2015年10月11日日曜日

ファンタスティック・フォー

(Fantastic Four)

 マーベルコミックスの『ファンタスティック・フォー』の実写化リブート作品です。個人的にはマーベルのヒーロー達の中でも一番古くから記憶に残っております。誰ですか、今でもまだ『宇宙忍者ゴームズ』とか云ってるのは(俺か)。
 以前の作品がリブートされねばならないほど出来が悪かったかと云うと、それほど酷くは無かったと思うのですが(でも傑作と呼べるほど良くも無かったけど)。

 前二作──『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』(2005年)と『ファンタスティック・フォー/銀河の危機』(2007年)では、主演の四人組を、ヨアン・グリフィズ、ジェシカ・アルバ、クリス・エヴァンス、マイケル・チクリスが演じておりましたが、今回はぐっと若返って、マイルズ・テラー、ケイト・マーラ、マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・ベルの四人となりました。
 本作の監督はジョシュ・トランク。低予算SFスリラーの傑作『クロニクル』(2012年)に続いての二作目の監督作品になります。『クロニクル』は「超能力を持ってしまった青少年達の物語」でしたから、今回もまた手慣れた青春路線で行くことにしたのでしょうか。

 伸縮自在のゴム人間リード・リチャーズ役がマイルズ・テラーです。『ラビット・ホール』(2010年)や『ダイバージェント』(2014年)に出演しておりますが、何と申しましても『セッション』(2014年)のジャズ・ドラマー役が強烈でした。
 透明人間スーザン・ストーム役がケイト・マーラ。「ルーニー・マーラのお姉さん」と云う方が通りが良い(失礼な)。いや、キャリアは妹より長いのですけどね。『127時間』(2010年)とか、『トランセンデンス』(2014年)とかにも出演していて、それなりに憶えもあるのですが。
 原作ではこの二人、最初から恋人であり夫婦だったりしたわけですが──リブート前の作品でも恋人同士で、劇中で挙式する場面もあったりしましたが──、本作では初対面になり、それほど仲が進展するワケではありません。ゴールインまでは色々と遠そうな関係です。初々しくてよろしいデスカ。

 空飛ぶ火の玉人間ジョニー・ストーム役がマイケル・B・ジョーダン。この人はトランク監督の『クロニクル』にも出演しておりましたね。その縁で呼ばれたのでしょうか。他にも『フルートベール駅で』(2013年)や、『恋人まで1%』(2014年)などのミニシアター系作品にも出演しておりますが、かなり有望な若手であるように見受けられました。
 しかし原作ではスーザンとジョニーは姉弟でありましたが、今回はあからさまに白人と黒人で人種が異なります。それでも役名上は同姓なので姉弟。イマドキのハリウッド作品らしく人種間の配分にも配慮しなければならんのか。単に監督がマイケルを配役したいが為に設定をいじったのか。
 本作ではスーザンはコソボ難民の孤児で、黒人科学者ストーム博士(レグ・E・キャシー)の養女である設定になりました。血の繋がらない姉弟ですね。

 四人の中では一番メジャー(だと思う)なのが、岩石人間ベン・グリム役のジェイミー・ベルです。『リトル・ダンサー』(2000年)の頃から存じておりますが、最近では『崖っぷちの男』(2012年)や『スノーピアサー』(2013年)でお見かけしております。
 本作では変身前の生身のシーンが多いので、前半ではジェイミー・ベルも素顔で登場しておりますが、一旦、岩石人間になってしまったらもうCG着ぐるみ状態。
 後半ではアップになったときの「眼の演技」と、中の人としての声だけなのがちょっと残念です。しかも設定上、ベンはもう人間には戻れないので、続編が製作されたら生身のシーン抜きになってしまいます。
 今回はまだチーム結成自体が本筋となりますので、ベンの恋人となるアリシアとの出会いはお預けです(二作目からかしら)。

 リブート作品ですので、本作もまたファンタスティック・フォー最大の敵となるドクター・ドゥーム絡みのエピソードとなります。
 本作でドゥーム役となるのはトビー・ケベル。近年の出演作だけでも『戦火の馬』(2011年)、『タイタンの逆襲』(2012年)、『悪の法則』(2013年)と全部観ておりますが、印象薄いデス(汗)。とりあえず『タイタンの逆襲』のアゲノール役は憶えてますが。
 しかし一番強烈な役は『猿の惑星 : 新世紀』(2014年)の怒れる猿、コバ役でしょう。アレも猿の「中の人」でしたので、素顔では登場しませんでしたが。
 ジェイミー・ベルと同様、金属人間になる前はトビー・ケベル本人ですが、ドクター・ドゥームとなってしまうと、またしても「中の人」状態です。
 しかもリブートされた本作では、鉄仮面を被ったどころではなく、全身が金属と融合したような外観になって、斬新なデザインではありますが、ほぼCG全開キャラになってしまいます。

 上記の五人がいれば、『ファンタスティック・フォー』としては成立しますね。シルバーサーファーとか、その他のキャラは次回作以降の登場になるのでしょう。とりあえず続編の製作予定はあるそうなので楽しみに待ちたいと思いますが、リブート前と同様に二作で消えてしまわないことを祈りたいです。
 ぶっちゃけ、本作はストーリーとしては全編がヒーロー・チーム誕生の経緯説明なので、ちょっと退屈なところはあります。
 単独のヒーローではなく四人のチームなので、やはり他の作品のようにサクサク進められないのか。描くことが多くて、まとめるのに苦労している感はありますね。色々なところでドラマを端折っている感じがしました。

 原作にもある専用メカ「ファンタスティック・カー」が登場しなかったのも物足りないところでしょうか。リブート前の作品ではちゃんと登場していたのに。
 冒頭で「空飛ぶ車」に言及されたり、ベンの実家が自動車解体業者だったりする設定に伏線を感じていたのですが。

 しかも全体の流れとしては、ドクター・ドゥームの野望を挫くと同時に、チームが結成され、名前も「ファンタスティック・フォーにしよう」と云うところでエンドになりますので、リブート前の『~[超能力ユニット]』とほぼ変わらない印象になってしまいます。あまりリブートした甲斐が感じられないのが、どうにも残念。
 ちょっと暗めな青春ストーリーなところがあるのは悪くはありませぬが、ヒーロー映画としては地味な印象は否めませんデス。むしろ、割り切って『クロニクル』のように、「不慮の事故で超能力を得てしまった青少年達の悲哀」を前面に押し出してリブートするなら、その方が良かったかも知れません。

 どうにも本作は、前半と後半でドラマの焦点が変わってしまったのがマズかったのかなあと思われます。
 前半ではたっぷり時間をかけて、主人公達の人間関係を描き、少年時代からの経緯も伏線として張っておきながら、後半ではあまりそれが活かされていない気がします。特に今回は四人の中でも、リードとベンの関係が重点的に描かれていて、かなり胸熱なドラマになりそうだったのに、残念デス。
 リードとスーザンの恋愛要素を完全に廃して、リードとベンの関係に絞った描写にしたことが却って新鮮で、巧い演出だと思われたのですが。

 ところが後半になると、リードとベンの関係を描くよりも、CG特撮全開の超能力描写の方がメインになってしまう。そりゃ、ファンタスティック・フォーとしての見せ場は必要でしょうが。
 しかも今回、身体に変調を来してからは、全員が軍の施設に収容されて、リード以外は実験兵器並みの扱いを受けてしまう。そしてリード一人が脱走に成功してしまうので、ベンとの友情も破綻してしまう。
 岩石人間に変貌したことで絶望し、更に親友にも見捨てられたと勘違いして捻くれてしまうベンが哀れです。実際はリードは親友を助ける為に軍の追跡をかわしながら研究を続けていたのですが、それが判ってもらえない。
 この二人の友情の破局と和解がドラマのメインなら、かなり熱いドラマになりそうな気がしたのですが。

 まぁ、その一方でドクター・ドゥームとも戦わねばならない。ところが、こっちはリードとスーザンとドゥームの三角関係風に描こうとするものだから、どうにも咬み合いません。そもそも本作ではリードとスーザンの恋愛関係がないので、ドゥームが一人で空回りしていて、それは如何なものか。
 頑張ってリードとドゥームのライバル関係も描こうとしているのに、恋愛要素が希薄な為に、そこまでして対立しなければならないものか疑問に感じてしまいます。
 そうすると今度はジョニーが独りで浮いてしまうことになるので、主要メンバーの関係をバランス良く描けているとは云い難いのがツラいところです。
 いっそ、リードとベンだけの映画にして、圧倒的パワーのドクター・ドゥームを前に、二人が和解し、友情が修復され、協力して敵を倒す──なんて少年漫画ノリの展開であれば燃えたのですが(それでは『ファンタスティック・フォー』にならんか)。

 そもそもドクター・ドゥームが暴れはじめるのがドラマのかなり最後の部分なので、ちょっと急展開過ぎるきらいはあります。やはりペース配分を間違えたとしか云いようが無いです。
 しかも狂気に捕らわれたとは云え、「地球を破滅させる」と宣言する根拠がイマイチ希薄に感じられました。
 登場人物の関係描写と、スペクタクルな見せ場の二兎を追いすぎたのでしょうか。
 ついでに云うと、スペクタクルな戦闘の大部分が、殺風景な異世界でばかり進行するのも単調に感じられる理由の一つですね。なんか色々と新しい設定や、面白くなりそうな解釈を盛り込んでいるのに、うまく料理できていない感じがします。
 
 また、ちょっと期待していた恒例のスタン・リー御大のカメオ出演は本作では確認できませんでした。『~/銀河の危機』では台詞まで付けて出演してくれていたのに。うーむ。
 こういうのは製作会社の扱いによって変わってしまうのでしょうか。
 本作はマーベルコミックス原作ではありますが、二〇世紀フォックス製作作品なので、〈アベンジャーズ〉系列のシリーズにはならないようです。代わりに『X-MEN』シリーズと背景設定を共有しているそうな。
 でもそれなら、パトリック・スチュワートとか、ヒュー・ジャックマンあたりにチラリと登場してもらっても良かったと思うのにねえ。マーベルコミックスの映画化作品であるのに、クロスオーバー的な演出を一切廃しているのは如何なものか。

 スーパーヒーロー映画がクロスオーバーするのが当たり前になりつつあるのはマーベルの功績だと思うのですが、本作はその流れから外れております。
 いずれはスパイダーマンとか、ゴーストライダーとか、パニシャーなんてのも、何回目かのリニューアルでクロスオーバーの流れに組み込まれてしまうのでしょうか。
 個人的にはマーベルコミックスの一大イベント、『キャプテン・アメリカ/シビルウォー』に全員参加する流れで統合してもらえると嬉しいのですが、そんなことしたら出演料だけで制作費がパンクしかねませんか。

 そもそも製作会社の違いの為に、映画化作品も〈X-MEN〉系列と〈アベンジャーズ〉系列に分けられてしまって、なかなか全員集合的にはならないようです。ファンとしては、なんとか統合して戴きたいのですが。
 いや、せっかくジョニー役がマイケル・B・ジョーダンになって、クリス・エヴァンスもキャプテン・アメリカと一人二役しなくて良くなったのだから、そこは是非クロスオーバーして戴きたい。

 なんか注文付けたり文句垂れてばかりいる気がしますが、二作目で持ち直してもらいたいところではあります。
 でもホントに二作目はあるんでしょうか。二〇世紀フォックスが掌を返さないことを切に祈りたいです。




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