2013年4月25日木曜日

Steins ; Gate/負荷領域のデジャヴ

(STEINS ; GATE)

 5pb.とニトロプラス原作の同名のゲームを基にしたアニメ(TVシリーズ全24話)の劇場版です。最終回の放送直後に劇場版製作決定と発表されて二年が経過し、ここにめでたく公開の運びとなりました。実にめでたいデス。
 『シュタインズ・ゲート』は「科学アドベンチャー」シリーズの第二弾でありまして、前作の『カオスヘッド』も好きでした。尤も、ゲームの方はさっぱりプレイした事なんぞ無く、アニメ化されてから視聴しただけなのですが(もう自宅でゲームする暇がなくて……)。そう云えば『カオスヘッド』の劇場版なんてのは製作されんのか。
 今回もまたゲーム版をスルーしたまま、アニメ版のみ視聴しております。
 ノベライズやコミカライズも何作もありますが、メディアミックスし過ぎで、追いかけ始めると底なしデス。とりあえず小説版くらいは何冊か……。

 「科学アドベンチャー」シリーズと銘打たれておりますが、どの辺が科学なのか判らないのは前作同様。むしろ疑似科学だろう、などと云うツッコミはさておき。
 『カオスヘッド』で描かれたのが「妄想の現実化」であったのに対して、『シュタインズ・ゲート』の方は「過去改変による現実操作」が描かれております。どちらの作品も、信じていた日常が改変されて、悪夢のような状況が現出するのが共通しております。
 でもタイムパラドックスが絡んでくる分、SF者にはこちらの方が好みでしょうか。
 タイムマシンによる過去改変を繰り返しながら、避けられない運命に抗う時間ループSFなのがSF者にはツボでありましょう。

 やはり時間をループするSFには名作も多い。『時をかける少女』に始まり、『ある日どこかで』(1980年)とか、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)とか、『バタフライ・エフェクト』(2004年)とか色々。たまに『LOOPER/ルーパー』(2012年)なんてB級もありますが。
 また、ほぼ同時期のアニメ作品にも『魔法少女まどか★マギカ』(2012年)とかありましたし(こちらも劇場版化されましたね)。泣ける話も多いデス。
 個人的にはタイムパラドックスを正そうとする理屈ぽい分、『まどか★マギカ』よりも『シュタインズ・ゲート』の方が好みです。全二四話であったので、物語も複雑だし、伏線の回収も巧く出来ておりましたし。

 本作はTVシリーズのリメイクではなく、完全オリジナル脚本による続編になっております。もう堂々の続編。一見さんお断り。
 登場人物の説明も一切なし。
 しかもオンエアされた二四話だけでなく、番外編的第二五話にまで言及されております。まぁ、本筋に関係ない部分(いや、そうとも云い切れぬか)ですので、スルーしても差し支えありませんが、やはり事前に観ておいた方がいいですね。

 但し、『シュタインズ・ゲート』は傑作ではありますが、かなり癖のある「濃い」描写が観る人を選びそうではあります。中二病とネットスラングが炸裂し、秋葉原の萌え文化が背景に描かれておりますので、人によっては耐えられないくらいイタいかも知れません。
 私も始めの頃はどうしたものかと迷うところがありましたが、観続けて良かったデス。

 でも、どれくらいのSF者が導入部の設定を許容できるかどうか。「携帯電話と電子レンジを組み合わせてインターネットに繋いだら、よく判らないけどタイムマシンが出来ました」と云う設定がそもそも世間を舐めていますね。そんなにお手軽に発明されて堪るか。
 とは云うものの。思い返せば、NHK少年ドラマシリーズも似たようなテイストでしたか。光瀬龍の『夕ばえ作戦』なんて、「骨董品屋で買ったヘンテコな道具がタイムマシンでした」などと云う導入でしたからな。かつてのジュブナイルSFへのオマージュだと思えば腹も立たぬか。
 また、後年になって観返せば、秋葉原のメイド喫茶やラジオ会館といった背景がリアルである分、西暦二〇一〇年当時のオタク文化はこんな風だったねえと懐かしく思い返せる……かも知れません(既に旧ラジオ会館も取り壊されておりますしねえ)。

 本作ではTVシリーズで監督を務めた佐藤卓哉と浜崎博嗣が総監督となり、新たに絵コンテと演出を一部担当していた若林漢二が、本作の監督に抜擢されております。
 脚本はTVシリーズの構成も務めた花田十輝ですので、二年間のブランクがあるとは云え、作品的にはきちんと繋がっております。
 出演する声優陣も全員変わらずです。
 宮野真守も、今井麻美も、花澤香菜も、関智一も、変わりなし。ちゃんと花澤香菜が「とぅっとぅるー」と云ってくれます(重要なことですよね)。
 OP主題歌も、いとうかなこです。個人的には「Hacking;Gate」のままでも良かったくらいですが、新曲「あなたの選んだこの時を」も快調です。

 制作上は二年間のブランクがありますが、物語としてはTVシリーズの一年後である、西暦二〇一一年の八月の出来事が描かれます。
 故意にTVシリーズの第一話と同じ展開から幕を開けてくれるのが楽しいデス。
 もう岡部も、ダルも、まゆしぃも相変わらずです。あまりにもそのままなので、却って心配になる程です。こいつら全然、成長しとらん。
 まだモラトリアムか。大学生の夏休みってヒマだねえ。就活しなくていいのかね。
 進歩と云えば、ダルが遂にリア充になりかけている状況が紹介されております。もう少し尺が長ければ、未来の嫁にも出番があったかも知れないのに。八九分はちょっと短いのではあるまいか(〈機関〉の陰謀だ)。

 久しぶりにアメリカから紅莉栖が帰国し、ドラマの幕が開きます。こちらも相変わらずのツンデレっぷりです。
 序盤に描かれるラボのメンバーが揃った円卓会議(バーベキュー・パーティ)の場面がいいですねえ。特にラボの大家であるミスター・ブラウンと桐生萌郁が仲良くビールを飲んでいる図がいいデス。
 こういう場面がありますと、TVシリーズを観てきた苦労が報われます。この幸せな世界線に辿り着くまでに、どれほどの悲惨な世界線を彷徨ったことか。

 しかし一年が経ち、岡部の身体が変調を来し始める。
 度重なるタイムリープによる世界線の彷徨が脳に悪影響を及ぼし始めていたのか。ある種の後遺症ですね。
 さながらPTSDのように、発作的に脳が現実を認識できなくなる。別の世界線の出来事がフラッシュバックした瞬間に、肉体が現実から消失してしまう。
 最初の内はごく短時間で元に戻っていたが、次第に消失時間は長引き始め、やがて完全に消失するときが近づいてくる。

 岡部が消失している間は、誰も岡部のことを憶えておらず、最初から「そんな人物は存在しなかった」歴史にすり替わっていると云う描写が怖ろしい。
 また、捨て去った筈のアルファ世界線の暗黒展開が矢継ぎ早に甦る描写も怖ろしい。中でも一番怖ろしいのは、ミスター・ブラウンが死んでしまった後の展開がチラリと紹介される部分でしょうか(綯ちゃん、なんてことをッ)。

 TVシリーズの主人公が劇場版では消え失せてしまい、居ないことが逆説的にその存在の重要さを認識させると云うのが巧いですね。サブタイトルは『鳳凰院凶真の消失』とかでも全然OKだったような(笑)。
 本作で頑張るのは紅莉栖の方です。劇場版の主役はこちらでしたか。
 劇中で炸裂させる「鳳凰院凶真の真似」が素晴らしいデス。よく特徴を掴んでおられる。

 別の世界線での出来事なのに、何となくそのときの記憶があると云う描写はTVシリーズでも描かれておりましたが、本作はそのあたりにきちんと理由を設けて発展させております。
 誰も岡部のことを憶えていないのに、ラボのメンバー全員が某かの喪失感を抱えている描写がエモーショナルです。タイムパラドックス解消の為に理屈を積み重ねながらも、肝心な部分は理屈を越えているところが、本シリーズの魅力でしょう。SF者はこういうのにヨワい。
 人の想いは世界線をも越えるのデス。
 「忘れないで。どの世界線にいようとあんたは独りじゃない。どこにいようと、私が見つける。あんたが私を観測したように、私があんたを観測し続ける!」

 岡部をこの世界線に連れ戻す為には、タイムトラベルを行い過去に戻らねばならない。
 そして岡部の脳が「この現実」を、他の世界線の記憶よりもリアルに感じられるような、強烈な印象を植え付けることが出来たなら、岡部はこの世界線に帰還できる筈である。理屈は判ったが、ではその方法は。
 TVシリーズで散々ループして岡部が味わった絶望を、今度は紅莉栖が味わう羽目になる。劇場版ですから、それほど繰り返されるワケではありませんが、辛い思いするには充分な描写です。またこの俺をウルウルさせやがって。

 色々とTVシリーズで語られた出来事が、実は伏線だったと云う展開がお見事でした。最初から計算されていたように思われる脚本です(当時から構想はあったのかな)。
 岡部と紅莉栖がキスをした世界線は「無かったこと」にされてしまいましたが、その際に岡部は「悪いな。これが最初じゃないんだ」と白状しております。
 本作は「では岡部のファーストキスは、いつ、誰と」だったのかと云う点が明らかにされるワケで、しかもそれが既に語られていた別の記憶に繋がる出来事だったと説明される。

 「キスは脳の海馬に長期記憶として保存される重要なイベントである」とはシリーズを通して語られていたので、この解決方法はある程度、予想できましたが、あっちのイベントの直前の出来事だったとは意外でした。そうきたかー。
 あれ。そうすると第二五話の出来事は、「あれだけでは不充分だった」ことになるのですが。
 よく考えると、通算でこいつらは何回キスしているのかな。
 いっそのこと、本作のタイトルは『Steins ; Gate/らぶChu☆Chu!』と言い換えても差し支えないのでは。

 エンドクレジットで流れるED主題歌は、彩音の「いつもこの場所で」です。ハッピーエンドに相応しい、爽やかな歌曲でありました。
 『Steins;Gate』であれば、榊原ゆいのED主題歌だろうとも思うのデスが、彩音は新作ゲーム版『Steins;Gate/線形拘束のフェノグラム』の主題歌も歌っておられるとか。
 うーむ。ゲーム版にまで手を出しても、プレイする暇も無いのですが、新作エピソードが一〇話もあるのかあ。ちょっとだけなら……。




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