2013年5月3日金曜日

図書館戦争

(LIBRARY WARS)

 有川浩による同名小説が実写映画化されました。原作のシリーズ──『図書館戦争』、『図書館内乱』、『図書館危機』、『図書館革命』──は、既にアニメ化されており、TVシリーズ(全12話)と劇場版『図書館戦争/革命のつばさ』(2012年)まで併せて四冊すべてがアニメになって完結いたしましたが、今度は実写化です。根強い人気を持っておりますね。
 アニメ作品の方を贔屓にしております私としては、笠原さんが井上麻里奈じゃないから、どーかなーと思っておりましたが、やはりスルーはできませんですね。

 本作はまた最初に戻って、第一作である『図書館戦争』を映画化しておりますので、ストーリーとしては笠原さんの入隊から、タスクフォース転属、小田原攻防戦、稲嶺司令救出までとなります。
 アニメの方で見知ったエピソードが、そのまま実在の俳優さんで演じられていく展開はなかなか興味深い。ついつい比較してしまいたくなるのは、やむを得ませんデスね。
 本作は総じてビジュアル面でのキャラクターのイメージが、先行しているアニメ版とあまり乖離していないのが見事です。

 まずは主役の笠原郁役が榮倉奈々。これは好みに拠るところがあるので、どうでしょう。私はそこそこ頑張っていると思いますが。
 ドラマの方はさっぱり存じませんので『のぼうの城』(2012年)の甲斐姫役くらいしか存じませぬが──あとは人形アニメ『コララインとボタンの魔女』(2009年)の吹替がありましたか──、時代劇より本作の方が似合っていますかね。
 ただ、榮倉奈々だとカワイイ度が高くて、あまりアウトドアな感じはしなかったのですが。その代わりに書庫の中で右往左往する場面は、実に似合っております。

 そして堂上教官役が岡田准一です。『天地明察』(2012年)では朴訥なナイスガイ役でしたが、本作では「怒れるチビ」です。引き締まった表情が、なかなか凛々しい。劇中では随所に背が低いことを強調する演出カットが入ります。
 岡田准一(身長170cm)と榮倉奈々(同じく)が並んで、あからさまに岡田准一の方が「見上げている」カットが、なかなか笑えます。ちょっとオーバーなくらい、岡田准一の方が「チビ」であると強調されていました。

 チョイ役ではありましたが、柴崎麻子役が栗山千明(特別出演)です。でも別に「特別出演」などとクレジットする必要もないように思われます。
 イメージとしてはクールに過ぎたか(でも原作者のイメージはこうらしい)。ちょっとキツい感じがします。
 個人的には、アニメ版の方が良かったかなぁ(沢城みゆきですし)。

 残りのキャラクターには、あまり拘りはありませんので、アニメ版とイメージが違ってもそれなりです。
 ライバルとなる手塚光役が福士蒼汰だったりしますが、これはこれで真面目な堅物と云う印象どおりです。どちらかと云うと、演じているのが福士蒼汰であることの方が驚きました。
 ちゃんとリーゼントにしてくれないと判らないヨ!
 仮面ライダーフォーゼとはガラリと変わっております。「図書隊全員と友達に」なったりはしないのか。

 もう一人、面白い配役では「喧嘩屋中年」玄田隊長役がありました。演じるは橋本じゅんでして、こちらはもうビジュアル面で似せようという努力を完全に放棄しているのが、逆に清々しいです。頑張ってイカツい感じを出しておりますが、アニメ版とは別人ですよね。
 しかし観ている内に、次第に頼れる隊長に見えてくるのが巧い。良化隊を向こうに回して一切、動じず、またクライマックスで嶋田久作の刑事に向かって啖呵を切る場面がいいです。

 そして渋く決めているのが稲嶺司令役の石坂浩二です。公式には、司令のイメージは児玉清であるとされておりましたが、残念ながら既にお亡くなりになっておられる。存命であれば是非、演じて戴きたかったです。
 でも児玉清は劇中では〈日野の悪夢〉で命を落とした稲嶺司令の親友であるとされ、然り気なく棚の上に「石坂浩二と児玉清のツーショット写真」が飾られているのが映るカットもあります。リスペクトの芸が細かいです。

 本作は、まず〈図書館の自由に関する宣言〉をドーンと紹介し、そして全ての始まりである〈日野の悪夢〉が描かれます。
 本好きとしては冒頭から「火炎放射器で書棚を焼き払う」場面で始まるのがショッキングです。リアルな『華氏451』(1966年)です。もうちょっと「本が焼けていくシーン」が長いと、もっと印象的だったかなぁ。
 本作では「検閲」は随所で行われておりますが、直接的に「書籍を焼く」シーンは少ないです。もっと豪快に焚書シーンがあるかと思ったのデスが──『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)並みに──、ちょっと残念。

 そこから昭和が終わり、元号が「正化」となって、異なる歴史を歩み始める平行世界の様子が短いカットの積み重ねで描かれていきます。かろうじて改変世界SFの香りが微かに漂いますが、本作はそれほどSFぽくはありません。
 「メディア良化法」が成立に向けて進行していく過程が興味深い。
 この導入部分の演出が巧いです。短く判り易くまとまっています。
 そして図書隊の設立。

 元々、図書隊は自衛隊のパロディみたいな組織でしたが、本作では防衛省や、陸上自衛隊、航空自衛隊等の全面協力の下に実写化されておりますので、リアルすぎるくらいリアルです。エキストラの皆さん、本職の自衛官ですよね。
 アニメの方もリアル路線でしたが、こうして実写化されてみると、やはりリアルなところは凄いなぁと感心せざるを得ませんです。あまりにも自衛隊そのものです。
 「図書隊は専守防衛」と云うのが、シャレに聞こえません。

 本作の監督は佐藤信介です。『GANZ』(2011年)二部作が記憶に新しいところです。おかげで基本的にラブコメ映画でありながら、戦闘シーンは気合い入れまくりです。やはり監督のコダワリでしょうか。
 図書隊と良化隊の戦闘シーンは、そこだけほぼ戦争映画。確かに『図書館戦争』。
 それだけに、戦闘時間が限られている描写が、逆にシュールでした。今まで本気で撃ち合っていたのに、制限時間を過ぎると双方共に戦闘中止。後片付けして撤収。翌朝には元どおり。一般市民は誰も気がつかない。
 寓話と割り切ってもなかなか強引です。

 そしてリアルな戦闘シーンと、お笑いのラブコメ描写が平行して存在するのが本作の魅力ですね。アニメ版では観ていて背中がかゆくなるような場面も(原作小説は、もっとかゆいですが)、実写版ではお笑いテイストの方がちょっと強いように見受けられました。
 原因は中盤で早々に「憧れの王子様」の正体をバラしてしまうからです。
 おかげで笠原さんと堂上教官の会話が、妙に笑えるものになりました。尺の都合もありまして、手塚との三角関係ぽい描写も、かなり省略されています。

 そして社会風刺的な描写もきちんと盛り込まれております。
 殺人を犯した青少年が、事件を起こす前に読んだ本が判明すると、早速に検閲対象とされる。根本的な解決には決してならないと判っているだろうに、臭いものにはフタをして、それでヨシとする良化隊の態度は現実と変わるところがありませんねえ。
 そんな良化隊に対して一歩も引くこと無く、思想と表現の自由を守る為に戦う図書隊(自衛隊)の図。さすがは防衛省全面協力作品です。
 社会の風潮に毅然とした態度で臨む稲嶺司令が素敵すぎる。

 劇中では、石坂浩二が物腰柔らかく、しかし凜として名言を口にしてくれます。
 特に「本を焼く国は、いずれ人も焼く」(ハイネの引用ですね)と、「読書は思想の一部です」と云うフレーズが好きデス。
 また「正論は正しいが、正論を武器にする奴は正しくない」と云うのも名言ですね(これは岡田准一の台詞ですが)。

 本作は、アクション、恋愛、社会風刺と三拍子揃って手堅くまとめられた作品であると思いマス。
 図書隊の戦いはこの先もまだまだ続きますが、続編の方は製作されるのでしょうか。笠原さんの恋路も始まったばかりですし。
 でも、これはこれでキレイにまとまったエンディングでしたので、続編なしでもいいか。ラストシーンの岡田准一がいい表情でした。

● 余談
 有川浩の小説はどれも高い人気でアニメ化されたり、ドラマ化されたり、映画化されたりしておりますねえ。『空飛ぶ広報室』もドラマ化されて放映中ですし、『県庁おもてなし課』も映画公開間近か。
 しかし映画化するなら、初期の『塩の街』とか『空の中』なんてのは映画化されないものでしょうか。特に『空の中』は立派な怪獣映画になると思うのデスが……(『海の底』もね)。




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