2016年1月3日日曜日

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

(Star Wars : The Force Awakens)

 ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』シリーズの新たな三部作の始まりです。よもや本当に「エピソード7」と銘打たれた作品が公開されるときが来ようとは感慨深いです。「エピソード6」(1983年)から三〇年以上経過しておりますよ。
 第一作(1977年)が公開された当初は、全九作になる──あるいは全十二作だと云うハナシも遠い昔に聞いた憶えが──と云われておりましたが、後日譚的スピンオフ小説があまりに膨大になり、映画はプリクエル(前日譚)三部作で打ち止めだとルーカス自身が明言して望みは絶たれておりました。しかしここに目出度くシークエル(後日譚)三部作の開幕です。
 まったく新しい後日譚となり、今までのスピンオフ小説群は全部無かったこと(それとも別の時間線か)にして、心機一転するという潔さです。ティモシー・ザーンの小説は黒歴史か。

 それもこれも、ディズニーがルーカス・フィルムを買収してくれたお陰ですが、逆にディズニーが製作するなら全九作では終わらないのだろうなぁと云う気がしますね。
 既に幾つもの新作のスピンオフものがアニメや実写ドラマとして製作されておりますし。今度は全九作どころか、十二作でも止まらず、完結すること無くずーっと続いていくような予感がします。きっと『機動戦士ガンダム』と同じ道を歩むのかな。
 どのスピンオフが正史に属し、どのスピンオフが黒歴史入りしてしまうのか、正直ワケが判らないデス。まぁ「神話」とはそういうものなのかも。

 ディズニー製作なので、本作以降はお馴染みの二〇世紀フォックスのロゴとファンファーレが聞けなくなってしまったのは残念デスが、違和感バリバリなシンデレラ城のロゴに取って代わられるワケでも無かったですね(個人的にはシンデレラ城の上空をXウィングが飛んでいくようなロゴであっても良かったような気もしますが)。
 ルーカス・フィルムのロゴだけ表示して、いつものジョン・ウィリアムズ節全開のテーマ曲に雪崩れ込んでくれたのが懐かしいです。やはり『スター・ウォーズ』にはジョン・ウィリアムズ。このまま「エピソード9」が終わるまで、現役のまま頑張って戴きたい(でも八三歳なんですけど)。

 本作の監督は、J・J・エイブラムス。とうとう『スター・トレック』と『スター・ウォーズ』の二大SF映画を両方とも監督した人になってしまいましたね。まぁ、私はSWよりもSTの方が好きなので、早いところスタトレの新作の方に復帰して戴きたいところですが。
 ほぼルーカスの手を離れてしまった本作ですが、フタを開けてみればどこをどう切っても『スター・ウォーズ』だろう的な過去作品へのオマージュ全開な作品になりました。大きくイメージを逸脱することのない反面、あまり意外なものは登場しないので無難な仕上がりであるとも云えます。脚本も過去のシリーズに馴染みのあるローレンス・カスダンですし。

 ちょっとファンの顔色を窺いすぎているのではないか。劇中で様々な懐かしいモノやヒトが次々に登場するので、オールドファンであればニヤニヤしたり、唸ったりできるでしょう。エイブラムス監督に巧く乗せられている気がしますが、ここは素直に乗る方が楽しめます。
 でも、もっと冒険しても良かったような。新たな三部作ですし、序盤は手堅くまとめ、次作あたりから独自色を出していくつもりなのかも知れません……と思ったら、エイブラムス監督は本作限りで、次作以降はまた別監督になるとな。『LOOPER ルーパー』(2012年)のライアン・ジョンソン監督かあ。

 冒頭は、あの懐かしいテーマ曲に乗って状況説明の字幕が宇宙空間をスクロールしていきます。もう様式美ですね。
 皇帝パルパティーンを倒し、第二デススターも破壊した後、どうなってしまったのか。どうもあっさり帝国は消滅してくれなかったようです。
 銀河帝国残党が「ファースト・オーダー」を名乗って旗揚げしたそうな。かくして銀河系は共和国復興派とファースト・オーダーの争いが続くようになったと。
 相変わらずあの銀河系の政治形態はよく判りませんです。統一的な政府があるような、無いような。かつての反乱軍も「レジスタンス」と名を変えて活動しており、その陣頭指揮はレイア・オーガナ(キャリー・フィッシャー)将軍が執っている(もはや姫様ではない)。
 ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)はいきなり冒頭から失踪しております。ジェダイ最古の寺院を探索しに行ったきり、行方不明。

 本作は全体が「失踪したルーク・スカイウォーカーを探す」と云うストーリーになっていて、そこへ新たな登場人物達が絡んでくると云う趣向です。
 まずはレイア将軍の命を受けたレジスタンス随一の腕利きパイロット、ポー・ダメロン(オスカー・アイザック)が、どこぞの辺境惑星でルークの行方を知っているらしい老人(マックス・フォン・シドー)と面会しております。そこへファースト・オーダーに襲撃され、手掛かりとなる地図は脱出した只一台のドロイド、BB-8に託される。

 かつての「デススターの設計図を託されたR2-D2」と同じ展開ですね。判りやすいと云えば判りやすい。序盤の舞台となる辺境惑星ジャクーも、タトゥイーンと同じような砂漠の惑星ですし(但し太陽はひとつだけ)。
 出来るだけ「エピソード4」をなぞりたいと云うのは理解出来ますが、どうしていつもいつも悪の陣営の方が優勢で始まるのか。なんか不自然なのでは。
 ファースト・オーダーも帝国の残党である割には、またしても強大な宇宙戦艦や、更に巨大な要塞惑星を擁していたりしております。その資金や人員の出所はどこなんだよとツッコミたいが、それは野暮というものなのか。
 なかなか銀河共和国復興への道のりは険しいもののようデス。

 ここで登場するのが、今回の悪役カイロ・レン。明らかにダース・ベイダーに倣った仮面を付けた悪党です。シスの暗黒卿の系統である赤いライトセイバーを持ち、光線銃のビームすら空中で止めてしまうような強力なフォースの持ち主。
 しかし名前に「ダース」が付いていないところを見ると、完全なダークサイド堕ちしているわけではないらしい……と観る前は思っておりましたが、ほぼダークサイド陣営でしたね。
 ポーを捕らえ、自分に都合の悪い過去を知る老人をばっさり斬り捨ててしまう。

 本作で一番不満に思うのはここです。マックス・フォン・シドーが開幕早々一〇分で御退場になるなんて。曰くありげな古老として登場し、いかにも「ジェダイ関係者ですよ」的な風体をして期待させておきながら、勿体ないにも程がある。
 まぁ、過去のシリーズでもピーター・カッシングとか、クリストファー・リーが一話限りのゲスト的な扱いで登場しては御退場されていきましたが、それなりの見せ場があった上での退場なので納得も出来ます。でもこのマックス・フォン・シドーの扱いだけは納得出来ん。
 せめてカイロ・レンとライトセイバー戦を演じて戴きたかった……。

 本作ではルークが失踪しており、ジェダイ不在のままドラマが進行していきますが、ライトセイバー戦がないワケでは無い。新たな主人公レイ(デイジー・リドリー)とフィン(ジョン・ボイエガ)が、ルークのライトセイバーを受け継ぐ流れになって、カイロ・レンと戦ったりしております。
 専らフォースの才能があり、本作副題の「フォースの覚醒」を体現するのはレイの方なのですが、フィンも素人ながらライトセイバーを抜いてストームトルーパーに戦いを挑んだりします。

 実は本作で一番印象的な場面は、ミレニアムファルコン号がアクロバット飛行する場面でもなく、ハン・ソロ(ハリソン・フォード)が登場する場面でもなく、ましてやカイロ・レンがクライマックスでやらかしてしまうアレでもありません。
 ドラマの中盤で、フィンがライトセイバーを抜いて、一介の名も無きストームトルーパーと対決する場面。フィンの相手になる無名のトルーパーがカッコ良すぎる。
 ライトセイバーすら受け止める特殊な「電磁トンファー」とでも呼べるような武器を駆使して戦うトルーパー。これは下っ端のヤラレ役などではなく、さぞ名のある使い手なのだろうと思ったら、名前も呼ばれず、ヘルメットも取ってくれない。
 本作では、あのダニエル・クレイグがトルーパー役でどこかにカメオ出演しているそうですが、どの場面なのかは判りません。個人的には、この名も無き電磁トンファー遣いがダニエル・クレイグであってもらいたい……と思うのですがどうでしょう。

 本作ではトルーパーはもはやクローン兵士ではなく、個性のある個別の人間となっています。ジョン・ボイエガも脱走した元トルーパーという出自です。
 新キャラの中にはフィンやカイロ・レン以外にも、ヘルメットやらマスクを脱ぐと印象的な人がいそうなのに、なかなか皆さん素顔を拝ませてはくれません。

 と云うか、カイロ・レンはそんなにすぐマスクを脱いではイカンかったのではと思うのですがねえ。せめて「エピソード8」くらいまで引っ張ってもらいたかった。
 逆に早く素顔を見せて欲しいのが、キャプテン・ファズマとキャプテン・イサノ。後者は脇役もいいところですが(きっともう出番は無いな)、前者はジョン・ボイエガとの因縁のある役ですし、女性らしいので今後の展開が気になるところです。よもやゴミ処理区画に落とされてもう出番が無いとは云わないよね。
 それにしてもキャプテン・ファズマの外見は、あまり『スター・ウォーズ』らしからぬデザインです。まるで『宇宙空母ギャラクティカ』からサイロン兵が出張してきたかのようでした。見た目が『ギャラクティカ』で、名前の由来はドン・コスカレリ監督の『ファンタズム』(1979年)とな。

 このあたり、美術のリック・カーターも苦心しているようです。前作までと全く同じではつまらないし、かと云ってガラリと変えるわけにもイカン。トルーパーのヘルメットやら、スターデストロイヤーの外観に、ビミョーな差異を設ける匙加減が難しいのでしょう。
 しかし一方で、そんな枝葉末節に意識が行ってしまうこと自体、ちょっと問題ではないかと思わないでも無いデス。

 枝葉末節が気になるのは、大筋がどうにもドコカデミタ展開をなぞりすぎているからのように思われます。だからマイナーチェンジされた部分ばかり強調されているように感じられる。
 主人公が砂漠の惑星で見知らぬドロイドと出会い、惑星を飛び出し、悪の陣営に追われながら、レジスタンスと合流し、最後は巨大な要塞惑星に突入して、これを破壊する。
 これは王道なのか、ワンパターンなのか。
 似た展開ありきで進行させる為に、どうにも細かい部分の説明を省略しすぎと思われるのですが、世間の評判を見ていると気にしている人の方が少ないらしい。色々とツッコミたいのに。
 かなりな御都合主義展開もそこかしこに見受けられ、次作以降でこれらのフォローが行われるのか心配です。まぁ、空いている大穴も含めて愛せないようではファン失格なのかも知れませぬが。

 とりあえずオールドファンとしては、懐かしい顔触れと久しぶりに出会えたような同窓会的雰囲気を楽しむことが出来ます。
 三〇年経ってもハン・ソロは相変わらず借金踏み倒して逃げ回っていたりしますし、チューバッカとの腐れ縁もそのまま。ハンとレイアとの夫婦仲もそりが合わないようで愛し合っている。
 ミレニアムファルコン号が「ケッセル・ランを十二パーセクで飛んだ」なる伝説も健在ですし(そろそろ「エピソード4」の字幕と吹替も修正されてもいいのでは)。
 アクバー提督も老けたが御健勝、ニエン・ナンもさりげなくレジスタンスのパイロット達に紛れております。ランド・カルリシアン男爵が欠席されてますので、次作でチラ見せくらい……。

 過去シリーズからの馴染みのある人達と、新たな顔触れとのコラボが次作以降、もっと進めば楽しくなるのでしょうが、一方では過去のシリーズとの決別も進められております。
 その決意表明の最たるものがカイロ・レンがやらかすアレですが、このまま進行していくと他の馴染みのあるキャラも「エピソード8」で消えてしまうのではと、ちょっと心配デス。
 失踪していたルークもあっさり発見されて──アッサリすぎる!──エンドですが、とりあえず回収されていない伏線も色々あるし、次作も期待して待ちたいと思います。

 でも一番、知りたいのはファースト・オーダーの組織設定なんですけどね。
 どうにも最高指導者以外は若者ばかりで構成された軍隊のようで、なかなか危うそうです。特にハックス将軍(ドーナル・グリーソン)なんて若造がトルーパー軍団に陶酔しきって号令をかけている場面が笑えました。カイロ・レンよりハックス将軍にこそ更生してもらいたい。
 あとは、戦艦や要塞はデカければいいというものではないと、誰か最高指導者スノーク(またアンディ・サーキスがCGキャラの中の人に)に意見できないものか。
 必要以上に大きく投影したホログラムも、御本人が背丈に不自由しているからなのかと思われてなりません。大艦巨砲主義は最高指導者のコンプレックスの表れなのか。
 大丈夫なのかファースト・オーダー。三部作が終わるまで持ち堪えて下さい。




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