2013年4月1日月曜日

花咲くいろは HOME SWEET HOME

 

 同名のTVシリーズ(2011年)の劇場版です。最近は放送終了後、間が空いても劇場版を公開するパターンが増えましたね。
 本作は、石川県のとある温泉旅館で仲居として働くことになった東京育ちの女子高生の青春奮闘物語です。アニメにしては珍しい題材ですね。まるで昼ドラのような。

 劇中で舞台として描かれる温泉町、湯乃鷺温泉(ゆのさぎおんせん)は架空の温泉街ですが、実在する湯涌温泉(ゆわくおんせん)をモデルにしており、背景が実にリアルです。当然、アニメファン聖地巡礼の名所となったそうな。
 湯涌温泉の方でもTVシリーズの劇中で描かれた〈ぼんぼり祭り〉を現実にイベントとして再現するなどして、更に聖地として歩み寄っているそうです。私も一度は行ってみたいものです(でも出不精だし、他にも行ってみたい聖地がイロイロありすぎる……)。

 本作は主演声優が伊藤かな恵であるので、観に行きました。
 伊藤かな恵と云えば、個人的に『とある科学の超電磁砲』以来、お気に入りの声優であります(佐天さんですもの)。先日の『とある魔術の禁書目録/エンデュミオンの奇蹟』(2013年)にも出番があって良かったデス。『~超電磁砲』の第二期放映も必ずチェックしよう。

 しかし伊藤かな恵主演であるにも関わらず、私は本作はノーマークでした。不覚。
 『あそびにいくヨ!』も、『神のみぞ知るセカイ』も、『侵略!イカ娘』も、『迷い猫オーバーラン!』もチェックしていたのに(たまに録画に失敗して欠落はありますが)、『花咲くいろは』だけはスルーしていたとは! 恥を知れ>俺(いや、そんなに沢山録画しても消化できないヨ。もう若くないんだし……)。
 P.A.WORKS製作のアニメとしては、『Angel Beats!』(2010年)も観ていたと云うのに、『花咲くいろは』はスルー。

 かくなる上は、劇場版公開前に全二六話をイッキに視聴しよう……と考えておりましたが、諸般の事情により、コレも叶わず(年度末でさえなければ年度末でさえなければ)。
 結局、上面だけの設定を囓った程度で、劇場へ足を運ぶ羽目になりました。こんなんでストーリーが理解できるのかしら。大体、私はついこの間まで、主人公の名前が「いろはちゃん」なのであろうと思い込んでいたくらいですよ。

 しかしそんな心配も杞憂でした。
 本作はTVシリーズを知らなくても充分、楽しめるし理解できる──知っていればなお一層、理解できるのでしょうが──単体として、見事な青春映画に仕上がっておりました。これは予想以上の出来映えでした。
 実は本作は上映時間が六七分しかありません。何となく、TVシリーズのオマケっぽい劇場版なのかなぁ……などと考えておりましたが、鑑賞後は己の不明を恥じるばかりデス。
 六七分しかないとは思えぬほどに濃密なドラマで、非常に判り易く、かつ感動的でありました。
 イカン、こんな良作を今まで見逃していたのか。遡ってBDを箱買いするか。でも高価い。北米版で手を打つか。

 本作の監督は安藤真裕。この方の監督作品としては、『ストレンヂア/無皇刃譚』(2007年)を観たことがあります。時代劇アニメとしては地味な感じでしたが、なかなか面白かったです。
 一方、脚本の方は、TVシリーズの構成と脚本を担当した岡田麿里が、そのまま本作の脚本も担当しております。岡田麿里脚本の中では『とらドラ!』(2008年)が好きデス。
 本作は実写、アニメを問わず、青春映画として良く出来ており、今から今年のベスト候補に入れておこうかなーなどと考えております。いや、待て。まだ今夏公開予定の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の劇場版もあるし、決めるのは早計か。
 そう云えば、『あの花~』の脚本も岡田麿里でしたっけ。

 TVシリーズを観ていないので、始まってしばらくはナニが起こっているのか、よく判りませんでした。
 皐月ちゃんなる女の子(本田貴子)が、母親と衝突して家を飛び出していく。親の無理解に悩み、制服のまま駆けていき、そのまま月夜のプールにダイブ。のっけから青春しております。
 あれ。でも主人公の名前は確か、緒花(おはな)ちゃんでは無かったか(いろはちゃんではない)。皐月ちゃんてダレ。
 別の旅館かとも思いましたが、看板は「喜翆荘」だしな。その上、女将さんが若い……。

 しばらくしてハタと気がつきました。これは緒花ちゃんのお母さんの若い頃のエピソードなのだ。
 過去に遡って、主人公の両親の出会いが描かれているのだ。設定上、主人公の父親は早くに亡くなっている筈でしたが、エラく美形のカメラマンとして登場しております。へー。こんな経緯があったのか。
 一段落すると、時間が戻ってきて緒花ちゃん(伊藤かな恵)の登場。
 TVシリーズの後日談のようで、既に仲居の仕事もかなり覚えているようです。自分より新米の研修を任されたりしている。この新米はライバル旅館の跡取り娘で、主人公のクラスメートでもある結名ちゃん(戸松遥)だそうですが、TVシリーズを知らないので(以下略)。本作では学園生活の方は描かれません。
 新人のフリー過ぎる性格(天然か)に振り回される先輩の図が愉快です。

 TVシリーズを見ていないと、登場人物の関係は判らないかと思われましたが、特に不都合はありませんでした。
 厨房で板前修業している民子(小見川千明)とはケンカ友達ぽいし、仲居仲間の菜子(豊崎愛生)や、仲居頭の巴(能登麻美子)との関係も、観ていれば判るものばかり。直感的に理解できる関係が多いのが有り難いデス。
 少しだけ不明なのは、喜翆荘のフロント業務を担当しているバカップルっぽい二人──番頭の縁(浜田賢二)と川尻崇子(恒松あゆみ)──くらいですね。
 同様に小ネタとして、「緒花ちゃんの創作が貸本になって云々」と云うのがありますが、これもスルーして差し支えなし。TVシリーズを知っていれば色々と面白いエピソードがありそうですが、この辺はあとで補完しよう。

 本作は主人公、緒花ちゃんの青春と、その母親である皐月さんの若い頃のエピソードが、オーバーラップしながら同時進行していくという趣向になっております。後日談であると同時に、前日談でもあるという構成。
 この構成は、まるでフランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー PART.2』(1974年)のようですね。これが巧い具合にドラマの展開にハマっておりました。

 併せて、湯乃鷺温泉の自然や街並みなどの背景が実に美しく描写されているのも、見どころでしょうか。背景美術と色彩設計が良い仕事をしております。
 これはモデルになった湯涌温泉そのままの景観なのでしょうか。
 なるほど、聖地巡礼者が沢山いると云うのも肯けます。
 ローカルですが、実に味わい深い。

 しかしローカルであることに皐月さんは我慢できないようです。
 田舎の若者が都会に憧れ、このまま地方に埋もれたくはないと思うのは、よくあるパターンですね。ベタですが判り易い。「母のようになりたくない」と思いつつ、でも東京に出て何をするのかまでは考えが及んでいない。
 そんな母親の若き日々の姿が、倉庫に眠っていた古い業務日誌のページから浮かび上がってくる。ひょんなことから発見した業務日誌を読んで驚く緒花。
 古参従業員である電六さん(チョー)の鋭い観察眼と几帳面な性格のお陰ですね。

 手の届かない大人だと思っていた母にも、悩みを抱えた青春時代があったのだ。誰しも、最初から大人だったわけではない。当たり前の話ですが、自分の親もそうだったと気付くのは一種のカルチャーショックですね。
 しかもそれは皐月さんにも当てはまり、母親である女将のスイ(久保田民絵)の生き方に、後になって気付くと云う展開に繋がります。

 各世代の子供が、親の生き様を認識し、それまでと違った角度から物事を見ようとすると云う入れ子構造のドラマがお見事でした。
 また緒花ちゃんサイドのドラマにも、ちょっとした事件が描かれ、それがまたかつての自分と母の関係を想起させるという展開が巧い。しかも泣かせるしハナシですし。
 本作には随所に様々な「母と娘」の関係が描かれております。

 そしてラストシーンの、各時代の皐月さんがオーバーラップする演出もまた感動的でした。
 夢を追いかけて走り出す少女時代の皐月さん、赤ん坊を抱えて逞しく生きていくことを決意する母親の皐月さん、娘を修行に出した後のグータラなシングルライフを送りながら清掃車を追いかけてゴミ袋持って駆けていく皐月さん。それらは繋がっており、夢の延長線上に今がある。
 もう『ゴッドファーザー PART.2』の主役がアル・パチーノではなく、ロバート・デ・ニーロであったように、本作の主人公は緒花ちゃんではなくて、皐月さんではないか。各年代の皐月さんを演じた本田貴子の名演技も忘れ難いデス。

 ありがちですが、この手のアニメの劇場版はパンフレットが妙に豪華で価格も高い。一冊、千二百円とは。大判だし、装丁も美しいけど、発行部数が少量だからやむを得ぬのか。
 本作は、もっと拡大公開しても良さそうに思えるのですがねえ。
 それから入場者特典として、劇場でキャラクターのイラストが描かれた色紙を戴きました。菜子ちゃんだ。察するにメインのキャラクター五人が描かれている色紙が各々用意され、ランダムに配布されているようです。
 なこちーは豊崎愛生のキャラですし、これはこれでヨシ。




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