2013年1月14日月曜日

ドラゴンゲート/空飛ぶ剣と幻の秘宝 (3D)

(龍門飛甲 Flying Swords of Dragon Gate)

 近年、武侠映画が割と沢山、公開されているようで嬉しいデス。昨年は『捜査官X』(2011年)や『王朝の陰謀/判事ディーと人体発火怪奇事件』(2010年)を観ましたが、今年は本作ですねえ。しかも監督は『王朝の陰謀~』と同じツイ・ハークで、主演がジェット・リーとくれば見逃せませぬ。
 ツイ・ハーク監督とジェット・リーの顔合わせは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ/天地風雲』(1997年)以来の一四年ぶりであるとか(このときツイ・ハークは製作)。
 本作は『王朝の陰謀~』と並ぶ中華伝奇アクション映画の快作と申せましょう。

 予備知識がないまま観ましたが、本作はキン・フー監督による『残酷ドラゴン・決斗! 竜門の宿』(1967年)をリメイクしたレイモンド・リー監督(ツイ・ハークは脚本と製作)の『ドラゴン・イン』(1992年)の続編であるとか。
 私はそのどちらも観ていないので比較は出来ませんが、多分アクション演出は飛躍的に進化しているハズです。そりゃもう、本作は超絶ワイヤー・アクションにCG合成テンコ盛りな3D映画ですから。
 過去の作品と色々関連はあるものの、そのあたりを全く知らずにいても差し支えありませんでした。キャラクターの名前や設定も一部、変更されているそうですし。

 タイトルにある〈龍門(ロンメン)〉──ドラゴンゲート──とは、明時代の中国西域にあったという宿場の名前。だから「ドラゴン・イン」でもいいのか。
 かつて栄え、モンゴルによって滅ぼされた西夏の都の遺跡の上にあると云う設定です。砂の上に二本の石碑が突き出しており、今では誰にも読めない西夏文字が刻まれている。
 辛うじて「龍」と「門」の字だけが解読できて、石碑が傾いて互いに支え合うような格好になっているので、自然とこの地は〈龍門〉と呼ばれるようになったと劇中で説明されます。

 物語は、この砂漠の宿場(宿屋が一軒きりですが)にやって来た、互いに一癖も二癖もある流れ者たちと、都から派遣されてきた官軍、更に韃靼人の部族、盗賊団といった連中が繰り広げる敵味方が入り乱れた波瀾万丈の大活劇になっています。
 しかし本筋に入るまでの前説が長い。いや、これはこれで大変面白いので文句はありませぬが、前半と後半が別物の映画のようでした。
 一粒で二度オイシイと思えば良いか。何にせよ中華的なチャンバラ活劇が全編にわたって堪能できます。

 まずは冒頭の中国地図のアップから都市の俯瞰にオーバーラップして、そのまま大河を行き交う帆船を眺めながら、大規模な水軍造船所までワンカットで寄っていくカメラワークがいい感じデス。『王朝の陰謀~』と同じく、CGを駆使した雄大な導入部が素晴らしいです。
 宦官に牛耳られ不正の横行する明時代。泣く子も黙る諜報機関〈東廠〉と〈西廠〉と呼ばれる組織があった。

 ここで不正を内部告発した役人を、逆に謀反人として捕らえようとする〈東廠〉の督主ワンの悪逆無道ぶりと、これを誅して、民衆の為に戦う義士ジャオ(ジェット・リー)と仲間達の活躍が描かれます。キャラクター紹介に過ぎないほんの前座のチャンバラからして、フルスロットルでトバしてくれるアクション演出が見事です。
 本作では敵も味方も、ちょっとでも名前の付いた登場人物は全員、達人クラスであると云う暗黙のルールがあるらしい。どいつもこいつも当たり前のように軽功の使い手で、ひょいひょい宙を飛びます。
 大体、初っ端にやられる雑魚キャラの筈のワン督主(ゴードン・リューでした!)からして、飛んできた丸太を片手で軽々受け止める化け物っぷりです。
 前座のアクションに「ゴードン・リュー対ジェット・リー」の図が入るあたり、ファン・サービスにも怠りなしか(いや、フツーは判らん)。

 〈東廠〉督主暗殺犯として手配される義士ジャオと仲間達。
 次いで最大の敵となる〈西廠〉督主ユー(チェン・クン)の登場です。もうアニメのように判り易いクールな美形悪役(しかも達人)。自分達でジャオを捕らえて〈東廠〉よりも上位に立とうという野心が見え見えです。
 一方、宮廷では皇帝の子を身籠もった官女スー(メイヴィス・ファン)が姿を消していた。放っておけば自分の地位を脅かしかねないとして、皇妃は官女スーを捕らえて処刑するよう〈西廠〉に命を下す。

 〈西廠〉の捜査網にかかって捕らえられかけた官女スーを救ったのは、義士ジャオかと思いきや、ジャオの名を騙る女侠客リン(ジョウ・シュン)。どうやらジャオの名を騙ることで、彼を探しているように見受けられる。
 〈西廠〉の追っ手を逃れた二人は、西域の宿場〈龍門〉に向かう。だが〈西廠〉督主ユーも二人の逃走経路を先読みし、〈龍門〉に向かっていた。ユー督主の首をも狙う義士ジャオもまた──。
 一方、〈龍門〉では六〇年に一度という大規模な砂嵐の前兆が見られ、一般人の隊商は街道沿いの砦に避難し始めていた。
 宿場に残っているのはあからさまに怪しい韃靼人の一団。加えて侠客リンと官女スー。そこへまた〈西廠〉の官兵の一団がやって来るわ、そもそも宿屋の主人も盗賊紛いの怪しい奴だわと、どいつもこいつも胡散臭い。

 悪天候により外界との連絡が途絶した〈龍門〉に様々な人物が集い、お互いにナニやら企んでいるという状況が本作の本筋であるのに、ここまで来るのにかなり時間を費やしました。
 しかしそれも超絶ワイヤーアクションな活劇をたっぷり描きながらなので、退屈することはありません。前半だけでも相当にお腹一杯。むしろそろそろ腹八分目と思われた頃に、これからメインディッシュですと云われたような感じがします。
 てっきりこの皇帝の子を身籠もった官女を、悪党共から守って落ち延びさせるストーリーなのかと思っていたら、それは単なる前説に過ぎなかったのでした。
 本筋はここから。

 実は〈龍門〉は滅亡した西夏の都の上にあり、砂に埋もれた宮殿には金銀財宝がザクザク眠っていると云う黄金伝説があったのだった。
 六〇年に一度の大砂嵐により、砂漠の中から都の遺跡が現れる。財宝を我が物にするには、その時を狙うしかない。
 しかし宝物殿に至るまでの経路は迷宮も同然。そこには侵入者を防ぐ為の様々な仕掛けが施されているという……。

 後半からいきなり『レイダース/失われた〈聖櫃〉』(1981年)とか、『キング・ソロモンの秘宝』(1985年)な秘境冒険活劇で財宝争奪戦な展開に突入します。
 ここで一旦、気持ちをリセットし、序盤からの展開はきれいさっぱり忘れた方がよろしいでしょう(笑)。
 アクション演出も凄いし、CG合成も凄いし、脚本も色んな意味で凄いです。

 その上、登場人物同士の関係もなかなかに複雑です。義士ジャオと女侠客リンには、かつてロマンスがあったらしいと云う設定はいいとして(『ドラゴン・イン』を観ていると判りやすいのかしら)。韃靼人の連中が財宝を狙うのも何となく理解できますが、韃靼人に協力する盗賊団の仲間の一人が西廠督主ユーに瓜二つであるという設定まであって、話がややこしく(面白く)なっています。
 おかげで、チェン・クンは一人二役をこなし、クールで落ち着いた督主ユーと、舌先三寸でヘタレの情報屋フォンを楽しげに演じ分けておりました。
 でも督主役の方がメイクがキツくて、「そっくりだな」と云う台詞が無いと同一人物とはなかなか思えませんでしたねえ。

 また、チェン・クンの他にも、共演者も多彩です。
 ジェット・リーと『海洋天堂』(2010年)で共演したグン・ルンメイがいました。『海洋天堂』では、サーカス団の優しいお姉さんでしたが、本作では韃靼人の女首領役。顔面にタトゥーの紋様も入れまくったワイルドな姐さんになっています。
 他にもジョウ・シュン、リー・ユーチュン、メイヴィス・ファンといった中国や台湾の女優さんが多数出演しておりますが、皆さん壮絶なアクションを華麗に決めております。

 二人ほど女優と云うよりも、歌手な人がおりますが、なかなかどうして演技もアクションも達者に見えます。これもツイ・ハーク監督の手腕なんでしょうか。
 大人数が敵味方入り乱れるアクションも、キャラクターが判り易く描かれているので混乱することなく理解できるでしょう。ちゃんとクライマックスでは、敵と味方で一対一のペアを組んで対決できるようなストーリー展開になっているのも、少年漫画的です。

 中華伝奇アクションなので、どんなトンデモ設定もアリだとは思いますが、一点だけ、劇中に登場する「金蚕の糸」がなかなか凄くて印象に残りました。
 諸星大二郎の『西遊妖猿伝』にも〈金蚕蟲〉と云うのが登場しましたが(中華伝奇では有名な虫なのか)、アレの糸のことでしょうかね(劇中でも詳細な説明は無い)。とにかくこいつが、人体でも簡単に切断するほど強靱な極細のワイヤーで、これでトラップを仕掛ける敵が登場します。
 『王朝の陰謀~』で登場した〈火炎蟲〉と云い、ツイ・ハーク監督はこういうのがお好きなんですね。西域って何でもあるのな。

 本作はアクション演出が素晴らしく、勧善懲悪で痛快なドラマです。
 『エクスペンダブルズ2』(2012年)でジェット・リーの見せ場が少なかったとお嘆きのファンも、これで満足して戴けるのではないでしょうか(実際は本作の製作の方が先でしたが)。




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