2014年5月8日木曜日

シャドウハンター

(The Mortal Instruments : City of Bones)

 カサンドラ・クレアによる同名小説の映画化作品です。原作は既に東京創元社から翻訳もされていて三部作になっておりまして、本作もまた人気が出たら続編、続々編と製作されるのでしょうか。
 原作はベストセラーとなり、当初の三部作に加えて、第二期三部作、更にまた別の三部作へと発展しているそうな(これらもそのうち翻訳されるのでしょう)。日本ではそこまで話題にはならなかったと思いますが。
 本作の原作となる第一作『骨の街』は、二〇〇七年のローカス賞長篇部門の最終候補に残ったと云うから──受賞したのはナオミ・ノヴィクの『テメレア戦記』でしたが──、SF者としてはある程度の出来は期待できるでしょうか(あまり酷い映画化で無ければ大丈夫か)。

 「シャドウハンター」シリーズは、現代NYを舞台に、ティーンエイジャーの主人公が大都会の闇に巣くう妖魔を退治していく──と云う、ダーク・ファンタジーな内容です。実にラノベ的です(と云うかラノベだろう)。「ヤング・アダルト・アーバン・ファンタジー」だそうな。
 日本でなら、まず間違いなく先にアニメになってしまいそうな(しかも深夜放送の)作品です。水樹奈々あたりが主題歌を歌って、主演を演じているところが目に浮かぶようデス。
 漫画家の池野恋が本作のコラボ・ポスターを描いておりますし──何とも『ときめきトゥナイト』ちっくなポスターでしたが──、アニメ向きですねえ。

 この手のストーリーは『ハリーポッター』シリーズや、『トワイライト』シリーズが当たったので、アメリカでも盛んに映画化されているのですね。類似の設定で云うと、『パーシー・ジャクソン』シリーズなんてのも思い浮かびます。
 実は設定だけ聞くと、ホントによくあるネタのストーリーなので(ありふれすぎて類似の作品を挙げていくとキリが無いような)、スルーしてしまおうかとも思ったのデスが……。

 だがしかし。主演がリリー・コリンズであるからには観に行かねばなりません。『白雪姫と鏡の女王』(2012年)の白雪姫も素敵でしたが、本作のリリーもまた可愛いデス。眉毛の印象的なところも変わりませんね。
 本作では、リリーのちょっとアダルトでロックなゴシック・ファッションも拝めます。可愛い娘は何を着ても可愛いのデス。

 共演はジェイミー・キャンベル・バウアー、ロバート・シーハンといった若手のイケメン俳優さん達。ジャレッド・ハリスや、ジョナサン・リース=マイヤーズ、レナ・ヘディといったベテラン&中堅陣が脇を固めております。
 監督はノルウェー出身のハラルド・ズワルト。『ピンクパンサー2』(2009年)や、 『ベスト・キッド』(2010年)の監督さんですね。久しぶりにリメイク作品でないものを監督しております。
 『ジュエルに気をつけろ!』(2001年)や、『エージェント・コーディ』(2003年)なんて監督作品もありますので、基本はアクション・コメディなエンタメ作品が得意のようです。

 さて、異世界から侵入してくる妖魔(デーモン)を狩り、人知れず世界を護るシャドウハンターの一族がいて、自分の母親がその筋では有名な凄腕ハンターだった──と云うのが序盤の展開。実にアリガチですが、定番展開をきっちり守る演出には手堅いものを感じます。
 一人娘のリリーはごくフツーの女子高生。平和な日常を満喫しておりますが、母親の方はあまり浮かない様子。娘の誕生日を目前にして「あの子にはもう話したのか」「まだ早いわ。もう少し待って頂戴」なんて会話が交わされております。
 母親が秘密を打ち明けようか否かと悩む中、既に異変は現れていて、リリーは無意識にルーンの紋章を描いたり、常人には見えないものが見え始めていたりしております。

 リリーの母を演じているのが、レナ・ヘディ。TVシリーズ『ターミネーター/サラ・コナー・クロニクル』ではサラ・コナー役でしたので、ハマり過ぎな感じもいたします(笑)。
 設定が日本のアニメやコミックから影響を受けているようにも見受けられます。まず、主人公には幼馴染みの青年(ロバート・シーハン)がいて、これがリリーに片思いな文系青年。
 その一方で、妖魔退治の現場を偶然目撃し、知り合ってしまう現役ハンターの青年(こっちがジェイミー・キャンベル・バウアー)が、ちょっとワイルドでアブない感じです。
 主人公が「朴訥で不器用な幼馴染みの青年」と「浮世離れした不思議な青年」の間で三角関係になると云う、超テッパン・ラノベ展開です。もう安心のパターンですね。

 更にジェイミーにはハンター仲間の相棒がいて、これがまたBL臭漂わせて、ジェイミーとリリーの仲に嫉妬しているようです。日本なら絶対にアニメだよなあ。
 人物相関だけでなく、背景設定にも日本のアニメの影響を感じます。
 劇中では、「シャドウハンターは特定の宗教には属さない」旨が説明されますが、それはユダヤ教やキリスト教や神道の中にも妖魔がいるからだと語られます。ユダヤ教やキリスト教と一緒に、わざわざ「神道」と断りを入れているあたりに、日本への配慮を感じるのですが気の所為でしょうか。
 アジア系のシャドウハンターと云うのもアリなのか。つい『青の祓魔師』(2012年)あたりを連想してしまいました。

 母親がいつまでも秘密を打ち明けないでいるうちに、娘の方が街中で自分の正体をバラすようなことをしでかしてしまい、長いこと母娘の所在を追っていた悪党共に目を付けられる。実は母はシャドウハンターの間では貴重な「あるアイテム」を持ち逃げしていて、ハンター内の別の一派に追われていたのだった。
 ワケも判らぬうちに荒くれ共が押しかけてきて「アレをどこに隠したッ」と狼藉を働いたりして、実に手堅い展開です。その上、悪党が連れてきた猛犬が、実は「犬では無かった」あたりにも、過去の色々な作品へのオマージュを感じずにはおられません。
 ぶっちゃけ、「犬の頭がパックリ割れて、ウネウネと触手を伸ばして振り回す」図と云うのは、なんでしょうかねえ。怖いと云うよりも、笑ってしまうのですが。

 母と離ればなれになりながらも、ミステリアスなイケメンに助けられて九死に一生を得るリリー。連れて行かれた先は、大都会のど真ん中にあるシャドウハンターの拠点だった。
 『ハリー・ポッター』以降、この手の設定もスクリーンではお馴染みですね。一般の人間にはまったく見えず、気付かれないが、摩天楼に囲まれた都会の一角に巨大な大聖堂がそびえております。通常は空間をねじ曲げているらしいです。
 ド派手にCG全開で大聖堂が姿を現すあたりが、『ハリー・ポッター』のゴシック・ホラー版といった趣です。あるいは隠れていた秘密基地がドーンと姿を現す特撮番組のノリと云うべきか。

 シャドウハンターの拠点であり、育成機関でもある大聖堂の主がジャレッド・ハリスです。ガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ/シャドウゲーム』(2011年)では宿敵モリアーティ教授を演じておりましたが、本作では至って温厚なハンターの師を演じております。
 そこで初めて開かされる母の秘密と自らの出自。更に母が隠した秘宝「聖杯」について。

 「聖杯」と云うからには、アーサー王伝説のアレかとも思いましたが、どうも違うもののようです。『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)ではないのか。
 オリジナル設定らしく、中世において十字軍の騎士に天使ラジエルが賜った不思議な杯が、本作で云うところの「聖杯」。一般の人間に常人を越える身体能力と妖魔を退治できる不思議な力を授けるアイテムで、代々のシャドウハンターはこれを使って仲間を増やしてきたのだと云う(特にハンターの血筋があるのでは無かったのか)。
 あるとき、ハンター内に聖杯を悪用しようとする者が現れ、リリーの母は聖杯と幼い自分を連れて身を隠したのだった……と云うところで、リリーに向かって「アレは君にしか見つけることは出来ない」と語られます。だがリリーの記憶は母によって封じられており、自分では思い出すことが出来ない。

 色々とお約束な設定が次から次へ現れますね。
 実は本作には、目新しいところが何一つありませんです。どれもこれも「ドコカで聞いた」設定ばかり。
 よくあるネタをあっちからもこっちからもかき集め、開き直ってアレンジしているように見受けられるのですが、不自然にはならず、それなりに整合性をもってまとめられているので、物語が破綻するようなことはありません。これはこれで見事なものです。

 このあと、NYの片隅で表向きはクラブハウスを経営している大魔導師に記憶の封印を解いてもらおうと出かけたら、都会に巣くうバンパイアの一派がちょっかい出してきたり、そこをまた乱入してきた人狼軍団に助けられたりと、色々と盛り沢山なファンタジー展開です。
 長いシリーズの設定紹介ぽいところがあるので、吸血鬼や人狼たちの深い背景設定までは踏み込みません。総じて「人間社会の中に隠れ潜むアンダーグラウンドな住民達」といった簡単な説明だけで済まされてしまいます。妖魔とは異なり、人間達とは共存しているようで、シャドウハンター達の敵ではないらしい。
 本筋の「聖杯探し」と関係あるのかと思ったら、ありませんでしたね。とあえずシャドウハンターの仲間達の中には、刀剣だけでなく、ムチの使い手がいたり、色々と変わった武器を使ったりと云う紹介の為の戦闘シーンのように思われます。

 そんなこんなでリリーが記憶を取り戻していく過程で、三角関係も進行していくのですが、恋敵が常人を越えるハンターである場合、一般人の幼馴染みロバートに勝ち目はないとも思われたのですが、作者は色々と仕掛けを施しているようです。
 ただ、その仕掛けが本作だけでは機能しておらず、明らかに続編に向けた伏線ぽいのが残念。
 例えば、バンパイアに襲われた際にロバートが咬まれたりするのですが、首筋の咬み痕まで見せておきながら、スルーされます。更に、リリーはロバートが意識を取り戻すまでの間、寝顔をスケッチするのですが、何故自分が「天使の顔」を描いてしまうのか説明できない。
 隠された設定があるようですが、本作だけでは意味不明であったりします。最初から続編ありきで制作するのは如何なものかと思うのですが。

 また、ジェイミーとの恋の行方も、すんなり成就しそうにありません。
 記憶が戻り、聖杯の行方が明らかになると同時に持ち上がる血縁関係疑惑。実は恋人は「生き別れになった自分の兄」なのではないか(似てない兄妹だなー)。
 更に追い打ちを掛けるように現れる悪党共の首領ヴァレンタイン(ジョナサン・リース=マイヤーズ)こそが、死んだと聞かされていた自分の父親だったのだあッ。
 わー。今度はそう来たかー。メロドラマに必須の血縁関係疑惑と、最大の敵が父親という熱血展開に感心してしまいました。
 サービス精神旺盛というか、臆面も無くベタなネタを繰り出す姿勢が、いっそ清々しい。

 クライマックスの一大戦闘シーンや、妖魔軍団の迫力のCG、きちんと伏線を張ってそれを回収する手際は見事なだけに、無下に否定するのもちょっと勿体ない感じです。未回収の伏線ぽい描写も、いずれ続編が制作された暁には、きちんと回収されるのでしょう。
 問題は、ホントに続編が制作されるのだろうかという点でして。過去、色々なファンタジー作品が映画化されては一作だけで中断してしまうと云う事例に事欠きませんので、それだけが心配デス。
 三角関係の決着と血縁関係疑惑は棚上げされたままですし、リリー・コリンズ主演のシリーズとして、是非とも続いて戴きたい。




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