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2012年10月21日日曜日

エクスペンダブルズ2

(The Expendables 2)

 脳筋野郎の脳筋野郎による脳筋野郎の為の脳筋祭り映画が帰って参りました。全編にわたって繰り広げられる筋肉と血飛沫と硝煙の供宴をお楽しみ下さい。
 難しいコトは考えちゃイヤよ。B級なんだから。

 今回、シルヴェスター・スタローンは自身で監督すること無く、サイモン・ウェストに任せて、演技に専念しております。サイモン・ウェストと云えば『コン・エアー』(1997年)や、『トゥームレイダー』(2001年)の監督さんですね。
 監督がサイモン・ウェストになったからか、はたまた前作のヒットで予算が跳ね上がったからか(多分、両方)、本作はオープニングからしてド派手に攻めてきます。
 アバンタイトルの戦闘シーンに気合い入れまくり。おかげでタイトルが入るのが随分と後になっています(笑)。
 髑髏にナイフと銃口をこれでもかとあしらったタイトル・ロゴが素敵デス。

 SF者としては「エクスペンダブルズ」と云うと、エドマンド・クーパーがリチャード・エイヴァリー名義で書いた冒険SF〈コンラッド消耗部隊〉シリーズ(創元推理文庫)を思い起こすので、ついつい本作のことも〈スタローン消耗部隊〉と心の中で呼んでいたりします。
 東京創元は是非、あのシリーズを復刊して戴きたい。今なら間違えて買っていく人も多いのではないか(笑)。

 それはさておき、本作『エクスペンダブルズ2』は前作に輪をかけて出演俳優が素晴らしいデス。絢爛豪華。目の保養。眼福。
 一般的にはピークを過ぎたロートル俳優ばかりのように思われるでしょうが、ある種の人達にとっては人間国宝のオンパレード、重要無形文化財指定確実、世界遺産登録申請もしちゃいましょう的な配役で実に嬉しいデス。
 シルヴェスター・スタローンを筆頭に、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ランディ・クートゥア、テリー・クルーズといった、いつものメンバーに加え、前作では顔見せだけだったブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツネッガーも大幅出番増。

 ミッキー・ロークが降板されたのは残念ですが、代わって野獣チャック・ノリスとベルギーの至宝ジャン=クロード・ヴァン・ダムが参加してくれました。待ってましたヴァン・ダム。
 枯れ木も山の賑わい的にリアム・ヘムズワースも参戦していますが、若造にゃこの映画は早すぎる。二十年経ってから出直して来いとばかりに、序盤から死亡フラグを立てられているのは御愛敬デスね。
 リアムは『ハンガーゲーム』(2012年)でなら、メインを張れるのでしょうが(いや、あっちも第一作だけではそれほど出番はありませんでしたが)、本作シリーズで活躍するにはまだまだでしょう。
 序盤の狙撃シーンはカッコ良かったし、急斜面を駆け上がる姿にオヤジ共が失った若さを感じさせてくれて楽しかったのですが。可愛がられたキャラだからこそ、無残に殺されたあとのオヤジ共の仇討ちに感情移入できるのです。

 一応、女性も出演しておられますが、出番はごくあっさり。ユー・ナンとスタローンのロマンス要素も軽く流しておしまいです。別にあの役は女でなくてもいいだろうに。
 ついでに云うと、ステイサムの恋人(カリスマ・カーペンター)も別に顔見せしてくれなくてもいいのに。

 とにかく〈漢のお祭り映画〉ですので、観る側としてもテンション上げてかからねばなりませぬ。ノリが悪いと楽しめませんデスよ。
 字幕にもそれが現れていて、やたらと「祭り」とか「男祭り」という言葉が頻出します。実際の台詞はそうじゃないだろうに、意訳しまくり。でもそこがイイ。
 男同士が普通に挨拶していても、「祭りだな」「ああ、祭りだ」という会話に変換されてしまう。
 いつから “fine” という単語にフェスティバル的な意味が加わったのか。実に秋田書店的、少年画報社的な字幕です。
 日本語吹替版でも上映されていますが、そちらはどうなっているのでしょうか。ちゃんと「祭り」と云ってくれているのでしょうか(でも吹替版は、ささきいさおや玄田哲章や山寺宏一が出演しているので、それはそれで豪華なんですけどね)。

 また、各々の過去の出演作を揶揄する発言が多いのも楽しさのひとつでしょう。本作は字幕で観る方が楽しいような気がします。

 「戻ってくるぜ」
 「お前、戻りすぎなんだよッ」

 他にも「銃は使うな」と云われたステイサムがメリケンサックを取り出して「じゃあクラシック・スタイルで」と応える場面もありますが、 “classic” も本作では「ガチンコ」と意訳されます。
 やっぱりガチが一番だぜ。

 もはや配役の妙、俳優達の背負ってきた人生が、そのままスクリーンに投影されるのを楽しむ作品ですので、脚本に整合性を求めてはいけません。
 スタローンのピンチに、まったく唐突にチャック・ノリスが救援に現れても全然OK。むしろ、野獣キターッと喝采で迎えねばなりません。
 チャック・ノリスが出てくると、エンニオ・モリコーネの「続 夕陽のガンマンのテーマ」が必ず流れるのもギャグです。野獣の出番は中盤に一度、クライマックスにもう一度ありますが、とにかく顔を出すとモリコーネ節。
 でもアップになると、少し哀しいところがあるのもまた事実。野獣も牙が丸くなっちゃいましたねえ(自分で云ってますし)。フツーのおじさんが特に力むこと無く、軽く一撃喰らわして戦車を吹っ飛ばすことの方が怖いとも云えますが。

 哀しいと云えば、同様にジャン=クロード・ヴァン・ダムについても云えます。サングラスをかけた悪党面は実にキマっていますが、クライマックスの肉弾戦では、嬉しさ半分、哀しさ半分の奇妙な気持ちにさせられます。
 絵面的にはあのジャン=クロード・ヴァン・ダムがシルヴェスター・スタローンとドツキ合うと云う、夢のような場面なんですけどね。
 ヴァン・ダムの強烈回し蹴りもちゃんと炸裂(二度も!)してくれる……のは素晴らしいのですが。うーむ。
 全盛期はもっと足が高く上がっていたように思えるのは気の所為でしょうか。今の歳でもあれだけのキックを放てるコトに感動するべきなのか。
 昔はもっと、それこそ『ウェストサイド物語』のジョージ・チャキリスばりに足が上がっていたように思えるのですが……。
 本作はそのあたりで感じてしまう「やるせなさ」も含めて味わうべき映画なのですね。

 格闘の見せ場で、一番身体が動いているのは、やはり若手(比較的ね)のジェット・リーとジェイソン・ステイサムでしょうか。
 ジェット・リーの体術は実に見事なのですが、本作では出番が少なくなっているのが残念です。冒頭の壮絶アクションがすべて。今回は本筋に絡むことなく、一回お休みになります。
 フライパンを使った格闘と云う、どこぞのカンフー映画のパロディみたいな技も披露してくれます。ちょっと『塔の上のラプンツェル』(2010年)を思い出しました。
 序盤のミッションで活躍して、今回は故郷に帰省するので早々に姿を消してしまいます。相方のドルフ・ラングレンとの漫才が今回は無いのが残念です。次回の復帰を切に望みます。
 一方、ジェイソン・ステイサムの方は暴れまくり。ナイフのキレも冴え渡っております。ひょっとしてスタローンより見せ場の多い人なのでは。

 一応、簡単に物語の概略だけ説明すると──
 今回もブルース・ウィリスがスタローンに汚れ仕事を押しつけます。どう考えても前作で「男祭り」に参加できなかったことに対する嫌がらせのように思われる。
 任務はアルバニア山中に墜落した輸送機からデータボックスを回収する仕事。
 だが、ヴァン・ダム率いる武装グループの襲撃を受け、目当てのデータを奪われた上に、仲間を目の前で殺されてしまう。実はデータの中身は、旧ソ連軍が隠匿したプルトニウムのありかを示す地図だったのだ。
 プルトニウムを掘り出して一儲け企むヴァン・ダム一味に、スタローン消耗部隊は「男祭り」を挑んでいく。
 前回、祭りに参加しそびれたウィリスとシュワルツネッガーも、今度は乗り遅れまいと飛び入り参加。野獣チャック・ノリスも絡んで──まぁ細かいことはどうでもいいか。

 男達がバリバリ撃ちまくってお祭りする映画なので、細かいツッ込みは無粋なだけではありますが……どう考えても、そこがアメリカでは無いことに一切頓着しておりませんね(いや、アメリカ国内でも問題だろ)。
 一応、アルバニアは歴とした独立国家の筈ですが、あれだけのことをやらかしてお咎め無しと云う演出が清々しい。

 他にも気になるところと云うと、ヴァン・ダム一味が拉致して強制労働させていたアルバニアの村人達ですね。どう見ても素手でプルトニウムのインゴットを運搬させられていましたよ。
 五トンの精製したプルトニウム塊の放射線量がどの程度なのか存じませんが、健康に重大な影響を与えることくらいは容易に想像が付きます。
 スタローン達が救出し、万事めでたしな雰囲気で皆、喜んでおりましたが、あれは只では済むまい。
 B級映画だと判っていても、放射線に対するあまりの無頓着ぶりには唖然とします。さすがアメリカ人。
 何となくスタローンも、ステイサムも、ラングレンも、ちょっとシャレにならんくらい浴びちゃっているような気がしてならないのですが……。
 そんなことは気にしちゃイカンですね。

 最後にヴァン・ダムとドツキ合って顔面が青アザだらけになったスタローンに、ステイサムが一言。

 「ボクシングを習えよ」

 とことん自虐的な姿勢を貫く演出方針がお見事でした。
 さて、こうなるとシリーズ第三作が待ち遠しい。あとは誰カナー。
 ダニー・トレホ、ウェズリー・スナイプス、スティーブン・セガールあたりは是非、お願いしたいものデスが……と思ったら、既に『3』も製作発表されておりましたですね。
 うーむ。ニコラス・ケイジかぁ。


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