2012年9月14日金曜日

白雪姫と鏡の女王

(Mirror Mirror)

 グリム童話誕生二〇〇周年にかこつけて〈白雪姫もの〉が続きますね。ユニバーサル映画『スノーホワイト』(2012年)に続き、また白雪姫が映画化です。本作は独立系の製作会社によるもので、非常に個性的な作品に仕上がっております。
 ターセム・シン監督作品であり、衣装デザインが石岡瑛子ですから当然か。
 でも個人的には、本作の方が「ちゃんとした『白雪姫』」になっているように思われます(笑)。

 『スノーホワイト』で「白雪姫と女王様」を演じたのは、クリステン・スチュワートとシャーリーズ・セロン。本作に於いて、このタッグに対抗するのはリリー・コリンズとジュリア・ロバーツ。
 本作は何を云うにしても、可憐なリリー・コリンズの可愛らしさと元気いっぱいな魅力が炸裂しまくりです。クリステンの荒々しい白雪姫(笑)より何倍も素敵です。
 ああ、リリー可愛いよリリー。親父がフィル・コリンズだなんて信じられないよ。

 眉毛の太い元気な女の子と云うだけで、ツボを押されまくりデス。おデコも広いしな。『ミッシングID』(2011年)から間を置かずに出演作品が公開されて嬉しいデスね。
 アマンダ・サイフリッドとアン・ハサウェイとアナソフィア・ロブを抑えて、俺的愛好女優のトップであります。リリーが主演なら『ローマの休日』をリメイクしても許せるくらいデス。

 もう一方の主演、ジュリア・ロバーツが余裕の貫禄で「意地悪な女王様」を好演しております。こちらもシャーリーズ・セロンに充分対抗できます。
 シャーリーズのホラー気のある女王様に対して、ジュリアの方はコミカルな女王様ですが、美にこだわり、美しくある為にはいかなる努力も惜しまないという姿勢は共通しております(そりゃ『白雪姫』の女王様ですから)。
 効果があるのかよく判らない気色悪いエステに耐える姿はある意味、称賛に値します。
 白雪姫を見初めた王子様を我が物にしようと、モーションを掛けてくる。主に王子様の財産目当てでありますが、若いイケメンに言い寄ろうとするジュリア・ロバーツの図が笑えます。

 白雪姫と女王様の配役が決まれば半ば成功したも同然ですが、共演となる他の役の俳優もなかなか印象的です。
 白雪姫の父親である王様役がショーン・ビーンでした。冒頭ですぐに行方不明になってしまいますが、民から慕われる王様というイメージがピッタリですね。すぐにいなくなるので勿体ないと思われましたが、クライマックスでちゃんと帰還してくれます。ラストシーンの白雪姫と王子様の結婚式をきちんと締めてくれる威厳あるオーラはサスガです。
 個人的には出番が少ないなら、いっそフィル・コリンズを王様役にしても面白かったかもと思うのデスが、ミュージャンとしても引退されてしまっているから無理か。

 そして王子様の方はと云うと、アーミー・ハマー。イケメンだが、ちょっと(かなり)ヌケているところもある王子様。白雪姫が活躍する物語にするには、王子様に頼り甲斐があってはイカンのか。『J・エドガー』(2011年)では強烈な老けメイクばかりが記憶に残っておりますが、コミカルな演技もなかなかです。
 特に女王様の魔法で、子犬にされたときのアホな演技が素晴らしいデス。

 コミカルな演技と云えばもう一人、女王様の側近でパシリにされている大臣役がネイサン・レインでした。メル・ブルックスの『プロデューサーズ』(2005年)での、マシュー・ブロデリックとの共演が忘れ難い。トニー賞も受賞したブロードウェイ仕込みの喉で一曲披露してくれるかとも期待しましたが、歌はなしです。
 おかしい。本作は音楽がアラン・メンケンなのだから、全編ミューガルでも良いと思うのデスがねえ。ジュリア・ロバーツも歌ってくれれば、もっと素晴らしかったろうに。

 七人の小人は、本作では小人症の俳優さん達を起用しております。『バンデットQ』(1981年)や『ウィロー』(1988年)と同じですね。
 「小人の山賊」と云う設定が、『スノーホワイト』と同じですが、昨今は真っ当に働いてはイカンというルールでもあるんですかね。盗賊である方がアクション演出しやすいからか。
 伸縮自在の竹馬に乗って、巨人に見せかけて襲ってくると云う図が愉快です。

 この竹馬のデザインが面白いのですが、それも含めて本作の衣装デザインを手掛けたのが石岡瑛子であるので、当然ですね。『ザ・セル』(2000年)以降、ターセム・シン監督作品には欠かせぬ存在ですが、本作が遺作となりました(2012年1月21日逝去)。とても残念です。
 もう女王様の豪華な衣装、仮装舞踏会の奇抜な衣装、宮廷貴族達の仰々しいドレス、すべてが他の映画では観ることの出来ない独特の世界です。
 これを嬉々として着こなすジュリア・ロバーツや、リリー・コリンズが実に似合っています。ラストシーンの王様衣装を着たショーン・ビーンのニコニコ顔も忘れがたい。
 特に仮装舞踏会での、白鳥の仮装をした白雪姫と、白ウサギな王子様がいい。基本、白一色な舞踏会のコーディネイトは一見の価値ありでしょう。
 これらの衣装デザインは本当に「誰にも真似できない」ものですね。

 しかしこれで石岡瑛子デザインの衣装は見納めになるのか……。
 そう云えばブロードウェイ・ミュージカル版の『スパイダーマン』も、衣装デザインは石岡瑛子でしたので、その舞台も一度は観てみたいものです。
 そのあたりはNHKが製作したドキュメンタリ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも描かれておりました(2011年2月14日放送。2012年1月30日追悼再放送)。
 あの番組では過去の映画作品も紹介されていましたが、もっぱらブロードウェイ・ミュージカル版『スパイダーマン』の衣装デザインの仕事が密着取材されていました。
 『テンペスト』(2010年)のジュリー・テイモア監督が舞台演出を担当していて、石岡瑛子と衣装デザインの演出方針で議論している様子が映っていたのが興味深かったです。
 しかもこの舞台は音楽がU2だったりして、実にエキセントリックなミュージカルだったようです(その後、大コケしたみたいデスが)。衣装も奇抜すぎる。あの「七人のクモ女」は凄いわー。
 番組では、ブロードウェイの仕事を終えた後に、新たにハリウッドから実写版『白雪姫』の映画化の仕事をオファーされるところで終わっておりました。
 それが本作か。エンドクレジットでも「石岡瑛子さんに捧ぐ」と表記されます。

 衣装デザインの他にも、本作はヴィジュアル面が実に秀逸です。
 オープニングの「昔々~」から始まる状況説明を、CGによる人形芝居風に説明してくれる場面も凝っています。ジュリア・ロバーツがナレーションを担当しており、女王様自身の語りであるという演出。
 自分のことを「美し~い女王は……」と自画自賛したり、「ヘンな名前よね。スノーホワイトだなんて」とツッコミ入れながら始まる時点で、もはや本作はシリアスなドラマではなく、コメディなのだと明言されております。

 また、女王様と〈魔法の鏡〉のやり取りもフツーではない。まぁ、『白雪姫』ですから、〈魔法の鏡〉の場面を見どころにしなくてどうする。
 『スノーホワイト』でも、過剰にCGを駆使して液体金属人間を登場させておりましたが、本作もまた奇抜なヴィジュアルです。
 最初に出てくる等身大の姿見が異次元へのゲートになっている。鏡の世界に入り込むと、そこはバリ風のトロピカルな南国仕様。何故、そこでいきなりトロピカルな世界になるのかワケが判りませんが(監督の趣味なのか)、そのバリ風コテージに置かれているのが〈魔法の鏡〉。
 鏡に映っているのは女王自身。ジュリア・ロバーツの一人二役になるという演出で、ワガママで浪費家のコミカルな女王と正反対に、シリアスで落ち着いたジュリア・ロバーツが鏡に映っています。
 〈魔法の鏡〉は「誰が一番美しいのか」と云う問いに答えてくれるだけでなく、色々と他の魔法も教えてくれる。その伝授された魔術を悪用して、女王は好き勝手やっているのですが、劇中で使用される「操り人形の術」が出色でした。

 森の中の小人の家──身長制限ありの山賊のアジト──に、女王の操る巨大な人形が強襲を掛けると云う、コメディにあるまじきアクション場面。ハリーハウゼンのシンドバット映画みたい。
 椅子に腰掛けた女王が操り人形を操作すると、巨大に拡大された人形が森の中に出現し、操り人形独特のアクションで襲いかかってくる。短いカットの切り返しで、女王が操るとおりに動いていると判るのが巧いです。
 更に、右手で一体を操り、左手でもう一体を繰り出してくると云う名人芸。女王様、大道芸人になれますね。

 更にクライマックスで登場する「森の怪物」も凄いデス。それまで噂にしか出なかったので、女王が民衆を怖がらせる為のデマなのかと思っていたら、本当にドラゴンのような怪物が登場したので驚きました。
 このデザインも東洋風(インド風?)な龍の風貌に、身体は鵺のようと云う一種独特のクリーチャー。やっぱりハリーハウゼンへのオマージュかしら。
 コメディ映画にここまで必要なのかと思うくらいよく動くし、迫力のアクション場面でした。

 これらの魔法を打ち破り、白雪姫は女王を倒してハッピーエンドを迎えるのですが、ちゃんと「真実の愛を込めたキスで魔法が解ける」とか、「老婆になった女王がリンゴで毒殺を図る」という場面も用意されています。かなりアレンジされてはいますが、一応、これも『白雪姫』ですし、そこは外せませんですかね。
 でも『スノーホワイト』と同じく、直接のハッピーエンドには繋がらないのはやむを得ませんかね。主人公が受け身になるのはイカンのか。
 「十八才のファーストキスは特別なもの」であるという主張には大賛成ですけど。

 最後のエンドクレジットでまた意表を突かれました。
 主題歌「Love」は、ニナ・ハートの六〇年代ポップスだそうですが、これをリリー・コリンズが吹替なしで歌って踊ってくれます。それも何故か、ここだけマサラ・ムービー風と云う演出に思わず笑ってしまいました。
 誰の趣味だ。監督か? やっぱりインドの人だしなぁ。
 王子様との結婚式の舞踏会がそのままPV風エンディングに雪崩れ込んでいくと云う趣向。実に賑やかで楽しいエンディングでした。
 リリー・コリンズの歌唱力は素晴らしく、やっぱり親父がフィル・コリンズだけのことはあるねェと感心してしまいました。




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