2016年5月2日月曜日

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

(Captain America : Civil War)

 マーベルコミックスのキャプテン・アメリカ実写化作品第三弾として、マーベルのクロスオーバー大作『シビル・ウォー』が映画化されました。題名には「キャプテン・アメリカ」と銘打たれていますが、もはやキャップ単体の映画と云うよりも、〈アベンジャーズ〉シリーズの一本であると理解した方がいいでしょう(邦題も副題の方が先に表記されていますし)。
 一連のマーベル実写化作品の一三本目ですし(もはや連ドラでも観ている感じです)、『アベンジャーズ』並みにマーベルコミックスのヒーローが大挙して登場してくれます。元より原作の『シビル・ウォー』はマーベルコミックスのヒーローが一〇〇人以上登場する、クロスオーバー作品としても空前のスケールでありまして、ページのコマに描き込まれたキャラが多すぎて、もはや誰が誰やらと云った感じでありました(全員判るのは相当なマニアだけでしょう。設定も複雑すぎるし)。

 そこを映画化に際してはぐっと人数を絞り込み、何とか一二人に納めました。それでも一本の映画に主役級のヒーローが一二人も登場するのが豪華すぎますけどね。それもこれも『アベンジャーズ』の為の積み重ねが成功したお陰でありますね。
 一〇年前には『アベンジャーズ』が映画化されることすら絵空事でしたが──だって『アイアンマン』(2008年)ですらまだ出来ていなかった時代ですよ──、まさか『シビル・ウォー』が映画化されることがあるとは思いませんでした。長生きはするものですねえ。
 人数をぐっと減らしてくれたお陰で、かなりストーリーが判り易くなりました。基本的には「スーパーヒーローの活動は法律で規制すべきか否か」と云うもので、互いが信じる理念を巡ってマーベルコミックスのヒーロー達がキャプテン・アメリカ側とアイアンマン側に別れて争い合うという筋立てです。

 加えて本作を男同士の友情の物語にした脚本が成功しておりますね。脚本のクリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーは『キャプテン・アメリカ』のシリーズを三作とも担当しております。
 また、監督も前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)と同じく、アンソニーとジョーのルッソ兄弟が務めております。個人的に『~ウィンター・ソルジャー』が気に入っておりましたので、本作でも監督を続投してくれて大変有り難い。
 一連の〈アベンジャーズ〉シリーズの中では、キャップの映画が一番、出来が良いと思います。うーむ。昔はキャプテン・アメリカはそれほど好きとは云えない部類であったのに、映画のお陰でガラリと印象が変わってしまいました。

 理念を巡る対立云々は別にして、本作は基本的に「キャップとバッキーと社長」の三角関係の物語になっています。こういうのが大好物なご婦人方には溜まらんでしょう。バッキーを気遣うキャップの台詞に嫉妬全開の社長──のようにも解釈できる演出──が素晴らしいデス。
 ロバート・ダウニー・Jrは、シャーロックホームズを演じたときと同様に、「男同士の友情」にナニやら特別なアトモスフィアを漂わせてくれるのが巧いお方ですね。

 前述のとおり、本作でもキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャース役はクリス・エヴァンス、アイアンマン/トニー・スターク役はロバート・ダウニー・Jr、ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ役はセバスチャン・スタンが演じております。
 加えて、ジェレミー・レナー、スカーレット・ヨハンソン、アンソニー・マッキー、エリザベス・オルセン、ドン・チードル、ポール・ベタニーといった顔触れもお馴染みです(別に誰がどの役かなんて書かなくても判りますね?)。

 〈アベンジャーズ〉の常連メンバーの中では、マイティ・ソー役のクリス・ヘムズワースとハルク役のマーク・ラファロが欠席しておりますが、常人離れしたキャラが欠席してくれたお陰で、ストーリーとしてのまとまりは良くなったと思われます。
 また、ニック・フューリー長官役のサミュエル・L・ジャクソンも欠席です(早く帰ってきてくれ、サミー)。
 その一方では、ハルク不在なのに、ロス将軍には出番があります。もはや「将軍」ではなく、「国務長官」としてウィリアム・ハートが久しぶりに顔見せしてくれて、超人登録法案を推進しています。劇中では法案は、更に国際的な協定であるとされ「ソコヴィア協定」と呼ばれている。
 『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015年)で描かれた事件の後を引きずっているわけで、NY、ワシントンDC、ソコヴィアと、一般市民への被害が次第に拡大していく傾向にあるのでやむを得ないところではありましょう。

 『アベンジャーズ』(2012年)のNY決戦が、あまり大きなスケールでは描かれなかったのは、段階的に被害を拡大させていこうという深遠な計画であったのか、あるいは単なる後付け設定なのか、判りかねるところではありますが、もはや米国政府も庇いきれなくなったと云うストーリーの流れとしては自然ですね。
 原作では「未熟な若いヒーロー達が市民を巻き込んだ被害を出してしまう」展開から超人登録法案が提出される運びになるわけですが、本作に於いて未熟なヒーローを代表しているのがスカーレット・ウィッチです。もはや独りで責めを負わされているようで、ちょっと切ない。

 加えて、本作から登場する新キャラもいて、ますます賑やかになっていきます。
 まずはブラックパンサー。演じているのは チャドウィック・ボーズマンです。『42 世界を変えた男』(2013年)のジャッキー・ロビンソン役とか、『ジェームス・ブラウン/最高の魂を持つ男』(2014年)のジェームス・ブラウン役で、伝記映画に多く出演しているような印象ですが、ケビン・コスナー主演の『ドラフト・デイ』(同年)にも出演しておりましたね。
 今回はスーパーヒーロー役ですが、正体はアフリカ某国の王子(後に国王)でありまして、若いながらも風格の漂う役柄です。コスチュームもなかなかカッコいい。しかも王族なのに堂々と正体を明かしております(エエんかいな)。故国では国民は皆承知しているらしいです。
 劇中では「ソコヴィア協定」締結のための署名式典で、父である国王を暗殺され、その容疑をかけられたウィンター・ソルジャー/バッキーを追うという設定で登場します。

 全体的に「ソコヴィア協定」を巡る理念の対立が根底にあるのですが、ストーリーとしてはもっと直接的に「テロ容疑をかけられたバッキーを追う側と助ける側」の対立が描かれております。何となく途中から協定の理念よりも、バッキーをめぐる対立に重心がシフトしているような気がしなくも無いデス。
 バッキーを庇うのが、いわゆるチーム・キャプテン・アメリカ。手配中のテロリストの逃走を幇助するので、自らも犯罪者の烙印を押される反体制側のチームです。
 キャップとバッキーの親友コンビを筆頭に、ファルコン、ホークアイ、スカーレット・ウィッチ、それにアントマンと云う面子。
 アントマン/スコット・ラングも本作で〈アベンジャーズ〉に参戦することになりました。かなり唐突な登場の仕方なのは御愛敬でしょうか。劇中では有名人であるキャプテン・アメリカを前に小市民的な言動が笑えます(まぁ、コソ泥ですし)。

 バッキーを追うのが、いわゆるチーム・アイアンマン。こちらは体制側です。
 社長とウォーマシン(ローズ中佐)が組んでいるのは当然として、ヴィジョンも社長側です(元はジャーヴィスですからね)。加えてウィンター・ソルジャーに復讐を誓うブラックパンサーも当然として、ブラックウィドウも社長側なのが意外でした。
 そして新キャラの二人目にして、本作で颯爽登場するのがスパイダーマンです。遂にこの時が来ましたか。

 原作コミックスでは、超人登録法案推進のためにトニー・スタークが呼び寄せ、そしてカメラの前でマスクを脱いで正体を世間にカミングアウトすると云う、実に印象的な場面で登場しましたが、さすがに本作ではそこまで劇的なことはいたしません。
 本作に於けるスパイダーマンは、サム・ライミ監督版のトビー・マグワイアや、マーク・ウェブ監督版のアンドリュー・ガーフィールドが演じたスパイダーマンよりも若く描かれています。
 とにかく演じているトム・ホランド自身が若い。二〇〇四年のスマトラ島沖地震による津波被害を描いた『インポッシブル』(2012年)で、ナオミ・ワッツとユアン・マクレガー演じる夫婦の長男役で登場していたのを思い出しました。結構、成長していますが、現役高校生役が実に自然です。

 しかし本作では、チーム・キャプテン・アメリカ側のヒーローも、チーム・アイアンマン側のヒーローも、基本的にその正体は公表されていて、本名までバレている人達ばかりなのに──軍人もいますしね──スパイダーマンがアイアンマン側でいいのか。「ソコヴィア協定」賛成派に与する以上はカミングアウトは必然でしょうに。
 原作コミックスでスパイダーマンがカミングアウトするのは、もう成人してからと云う年齢設定だったと思いましたが、まだ未成年として登場してそこは大丈夫なのか……と思ったら、正体は明かされないままでした。知っているのは社長只一人(ブラックウィドウも承知していますかね)と云う設定です。

 トニー・スタークがその才能を見出し、新人教育を兼ねて参加させたという流れで、なかなか新しいリブートの仕方になっています。本来ならば、また新しく単体ヒーローものとしてのリブート作品が必要だと思われますが、そこは後回しにされたようです。
 まぁ、今までのサム・ライミ版とマーク・ウェブ版がありますので、改めてスパイダーマン誕生のエピソードを繰り返してくれなくても大丈夫ではありますが。
 本作では、トム・ホランドのピーター・パーカーのみならず、メイ叔母さんも登場してくれます。ここでメイ叔母さんを演じているのが、マリサ・トメイです。こちらもまた若返りました。「若くて美人の叔母さん」とは素晴らしい。
 個人的にはサム・ライミ版のローズマリー・ハリスが一番、原作のメイ叔母さんらしいと思うのに、リブートされる度にメイ叔母さんがどんどん若返っていくとはどうしたことか。

 今後、映画の〈アベンジャーズ〉シリーズ中のスパイダーマンは、アイアンマンに師事することになるのか。スターク・インダストリが味方してくれるなら、オズコープ社が敵でも大丈夫か。
 でも、ひとつだけ文句を付けたくなるのが、スパイダーマンのコスチュームです。多分、スターク・インダストリ製であると思われるコスチュームは、その、何と云うか、ちょっとダサいです。
 サム・ライミ版のコスチュームがデザイン、質感ともに一番、カッコいいと思われるので、そこだけ元に戻してもらえないものでしょうか。

 ともあれ職業軍人の比率の高いヒーロー達の中にあって、本作のスパイダーマンの若さが実に際立っております。戦闘中におしゃべりを止めないのがスパイダーマン・スタイルですが、周囲から「喋りすぎだ」と注意されるほどにペラペラ喋りまくっています。おかげで本作ではスパイダーマンの異色さが際立つ演出になっていて、それはそれで巧いやり方です。
 そして本作の見せ場は、やはりドイツの空港で六対六のチーム・バトルを展開する場面でしょう。アントマンの意表を突いた必殺技に、『スター・ウォーズ』を引用しながら反撃するスパイダーマンが楽しいデス(『帝国の逆襲』は一般常識ですよね)。

 紆余曲折ありまして、バッキーのテロリスト容疑は濡れ衣であると判るワケですが、その陰謀の黒幕として登場するのが、ヘルムート・ジモなる謎の男。演じているのはダニエル・ブリュールです。
 近年では『ラッシュ/プライドと友情』(2013年)のニキ・ラウダ役とか、『黄金のアデーレ/名画の帰還』(2015年)でヘレン・ミレンやライアン・レイノルズと共演しておりました。
 マーベルコミックスに登場するジモは、ちゃんとアメコミの悪役らしくマスクで正体を隠しているのですが、本作ではダニエル・ブリュールは最初から素顔を晒しております。
 ナチス高官の息子だとか、悪党を集めて組織を結成しているとかの背景はバッサリ削られ、お馴染みの秘密結社〈ヒドラ〉とも無関係。それどころか今回の陰謀はジモの単独犯行であることが明らかになりました。

 そもそも本作のヘルムート・ジモはソコヴィア出身であると明かされ、『~エイジ・オブ・ウルトロン』の一件を恨みに思っていたと語られております。何の特殊能力も無い市井の人間が、復讐心だけを糧に〈ヒドラ〉すら出し抜いて〈アベンジャーズ〉を窮地に陥れると云う、恐るべき執念です(好都合な状況が出来してくれたお陰でもありますが)。
 普通の人間である自分が〈アベンジャーズ〉に復讐するには、内部分裂を誘う以外に路は無かったと終盤で告白しますが、それを実現した時点でもはやフツーじゃありませんね。ダニエル・ブリュールの淡々とした告白が逆に怖ろしいです。
 前作『~ウィンター・ソルジャー』のロバート・レッドフォードにも通じるものを感じました。

 そしてジモが残した最後の爆弾が、「トニー・スタークの父ハワードの死の真相」でありまして、怒りに我を忘れたアイアンマンが、親友バッキーを守ろうとするキャップと激突するのがクライマックスです。
 この戦いではキャップに軍配が上がり、アイアンマンが行動不能にされてしまうのですが、一撃を加える際のキャップの表情が実に哀しい。
 そして完全に決裂し、袂を分かってアイアンマンの元から去るキャプテン・アメリカ。
 その後は、ジモの告白を聞いて己の復讐心を捨てたブラックパンサーに匿われ、アフリカ某国にて潜伏するキャップとバッキーです。
 果たして〈アベンジャーズ〉再結成の日は来るのか。何よりキャップとバッキー以外の残りの面子は犯罪者として収監されてしまっているのですが……。

 後日、それでも友情は忘れていないと、社長の元にキャップからの手紙が届くのが救いでしょうか。
 ちなみに本作に於ける恒例のスタン・リー御大のカメオ出演場面がここです。シリアスな場面に思いっきり水を差して笑いを取ってくれます。
 恒例と云えば、いつものオマケ・シーンではブラックパンサーとスパイダーマンの各々に単品作品があります的な予告場面。特に後者については、はっきりと「スパイダーマンは帰ってくる」と字幕で表示されていました。

 原作の『シビル・ウォー』ではキャップが逮捕されて幕が下りる展開でしたが、本作は異なる展開となりました。その後のエピソードでは、逮捕後の公判時にキャップが狙撃されたりなんかもするのですけどね。それを描き始めると、映画もあと三作くらい必要になりますかね。
 とりあえず『アイアンマン』も『キャプテン・アメリカ』も三部作が完結し、あとは『マイティ・ソー』の三作目が公開されるのを待つばかりです。また、『アベンジャーズ』としても更に大作が控えているようで、実に楽しみデス。
 ライバルのDCコミックスにも頑張って貰いたいところですが、〈ジャスティス・リーグ〉に向けたクロスオーバも『バットマン vs スーパーマン』(2016年)でまだ緒に就いたばかりですし、ことクロスオーバー映画に関してはマーベルの方が巧みであると云わざるを得ませんデス。




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