガン・フリーマンとメリッサ・レオは、『オブリビオン』でも共演しておりました。やはり名優が脇を固めると場面が引き締まります。特にテロリストを向こうに回したメリッサ・レオの熱演が素晴らしいです。
 アンジェラ・バセットがシークレットサービス長官役なのも、実際にオバマ大統領が初の女性長官を任命(2013年3月)したりしておりますし、リアルです。

 いまいちリアルでないのは「北朝鮮テロリストがホワイトハウスを占拠する」と云う大ネタの方ですね。あの国にそんなことが出来るとも思えませぬが、ハリウッド映画で北朝鮮が描かれる──悪役なのか脇役に過ぎないのかはさておき──こと自体が多くなってきたと云うのは、世相を表しておりますねえ。
 一応、国家としてテロリストを送り込むのではなく、独立した武装勢力が「勝手にやらかした」事態であると描かれております。劇中では「北朝鮮政府は関与を全否定した」とも言及されます(真実か否かは判りませんけど)。

 このテロリスト達のボスを演じているのが、韓国系アメリカ人俳優のリック・ユーン。『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)で敵方の殺し屋役だった方ですね。『バレット』(2012年)のサン・カンと一緒に、『ニンジャ・アサシン』(2009年)にも出演しておられます。
 最近、韓国系アメリカ人の役者さんの活躍をよく見かけます。偶然かしら。
 劇中で喋る朝鮮語もなかなかネイティヴで、それらしいです。

 まずは冒頭、大統領の別荘があるキャンプ・デービッドで護衛の任に付くジェラルドの姿から始まります。大統領一家がクリスマスの晩餐に出席するので、警護の一人として同行する。
 大統領夫人役のアシュレイ・ジャッドは、『新スタートレック』のロビン・レフラー少尉役だった……と云われましても、相当コアなトレッキーでないと思い出せませんデス(汗)。
 クリスマスの晩の大雪で路面が凍結し、突発的な事故が発生。ジェラルドは懸命に大統領を救助するが、ファーストレディの命までは助けることが出来なかった……。

 長めのプロローグのあと、数年が経過した独立記念日明け。ジェラルドは大統領警護の任を解かれて、財務省でデスクワークに従事する閑職にまわされていた。
 特に職務上の失態を責められたわけでは無く、大統領がジェラルドを見ると亡き妻を思い出してしまうからと云う、個人的な理由であるのが辛いです。
 親身になってくれるアンジェラ・バセット長官の忠告も虚しく、鬱々として気が晴れない様子。

 と、いう状況が説明されたところで、おもむろにアクションシーンに突入です。
 前触れなく飛来した国籍不明機がワシントン上空でバリバリ機銃掃射を開始し、突如としてワシントン市街はパニックに陥る。
 この序盤の戦闘が実にエキサイティングで迫力たっぷりです。
 財務省ビルからこれを目撃したジェラルドは阿鼻叫喚の市街を突っ走って、ホワイトハウスへ駆け出すが、国籍不明機と呼応した武装勢力が間髪入れずホワイトハウスに突入。

 この手のアクション映画では、序盤の敵側の行動が緻密に描かれれば描かれるほど面白くなりますね。実に計画的かつ、考え抜かれた制圧作戦が進行していく様は、見ていて気持ちが良いです。
 かなり無茶な作戦ではありますし、覚悟を決めた特攻部隊でないと成功はしないか。
 それ以前に、首都上空に易々と侵入を許す時点で如何なものかとも思いますが、派手な爆発と銃撃戦を見せてくれるので良しとしましょう。
 最後には国籍不明機も撃墜されますが、これがまた墜落しながらワシントン記念碑をへし折っていくと云う豪快な場面も見せてくれます。

 折しも、韓国首相が訪米中であり、ホワイトハウスでは大統領と韓国首相の会談が行われていた。当然、大統領と共に、韓国首相も地下の危機管理センターへ退避することになるワケですが、実は韓国側のSPにも北朝鮮テロリストが紛れ込んでいたと云う設定。
 危機管理センターも制圧され、大統領、国防長官、韓国首相と、要人達が軒並み人質にされてしまう。この危機管理センターのコードネームが〈オリンポス〉。原題の “Olympus has fallen”(オリンポス陥落)の由来です。

 用意周到というか、SPになりすまされても発見できない韓国側のチェック体制がヒドいです。おまけに米国側のSPにも裏切り者がいたと描写される。どっちもザルだなぁ。
 「ホワイトハウスが制圧される」状況を作り出す為には、ここまで御都合主義でないと出来ないと云う理由のようでもありますから、フィクションと割り切って楽しむのがよろしいのでしょう。

 軍隊が出動しホワイトハウスを包囲するが、既に制圧は完了して籠城が始まる。ペンタゴンに対策本部が設置され、大統領代理として指揮を執るのが下院議長(モーガン・フリーマン)。
 敵の要求は、日本海域からの米海軍の撤収。第七艦隊が撤収すれば、北朝鮮からの侵攻に韓国は七二時間と保たないだろうと予想される。
 まず、手始めに人質を一人、あっさり射殺してみせるのが冷酷です。韓国首相があっと云う間に殺されてしまいました。優先順位低ッ。

 劇中では、ホワイトハウス制圧のニュースに「中東諸国がこれを歓迎している」などと云う自虐ネタも忘れないのが、なかなか客観的な演出です(笑)。
 それにしても、敵の計画にはロシアや中国のことをあまり計算に入れていないようであり、果たして巧くいくのかしらとか、成功したとしても後で米軍が反攻したらどうするのかとか、かなり疑念なところがありましたが、一応、敵はその先のことも考えておりました。
 〈オリンポス〉から〈ケルベロス・コード〉なる核ミサイル自爆指令が入力される事態となる。

 人質に取った統合参謀本部長と、国防長官、そして大統領と、三人分のコードを入力すれば、全米の核ミサイル全てを自爆させられるという。元々は誤って発射された核ミサイルを、目標到達までに自爆させて危機を回避するシステムだったのに、発射しないうちに格納庫内で爆発させようと云うのが敵の目論みです。
 そうなれば北米大陸はドエライことになって、朝鮮半島がどうなろうと関わっていられないだろうと云うのは理解できますが。

 「貴様らも国土の荒廃と飢餓に苦しむがいい」と云い放つリック・ユーンが実に憎々しい。
 何となく被害は地球全土にまで及びそうですが、そこはスルー。
 この手のストーリーでは核ミサイルを発射させて、第三次世界大戦の誘発を……と云うのがパターンでしたが、発射させずにその場で自爆させるのがちょっと新鮮です。
 でも、発射していないのに自爆指令を受け付けるようなシステムには、重大なバグがあるような気がするのですが、そこもスルーしましょう。それは仕様じゃ無いデスね。

 特殊部隊の強引な突入も阻止され(盛大に官邸が半壊!)、頼みの綱はジェラルド只一人。〈ケルベロス・コード〉も二つまでが入力され、残るは大統領の持つコードのみとなる。
 緊迫した展開に、ホワイトハウス内の様々なロケーションを使った銃撃戦がなかなか面白いデス。事前にホワイトハウスを見学したことのある方なら、なお面白く思えるのでしょうか。
 歴史的トリビアも駆使して、テロリスト達を各個撃破していくジェラルド。

 クライマックスは満身創痍状態のジェラルド対リック・ユーンの肉弾戦。エッカート大統領にもそれなりに男を見せる機会があったりと、燃える演出です。
 男臭い格闘と同時に、最後の〈ケルベロス・コード〉を入力された自爆システムがカウントダウンを開始し、サスペンスを盛り上げるのも忘れておりません。何とかラスボスを倒して、必死に自爆解除のキーを打ち込もうとするジェラルド。
 「ハッシュタグ(#)」と云われてマゴつくオヤジの姿が微笑ましいデス。ITが苦手なのね。
 実はアメリカを救ったのは「シフト+3!」と叫んだアンジェラ・バセットだったのでは(笑)。

 最後はエッカート大統領の感動的スピーチと共に、アメリカ万歳なハッピーエンドもお約束。誠に痛快な娯楽映画でありました。




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