2012年5月14日月曜日

「紙兎ロペ」

つか、夏休みラスイチってマジっすか!?

 TOHOシネマズで映画を鑑賞する機会が多いので、必然的に本編上映前に流れるショートムービー『紙兎ロぺ』は以前から存じておりました。DVDも買ってますよ(もう三巻目もリリースされている)。たまに知人宅でビデオ上映会なんぞやるときに持参すると、結構ウケたりします(笑)。
 しかしコレが、まさかの長編劇場版化ですよ。マジっすか。ホントに出来るのかと思っていたら、本当に出来上がってしまいました。
 でも上映時間八二分。ビミョーに短いところが、またロペらしいと云うか。しかしそれでも八二分もあるのに、ナニをするのか。やることあるのか。

 短編の方は大体、一本当たり二分少々のユルうぅぅいショート・コントみたいなムービーになっていますが、本作もまた劇場版だからと云って、作風をガラリと変えたりせずにそのまんまな姿勢を貫いております。
 だからいつものショートムービーが延々と続いていく感じ。一種のオムニバス形式の映画のようであります。一応、ストーリーはちゃんとありますが。
 シーン毎に切り取って観ると、なんとなく「いつものロペ」のように見える。

 この手のアニメは〈脱力系〉アニメと云うジャンルに分類されるそうな。確かに毒にも薬にもならんと云うか、箸にも棒にもかからないと云うか、オチがあるのか無いのかよく判らぬまま終わってしまうちょっとシュールな短編は、観終わった瞬間に力が抜けてしまいます。ナニも考えずにサラっと観ることが出来るので、楽と云えば楽なのですが。
 これは〈日常系〉と呼ばれるユルいアニメとはまた別の代物なんですかね。本作もこれ以上は無いと云うくらい東京下町の日常が描かれておるワケですが、萌えキャラが出てこないからダメなのかな。

 萌え萌えな可愛い女の子キャラが登場しないと〈日常系〉と呼ばれないのか。そんなルールがいつ出来た。確かに『けいおん!』とか『ひだまりスケッチ』など可愛い女の子のたわいもない会話が主体の作品は色々とあります。その名のとおりの『日常』なんてのもあるくらいで。
 さらに〈日常系〉とは似て異なる概念として〈空気系〉なんぞという分類まであると云われると、もはや年寄りには理解できませんですよ。皆、同じに見える。いや、同じなんでしょ?

 本作に登場するアキラ先輩のお姉ちゃんは萌えキャラとちょっと違うか。いや絶対ちがう。そんな。声をアテているのはAKB48の篠田麻里子なんですけど。
 と云うか、この『紙兎ロペ』のおかげで、私は篠田麻里子の名前を覚えました(年寄りには有り難いことですわ)。おかげで篠田麻里子は、誰が誰やら状態のAKB48の中で私が名前を知っている数少ないメンバーになりました(あとは前田敦子くらい)。

 篠田麻里子以外の声の配役は、ほぼすべて監督の内山勇士(役者としては「ウチヤマユウジ」と表記するらしい)が演じております。ロペもアキラ先輩も監督の一人芝居。
 このあたりはTOHOシネマズでも上映しているもうひとつのアニメ『秘密結社 鷹の爪』のフロッグマン監督と同様ですね。
 他にバカリズム升野、ピエール瀧、ふかわりょう等の名前が見受けられますが、各々の担当するキャラの出番は少ないです。ほぼ全編、出ずっぱりなのは監督一人だけ。

 物語の舞台は、そびえ立つスカイツリーを仰ぎ見る東京都墨田区あたりのどこか(だと思う)。パンフレットの解説等に拠ると、設定上は「葛飾区」であると書かれているのですが、個人的には墨田区のような気がするのです(錦糸町ぽい街並みのような気がするのですが、気の所為かなあ)。
 実在の風景写真をCGで加工して、店舗の看板や垂れ幕を架空のものに置き換えて背景にしているのですが、基本は実際の景色。さびれた商店街とか、人気の無い住宅街とか、あまりにもリアルです。もうこれだけで笑ってしまいます。
 どこかで見覚えのあるような背景のチョイスが絶妙すぎる。
 ロケ地が判れば、一度は聖地巡礼してみたいです。

 また、CG加工する際に看板の文字や、店舗の名称に小ネタを仕込みまくりで、これもまたニヤニヤ笑ってしまう原因になっております。ストーリーには一切関係ないのですが。
 例えば冒頭のシーンで、校舎の壁に張られていた横断幕が妙に気になります。「第五八回 土下座技能選手権」どんなスポーツなのだ。是非、知りたい。またそれに生徒じゃなくて「教頭先生が出場!」していると云うのも味わい深いです。
 これらはまったく本筋には関係ありません。逆にこれが巧妙な伏線で、物語の後半に教頭先生と土下座技能選手権が描かれたら、そっちの方がビックリですよ。

 本作では、紙ウサギのロペと紙リスのアキラ先輩の、夏休み最後の一日の顛末が描かれます。タイトルどおりの「夏休みラスイチ」。いや、一日もないか。
 朝の六時くらいの早朝から始まって、ラストシーンの夕暮れ時までなので、正確には半日しか無い。
 この半日の間に、夏休みの宿題の中で最後までほったらかしにしていた「自由研究」の課題──一番めんどくさいものを後回しにするという心理はよく判ります(汗)──を片付けてしまおうとするアキラ先輩と、それに付き合わされるロペの物語。
 毎度のことながらストーリーを牽引するのはテンションの高いアキラ先輩であって、後輩のロペは常に傍観者です。それにしても付き合いのいい後輩です。妙にオヤジ臭いし、本当に高校二年生か。
 それを云えばアキラ先輩がもう高三であることの方が驚きですが。

 毎日、遊びほうけて自由研究のネタもナニも思いつかないアキラ先輩が、テキトーに思いついたのが「ツチノコの捕獲」。果たして、たった一日で彼らは幻の珍獣ツチノコを見つけることが出来るのか(しかも遠出すること無く)。
 限りなく不可能に思われる自由研究課題に、美術館(多分、上野の)から宝石を盗んで逃走中の快盗デビルキャッツ団やら、下町の商店街の人達が絡んでくると云う趣向。
 さらに「お姉ちゃんのピアスを壊してしまい、修理を厳命される」とか「親戚の男の子の世話を頼まれる」とか「下町サンバ楽団のメンバーに勧誘される」だとか云うネタが挟まってきます。

 短編の方で登場している林商店のトボケたジイさんとか、首が長すぎて絶対に顔を見せてくれないキリン先生とかのお馴染みの人物もちゃんと登場してくれたり、ロペの好物「カリカリ梅」もちゃんと描かれます。旧作からちゃんと観ているファンには嬉しい限りです(やはりTOHOシネマズで映画を観るときは、余裕を持って行かないとイカンですね)。
 本来のショートムービーの趣旨であった「映画を観に行く」というシチュエーションも忘れず描かれます。観に行こうと思い立った瞬間にネタバレされてしまいますが。
 総じて『紙兎ロペ』の集大成という印象です。

 しかしなんか色々と切羽詰まっている状況の筈なのに、アキラ先輩もロペもさっぱり慌てない。緊張感のカケラも無いユルユルなストーリー展開。
 一番、切羽詰まっているのは警察に追われているブラックキャッツ団のメンバーですが、彼らも割とノンビリしておりますね。それなりにカーチェイス(!)とかしているのですが。よもや『紙兎ロペ』でカーチェイスが描かれるとは驚きでした。さすが劇場版。
 でも一番早いのはアキラ先輩のお姉ちゃんの原チャリであるというオチですけど。

 本作の魅力は日常的にどうでもよさげなことを細々と、微に入り細を穿ちながら描写してくれることでしょう。
 コンビニ弁当のワリバシとツマヨウジについて、どーでもいーような会話を繰り広げてみたり。
 個人的には、バスに乗って通り沿いの民家をカウントしていき、一〇軒目が「お前の将来の家」というネタが、一番ツボにはまりました。これは今度是非やってみたい。

 ツチノコ探索の為に幼少時の記憶を頼りに「ジョイフル・ランド」なる既に閉鎖された遊園地に出かけていくアキラ先輩とロペ。その為にわざわざ「ジョイフル・ランドのテーマ曲」まで作曲する凝りよう。しかもこの曲がまたユルい。
 これもまたどこかで観たようなさびれた廃墟と化した遊園地がリアルでした。まるで多摩●ックのようだ。

 様々なネタや登場人物がクライマックスのジョイフル・ランドに収束してくる様子は、ネタを投げっぱなしにしているいつもの短編とはひと味違いますね。それなりに伏線とかちゃんと張っているのが見事でした(でも土下座技能選手権はスルー)。
 ロペの甥っ子、ノリユキくんの才能も見事に発揮されておりましたし(あれは異能だ)。ツチノコについてもちゃんとオチが付きますし。
 ただ、ジャンボ・ウルトラボールについては、ネタが回収されないまま放置されてしまった感があるのですが、まぁ元々どれもユルユルなネタだから構わんと云えば構わんか。

 エンディングはアキラ先輩が現像に出していた使い捨てカメラ(まだあったんですねえ)の写真を流しながら、彼らの夏休みがどのようであったかを伺わせてくれます。
 それなりにきちんと完結し、思っていた以上に笑わせてくれる(爆笑と云うよりも苦笑、失笑の類ですが)、なかなか楽しいアニメでございました。




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