2012年3月22日木曜日

ストライクウィッチーズ

(STRIKE WITCHES)

 魔法少女アニメで、架空戦記ものをやろうという異種格闘のような組み合わせです。よもや二〇〇八年当時、これが劇場版化されるとは思いもしませんでした。
 あの頃、諸般の事情によりスルーしていた不明を恥じます。その後、友人から薦められてハマり、第二期放送前までにはしっかりとWebラジオも聴き、小説版も何冊かは読みました。ついでにコミックス版も。
 そして万全の体制で第二期放送(2010年)に臨んだわけです。
 コアな強者にはかなわぬとしても、それなりによく知っているつもりではあります。この作品がフィンランド大使館から公式に「把握されている」ことも存じております(笑)。

 本作はそのようなファン向けの劇場版です。もう「一見さんお断り」であることが如実に現れています。
 本作で初めて第501統合戦闘航空団に接すると云う方、悪いことは云いませんから、第一期(全十二話)と第二期(全十二話)のTVシリーズを全話視聴してから、臨みましょう。
 さもないと何がナニやら判りませんですよ。
 一応、人物が登場する度に、氏名、階級、所属部隊名等が字幕で表示されるという戦争映画的な演出がありますが(本作も戦争映画の端くれでありますし)、あまり理解する役には立たないような気がします。

 冒頭、最低限の背景設定だけはナレーションで語られますが(いつもの通り、郷田ほづみ)、あとはもうキャラクターの相関関係とか、前後の事情とかさっぱりです。観客はすべて承知の上だという前提の元にドラマが進行していきます。
 しかもこの劇場版は、来るべき第三期シリーズのプロローグと云う位置づけですから(それとも劇場版の続編が企画されているのか)。
 ぶっちゃけ、本作だけでは物語は終わりませんデス。
 もう堂々と「 つ づ く 」と開き直って終わってしまいます。劇場用作品としては甚だ不完全であると云わざるを得ません。でもそういう映画は最近、多いよね。
 ああ、続きが楽しみだなあ。

 本作は、ガリアが解放され、ロマーニャの敵も撃退され、芳佳ちゃんは魔法力を使い果たし、第501統合戦闘航空団が解散となったあとの時点から物語は始まります。時に一九四五年。
 芳佳ちゃんは再び、扶桑に帰国し、フツーの女学生となっている。

 云うまでもありませぬが、扶桑だの、ガリアだの、ロマーニャだの、あるいはカールスラントやら、ブリタニアやら、スオムス、オラーシャといった地名がどこを指すのか、御存知ですね?
 今回、新たにヘルウェティアなる地名も登場しますが、推して知るべしです。

 退役した芳佳ちゃんの元に、皇国政府からヘルウェティアへの留学辞令が下る。医学を志す芳佳は空母〈天城〉に乗艦し、軍規にうるさい服部静夏軍曹を伴って三度、欧州へと旅立つ。
 前半のドラマの展開が妙にゆっくりです。こんなにも丁寧に描いていたら、尺が足りなくなるのではと心配になるほどです(この時点では、よもやラストで投げ出すとは思いもよりませんでしたから)。
 航海中のエピソードを通じて、芳佳と静夏を対比させて描く展開は巧いです。また、欧州各地に散らばったかつての戦友達のエピソードが、気合い入れまくりの作画で描かれます。復興途上のガリアや、ロマーニャの街の様子とか、またぞろ不気味に動き始めたネウロイの様子が紹介されます。

 しかしこれは典型的な続編ですねえ。
 判らない人はスルーしても差し支えないとは云え、これではあまりにもスルーしなければならない部分が多くなりすぎるのでは。
 でも、そんな心配は杞憂か。
 劇場内には歴戦の古参兵しか見受けられませんでしたからな(そりゃもう、目付きで判る)。
 平日の最終上映ではパラパラとしか入場者はおりませんでしたが、一見したところ、どいつもこいつも一騎当千の古強者ばかり。ちなみに全員、男性デス。云うまでもないか。
 グッズ売場で万札きってアレコレ買い込み、バカでかい鞄に詰め込む猛者もいました。上には上がいるもんだ。劇場入口に設置された等身大キャラクター看板を撮影するのもお約束。
 私のような老兵は一冊千二百円のパンフレットしか買えませんでしたよ(汗)。
 そんな連中を想定しての劇場版なので、ある意味、説明不足な脚本は正しいやり方なのだと申せましょう。丁寧な説明など却って不要か。

 それに本作の見どころは明々白々。
 大空を翔るウィッチ達の勇姿。蒼穹に舞うズボン。白いズボン黒いズボン縞のズボンに赤いズボンまでも。紫の網ズボンは無いのか。それはズボンではありませんか。ダイナミックなカメラアングルによって図らずもスクリーンに大きく映るズボン。ズボンに解説など無粋。
 もちろんメカニックなミリタリー描写も手抜かり無しです(多分)。
 それに加えて、可愛い女の子達がキャッキャウフフと戯れる様子を観るだけで癒やされると云うものです。まぁ、一部公序良俗に反すると云うか、懐かしさのあまり〈天城〉の甲板上で抱き合ってゴロゴロ転がってしまう芳佳とリーネちゃんは如何なものかと思わぬでもありませんが。観ているこちらが恥ずかしい。

 ヘルウェティアを目指す芳佳との再会を喜ぶリネット&ビショップのエピソードと平行して、スオムスから転属して南下するエイラ&サーニャ、ロマーニャから北上するシャーロット&ルッキーニのエピソードも挿入しつつ、次第に元のメンバーが集まり始める。
 カールスラントとの国境地帯からネウロイが越境、侵攻を開始し、まずはバルクホルン&ハルトマン組と戦闘になる。
 やがて侵攻するネウロイの進路は、芳佳らの行程と交差して……。

 芳佳のピンチに元501統合戦闘航空団のメンバーが参集してくる構図になるのはいいのですが、芳佳ちゃんはもうウィッチではないのに、どうするつもりなのかと心配でした。
 そろそろ終盤だというのに、一向に飛べるようにならない。どうやって魔法力を回復させるつもりなのか。
 このままでは『ストライクウィッチーズ』とは呼べないのでは……。
 と、思っていたら、ものすごく唐突かつ強引な展開になだれ込んだので唖然としました。あまりにも安直かつ御都合主義なのでは。こんな展開が許されるのか。
 イージーすぎて、いっそ清々しくあるくらいです。

 強大なネウロイの戦力に、多勢に無勢。静夏は未熟で、自分は飛ぶことさえ出来ない。万事休す、となった瞬間に──。
 実に判りやすいイヤボーン式の復活。皆を助けたいという願いで思念が爆発した瞬間、これまで誰も見たことがない規模の魔法陣が出現する。
 そこへ絶妙のタイミングで駆けつける坂本少佐。
 「宮藤、これを使え!」と射出されたのは、かつての愛機〈震電〉。

 まったく説明なしにドーンと光って、再び芳佳は大空へ。
 何故、芳佳が飛べるようになったのか、子細に頓着しない戦友も素晴らしいですね。

 「守りたいんだろ?」
 「はいッ」

 もはや言葉でのコミュニケーションなど無用であるくらい通じ合っているのです(笑)。
 しかしキャラの登場頻度で云えば、坂本少佐だけ割を食らったと云うか、出番が少ない上に、少佐も飛べなくなっていることについては、救済策が無いのが辛い。
 それはまた続きのシリーズでのお楽しみですか。

 架空戦記ものとしては、戦艦大和がフロート装備でライン川を遡上するという魅力的なシチュエーションもあるにはあります。
 とりあえず大和の主砲でネウロイ母艦の装甲が一撃で破壊されるという、見せ場はあるものの、本格的な見せ場とはいえません。続編の方に期待です。

 ネウロイ侵攻は一応、食い止めはしたものの、戦いはまだまだ終わらず、いよいよ人類側の反攻が始まるような気配だけ匂わせて、終幕です。果たしてベルリン上空のネウロイの巣を一掃し、カールスラントを取り戻す日は来るのか。
 来るべき戦いに備え、ここに第501統合戦闘航空団は再々結成されるのでありました──って、あれ? 芳佳ちゃん、医学留学する筈だったのでは。それは後回しですか?
 坂本少佐も自力で飛べるようになって戴きたかったが……。
 あの高笑いが大空に響く日が一日も早く訪れんことを願って止みませぬ。

 個人的には番外編的に、他の航空団の物語をアニメ化して戴いても良かったと思いマス。北アフリカ戦線も見てみたいし、スオムスの「いらん子中隊」の物語もいつかアニメ化して戴きたいところデス。




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