2014年12月31日水曜日

ベイマックス

(Big Hero 6)

 ディズニー制作の3DCGアニメ映画ですが、マーベル・コミッコスに原作があるアメコミの映画化作品のひとつでもあります。ディズニーがアメコミ原作のアニメ映画を制作するのが奇妙でありますが、ディズニーはマーベル・エンタテイメントを買収したので権利的には問題ないのか。
 最近のディズニーはピクサーも買うし、ルーカス・フィルムも買うし、怖いものなしですね。

 ディズニー作品ではありますが、ピクサー路線寄りの作風に加えて、題材がマーベル・コミックスなので、あまりディズニーらしさは感じられませんでした。これは偏見か。
 原題が示すとおり、本作はマーベルの〈ビッグ・ヒーロー・シックス〉なるスーパーヒーロー・チームの活躍を描いておりまして、シリーズ化も可能なようになっております。まずは、その第一話としてチームが結成されるまで。ウケればこの先も続くのでしょうか。
 実はオリジナルのメンバーには、「シルバーサムライ」もおりまして、X-MENとのコラボも可能になっているのに、版権の都合上、削られてしまったとか。何とも残念。
 まぁ、『ウルヴァリン : SAMURAI 』(2013年)に登場したシルバーサムライとは世界観がまるで違いますから。
 でもその気になればヒュー・ジャックマンやパトリック・スチュワートをCGアニメにしてベイマックスと共演させることも出来たのか(ちょっと興味深い)。

 日本での宣伝を見る限り、本作はスーパーヒーローものとか、アメコミの映画化作品であることよりも、「少年とロボットの心温まるストーリー」として紹介されておりますね。確かに本作にはそういった側面もあるのですが、ハートウォーミング一辺倒ではなく、ミステリアスな展開に、スペクタクルなアクション・シーンも満載ですので、感動ストーリーを期待すると、ちょっと肩透かしを食らうかも知れません。と云うか、マーベルのマの字にも言及しないのは如何なものか。
 本来ならばヒロやベイマックスは、スパイダーマンやキャプテン・アメリカと同じ世界の住人の筈ですよ。でも『ビッグ・ヒーロー・シックス』はマーベル・コミックスの中ではマイナーな作品ですから、あまりメジャー処と比較するのも可哀想かしら。
 ベイマックスがアベンジャーズのメンバーになる日は……きっと来ないね。

 まぁ、アニメ化に際しては大胆に設定変更されておりますし、単体で完結しておりますので、これはこれでそっとしておき、妙なクロスオーバー企画は封印しておくのがよろしいのでしょう。
 でもこっそりとマーベル・コミックスの映画化作品に共通する「スタン・リーのカメオ出演」を忍び込ませているあたり、知っている人が観れば笑える仕掛けは施されております。アニメ化されてもちゃんとスタン・リーだと判るキャラクター・デザインが素敵デス。
 本作に於いて、スタン・リーはヒーロー・チームの一人フレッドの父親として登場します。当初は写真や肖像だけの絵として顔見せするだけかと思われましたが、エンドクレジット後のオマケのシーンでちゃんと登場してくれます(このオマケ・シーンもマーベル映画のパターンを踏襲しておりますねえ)。
 あの「パンツは前後裏表にして四日はく」を家訓にしている大富豪の親父さんです。声の出演もスタン・リー御本人でありました(笑)。

 ディズニー作品ではありますが、原作がマイナーだからか、あまり有名処の俳優さんは起用されているようには見受けられません。ジェームズ・クロムウェルが大学の教授役で登場しているのが一番有名でしょうか。
 アラン・テュディックが『シュガー・ラッシュ』(2012年)のキャンディ大王役、『アナと雪の女王』(2013年)のウェーゼルトン公爵役と続けて三年連続でディズニー・アニメに出演しておられますが、SF者ならばこの方はTVドラマ『ファイヤーフライ/宇宙大戦争』のウォッシュ役で御存知でしょう(他はよく存じませんデス)。

 原作はモロに日本を舞台にしたコミックスですが、映画化に際してサンフランソウキョウなる架空の街を背景にするよう変更されております。でも、誰がどう見てもサンフランシスコと東京を合体させたネーミングですね。判り易い。
 背景として見る限りでは「坂の多い東京」といった赴きで、サンフランシスコぽいところもありますが、随所に有楽町、新橋、新宿のような街並みが見て取れます。スタッフのロケの成果が遺憾なく発揮されているのを感じます。一部、東京と云うよりは大阪──ぶっちゃけ道頓堀だろ──のような場面もありますが、日本へのリスペクトが随所に感じられてなかなか楽しい出来映えです。
 ベイマックスの顔のデザインからして、神社の鰐口と云うか、鈴をデザイン化したものですし。目も丸くなってユーモラスかつ温和な表情になりました(原作の方では戦闘ロボ丸出しな三白眼なんですけどね)。

 それにしても、制作スタッフの日本へのリスペクトは半端ないです。半ばサンフランシスコなので米国的な表現も入っているからでしょうが、過去のピクサー作品──『カーズ2』(2011年)とか──にあったような、奇妙な日本描写は随分と軽減されております(まったく無いわけではないのが御愛敬ですが)。
 背景だけでなく、ストーリーやキャラクターの設定にもジャパニメーションへのリスペクトが感じられます。「少年の元にロボットがやって来る」とか、「ベイマッマスがずんぐりした癒やし系キャラ」であるあたり、『ドラえもん』と『となりのトトロ』を足して二で割っているような感じです。
 やはりベイマックスがトトロぽいのは、製作総指揮がジョン・ラセターだからでしょうか(笑)。
 まぁ、「少年がロボットと友達になる」なんてのは、『ドラえもん』によらず日本の漫画やアニメにはよくあるパターンですけどね。

 原作と異なり、最初はベイマックスは風船のようなフワフワの、如何にも柔らかそうなボディをしております。細身の骨格が本体で、八割以上は空気を取り込んで膨らませているソフトなロボットです。CGによる質感の表現もお見事でした。
 元々、少年の兄がケア・ロボットとして設計したので「人に優しい柔らかボディ」なのも当然ですが、ローティーンの少年がそれに満足する筈も無い。このあたり、「ロボット」と云うキーワードで人が何を連想するかが異なるのが興味深いです。
 やはり少年の理想は「強く」、「カッコいい」ロボなのか。兄貴の作った「精密」で「賢い」ロボには不満があるのはよく判ります(技術者としてはこちらが優先なのでしょうが)。

 アップグレードと称して、次第にスーパーロボット系への道を歩み始めるのが愉快でした。
 空手の動作を憶えさせ、外部装甲を追加し、更にジェット装備で空も飛ぶようになります。ロケットパンチまで装備するのが王道すぎる(笑)。
 段階的に進化していく様子が、無理なくストーリーに組み込まれています。
 他にも、「少年がロボットと共に空を飛ぶ図」があるのもロボット・アニメの定番ですねえ。ちょっと『ジャイアントロボ』あたりも想起します。
 実はクライマックスの展開も『ジャイアントロボ』ぽいのですが、そんなこと云う奴はオールドファンだけでしょうか。SF者ならば「ロボットが人命を優先し、命令に背く」展開はアシモフの諸作でもお馴染みですよね。

 製作者である兄タダシがお亡くなりになってから、ベイマックスは主人公である弟ヒロの元にやって来るのですが、そうなるまでに割と尺を使って兄弟同士の絆や家族構成、タダシの大学の研究室のメンバー──後に〈ビッグ・ヒーロー・シックス〉を結成する仲間──が紹介されていく過程でも、ちゃんと伏線を張っています。
 各メンバーが持つ特殊能力が既に自分達の研究のテーマとして判り易く紹介されていく場面がなかなか面白いデス。研究室メンバーの個性的な変人ぶりも楽しい。
 一応、原作に則った愛称で呼ばれていますが、日本人からすると「ワサビ」とか「ゴーゴー」なんて名前は、やっぱり奇妙ですねえ(笑)。

 ついでに六人のメンバーの中で一番マニアックでアバウトなフレッドの実家が、実は大金持ちだったと云うのも、この手のストーリーにはお約束でしょうか。
 スーパーヒーローの活動にリアリティを持たせるには、自分が大富豪であるか、メンバーに大富豪がいればいいと云うのは、よくあるパターンですね。バットマンやアイアンマンのように。
 また大富豪の屋敷には超人的万能執事が一人いると云うのも、いつの頃からかお約束すぎる設定になっていますね。本作に登場するヒースクリフもまた、沈着冷静な執事であり、ヒーロー・チームが装備を調えていく過程で、実験台まで務めながら物事に動じない態度を貫いております。
 でも本作には執事は登場すれども、萌えメイドは登場しません。残念(このあたりに若干のリサーチ不足を感じますぞ)。

 そして天才少年ヒロが兄タダシと同じ大学に入る為の課題として作り出した小型のロボット──通称「マイクロボット」──も凄い。本作に登場する様々な発明品の中でも、一、二を争う代物でしょう(個人的には物質を転送するトランスポート・ゲートのビジュアルも気に入っておりますが)。
 マイクロボットは、人の思念でコントロールできる微少なユニットが集合して、任意の形を形成すると云う、ブロック玩具の発展形のようなロボット。
 劇中では悪党の手に奪われ、大量生産されてとんでもない騒ぎを引き起こすわけですが、このマイクロボットを巡る顛末が兄の死の真相究明や、謎の悪党の目的にも繋がっていく流れにもなっています。
 もう中盤以降は心温まるほのぼのストーリーなんぞどこへやら──最初からそんなものは無かったのでは──、ミステリアスかつアクション重視の展開に雪崩れ込んでいきます。
 研究室のメンバーにとってもタダシは友人であったので、弟ヒロを助けて謎の悪党を追いかけていきます。悪党が歌舞伎の隈取りをデザイン化したマスクで正体を隠しているのが日本的か(ガイジンには印象的なのね)。

 兄の仇討ちを優先するあまり、ケア・ロボットに過剰な殺傷能力を付与し、あまつさえ兄がベイマックスに与えた人命尊重のプログラムまで抜き取ってしまうヒロの行為によって、一度だけ本当に戦闘ロボ──と云うか殺人ロボ──になってしまうベイマックスの姿は怖かったです。
 友達扱いしていても、土壇場で道具にしてしまってはイカンですね。「兄が望んでいたのは人殺しではない」と諭され、そのおかげでラストでは自分も助かることになるのですが、過ちに気付いた少年の成長や兄弟の絆もしっかり描かれているストーリーでした。

 本作が今年(2015年・第87回)のアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされているのも、見た目のCGの出来映えだけでなく、脚本的にも優れているからだと伺えます。まぁ、ジョン・ラセターが制作に加わっていれば、品質は保証されておりますものね。
 余談ですが、アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた他の作品には、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』(2013年)もありまして、日本人としてはこちらも応援したいところですが、個人的にはディーン・デュボア監督の『ヒックとドラゴン2』(2014年)に受賞して戴きたい(さすがに受賞すれば日本でも劇場公開されるでしょうからね)。

 そして事件解決が〈ビッグ・ヒーロー・シックス〉の初仕事となる。以後、彼らはサンフランソウキョウの平和を守り、人々を助けるスーパーヒーロー・チームとなるのだった──と云うエンディングですが、実は本作の題名は、このラストシーンに表示される演出になっています。
 人々が僕らを何と呼んでいるかって? そしてドン、と題名が表示されてエンドクレジットに雪崩れ込むのですが、日本語吹替版ではここを邦題の『ベイマックス』と表示してしまうので、ちょっと意味不明な演出になってしまいました。
 CGアニメですから、各国語版の必要に応じて場面の差し替えができるのはいいのでしょうが、ここは原題を表示しないとイカンでしょう。ここだけは日本語吹替版に難があると云わざるを得ないデス。




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