2013年8月17日土曜日

スター・トレック イントゥ・ダークネス (3D)

(Star Trek Into Darkness)

 J・J・エイブラムス監督による新生スタートレックの第二作です。マイケル・ジアッキーノの手でリニューアルされたお馴染みのテーマ曲に乗って〈エンタープライズ〉御一行様が帰って参りました。
 旧作のシリーズとは別宇宙の出来事です、と割り切っているので、同一人物が似たようなシチュエーションに巻き込まれても、それ自体がネタになると云う巧いやり方を採用しておりますね。
 クリス・パインやザカリー・クイントとは別に、ウィリアム・シャトナーやレナード・ニモイがどこかにいるので、前作のように新旧スポックの対面というトレッキーには楽しい場面もあります。
 本作でもチラリと老スポック(ニモイ)が若スポック(クイント)に助言を与える場面があったりします。残念ながらシャトナーまでは登場いたしませんでした(そんなに続々とオリジナル宇宙からやって来たらギャグですしね)。
 基本的にこのシリーズは、若き日のカークやスポックをもう一度描き直そうと云うものですから、年寄りの出番はあまりない方がいいか。

 時代が遡って、青年カークが宇宙艦隊に入隊し、〈エンタープライズ〉の指揮を執るようになるまでが前作でした。旧TVシリーズでは、「五年間の調査航海」に出た〈エンタープライズ〉の冒険が語られておりましたが、本作のカーク達はそこまで到達しておりません。まだまだ未熟な士官です。
 しかし似たようなことは既に任務としてこなしておるようで、某未開惑星に迫った危機を原住民にそれと悟られないように回避させてあげると云う、どこかで見たようなミッションが冒頭に描かれます。このアバンタイトル部分のアクションがちょっと長めで、なかなか楽しいものでした。

 例によって例の如く、船長自らが惑星上に降りたって危険なミッションに臨んでおります。別宇宙でもカークの性格は変わりませんねえ。それにつき合わされているマッコイ(カール・アーバン)の苦労も偲ばれます。
 何故、船医が船長と一緒に危険な惑星上に上陸しているのかなどと云う基本的な疑問はここではスルーです。『スタートレック』とは、そういうものなのデス。
 原住民に追い回されて、槍がぶんぶん飛んでくるのが3Dらしい演出でした(2Dでも充分、面白いとは思いますが)。

 多少は旧シリーズから設定の変更があるようで、本シリーズでは〈エンタープライズ〉が惑星上に着陸しております。そんなことが出来たとは驚きです。しかも海底に潜んでいたりする。
 昔は特撮の手間を省く為に、「惑星上には着陸出来ない」ことになっておりましたが、今や〈エンタープライズ〉が波飛沫を立てて海中から飛び立つなどと云うダイナミックな場面も描けるようになったとは素晴らしいです(でもやっぱりちょっと違和感あるかしら)。
 タイトルが表示される前から、カークとスポックのいつもの口論が交わされるのもお約束。
 守るべきは規則か、仲間の命か。
 スポックのようにいつもいつも杓子定規なのはイカンと思いますが、カークのように気に入らない規則はいつでも破るぜな態度も如何なものか。中庸という言葉を知らない極端な二人です。

 さて、今回の敵キャラは謎の男ハリソン中尉。演じているのは、英国の俳優ベネディクト・カンバーバッチです。演技派と云われながら、『戦火の馬』(2011年)や『裏切りのサーカス』(同年)ではイマイチ印象に残らない地味な俳優さんという感じでしたが(主役じゃ無かったし)、本作では遺憾なく本領を発揮しております。いや、もうクリス・パインやザカリー・クイントが喰われてますよ。
 私は本作で初めてカンバーバッチの力量に唸りました。実はBBCのTVドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』は観ていないので……(汗)。

 カンバーバッチ演じるハリソン中尉(勿論、偽名です)は、何やら謎めいたテロを引き起こし、宇宙艦隊に単身で戦いを挑む不敵な男です。その正体については、製作中も秘密にされておりましたが、やはりトレッキーとしては気になるところでした。
 エイブラムス監督による本シリーズが、旧シリーズを語り直すような作りである以上、全くの新規キャラである筈がないだろうとは思っておりました。多分、既に旧TVシリーズに登場している敵役の中の別バージョンを演じているのでは……。
 幾つか候補はあれど、イマイチ絞り込めないまま劇場に足を運んだわけですが、ドラマが進行していくと、ヒントがポロポロ出てくるので、割と判り易かったですねえ。

 まず、テロの片棒を担がせる為に、ある人物に取引を持ちかける。娘の不治の病を治してやる代わりに、指定した場所に爆弾を仕掛けてこいと云う非情な取引ですが、ここで嘘偽り無く難病を治療する場面があります。己の血液を輸血するだけで、少女の病が治ってしまう。
 そんなことが出来る奴は……。

 続いて、艦隊司令本部が襲撃され、カークの上司であり恩人でもあるパイク提督(ブルース・グリーンウッド)が命を落とす。ああ、パイク提督、そんな簡単に亡くなるのですか。もうちょっとその……生命維持装置につながれて生き延びたりとかしないのですか。
 艦隊司令であるマーカス提督(ピーター・ウェラー)から追撃命令を受け、復讐に燃えるカークです。ここで久しぶりにピーター・ウェラーをお見かけしました。うーむ。提督、ロボコップかぁ。
 「マーカス提督」だけでは、今ひとつピンと来ませんでしたが、〈エンタープライズ〉に乗り込んできた本作のヒロインである女性科学士官キャロルが、マーカス提督の娘であると判明する。

 ははあ。「キャロル・マーカス」か。やっと判りました。
 ついでにマーカス提督がカークに授けた「特殊な光子魚雷」と云うのも実に怪しい。古参のトレッキーなら、「キャロル・マーカス」と「特殊な魚雷」で、もはや見当はついたも同然でしょう。
 そうかぁ、やっぱりこっちの宇宙にもいたんだ、優性人類は。

 しかしクリス・パインやザカリー・クイントを、ウィリアム・シャトナーやレナード・ニモイに似せようという努力は認められましたが、ベネディクト・カンバーバッチはあまりリカルド・モンタルバンに似せてはおりませんでしたねえ。
 いや、劇場版ではなく、旧TVシリーズのモンタルバン初登場のエピソードの方ならイメージは似ているのでしょうか(DVDを引っ張り出して確認したいですね)。

 まぁ、魚雷の中身については、ちょっと推理は外れてしまいました。そこまでは一緒では無かったですね。いずれ創世機械は別の機会に登場することを期待したいです。
 正体が判ってから見始めると、さすがカンバーバッチは悪のカリスマを存分に発揮しております。これが次世代の「宇宙の帝王」かぁ。
 しかも本作では、悪役にも人間味が溢れております。「仲間の為なら私はどんなことでもする。君もそうじゃないのかね」と問われて、言い返せないカーク。実際、その通りなのは、冒頭のエピソードが証明しております。

 色々とお見事な演出ではありますが、ところどころ首を傾げるような展開があるのもトレッキー向けのツッコミ待ちなのでしょうか。
 本作では、艦隊司令本部襲撃後にカンバーバッチが小型転送装置で逃亡する場面があります。スコッティ(サイモン・ペグ)が解析したところ、逃亡先は惑星クロノス。
 え。クロノス?
 クリンゴン帝国の、あのクロノス星ですか。地球から一足飛びにそんなところまで転送できちゃうのですか。そんな便利なアイテムがあったら、もう航宙艦いらないじゃないですか。
 このあたり、ドラマの進行を優先させる為か、かなり無茶な設定があったのが残念なところでした。まぁ「全く穴の開いてないスタートレックのエピソード」なんてのが希有なのですが。

 カンバーバッチの正体が判明してからは、本当のワルはマーカス提督であり、クリンゴン帝国と宇宙連邦の戦争を引き起こすことを企んでいたと、トントン拍子に明かされていくのもいつもの通りです。
 開き直ったピーター・ウェラーの演技も素晴らしいです(笑)。
 劇中では艦名が呼ばれませんでしたが、マーカス提督が対クリンゴン帝国用に密かに建造していた超弩級宇宙戦艦(ですよね)が登場します。ちょっと見た目が大きくなっていますが、こいつはやっぱり、〈エクセルシオ〉なのか……。

 マーカス提督を倒す為に、一時的にカンバーバッチと共闘するカークですが、スポックの方は老スポックからの助言が頭を離れない。
 「その男を信用してはならない。彼は君たちの最大の脅威となる男だ」
 旧作を知るトレッキーなら、百も承知のアドバイスですね。歴史改変を懸念する為、ハッキリとは云えない老スポックですが「大きな犠牲を払った」と語るあたり、うんうんと肯いてしまいます。
 ここまで来ると、やはり本作に於いても〈エンタープライズ〉を救う為に、ラストは「ああなって」しまうのかと思われましたが、シチュエーションをなぞりながらカークとスポックの立場を入れ換える演出に唸りました。そうかぁ、今度はそう来たかあ。
 エイブラムス監督、流石デス。

 クライマックスはアクションに次ぐアクションで、航宙艦が墜落しても──劇場版になるとよく墜落しますよね──更にまだ続きます。スポック対カンバーバッチの対戦カードに燃えました(さすがだ、ナーヴピンチに耐えるとはッ)。
 しかしカークを助ける為にどうするのと思っていたら、そこで序盤のカンバーバッチの血液が伏線になっている。なるほどねえ。
 とは云え、いかに優性人類の血液と云えど、放射線障害まで治してしまうと云うのが、ちょっと御都合展開なのでは……。スタートレックでそんなことを云い出すとキリが無いのは承知しておりますが。

 ラストは一年後。未熟だったカークも、紆余曲折の末に立派な艦隊士官となる。一時の感情に流され、復讐に走るようなことはもうないのです(ホントに?)。
 そして遂に任される「五年間の調査航海」。
 発進する〈エンタープライズ〉の勇姿に感無量であります。怒濤のアクションに、泣ける人情ドラマ、迫力のCG特撮。
 エイブラムス監督の新生スタートレックには今後も期待したいところデス。次は本格的にクリンゴン帝国とのエピソードも期待したいです。

 でもエイブラムス監督は、『スターウォーズ』の新シリーズの監督も務められるのですよねえ(2015年公開予定)。二足のわらじとは大したものですが、個人的にはSWよりもSTの方を優先させて戴きたいデス。

● 蛇足
 よし、とりあえず敵キャラの真の名前をネタバレする書き方はせずに済みました。
 カー  ンバーバッチさんですから。




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