2014年4月24日木曜日

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

(Captain America : The Winter Soldier)

 マーベル・コミックスの実写映画化路線は快調ですねえ。既に『アベンジャーズ』(2012年)の続編に向けて着々と各ヒーロー達の単体主演作の第二弾が公開されております。
 本作はアイアンマン、マイティ・ソーに続く、キャプテン・アメリカの続編映画となっております(ハルクの続編は無いのかしら)。
 他にもマーベル・コミックスのヒーロー達は、アベンジャーズとは無関係でも『アメイジング・スパイダーマン2』やら『X-MEN/フューチャー&パスト』なども制作されていたりして活況を呈しております(DCコミックスの方も頑張って貰いたいデス)。

 さて、本作では『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)で、現代に蘇ったキャップの本格的な活躍が描かれます。第一作でキャップの出自と基本的な設定が描かれているので、詳しい説明はなしです。観客も皆さん御承知でしょうし。

 コミックスのヒーローものとして、似たような作風になるのを避けるためか、本作はアイアンマンやマイティ・ソーとはまた違った趣になっているので、ちょっと感心しました。世界観が矛盾しないように調整しながらも、「キャプテン・アメリカ」として独自のカラーを打ち出そうとしているようです。
 『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013年)のような銀河を股にかけた半ばファンタジーな大活劇では無く、本作は非常にリアルな──地味と云ってもいいくらいの──サスペンス風なアクション映画になりました。

 勿論、基本設定として諜報機関シールドも登場しますし、サミュエル・L・ジャクソン演じるニック・フューリー長官も健在だし、大型航空母艦ヘリキャリアも飛び回っておりますので、どの辺がリアルやねんと仰る向きもありましょうが、架空の組織やメカがきちんと描かれ、政治的な背景も描写されているあたりに、リアルなものを感じます。
 アクションシーンでも同様に、等身大の人間同士の戦いがメインです。決してトンカチの一撃で地面に大穴が穿たれたりなんぞはいたしません。あくまでも格闘のプロ同士がリアルに戦い、銃撃戦を展開し、カーチェイスも普通です。
 地に足の付いたアクション演出ばかりですが、これはこれで緊迫するシーンの連続になっております。

 監督は前作のジョー・ジョンストンから交代して、アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソのルッソ兄弟が抜擢されております。まだ監督作品が少ない人ですが、大作映画でもそつなくまとめる手腕は大したものです。
 ルッソ兄弟の監督作品の中では、ジョージ・クルーニー制作の犯罪コメディ映画『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』(2003年)が有名でしょうか。でも未見なので、個人的には本作が初めてになります。
 音楽もアラン・シルヴェストリからヘンリー・ジャックマンに交代し、前作とは変わった印象を受けますが、前作が第二次大戦当時のレトロな冒険活劇だったのに対して、本作では七〇年後の政治的陰謀も交えたサスペンス映画になっておりますので、印象を変えるために敢えて変更しているようにも思えます。

 でも主演は変わらず、クリス・エヴァンスであり、共演もサミュエル・L・ジャクソンであり、スカーレット・ヨハンソンです。今回はシールドの組織がストーリーに大きく絡んでくるので──キャップもシールド隊員の一人ですし──、フューリー長官やブラック・ウィドウが登場してくるのは当然ですね。
 とは云え、ジェレミー・レナー演じるホークアイは今回はお休みなのが残念。マリア・ヒル副長官(コビー・スマルダーズ)も再登場しているのに、ホークアイやコールソン捜査官(クラーク・グレッグ)に出番が無いとは何としたことか。
 コールソン捜査官はちゃんと助かって、TVシリーズ『S.H.I.E.L.D.』の主役まで張っておりますので、本作にも顔見せしてもらいたかったデス。
 代わって本作には、別のヒーローが登場する運びとなりました。コミックスの方ではキャップと共闘する古参のキャラクターであり、パートナー的なヒーローなので、本作にも「ファルコン」が登場しても不思議ではないか。本作ではアンソニー・マッキーがファルコン役です。
 少しずつヒーローを増やしていこうと云う、マーベル側の深謀遠慮が働いているのか。

 前作の登場人物は、大方はお亡くなりになっている設定ですが、回想シーンにはトミー・リー・ジョーンズやドミニク・クーパーもチラリと顔見せしてくれます。
 でもヒューゴ・ウィーヴィング演じるレッドスカルの復活はまだ先か。
 存命していた人物としてキャップの恋人ペギー(ヘイリー・アトウェル)が老けメイクで登場してくれます(メイクが強烈すぎて少し不自然でしたけど)。キャップが介護施設で認知症を発症している恋人を見舞う場面は、なかなかに痛々しいです。
 でもそれがまたキャップの誠実な人柄を偲ばせる、いい場面になっておりました。

 しかし、レッドスカルですら一回お休みなのに、ゾラ博士(トビー・ジョーンズ)の方が再登場してくれたときにはタマゲました。しかもかなり意表を突いたお姿になっておりましたし(変わり果てたと云うべきか)。
 そしてゾラ博士が今回の事件の遠因にもなっています。何と云っても、本作のもう一方の主役「ウィンターソルジャー」を生み出した張本人でもありますし。
 謎の刺客ウィンターソルジャーを演じているのは、セバスチャン・スタンです。ええ、もう正体がキャップの親友バッキーだなんて、先刻御承知であります。原作コミックスも既に翻訳されておりますし。

 バッキーは前作で谷底に転落した後、ゾラ博士によって回収され、改造手術を受けてサイボーグ兵士となって甦ったのだった。しかも記憶を消されて(なんとアリガチな設定か)。
 サイボーグ兵士としての身体能力はキャップと同等らしいです。ゾラ博士、頑張りました。劇中ではキャップの放つ超合金シールドを片手で軽々と受け止めたりもします。見た目は判り易く、「片腕サイボーグ」になっているのが御愛敬です。オマージュかしら。
 ついでに「将来、必要になるときに備えて冷凍保存される」あたりにも、『六〇〇万ドルの男』といったサイボーグものに対するオマージュを感じます。

 まぁ、正体バレバレでありますが、セバスチャン・スタンは頑張って長髪になったり、マスクで人相を隠したりもしております。無精髭も生やして、ワイルドな風貌が強調されています。
 回想シーンでの好青年ぶりも懐かしく、まだ貧弱な青年だったキャップとのツーショットも味わい深い。
 しかし回想シーンでのクリス・エヴァンスは、どう考えても別人の役者の胴体に首をすげ替えている筈なのですが、違和感が全く感じられないと云うのもお見事です。然り気ない場面にもCGが効果を発揮しております。

 そして原作者スタン・リー御大によるカメオ出演も怠りなし。
 本作ではスミソニアン博物館において「キャプテン・アメリカ展」が開催されていると云う設定になっていて、クリス・エヴァンスが自分を美化しまくった展示を見て呆れるシーンが笑えます。同時にこれが前作のダイジェストや、クライマックスへの伏線になっているのもお見事です。
 この博物館の老警備員役で登場するのが、スタン・リーでした。

 最後に名優ロバート・レッドフォードの登場です。
 かつてのイケメン俳優であり、今や映画監督としても確かな手腕を発揮する大御所がこんなところに登場するとは、ちょっとビックリです。
 先日観た『オール・イズ・ロスト/最後の手紙』(2013年)での一人芝居も記憶に新しいところでありますが、エンタメ作品にも変わらず出演してくれるとは嬉しいデスね。本作におけるロバート・レッドフォードの役は、昔の主演作品へのオマージュにもなっているようでした。
 ぶっちゃけ、本作は『コンドル』(1975年)のマーベル・コミックス版といった趣です。

 ロバート・レッドフォードは世界安全保障委員会の一員で、フューリー長官の上位になる政府高官の役です。『アベンジャーズ』でチラリと登場していた委員会のメンバーですね。
 『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する〈ゼーレ〉を彷彿とする演出が笑えましたが、本作では生身の人間として登場します。
 そしてフューリーとも旧知の間柄であり、信念を持った悪党でもある。

 確か、『コンドル』は主人公が「もしCIAの中に、もうひとつ別のCIAがあったら」と云うネタを思いついてしまった為に命を狙われるストーリーだったと記憶しておりますが、本作では「シールドの中に別の組織が浸透している」と云う設定が披露されます。
 しかもそれが、よりによって壊滅させた秘密結社ヒドラだったと云う、最悪の事態。
 これが建造中のヘリキャリア二番艦から四番艦までの新造航空母艦の乗っ取りと、新たな世界秩序構築の陰謀にまで発展していく。ヒドラなんて時代錯誤的な組織が現代まで生き残っていて、常識人のように見える議員達がメンバーであるのがモダンホラーを思わせる設定です。

 キャプテン・アメリカは名前からして、「愛国超人アメリカ大将」ではありますが、敵が合衆国政府または政府内部の高官達になる構図に、近年のリベラル化したキャプテン・アメリカらしいストーリーになっているのが感じられます。
 劇中では、キャップが自身のモラルに反する命令に葛藤したり、己の正義に迷いが生じたりする場面もあって、最近のアメリカン・コミックスも複雑になったものだと感慨深いです。
 中でもテロリストに対して「事前に報復攻撃する」ことは是か非かと云うネタが現実にも通じていますね。そして正しかるべき正義が、ただの独善に成り下がっているのもありがちなことです。

 それにしても、今回のヒドラの作戦も、前作同様に「超兵器による世界爆撃計画」であると云うところが笑えました。前作の巨大爆撃機〈ワルキューレ〉が、本作ではヘリキャリア三機に置き換えられているだけのような気がします。もちろん、詳細はもっと現代的にアップデートされていますが。
 基本的にゾラ博士の考えることは今も昔も変わっていないようで(笑)。

 そしてクライマックスは、ヒドラの計画を阻止せんと、キャップはブラック・ウィドウやファルコンと共に戦いを挑むわけで、発進するヘリキャリアをめぐってド派手な戦闘が繰り広げられます。
 場所がワシントンDCなので、ポトマック河の水面が割れてヘリキャリア格納庫が現れる演出に、日本の特撮番組の影響を感じました。やってることは日本と同じですねえ。

 しかし感心したのは戦闘に突入する直前の、キャップの演説シーンです。ここがキャプテン・アメリカのキャプテン・アメリカたる所以です。
 あの見事な人心掌握術こそが、キャップの特殊能力であり、こればかりはアイアンマンやソーには決して真似の出来ないところだと、制作側がちゃんと判っていらっしゃるのが嬉しかったです。
 その後の大迫力の戦闘シーンは、付け足しであると云っても過言ではありますまい。かつての親友と対峙するテッパン演出もお約束です。
 そして危機は回避され、ヒドラの存在も暴かれて一件落着。しかしバッキーは記憶を失ったまま、キャップの前から姿を消してしまう。
 果たしてバッキーが記憶を取り戻し、味方になってくれるのはいつの日か。次の『アベンジャーズ』あたりかしら。一応、コミックスの方では、バッキーはキャップの身替わりとして「新たなキャプテン・アメリカ」になったりもしますし。

 恒例のオマケ・シーンでは、次回作への布石も着々と打たれ、三作目も確実なところが嬉しいデスね。次はクイックシルバーとスカーレット・ウィッチの登場かあ。
 しかしエンドクレジットの途中に『X-MEN/フューチャー&パスト』の一場面(だと思う)まで挿入してしまうのは如何なものか。マーベル映画も調子に乗りすぎなのでは。
 あるいは今後、『X-MEN』ともコラボする予定があるのでしょうか。是非、実現してほしいですね。




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