2014年5月18日日曜日

メイジーの瞳

(What Maisie Knew)

 ヘンリー・ジェイムズによる小説『メイジーの知ったこと』を現代劇に翻案したヒューマンドラマです。
 ヘンリー・ジェイムズと云えば、代表作は『ねじの回転』とか『デイジー・ミラー』ですね(日本語訳が各社から出版されております)。特に前者は古典的な怪奇幽霊譚として有名で、私も題名は聞いた憶えがあります(ちなみに恩田陸の歴史改変SF『ねじの回転』とは無関係)。
 そのヘンリー・ジェイムズが、こんな心温まるファミリー・ドラマの原作を書いていたりするのかと意外でしたが、現代劇に翻案するに当たって、かなり改変されているような気がします。「ヘンリー・ジェイムズ=ねじの回転」しか知らない偏った知識なので尚更ですが。
 映画化された『女相続人』や、『ある貴婦人の肖像』もスルーしております(汗)。
 一応、『メイジーの知ったこと』も日本語訳が出版されているようですが(1982年・あぽろん社刊)、未読であります(そもそも今でも入手可能なのかしら)。

 本作の監督は、スコット・マクギーとデヴィッド・シーゲル。リチャード・ギア主演の『綴り字のシーズン』(2005年)や、ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演の『ハーフ・デイズ』(2009年)の監督コンビですが、どちらも未見ですので、これが初めてになります(『ハーフ・デイズ』は評判が良かったので観たかったのですが……)。
 まぁ、何を云うにしましても、本作の主演であるメイジー役のオナタ・アプリールちゃん(六歳)が超絶に可愛いデス。もうこれに尽きる。
 両親の離婚によって翻弄される薄幸の美少女です。あまり不幸そうには見えないものの、フツーの六歳児はこんな目には遭わないだろう的な環境の変遷を体験します。

 大人の俳優の方は、ジュリアン・ムーア、スティーヴ・クーガン、ジョアンナ・ヴァンダーハム、アレクサンダー・スカルスガルドといった方達。
 両親役がジュリアン・ムーアとスティーヴ・クーガン。
 ジュリアン・ムーアは『キッズ・オールライト』(2010年)の同性愛者の母親役や、『キャリー』(2013年)の狂信的母親役が印象的でしたが、本作でもエキセントリックな母親役を熱演しております。
 スティーヴ・クーガンはアクション・コメディ系の作品に出演しているところしか観たことないので──『アザー・ガイズ/俺たち踊るハイパー刑事!』(2010年)とか『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(同年)とか──、本作のようなシリアスドラマに出演していると別人のようです。でも近年は『あなたを抱きしめる日まで』(2013年)にも出演していますね。

 ジョアンナ・ヴァンダーハムはTVドラマの方で売れてきた女優さんだそうで、『犯罪捜査官アナ・トラヴィス』にも出演したとか(WOWOWに加入しているのに見損ねてます。抜かったなぁ)。なかなか素敵な女優さんなので今後が楽しみです。
 そして、アレクサンダー・スカルスガルド。北欧の名優ステラン・スカルスガルドの息子です。『メランコリア』(2011年)や『バトルシップ』(2012年)よりも、本作で見る彼が一番いい顔をしておりました。もっとビッグになって戴きたい。

 メイジーの両親は夫婦喧嘩が絶えない。小さな女の子が、親同士が怒鳴り合うところを目撃すると云う図からして不憫です。
 パパのスティーヴ・クーガンは美術商。絵画の買い付けやら何やらで出張が多く、あまり家にはいないようです。在宅中は娘を可愛がっているのですが、しょっちゅうケータイに電話がかかってきてビジネスに忙しそうです。家に仕事を持ち込むのは如何なものか。
 ママのジュリアン・ムーアはロック歌手。アーティストだからか、あまり細かい家事は苦手なようで、万事アバウト。こちらも娘を愛しているのは判りますが、タバコも吸うし酒も飲む。バンドのメンバーが家に押しかけてきては、大音響でライブのビデオを観たりしております。小さな子供への配慮がまったく感じられません。
 最初から水と油な夫婦です。メイジーの視点からなので細かい事情は判りませんが、夫婦仲が冷め切っていることだけは理解できる。
 二人が怒鳴り合っている間は独りで遊んだりして、不満を露わにしないところが尚更に不憫です。

 したがってベビーシッターは必須の存在でしょう。ジョアンナ・ヴァンダーハムは優しいお姉さんですが、常に家にいてくれるわけではない。夫婦喧嘩が子供に悪影響であると判っていても、雇い主に対しては強くものが言えないのが辛いところか。
 しかもお姉さんはパパと何やら親密な様子であるらしい。二人ともメイジーが子供だから何も判らないと思っているようですが、色々と察しているようです。

 あるとき遂に破局が訪れる。パパが家を出て夫婦の別居が始まり、離婚訴訟が始まります。
 ママの方はアーティスト気質で感情的なところがあるので、そのあたりを冷静なパパに突かれて子供の親権の取得争いでは劣勢に立たされているらしい。イラだって弁護士を怒鳴りつけておりますが、それで事態が好転するわけではない。
 結局、どちらの親も単独親権は取得できず、メイジーは一〇日間ずつ、パパの家とママの家を往復する二重生活を強いられる。
 どちらの親も好きだからメイジーは一言も文句を云いませんが、そんな生活は楽しいのか。

 パパの新居であるマンションに行ってみると、シッターのお姉さんジョアンナが出迎えてくれる。パパは再婚し、自分にも馴染み深いシッターのお姉さんが新しいママになる、と云うのはまぁ、そう悪いハナシではないか。
 しかしのっけからパパは海外出張に出かけてしまい、新居に幼い娘と継母だけが取り残されると云うのは如何なものか。
 どうもパパは再婚したことで安心してしまい、ビジネスに専心するつもりのようです。新しい家具や玩具や衣服を買い与えたところで、それではイカンだろうと思われるのですが……。

 一〇日経つと今度はママの家へ。元々の家だからこちらの方が馴染み深いが、どうにもアバウトなママとの生活は心配です。
 案の定、学校への送り迎えが満足に出来ないようで、下校時刻をとっくに過ぎてもママが迎えに来ない事態が出来します。物語の舞台がNYであるので、やはり都会の中の小学校では父兄の付き添いがないと登下校できないようです。
 学校の先生も困り果てたところで、アレクサンダー・スカルスガルドの登場です。いきなり現れ、ママと結婚した「メイジーの新しい継父です」と名乗ります。これは怪しすぎる。

 どうやらママは自分の音楽活動を止めることが出来ず、アレクサンダーと再婚し、子育ての一部を任せたように思われます。どこでどうして知り合ったのか。
 アレクサンダーはミュージシャンではなく、深夜働くバーテンダーであるあたり、ジュリアン・ムーアとの出会いも察せられるというものでしょう。
 意外にもアレクサンダーはナイスガイであり、料理も出来るいい男でした。最初は警戒していたメイジーも次第にアレクサンダーに懐き始める。
 しかし学校のクラスで「新しいパパよ」と皆に紹介するのは、紹介される側には居心地が悪いですね。しかもイマドキの小学校では離婚家庭がザラにあるらしいと云う描写も、世相を映しているようでナンともやるせない。

 元の夫婦が離婚し、双方共に再婚したことでメイジーの生活にとっては支障がなくなったようではありましたが、事はそう単純には運びません。
 まずママが見当違いの嫉妬を起こします。あまりにもアレクサンダーがメイジーと仲良くなったのが気に入らない……って、どういう了見だ。「娘に取り入ろうなんて最低ね!」などと難癖付けるのが理解できません。
 どうやらママは、自分が娘にとっての一番でないと気が済まないらしい。そんな我が侭な。

 せっかく再婚したのに、今度はアレクサンダーと口論するママの姿には、どうにも不安定なものを感じます。これでは単独親権を獲得できなかったのも当然か。
 一方、パパの方との生活が幸せかというと、それもちょっと違う感じです。一〇日間ずつ子供を引き取ると決めたのなら、娘がいる間はそちらに専念するべきだと思うのですが、ビジネスの都合はそうもいかないらしい。
 ママの方も音楽活動が盛んになり始め、一〇日間という期限とは全く関係なく、バンドがツアーに出ることになる。それを断ることの出来ないママの態度には怒りを覚えます。
 結果、パパは出張で帰ってこない、ママはバンドとツアーに出かけて帰ってこない、下校時刻を過ぎてもメイジーにお迎えが来ない。もうどっちもどっちです。

 子供は愛玩動物ではないと云うのが判っていないようで、双方共に自分の都合の良いときだけ娘を可愛がっています。これはヒドい。
 また、子供は親の都合を考えて具合が悪くなるわけでもないのに、メイジーが急な発熱を発したときでもフォローなしとは、あんまりでしょう。
 それでも文句ひとつ云わずに両親に懐くメイジーの姿には涙を禁じ得ません。
 おまけに双方とも、自分が忙しいときは相手側がメイジーの面倒を見てくれるだろうと思い込んでいるようで、もはや一〇日間ずつと云う制約があって無きが如しの状態です。

 仕方なく継母のジョアンナと継父のアレクサンダーが協力してメイジーの面倒を見始める。どちらも自分が単に利用されていただけなのだと感付き始め、次第に二人は親密になっていきます。これは傍目にもお似合いのカップルです。
 赤の他人の二人の方が子育てに熱心であると云うのが皮肉です。三人で公園に出かけていく姿は、誰がどう見ても仲の良い家族のようにしか見えません。
 それでも親権がないので、本当の親が現れたときには太刀打ちできないのが辛い。

 こんな状態が長続きする筈もなく、程なくしてどちらの再婚家庭もまた破局を迎えるのは当然でしょう。でも、再婚相手を追い出すのは勝手ですが、自分だけでは娘の面倒を見ることが出来ないことを忘れているのでは。もう、どちらの親もメイジーのことを二の次にしております。
 挙げ句、別れた筈のアレクサンダーにまた頼ることになりますが、彼の職場である深夜営業のバーに勝手に子供を置いていく親の神経が理解不能です。
 結局、メイジーはジョアンナが引き取って育てることになり、間もなくアレクサンダーが合流して、三人で仲良く暮らし始めます。最初からそうするのがベストでしたねえ。

 最後に再び、ジュリアン・ムーアが現れますが、もはやメイジーには付いて行く気はない。愛する娘から拒絶され、愕然とするジュリアン・ムーア。今頃気付いても遅いわ!
 それでもメイジーの幸せの為には何がベストなのかを判断できたのが、せめてもの救いでしょうか。ジョアンナとアレクサンダーに娘を託して去って行きます。身勝手な愛情だけではイカンとようやく思い知ったようですが後の祭りでしょう。あまり同情する余地は無いように思われます。
 ラストシーンのメイジーの姿が実に幸せそうで、ようやく家族と家を手に入れた少女の未来に幸あれと願わずにはおられませんでした。
 しかし、パパ役のスティーヴ・クーガンについてはまったく出番のないまま終わってしまいましたが、そんなに仕事が忙しいのか。もう帰って来なくていいデスね。




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