2012年8月29日水曜日

放課後ミッドナイターズ

(After School Midnighters)

 元は短編のCGアニメだった『放課後ミッドナイト』を、劇場用長編化したものが本作『放課後ミッドナイターズ』であるとか。元々の短編の方を観たこと無いのですが、たまに東映系列のシネコンで本編上映前にチラリと見かけたことはありました。
 TOHOシネマズの『紙兎ロペ』(2012年)みたいなものですかね。あそこまでユルユルではありませぬが。
 監督の竹清仁氏については、福岡出身のクリエイターであること以外、さっぱり存じませんが、これで覚えました。

 ティム・バートン監督の『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(1993年)以来、ガイコツやオバケが登場するホラーファンタジーもポピュラーになりましたね。
 本作でも人体模型と骨格標本が歌って踊ってくれます。「学校の怪談」ネタなホラーですが、サッパリ怖くありません。お子様も楽しめるアニメに仕上がっております。
 物語は題名通り「真夜中の小学校で起きる一夜の騒動」を描いたもの。
 CGのクオリティを比較すると、残念ながらディズニーやピクサー、ドリームワークスといった海外勢に及ぶべくもありませぬが、逆に低予算でチープなCGが独創的で味わい深いです。何も緻密に立体的に描けば良いというものでもありませんからね。

 都市伝説とは「現代に於ける典拠不明な噂や伝説のこと」ですが、ここ聖クレア小学校にも御多分に漏れず、「よくある学校の怪談」が伝えられていた。
 夜になると動き出す人体模型や骨格標本、夜のプールを泳ぐ謎の影、旧校舎のトイレの開かずの間に潜む何か、音楽室で独りでに鳴るピアノ。等々……。
 しかしそれらの怪談をものともしない勇者がここにいた。
 それが無敵の幼稚園児、マコちゃん、ミーコちゃん、ムツコちゃんの三人組。入学前の学校公開日、三人は改装前の理科室で好き勝手に振る舞い、備品である人体模型に散々ないたずらをブチかます。

 その夜──。
 動き出した人体模型キュンストレーキ(通称キュン様)は悪ガキ共に加えられた昼間の仕打ちに大激怒。骨格標本ゴスの制止も聞かずに復讐を企むのだった。
 怖いもの無しな幼稚園児の役が、戸松遥、雨蘭咲木子、寿美菜子。常時ハイテンション娘、タカビーなお嬢様、無口な不思議ちゃんという、実にテンプレートな三人組です。キャラクターも三等身なので、つい『gdgd妖精s(ぐだぐだフェアリーズ)』を連想してしまいます。シンプルなキャラクターデザインであることも共通していますね。
 人体模型キュン様役が山寺宏一。相棒の骨格標本ゴス役が田口浩正。
 山寺宏一については何の心配も要りませんが、相棒役の田口浩正もまた安定しております。実にナチュラルな博多弁を披露してくれます(さすが博多出身)。何故、骨格標本が博多弁で喋るのかは謎ですが(笑)。

 真夜中の小学校に悪ガキ共を呼び出す招待状を作成し、これを甦らせたホルマリン・ラビットに届けさせる。
 このホルマリン・ラビット三人組がまた凶悪で、理科室にあったホルマリン漬けのウサギの標本を甦らせたら、何故かウサギなのにシチリアン・マフィアだった。名前もイタリア人で、マイケル(屋良有作)、フレッド(大塚芳忠)、ソニー(黒田勇樹)……って、『ゴッドファーザー』(1972年)のコルレオーネ・ファミリーですな(兄弟の順番が逆ですが)。
 手下にするつもりが散々な暴行を加えられ、平身低頭の末、招待状を配達してもらうが、強面のウサギマフィアも幼稚園児には敵わなかったというのが可笑しいデス。
 これがマフィアでなくて兵士だったら、モロに小林源文なんですけどね(似たようなものか)。

 当初は怖がらせて仕返しするつもりが、サッパリ怖がらない子供達に業を煮やすキュン様だったが、ゴスが名案を思いつく。
 これほど怖いもの知らずな子供達なら、逆に利用しよう。聖クレア小学校に伝わる恐怖のミッドナイト伝説に挑戦させ、勝者に与えられる三枚のメダイを集めさせよう。
 メダイを三枚集めた勝者には、どんな願い事でも叶うという。
 明日の理科室改装工事で、廃棄処分が決定している自分達の運命をこれによって回避しようという企みです。
 「メダイ」とはキリスト教信者のお守りのようなものらしいですが、本作では見た目がまんま「金メダル」なので、勝負に勝てばもらえると云うのも納得です。学校の名前も「聖クレア小学校」ですし、キリスト教系のミッション・スクールだったのですね。

 試練も三つあると云うのがお約束的です。
 その一。夜の学校のプールに泳ぐ半魚人との水泳勝負。
 その二。デジタルルームの魔女との問答勝負。
 その三。音楽室のコンポーザー達との音楽勝負。

 半魚人役の声優は小杉十郎太。マッチョだがおネエ言葉で喋るキャラとしては、玄田哲章が一番だろうと思っておりましたが、小杉十郎太もなかなかやります。巧いです。
 また、デジタルルームと云うのが現代的です。昔はこの手の物語なら図書室でしたが、今や小学校にもコンピュータが常設されているのか。学校のコンピュータに巣くう双子のデジタル魔女──0と1らしい──を谷育子が一人二役で演じております。
 最後の試練である音楽室がまた古典的。クラシック作曲家の肖像──バッハ(茶風林)、ベートーベン(松本大)、シューベルト(郷田ほづみ)、モーツァルト(家中宏)──の四人組。厳めしい作曲家達の中で、一人だけハジけているモーツァルトというのも『アマデウス』(1984年)に忠実ですね(笑)。

 実はその他にも色々と小ネタが仕込まれています。
 キュン様は長年、理科室に居座り続けたので、実は天才的な科学知識を身につけており、標本ケースをタイムマシンに改造していた、とか。四角いガラスケース型のタイムマシン、と云うのがどこかのSF映画みたいです。小学校の理科の知識でタイムマシンが作れるものかと云うツッコミはこの際、スルーね。
 四〇年前から伝わる旧校舎トイレの開かずの間に潜む怪物「シャブリ」──声は飯塚昭三ですよ──とか。
 四〇年前のシャブリ誕生の経緯が、三人の悪ガキとキュン様のタイムマシンに原因があったというのも定番展開ですね。やはりタイムマシンを登場させたからには、原因と結果を逆転させないと(笑)。
 ホラー映画らしく、劇的な演出として「窓の外で雷が鳴る」のにも、ちゃんと理由があったりします。あまりにも頻繁に雷が鳴るので、「うるさいわねえ」と云われたりしますが、これもあの傑作SF映画へのオマージュが感じられる設定です。

 しかし本作はビジュアル面が面白い割に、脚本がちょっと弱い。ツッコミ処満載と云うか。
 本作の脚本は『海猿』シリーズ原案の小森陽一と竹清仁監督の二人の手によるものですが、総じてネタの羅列的に感じられるのが惜しかったです。観ている間はそれなりに楽しく、なかなか飽きさせない展開なのはいいのですが。
 特に三つの試練に幼稚園児達が何故、勝利できるのかという理屈が弱く感じられました。
 デジタル魔女との問答勝負だけは巧く処理されていましたが、半魚人との水泳勝負と、コンポーザー達との音楽勝負に勝てる理由がよく判りませんです。
 水泳勝負はキュン様が予めプールに仕掛けておいたメカによる援助で勝つのですが、そもそも何故そんな改造をプールに施しているのか判りませんデス(それを云えばタイムマシンもそうなんですけどね)。
 結局、様々なネタは登場した瞬間のインパクトは強いが、何故そんなものがそこにあるのか理由がよく判らない。
 コンポーザー達との音楽勝負はもっと意味不明で、完全に感性だけの勝負になっている。

 どうにも脚本的に、試練のネタだけ考えたが、幼稚園児がそれに勝利できる理由までは深く考えられていないように思えました。ちょっと御都合主義が過ぎるような気がします。もう少し伏線を巧く仕込んでおいてくれると良かったのにと思えた次第デス。
 キュン様がシャブリを何故、そんなに怖がるのかも……。自分も「学校の怪談」なのに、他の怪談ネタに振り回されているという演出なんですかね。
 また、途中でキュン様が学校の敷地外に飛んで行ってしまい、変なマネキン人形倉庫の中でドタバタするくだりは本筋とはまったく関係なく、中弛みというか蛇足ぽく感じられました。バイクを乗り回したり、空を飛んだりするアクション演出はそれなりにダイナミックなのですが。
 コメディに理屈を求めるのが野暮なんですかね。
 冒頭で紹介される「学校の怪談」ネタが全部使用され、最後には宇宙人とUFOネタまできちんと回収される展開や、三枚のメダイをすべて集めた末に叶えられる願い事が、間接的にキュン様とゴスを救うことになるオチはお見事でした。

 あと、エンドクレジットが全部アルファベット表示だったのが、読み辛かったです。一応、邦画ですし、海外展開も考えているのでしょうが、日本語で書いて戴きたかった。




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