2013年5月31日金曜日

オブリビオン

(Oblivion)

 トム・クルーズ主演によるSF大作映画です。もう、どこからどう見てもSF以外の何物でもない。
 異星人の来襲によって荒廃した未来の地球を舞台に、人類移住後の見捨てられた地球に残って監視員を務める男が、地球侵略の隠された真相に気付くと云うストーリー。
 良く云えば「オーソドックスな」、悪く云えば「よくあるネタの」SF映画でした。しかしビジュアル面はしっかりしており、よくあるガジェットでもきちんと映像化されているのは好感の持てるところでした。
 B級SF映画の筈なのに、実に丁寧かつ壮大なスケールで描き出されております。出演者も豪華ですし。

 SF者にしてみれば、どこかで見たようなネタが満載ですが、アレンジの仕方は巧いです。
 映像的に見ても、文明崩壊後の世界の描写は、今まで観てきたSF映画のパターンを非常に忠実になぞっております。荒涼とした原野に、摩天楼の頭頂部分だけが突き出していたり、自由の女神像(の一部)が傾いて地面から突き出していたり、黄金のパターンな風景です。
 過去の様々なSF映画のネタが随所に散見され、背景設定や、用語や、メカデザイン等に幾つ元ネタを見つけられるかで競ってみるのも一興でしょうか。
 私は根本的なビジュアルのデザインに『2001年宇宙の旅』(1968年)へのオマージュをヒシヒシと感じてしまいました(特にクライマックスで)。

 本作の監督はジョセフ・コシンスキーです。あの、ビジュアル「だけ」は満点だった『トロン : レガシー』(2010年)の監督ですね。相変わらず、ビジュアル面では本当にお見事デス。
 元々、コシンスキー監督はスタンフォード大学工学部機械工学デザイン科を卒業しておられるそうで、本作に登場する未来メカは実に秀逸です。
 今回は、監督だけでなく、脚本も書いておられますが、数人の脚本家の手を経て、最終的にマイケル・アーントによってリライトされたそうで、『リトル・ミス・サンシャイン』(2006年)や『トイ・ストーリー3』(2010年)の脚本家がいてくれたお陰で、本作は壮大なSFネタはそのままに、ちょっと泣けるストーリーにもなっております(これは勝手な想像ですが)。

 それと本作は音楽もまた印象的でありまして、サウンドトラックは〈M83〉と云うバンドが担当しております。シンセサイザーを使った電子音楽がいい感じ。
 『トロン : レガシー』のダフト・パンクもそうでしたが、コシンスキー監督は音楽にもコダワリのある方のようです。

 西暦二〇七七年。異星人〈スカヴ〉来襲から六〇年後の世界。
 月は破壊されて、天空に欠片となって浮かび、放射能に汚染され荒廃した地上に住むものは誰もいない。人類は侵略者を撃退したものの、地球の環境悪化に伴い、土星の衛星タイタンに大方が移住してしまっていた。
 地球軌道上には巨大な宇宙ステーション〈テット〉が周回し、残りの人類移住計画の支援と、海水を利用したエネルギープラントの管理を行っていた。
 撃退されたとは云え、異星人〈スカヴ〉の生き残りはまだ地上に残留しており、細々と抵抗を続けている。奴らはしつこく、人類移住のエネルギー源である海上プラントを狙っていた。
 無人の攻撃ドローンが、プラント防衛と地上の哨戒任務に就いているが、〈スカヴ〉の攻撃によって消耗が続いている。監視員となって残留しているジャック(トム・クルーズ)は、ドローンの保守を行って日々を暮らしていた。

 「ユニバーサル・ピクチャーズ」のロゴが表示される冒頭から、既にストーリーが始まっております。
 地球が自転する中、「UNIVERSAL」のロゴと一緒に、奇妙な物体が地球の周りを回っている。これが、巨大宇宙ステーション〈テット〉。
 居住環境にない地上を避けて、雲海の上に突き出した高々度にそびえるスカイタワーがあり、その天辺に監視員の詰めている基地があるのですが、ガラスが多用された未来的な住居になっているのがオシャレです。
 場所的には、かつての北米大陸の東側、NYの近くにあるらしい。

 ここで監視員ジャックは、パートナーであるヴィクトリア(アンドレア・ライズボロー)と二人で暮らしながら、任務が完了した暁には自分達もタイタン行きの船に乗ることを夢見ているワケですが……。
 彼ら監視員には、過去の記憶がないと云う設定が、最初から引っかかります。
 任務遂行上の守秘義務を守る為に、着任時に記憶消去の処理を受けている。いずれ任務完了後には、記憶は返してもらえるらしいが、あからさまに怪しい設定デス。

 まぁ、そもそも「オブリビオン(忘却)」と云う題名からして、記憶がキーになっているのが伺い知れるワケですが、そんな味も素っ気もないタイトルで本当にエエんかいなと思いマスねえ。もう少し凝った題名はなかったのか。
 大体、主人公に記憶がない時点で、「都合良くダマされているのではないか」と云う疑念が沸々と湧いて参りますよね。
 主人公が失われていた記憶を取り戻す過程で、それまで信じていた世界が別の様相を呈し始めるというのは、SFのテッパン展開と云ってもイイくらいです。

 案の定、日常的な業務をこなしながらも、不審な事件が起こり始める。
 異星人〈スカヴ〉の奇妙な行動。放射能汚染地域の中で見つけた豊かな自然に溢れた渓谷。そこに秘密の隠れ家的に建っている山小屋は誰が建てたのものなのか。何故、自分にはそれが馴染み深く感じられるのか。
 「立入禁止の汚染地区」が、実はまったく汚染されていなかった、と云うあたりがお約束過ぎて笑ってしまいます。

 そこへ六〇年前の「侵略前の宇宙船」が帰還する。不時着した宇宙船〈オデッセイ号〉の中には、冷凍睡眠カプセルに納められた乗組員がまだ生存していた。しかし〈テット〉から派遣されたドローンは、主人公の見ている前で生存者たちを殺戮し始める。
 かろうじて救出できた只一人の女性乗組員(オルガ・キュリレンコ)は、自分を知っているらしいが、自分には覚えが無い。何故、六〇年前に冷凍睡眠に入った女性が自分を知っているのか。
 おぼろげな夢に見る戦争前の風景に、この女性が登場するのは何故か。
 〈テット〉の司令部が隠している「不都合な真実」とは。

 古参のSF者にしてみると、あまりにも先の読める展開です。逆に安心して観ていられます。
 それにしてもトム・クルーズは若々しい。ホントに御年五〇歳なんですかね。
 見た目に若いだけでなく、アクションが非常にキビキビしておられます。例えば、偵察に出る場面で、銃を担いで急斜面の砂丘を駆け上っていくアクションがあります。とても五〇歳とは思えぬ身のこなしです。
 SF設定がどうとか、CG特撮のビジュアルがどうとか云う以前に、「砂丘を駆け上るトムの図」が素晴らしすぎます。

 で、まぁ、やっぱりと云うか、今まで異星人〈スカヴ〉だと信じていた連中こそが、生き残って抵抗を続ける人類の末裔だったわけで、レジスタンスのリーダーとして登場するのがモーガン・フリーマンです。
 トム・クルーズとモーガン・フリーマンの共演というのも、今までありそうで無かった組み合わせですね。これが初共演と云うのが信じられません。
 それを云えば、アンドレア・ライズブローや、オルガ・キュリレンコらとも初共演ですが。

 個人的にはレジスタンスのメンバーで、モーガンの右腕として登場するニコライ・コスター=ワルドが出番は少ないけど印象的でした。最初はトムのことを疑い、ラストでは戦友として手を組む場面が漢燃えです。
 また、メリッサ・レオがちょっと変わった登場の仕方をしていて、こちらも少ない出番ですが印象的です。最後はラスボスになっちゃいますし。

 今まで信じていた司令部の方が異星人で、記憶を消された自分は敵側の手先となっていたと云う衝撃の真実。勿論、人類のタイタン移住なんて嘘っぱち。
 更に、異星人襲来が六〇年前の出来事で、〈オデッセイ号〉の乗組員としてファーストコンタクトを果たしたのが自分だった。
 囚われになる直前に、残りの乗組員が収容された冷凍睡眠区画を六〇年後の帰還軌道に乗せて打ち出したのも自分。
 そして自分が六〇年前と変わらぬ姿を保っていると云うことは……。

 自分が記憶を操作され、その上クローンに過ぎなかったと云うのはショッキングですが、SFとしては定番展開ですね。
 しかしトム・クルーズが他にも別クローンとして登場するなど、「その設定で行けば当然そうなる場面」を実に巧く見せていく演出の手際が見事でした。
 更にトム対トムと云うファンが喜ぶ場面もしっかり組み込んでくれます。

 個人的には異星人による侵略の過去を語るモーガン・フリーマンの台詞を回想場面にして、しっかり映像化して戴きたかったデス。
 何しろ、異星人侵略の尖兵と化したトム・クルーズのクローン兵士軍団が人類と戦ったそうですからね。そりゃ『スター・ウォーズ ep.2』(2002年)よりインパクトありそう。『バイオハザード4/アフターライフ』(2010年)のミラ・ジョヴォヴィッチ軍団すら凌ぐか。
 是非、「何千人ものトム様軍団」を画にして戴きたかった……。

 主人公の境遇が、ダンカン・ジョーンズ監督の『月に囚われた男』(2009年)のようであったりとか、異星人の目的が地球の水資源の強奪であるのが、山崎貴監督の『ジュブナイル』(2007年)や、『世界侵略 : ロサンゼルス決戦』(2011年)のようである等、本作は割とよくSFで見かける設定のオンパレードですが、アレンジが丁寧であるので、取って付けたような不自然さは見受けられません。
 むしろ黄金のパターンをニヤニヤと笑いながら鑑賞するのが正しいのでしょう。

 そしてクライマックスに敵の母艦に殴り込みをかける展開が、『インディペンデンス・デイ』(1996年)を彷彿としてしまうのは、もはや確信犯的演出です。〈テット〉の内部がちょっと『スタートレック』(1979年)のヴィジャーを思わせてくれたりもします。
 古いSF者としては、ここで『2001年宇宙の旅』へのオマージュを感じずにはおられませんです。
 クローン培養中のトム軍団のビジュアルは、「スターチャイルド」でしょうし(特に胎児のようなポーズが)、エイリアンの親玉が「赤い一つ目」であるのは、「HAL9000」へのオマージュなんでしょうねえ。帰還してきたNASAの探査船も〈オデッセイ号〉でしたし。
 そう云えば、ドローンの球形のデザインも「ディスカバリー号の船外活動ポッド」に似ておりますね(アレより遥かにアグレッシブに飛び回りますけど)。

 トム・クルーズとモーガン・フリーマンの決死の行動により、遂に地球は開放され、万事めでたしとなるのですが……。
 何となく、設定上は地球各地にあと五〇人はトム・クルーズが存在している気がします。
 そういうツッコミ処を残しておいてくれるのもB級的サービスなのでしょうか(笑)。




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