2015年6月17日水曜日

トゥモローランド

(Tomorrowland)

 ディズニー製作のSFアドベンチャー映画です。ディズニーランドにあるアトラクションと同名の映画は今までも、『カントリー・ベアーズ』(2002年)や、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年)、『ホーンテッドマンション』(同年)などありましたが、とうとうひとつのテーマランドの名を冠した映画が製作されるとは。
 アトラクションの名で映画を製作するなら『スペース・マウンテン』とか『スター・ツアーズ』なんてSF映画が来るのだろうと予想したときもありましたが──『キャプテンEO』の長編はもう無理か──、エリアの名前で来たか。

 ディズニーランドの未来型テーマランドには、もうひとつ「エプコット」てのもあったと思いますが、ディズニー信者でも重度のTDLリピーターでもありませんし、「トゥモローランド」との違いがよく判りませんデス。どちらも未来都市のことだと思うのですけど。
 「エプコット」はディズニー非公認のダークファンタジー映画『エスケイプ・フロム・トゥモロー』(2013年)の背景に登場しておりましたので憶えております。
 「トゥモローランド」は……その昔、メル・ギブソン主演のSF映画『マッドマックス/サンダードーム』(1985年)で、文明が退行した世界に於いて伝説となった都市の名前が「トゥモローランド」でしたね(そう云えば『マッドマックス』もリメイクされましたが、さすがにトゥモローランドへの言及は無かったデスね)。
 クライブ・オーウェン主演のSF映画『トゥモロー・ワールド』(2006年)とは無関係。

 本作の監督はブラッド・バード。ピクサー製作のCGアニメ『Mr.インクレディブル』(2004年)と『レミーのおいしいレストラン』(2007年)の監督ですね。実写作品だと、トム・クルーズ主演の『ミッション : インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011年)があります。
 個人的には『アイアン・ジャイアント』(1999年)のときから、この人の監督作品は無条件に信じて良いと考えております。本作もまたその期待を裏切るものではありませんでした。

 主演はジョージ・クルーニーとブリット・ロバートソン。ヒュー・ローリーとラフィー・キャシディ、ティム・マッグロウといった方々が共演しております。
 ジョージ・クルーニーは未来に幻滅し、ひねくれた不良中年な発明家を演じております。
 ブリット・ロバートソンは、ジョージとは対照的にポジティブな未来を信じる明るく元気な少女です。あまり他の出演作を存じませぬのですが、ホラー映画『スクリーム4 : ネクスト・ジェネレーション』(2011年)で真っ先に殺されてしまう犠牲者の役でしたと云われましても(思い出せないなぁ)。
 ポジティブな少女とネガティブなオヤジの冒険行が地球の未来を救う、と云うのが本作の骨子であります。まぁ、ディズニー製作の実写SF映画ですし、そんなに悲観的な鬱展開になる筈もありませんよね。

 鬱展開になる心配は無いにしても、ディズニーのSFはタマに『ブラックホール』(1979年)なんてスカタンSFに転落する可能性があるので注意が必要です。いや、そんなに昔の作品を引き合いに出さずとも、近年でも『トロン : レガシー』(2010年)があるか。『ジョン・カーター』(2012年)もなぁ……。
 ともあれ、本作はブラッド・バードが監督を務めているので、その方面の心配も無用ですね。

 音楽はマイケル・ジアッチーノ。ブラッド・バード監督とは『ミッション : インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で組んでますね。他にも、J.J.エイブラムス版の『スター・トレック』シリーズやら、ウォシャウスキー姉弟の『ジュピター』(2015年)でも音楽を担当しておりました。
 最近の話題のアクション映画やらSF映画ではマイケル・ジアッチーノの名前をよく見かけるようになってきました。

 冒頭からディズニーのロゴが、なんか未来ぽいシンデレラ城なデザインになっていたので笑いました。今後もSF映画だけは、このロゴで通して戴きたいものデス。
 さて、まずはジョージ・クルーニーが語り手となって始まります。「これは未来にまつわる物語だ」と前置きしておきながら、そもそもの始めである「一九六四年のニューヨーク万博」にまで遡る。
 地球を模した「ユニスフィア」のモニュメントは特徴的ですね。

 当時、ジョージ・クルーニーも未来を信じる紅顔の美少年であったと云うのが笑えます。万博会場で開催されている発明コンテストに出品しようと、自作の「ジェットパック」を持ち込んでくる。昔のSFにはよくありましたねえ。
 思わずジョー・ジョンストン監督の『ロケッティア』(1991年)なんてのを思い出してしまいました。今でも、『スターウォーズ』でボバ・フェットが使用していたりしますし、SFの共用財産的アイテムですね。
 「待っていても誰も作ってくれそうに無いから自分で作りました」と云う口上が少年らしくて実にポジティブです(但し、あまり巧く動作しないのは御愛敬)。

 発明コンテストの審査員らしい男が、ヒュー・ローリー。TVドラマ『Dr.HOUSE』では主役のハウス医師を演じているのが一番有名でしょうか。
 案の定、自作のジェットパックはコンテストへの出品を認められず門前払いとなるのですが、そこで不思議な少女アテナ(ラフィー・キャシディ)と知り合い、謎めいたバッジを手渡される。
 ラフィー・キャシディちゃんは、今まで『ダーク・シャドウ』(2012年)や『スノーホワイト』(同年)では主人公の少女時代を演じていており、あまり出番の多い役だったとは云い難いですが、本作では準主役な扱いです。

 アルファベットの “T” をデザイン化した不思議なバッジに導かれ、少年は万博会場からいずことも知れぬ異世界へと転送され、壮大な未来都市を訪れる。その都市こそがトゥモローランド。
 もう底抜けに明るい、巨大な摩天楼が林立するビジョンが美しいです。昔のSFにはよく見かけた設定でしたが、それを全力で映像化してくれるブラッド・バード監督のセンスが素晴らしいデスね。
 明るく清潔で塵一つ無いクリーンな未来都市と云うものを久しぶりにスクリーンに見た気がいたします。SFは『2001年宇宙の旅』(1968年)の頃までは、こういうイメージが優勢でしたが、いつの間にやら「ゴミゴミして薄汚れている方がリアルである」なんて風潮になってしまいましたねえ。やはりリドリー・スコット監督の『エイリアン』(1979年)あたりからでしょうか。

 少年の冒険行が一段落したところで、冒頭の語りに戻ってきて、今度はブリット・ロバートソンの視点から事態が語られます。
 時代は下って二一世紀の現代。宇宙旅行を夢見る少女に突きつけられる現実は厳しい。六〇年代に語られていた明るい未来はどこへやら。いつの間にか未来はネガティブな事ばかりになっている。人口問題、核戦争、環境汚染等々。人類の行く末はお先真っ暗で、もはや滅亡しかあり得ない。
 宇宙開発計画も打ち切られ、NASAはロケット発射台を取り壊そうとしている。
 何故、未来はこんなにも望みの無いものになってしまったのか。

 本作は、未来のビジョンが暗くなっていった理由を解き明かす物語でもあります。
 ネガティブな事柄を並べられても、「それでも私は諦めない!」と頑張る少女の元に、不思議なバッジが届けられる。どこかで見たような “T” をデザイン化したバッジに触れた瞬間、少女の前に壮大な未来都市が現れる。
 実体の無い幻覚ではありますが、自分が夢見たビジョンがそこにある。何とかしてその都市に至る道を探し求めるブリット・ロバートソンの前に、昔と全く変わらない容姿の少女アテナが現れる。

 ラフィー・キャシディの容姿に変化が無いのは、彼女が精巧なアンドロイドだからで、SFには定番の設定ですね。しかし、とうとうディズニー製作のSFに「美少女型アンドロイド」が登場するようになったかと思うと、時代の流れを感じます。そうか、やっと奴等も「萌え」を理解できるようになったのか。
 謎めいたバッジを巡って、それを狙う悪党達も現れ、なし崩しにトラブルに巻き込まれていくブリット・ロバートソン。どうやら敵もアンドロイドであるらしい。
 登場するレトロフューチャーなSFガジェットが実に多彩で、イカニモなものばかりであるのが楽しいです。SF者には解説不要な小道具ばかり。

 ワケの判らないブリットが逃避行の末に連れて行かれた先が、ジョージ・クルーニーが隠遁している農場。かつての未来を信じていた紅顔の美少年が、どうしてこうなった。人嫌いになり、世捨て人な暮らしを続けているジョージです。 
 どうやらトゥモローランドから拒絶されてしまい、現実世界に追放されて世をすねたオヤジになってしまったというのが察せられます。それでも発明を止めることなく、うらぶれた農家の中には、得体の知れない科学ガジェットがゴロゴロしているあたりに、未来を諦めきれていないのも伺える。
 始めは追い出されそうになるブリットですが、持ち前の粘り強さにジョージの方が根負けしてしまう。そして追ってくるアンドロイド軍団を振り切り、トゥモローランド行きを決意するジョージ。

 二〇世紀中盤までの万国博覧会会場は、トゥモローランドと密接な関係があるらしく、一九〇〇年のパリ万博で作られたエッフェル塔にも秘密が隠されていたと云うのが楽しいデス。
 実は異世界に通じる扉を見つけたのは、ジュール・ヴェルヌ、トーマス・エジソン、ニコラ・テスラ、ギュスターヴ・エッフェルの四人組であったと云う、伝奇SFめいた設定も紹介されます。この四人こそがトゥモローランドの開祖であるとな。
 まぁ、ニコラ・テスラの名前を出せば、大抵の怪しげな設定でも信憑性が増しますからね(笑)。
 そして、エッフェル塔の地下には巨大なロケットが隠されており、それはトゥモローランドへ至る最後の手段なのだった──と云うワケで、もう空想科学的なノリが炸裂しまくりの展開です。

 本作では、パリ万博とニューヨーク万博についてがクローズアップされますが、日本人としては一九七〇年の大阪万博にも触れて戴きたかったデス。あそこには、エッフェル塔や、ユニスフィアに負けないモニュメントがあるじゃないデスか。
 是非、太陽の塔にも何か秘密がある──ような展開でお願いしたかった。当然、それは変型する巨大ロボットでなければならんでしょうが(目からビームもね)。

 そして、総督となってトゥモローランドを支配しているヒュー・ローリーと対決するわけですが、あまり暴力的な描写にはならないのがディズニー的ですね。それでも結構、アクションも激しく、大爆発もド迫力です。
 生涯、改良を重ねてきたであろうジェットパックで颯爽と空を飛ぶジョージがカッコいい。
 そして明かされる暗黒未来到来の真相。
 そもそもトゥモローランドの未来予測マシンが人類滅亡を予言してしまったのが始まりだったのですが、滅亡する理由が「そう予言されたから」と云うあたりで因果関係が逆転しております。ネガティブな未来は、それを信じた所為で到来するのだ。

 劇中では、比喩としてネイティブアメリカンの民話に登場する「人の心に住まう良いオオカミと悪いオオカミ」についても触れられます。心の中で、良いオオカミと悪いオオカミが戦えば、勝つのはどちらか。
 答えは「あなたがエサをあげた方」である。
 ポジティブ思考こそが人類を救うのであると云う理屈が素晴らしく、夢を見る人、未来を諦めない人、良いオオカミにエサを与えてくれる人が多ければ多いほど、滅亡は回避され、未来は輝かしいトゥモローランドへと繋がっていくのだと云うビジョンが感動的に語られていきます。
 もしあなたの元にも「あのバッジ」が届いたなら──。
 ここまで清く正しく美しい未来が肯定的に語られるSFと云うのも珍しいですね。観終わると清々しい気分になれるでしょう。ひねたSF者の抱く暗黒ビジョンもほどほどに、と云うことデスか。




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