2013年6月7日金曜日

バレット

(Bullet to the Head)

 主演がシルヴェスター・スタローンで、監督がウォルター・ヒルであるとだけ聞くと、何だか八〇年代か九〇年代のアクション映画かと勘違いしそうですが、れっきとした新作ですねえ。でもやっていることは今も昔も変わりませんけど。
 超黄金のパターンな刑事アクション映画でした。意外性ナッシング。
 でもちょっと地味でしたかしら。スタローンが主演なのに。色々な点で残念な作品です。

 本作は、フランスの『Du Plomb Dans La Tete』なるグラフィックノベル──ヨーロッパ製だから「バンド・デシネ」と云うべきか──が原作だそうで、ヨーロッパ映画的なノワールぽさが感じられたのは、この所為でもあるのでしょうか(だからやっぱりちょっと地味な感じ)。
 派手な爆発シーンが数回ありますが、本作にはカーチェイスがありませんでした。銃撃戦と格闘の場面はふんだんに用意されていたのに。

 映画化に際しては、ストーリーの舞台をアメリカに移しているのでしょうが、ニューオーリンズにしているのがフランスぽくてエキゾチックな設定です。
 ウォルター・ヒル監督は、先に主演が決定していたスタローンから求められて監督を引き受けたそうな。スタローンもいつかウォルター・ヒル監督作品に出たいとか思っていたのでしょうか。

 ウォルター・ヒル監督がアーノルド・シュワルツェネッガー主演で『レッド・ブル』(1988年)を撮ったときには、「次はスタローンでも」とか思ったりしたものですが、実現までには意外と時間がかかりましたね。もうこの組み合わせはないものと諦めておりました。
 その後も色々とウォルター・ヒル監督作品は観ておりましたが、でもやっぱり九〇年代の作品が最後でした。『48時間』(1982年)とか『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984年)は遠い昔ですねえ。
 最後に観たのは……ブルース・ウィリス主演の『ラストマン・スタンディング』(1996年)でしたかしら。アレもまた、何とも……残念な出来でありましたが。

 最近のウォルター・ヒルは製作に回ってばかりで、あまり監督することがなくなったようでしたが、それが『デッドロック』(2002年)──これはウェズリー・スナイプス主演──以来の十年ぶりの監督作。しかも今度こそ、シルヴェスター・スタローン主演。
 でも、二〇年前ならいざ知らず、この組み合わせは今やって大丈夫なのか。監督も今や七〇歳を越えておりますし。
 スタローンが還暦過ぎても大丈夫なのは、『エクスペンダブルズ』シリーズで判りますが。

 これは、とある殺し屋の物語。
 職人的な殺し屋ジミー・ボノモ(シルヴェスター・スタローン)は、あるとき依頼を請けて標的を仕留めたまでは良かったが、その後に相棒を殺され、自らも命を狙われる。何者かが暗殺依頼の口封じをしようとしているらしい。
 相棒を殺されて復讐を誓った男は、事件の捜査にワシントンから派遣されてきた若い刑事とやむを得ず協力し合う羽目になり、ニューオーリンズを支配する黒幕に立ち向かっていく。
 何ともド直球でヒネリなし。

 スタローンのキャラクターを紹介する演出が、なかなか感慨深かったです。
 チンピラだった若い頃から、還暦過ぎるベテランの殺し屋に至る現在までを、スタローン本人の顔写真を何枚も並べる「スタローン・ヒストリー」で語ると云うファン・サービス。

 それにしても、「犯罪者が刑事と組む」と云う設定からして、『48時間』な展開です。本作はいたるところにウォルター・ヒル監督のセルフ・パロディな設定が見受けられます。
 音楽も何やらライ・クーダ的なギターがむせび泣くブルース調ですし(でも本作の音楽はスティーヴ・マッツァーロ)、全体の雰囲気も八〇年代のノスタルジックな感じデス。
 舞台となるニューオーリンズの街が、意外とこの雰囲気にマッチしておりました。

 スタローンと反目し合いながらも事件を追う若い刑事を演じているのが、サン・カンです。韓国系アメリカ人の俳優でありまして、ヴィン・ディーゼルの『ワイルド・スピード』シリーズでもお馴染みの人です。
 イタリア系のオヤジ犯罪者と、韓国系の若造刑事と云う組み合わせが微妙にアンバランスです。ちょっと狙いすぎて外してしまったような感じがしないでもない。舞台がニューオーリンズでなければ、もう少ししっくりきたのかも知れません。

 本作がイマイチなところは、主役の二人のキャラクターの対比が巧く咬み合っていないように見受けられるところでしょうか。どうにもスタローンばかり目立つようになっている。
 この手の「バディもの」は、相棒との対比が強烈でないと面白さが半減すると思うのに。
 サン・カン演じる刑事も、形の上ではスタローンの対極にあるような設定なのですが、劇中でソレが活かされていないようでした。
 オヤジ側がマッチョで、シンプルで、腕っぷしにものを云わせたキャラである場合、若造側は頭脳派で、ITに長けており、ちょっと屈折していなければならん筈ですが──アニメで云うと『TIGER&BUNNY』でしょうか──、本作ではサン・カン刑事が頭脳派であることが活用されておりません。

 スマホ片手にネットで情報を集める程度では印象が弱い。それに、スタローンがチンピラを締め上げて白状させた人物の名前を、サン・カンがワシントンの本部に問い合わせて情報を得るだけでは、活躍しているとは云い難いです。頑張っているのは、情報収集するオペーレータの方なのでは。
 ここは自力でハイテクを駆使して情報を集める展開にして戴きたかった。

 イタリア系と韓国系のお国自慢ネタも、もっと取り入れてもらえると笑えたのにと残念デス。
 スタローンが「サムライ刑事か」と云うと、「俺は韓国系だ。サムライは日本だろう」とムキになる。その後で逆に「じゃあ、タコスはイタリア料理か」と返せば、「二度とそんなことは云うな」なんて今度はこちらがムキになる。
 デコボコな二人のやり取りは面白かったのに、そういう場面が少ないデス。
 背景のニューオーリンズの街が味わい深すぎて、キャラクターのお国柄が目立たなくなっているように思われます。
 やはりここはサン・カン刑事に、何でもかんでも「それは韓国が起源だ」と云わせるくらいのシャレが欲しかった。何回か繰り返しているとパターン化したギャグになると思うのですが。

 情報を辿っていくと、黒幕の存在が現れてくるわけですが、これが二人おりまして、片方がクリスチャン・スレーターです。意外なところで懐かしい顔を見ました。こちらもまた十年ぶりくらいかしら。いや、近年も色々と出演されているのは存じておりますが、片っ端から劇場未公開のビデオスルーにされているような……。
 本作ではヒゲ面の渋いオヤジ顔になっております(ちょっと老けてる)。不動産で成功したニューオーリンズの名士でセレブと云う役。

 クリスチャン・スレーターと組んで悪事を働く黒幕が、アドウェール・アキノエ=アグバエです。『キラー・エリート』(2011年)や『遊星からの物体X/ファーストコンタクト』(同年)にも出演しておられましたが、あまり印象に残っておりません。
 ニューオーリンズを舞台にしておりますので、「黒人の親玉」と云う図が『007/死ぬのは奴らだ』(1973年)のヤフェット・コットーをイメージしているようにも見受けられます。

 そして黒幕に雇われてスタローンとサン・カンの前に立ちはだかるのが、冷酷非道な殺し屋キーガン(ジェイソン・モモア)。元フランス外人部隊で、手下を大勢引き連れて主人公達を追い詰める。スタローンにとっては、直接手を下した相棒の仇でもある悪党です。
 ジェイソン・モモアと云えば、リメイクされた『コナン・ザ・バーバリアン』(2011年)のコナン役ですね。本作でもワイルドな風貌で男臭を振りまいております。

 まぁ、しかし。何が残念と云って、本作に於けるクリスチャン・スレーターの扱いが……すごく軽いのが本当に残念でした。
 主たる悪党はアドウェールの方なので、クリスチャン・スレーターは「代官と組んでいる越後屋」的なスタンスです。したがって、先に片付けられてしまう。
 案の定、スタローンに拉致されてアジトに連れ込まれ、「知ってることを洗いざらい喋れ」と脅されるや、物凄い勢いで全部白状してしまう。あまりにも見事な自白っぷりは、いっそ清々しいほどです。
 悪事の証拠になるデータも全部、その場で提供してしまう。
 そしてお役御免になると、撃たれて御退場。せっかくのクリスチャン・スレーターなのに。

 それを云うなら、アドウェール・アキノエ=アグバエの方も、巨悪と呼ぶには悪事のスケールが小さい。
 ニューオーリンズの貧困層の居住地域から住民を強制的に立ち退かせて、強引に再開発して儲けようなんて……。もう少し何か国際的な武器密売とか、大規模なテロを計画しているとか云ってもらいたかったデス。
 結果として、スタローンが手を下すまでもなく、自分が雇った殺し屋に始末される。飼い犬に手を噛まれて御退場です。
 その理由もまた、金儲けに走りすぎて、スタローンとの対決を邪魔するから、と云う素晴らしく単純な理由。

 したがいまして、最後はシルヴェスター・スタローンとジェイソン・モモアの一騎打ちが見せ場です。
 脳筋野郎が二人、損得抜きに雌雄を決すべくドツキ合う。銃を使うなんてのは野暮です。
 たまたま、その場が閉鎖された廃工場であったので、緊急時用の消防設備として、斧が二本掛かっている(実に都合良く)。これを得物にして、二人で斬り結ぶのがクライマックス。
 うーむ。やっぱりこれは『ストリート・オブ・ファイヤー』のセルフ・パロディなんでしょうか。マイケル・パレが同じような死闘を演じておりましたねえ。

 スタローンが還暦過ぎてもそれなりに屈強な肉体美を披露しながら、男臭く立ち回るのは見事なのですが、どうにもビジュアルだけに終始して、ストーリーがおざなりです。
 原作もコミックスみたいなものだし、複雑な背景よりも、男臭いビジュアルだけあればいいと云う演出方針なのでしょうか。でもそれならサン・カン刑事の出番も要らなかったのでは。
 むしろ一匹狼的にスタローンが暴走して、ジェイソン・モモアとの因縁に決着を付ける方向でまとめたら良かったのに。
 映画化するのが二〇年遅かったのか(いや、いくら九〇年代でも、この出来ではキツいか)。




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