2015年2月3日火曜日

ANNIE アニー

(Annie)

 『アニー』と云えば、有名なブロードウェイ・ミュージカルですね。今までに何度か映画化もされております。元は新聞連載漫画だったそうで、それがミュージカル劇化され、更にミュージカル映画化されたと云う経緯です。オリジナルの漫画の方は全く存じませんです。
 私が知っているのは、最初に映画化されたジョン・ヒューストン監督版(1982年)ですが、ディズニー製作でも映画化されておりました(1999年)。
 本作はその三度目の映画化となります。
 主題歌「トゥモロー」を聴くのは実に久しぶりです。『アニー』と云えば「トゥモロー」。ストーリーの筋を知らなかったり、忘れてしまっていても、この曲だけは忘れ難い。
 しかし可愛らしい子役だったアイリーン・クインもあれ一作きりか。そう云えば『アニー2』(1995年)なんてのもありましたが、まったく記憶にないデス(配役も異なるし)。

 とは云え、ヒューストン監督版『アニー』が「そんなに好きなのか」と問われると、「いや。全然」とか応えてしまうのですが。あの『アニー』はアカデミー賞にもノミネートされましたが(美術賞と音楽賞)、ゴールデンラズベリー賞にもノミネートされましたからね。
 結局、アカデミー賞(1983年・第55回)の方は受賞を逸し──美術賞は『ガンジー』、音楽賞は『ビクター/ビクトリア』でした──、ゴールデンラズベリー賞だけは受賞しております(作品賞ではなく、アイリーン・クインが助演女優賞で)。ついでに、当時のアカデミー賞歌曲賞は『愛と青春の旅立ち』であったと云うのが、また懐かしい。
 日本でもミュージカル劇が上演されたりしておりました。若山富三郎とか、上條恒彦がウォーバックス役でしたねえ。今でも毎年のように上演されているようで、最近じゃ目黒佑樹とか三田村邦彦がウォーバックス役なのだそうな。

 そのように懐かしい『アニー』を二一世紀にリメイクしようという酔狂なプロデューサーは誰か。ウィル・スミス、お前か! 製作者にはジェイ・Zも名を連ねておりますが。
 元々は自分の娘であるウィロー・スミスちゃんを主役にした企画だったそうですが、製作が滞っている間に娘さんの方が成長してしまい、この配役は流れたとか。
 なんか自分の息子ジェイデン・スミスくんをプロデュースして親子共演した『アフター・アース』(2013年)と似たものを感じます。『アニー』で娘をプロデュースしそびれたので、息子の方は急いで製作したのかしら。
 ひょっとして当初の企画通りに本作がウィロー・スミスちゃん主演で製作出来ていたら、やっぱり共演はウィル・スミス本人だったのかなぁ。きっとその場合はノリノリで歌ったり踊ったりしたのだろうなぁ。そのような親バカ企画にならずに幸いでした。

 本作に於いて主演のアニー役はクヮヴェンジャネ・ウォレスちゃんです(あいかわらずややこしい名前デス)。『ハッシュパピー/バスタブ島の少女』(2012年)でアカデミー賞主演女優賞に最年少でノミネートされたあの子ですね。あのときは『世界にひとつのプレイブック』のジェニファー・ローレンスが受賞しましたが。
 その後、『それでも夜は明ける』(2013年)にちらりと出演しておりましたが、本作では再び主演を勤めております。
 また少し成長して、演技も更に達者になり、歌やダンスも大したものです。

 共演となるのはジェイミー・フォックスとキャメロン・ディアス。
 ジェイミー・フォックスが大富豪ウォーバックス役か……と思ったら、似て異なるオリジナルの役でした。脚本が現代的に翻案されていて、元のミュージカルやヒューストン監督版のように時代背景が三〇年代の大恐慌時代ではなくなっています。
 二一世紀の現代に変更されているので、絵に描いたような大富豪を登場させてもウケないと考えたのか。本作では市長選挙に出馬しようとしている有名実業家として登場しております。名前も「ウォーバックス」にちょっとだけ似ている「スタックス」。
 「選挙キャンペーンでのイメージ向上を狙う」と云う風に理由付けが現代ぽく変更されていますが、渋々始めた少女アニーとの同居に、次第に情が移って別れ難くなると云う大筋は同じ。
 ジェイミー・フォックスなので旧作のアルバート・フィニーよりもイケメンになりました。少なくとも、あんなハゲのオヤジではないし……と思っていたのですが、やっぱりアレは外せない設定でしたね。

 「秘書のグレース」とか、「ミス・ハニガン」といった旧作からの役名も残ってはいます。
 秘書のグレースは、ローズ・バーン。『ブライズメイズ/史上最悪のウェディングプラン』(2011年)では四人の花嫁介添人の一人でした(セレブの奥さんな)。
 旧作同様、ロマンス展開もあるにはありますが、ドラマ上はあまり目立ちませんです。目立っているのは、ミス・ハニガン役のキャメロン・ディアス。
 悪役も同然なミス・ハニガンを(いや、完全に悪役か)キャメロン・ディアスが演じるのが、ちょっとビックリです。段々、悪役や汚れ役でも躊躇なく引き受けるようになりましたね。
 しかも子供達に引っかき回され、精神的にも荒んでいると云う、あまりカッコ良くない役ですが、堂々としたものです。女優の貫禄を感じます。

 但し、本作のミス・ハニガンは「孤児院の院長」ではありません。代わって里親制度を活用した私設孤児院もどきなアパート暮らしをしている設定になりました。
 孤児を引き取り、里親になれば自治体からの助成金がもらえる制度を悪用して、女の子ばかり五人も引き取って暮らしておりますが、愛しているわけでもないし、子供達の方も何も期待していないと云うなかなかドライな関係の疑似家族状態。
 その上、本作のミス・ハニガンは「落ちぶれたロック歌手」と云う設定になり、いつの日かカムバックすることを夢見て、里親暮らしは生活のツナギであると割り切っております。元ミュージシャンなので、劇中で歌っても不自然ではないか。
 本作ではキャメロン・ディアスがなかなか上手に歌う姿が拝めます。

 その他の配役では、妙にカメオ出演が豪華なのが笑えました。
 旧作でも、アニー達はグレタ・ガルボ主演の『椿姫』を観に行ったりもしておりましたが、本作では何だかよく判らないSFファンタジー映画を皆で観に行きます。
 題名が『ムーンクエイク・レイク』と云い、出演しているのが、アシュトン・カッチャーとミラ・クニスです。リアーナも出演しています。
 なかなかおバカなB級映画なようで──どうもSF版『かぐや姫』のようなストーリーらしい──、続編もちゃんと製作されていたりします。スピンオフ企画で作ってもらえないものでしょうか。

 他にもパトリシア・クラークソンや、歌手のシーアなんて人達が顔見せしております。
 しかしそれらカメオ出演の中では、マイケル・J・フォックスの姿を拝めたのが一番嬉しいです。パーキンソン病で一時期俳優活動が停止し、近年はアニメの声の出演等で活動が再開されているのは存じておりました。しかし御本人の姿をスクリーンでは見られないのが残念であったのですが、本作ではほんのワンカットだけですが、ナマのマイケル・J・フォックスが本人役のままで登場します。
 市長選に立候補したジェイミー・フォックスが、対立候補である現職市長の応援キャンペーンをTVで見かけるという場面。「僕、マイケル・J・フォックスも現市長を応援しています」と云う台詞もちゃんと喋っております。ある意味、本作一番の収穫はここかも。
 やっぱりここの部分の吹替は宮川一朗太にしてもらいたいなあ……と思ったら既に吹替版ではそうなっているとか。流石デス。

 現代版にリメイクするに当たって、色々なものがイマドキのものに置き換えられております。
 大富豪の豪邸が、高級マンションのペントハウスになっていたりするのは当然ですが──「エンタープライズ号のブリッジのような部屋だ」と云う表現には笑いました。私もそんな部屋が欲しいぞ──、インターネットを大きくストーリーに組み込んでおります。
 そもそもジェイミー・フォックスの本業が、ケータイ電話のキャリアであると云う設定になっている。劇中では、アニーの本当の親を探す為に膨大な通話記録を検索する場面があります。
 「人々が本当に怖れなければならないのは政府ではない。ケータイ会社なのさ」なんてウソかホントか判らない陰謀論めいた台詞も飛び出します。

 また、クライマックスでは偽の両親に掠われたアニーの行方を突き止めるためにツイッターが活用されるという展開になりました。今やスマホやケータイを持っていない人の方が少ない時代ですし、日常的に有名人や変わった出来事を目にすると、即座に写真を撮ってネット上にアップするのは当たり前と云う御時世ですね。
 掠われたアニーの方も、それをちゃんと承知しています。行く先々で通行人に手を振り、それを見た人が「あ、アニーだ」とスマホで写真を撮る。選挙キャンペーンで名前が売れているのが巧い伏線になっています。
 そして画像には位置情報まで含まれているので、容易く追跡できてしまうと云う展開が現代的で面白かったデス。救出劇にヘリコプターを使っているのも旧作をなぞっておりますね。

 本筋は変わりなしなので、そういった旧作との差異を見つけて楽しむのがよろしいのでしょう。勿論、それを知らない人でも楽しめるようにはなっていますが。
 その意味では、冒頭の場面が一番笑えましたね。小学校のクラスで自由研究の発表会が行われている場面。
 いきなり赤毛の女の子がニコニコと笑顔を振りまきながら優等生的な発表を行っている。心なしか旧作のアイリーン・クインちゃんに似ていなくもない。誰がどう見てもこっちの方がアニーだろうと思っていたら、名前も「アニー」と呼ばれているし、もうこの子で『アニー』をやってもいいんじゃないかと思いました。
 実はクラスの中に同名の子供が二人いたと云う設定です。クヮヴェンジャネ・ウォレスちゃんは「アニー・B」と呼ばれている。本作ではアニーの苗字が「ベネット」なので「アニー・B」。
 いや、そのまま「アニー・A」を主役にしてくれても一向に差し支えないくらい可愛かったのに……。

 オリジナルでは三〇年代が背景なので、ルーズベルト大統領やニューディール政策なんてものが劇中に登場しましたが、本作では別にオバマ大統領が出てきたりはしません。そのあたりの説教臭いところを大胆にカットしているのは良い判断だと思います。
 結末についても、「結局、引き取られて幸せになるのはアニーだけか」と云う批判を避けるために、エピローグ部分で里子仲間の女の子達も極力一緒に登場させ、ミス・ハニガンも改心し、その後の福祉施設オープンの場面なども入れて、子供達の交流も途切れることはないのだと匂わせる演出になっていたところに苦心の跡が伺えました。

 ミュージカル映画ですので主題歌「トゥモロー」が流れるのは当然として、「メイビー」や「厳しい人生」、「リトル・ガールズ」といった旧作からのナンバーも歌われております。また、本作オリジナルの歌曲も追加されています。
 キャメロン・ディアス、ジェイミー・フォックス、クヮヴェンジャネ・ウォレスの三人が別々の場所で歌いながらシンクロしていく「Who am I ?」がなかなか良かったですが、一番素晴らしかったのは日本版オリジナルである、平井堅の歌う「トゥモロー」であるのは云うまでもない。
 でも、一番の聴きどころがエンドクレジット部分だと云うのは如何なものか。

 さて、これでウィル・スミスの野望は終わったのか。いや、そんなことはあるまい。
 きっと頓挫した父娘共演の夢は、また別の企画として上がってくるのではないか。やるなとは云いませんが、お願いだから『アフター・アース』のようなSF映画だけにはしないで戴きたいものデス(いや、ジェイデン・スミスくんに罪はないんですよ。悪いのはオヤジの方だから)。




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