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2014年4月12日土曜日

平成ライダー対昭和ライダー

仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊

 「お前のようなヒヨっこを、ライダーと認めるわけにはいかん!」そうだ、もっと云ってやれッ。
 大方のパパ世代が抱いているであろう感想を、藤岡弘が代弁してくれる胸のすくような台詞が痛快で、予告編の段階から「これは観に行かねば」と思っておりました(ムスメ抜きでも)。
 まぁ、うちのムスメらは平成ライダー派ですがね。イマドキの子供にしてみれば、昭和ライダーはシンプルすぎてつまらないのだそうな。ばかな。

 本作は、劇場版平成仮面ライダーシリーズ十五作記念作品だそうで、色々と十五にちなんだ設定が登場します。十五人の昭和ライダーと十五人の平成ライダーが戦うオールスターキャストなお祭り映画です。
 はて。でも「仮面ライダーJ」の頃は既に平成だったのでは……なんてツッコミはスルーです。
 「仮面ライダークウガ」以前と以降で線引きが為されているのが、一般的な解釈ですし。
 ああ、でも昭和ライダーはこれ以上増えないので、これからは平成ライダーの方がメジャーになっていくのか、なんて考えると少し寂しいですが、そもそも平成ライダーはひとつの番組中に複数のライダーが登場するのが当たり前であるので、とっくの昔に昭和ライダーは少数派であったのだ。
 本作では、平成ライダーの中では、番組名を背負った看板ライダーのみの登場となります。例外的に現在放映中の『仮面ライダー鎧武』の中から、バロン、竜玄、斬月も登場しますが。

 個人的には稲垣吾郎が変身する『仮面ライダーG』も入れてあげたいところですが、特番のライダーは例外扱いなのか。でもZXもいるんだからGも混ぜてあげて欲しい。
 稲垣吾郎を呼ぶと制作費が逼迫するので大人の事情的に無理なのでしょうか。何とか劇場版とか製作出来ないものか。あのソムリエなライダーをもう一度観たいものデス。

 本作は、オールライダーものとしては『仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー』(2009年)、『オーズ・電王・オールライダー/レッツゴー仮面ライダー』(2011年)に続く三作目と云うことになるのでしょうが、「~ feat.スーパー戦隊」と銘打たれてもいるので、『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』(2012年)、『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事/スーパーヒーロー大戦 Z』(2013年)とも繋がっているようです。
 まぁ、東映は近年、毎年のようにお祭り映画を制作しておりますので、もはやナニガナニヤラ的な企画ではあります。

 ライダー同士が対決するネタは、『~オールライダー対大ショッカー』で描かれておりましたが、今回は昭和と平成にグループ分けしてもう一度と云うストーリーなので、ちょっと二番煎じ的な印象があるのは否めません。
 しかしながら本作には、藤岡弘が出演しております。ここがポイント高いところで、近年の劇場版で仮面ライダー1号の変身前はスクリーンに登場したことがなかった。常に声だけの出演でしたが、本作では数十年ぶりに本郷猛がスクリーンに帰って参ります。
 藤岡弘の変身ポーズをまた目にすることが出来るとは、感無量です。しかも年季の入った変身ポーズの掛け声はドスが効きまくり。平成ライダーの若造共には、この迫力は出せません。
 でもうちのムスメらには「シンプルね」で片付けられてしまいました。何を云うか。

  昭和ライダーの中では藤岡弘以外にも、仮面ライダーXの神敬介役で速水亮が、仮面ライダーZXの村雨良役で菅田俊が出演しており、懐かしい限りです。皆さん、味わい深い面構えです。
 対する平成ライダーの方は、『鎧武』から佐野岳、小林豊、高杉真宙、久保田悠来が出演しておりますが、やはり佐野岳以外はチョイ役扱いです。
 扱いが大きいのは、仮面ライダーディケイドの門矢士役で井上正大、仮面ライダーファイズの乾巧役で半田健人、仮面ライダーWの左翔太郎役で桐山漣といったところでしょうか。
 仮面ライダーウィザードの操真晴人役で白石隼也も顔見せしてくれております。

 この手のお祭り映画では全員登場させると出番が分割されて印象が薄くなるので、数人をチョイスして絞り込んだドラマを展開するのが、近年の東映の方針のようで、本作で最も印象的に描かれるのは、仮面ライダーX(神敬介)と仮面ライダーファイズ(乾巧)の関係でしょうか。ちょっと意外な組み合わせです。
 どちらも歴代ライダーの中ではメカニカルなライダーですが、ファイズでなくてもカブトでも良かったような気がします。でも本作ではカブトはストロンガーと戦っております(やはりカブトムシ対決だから)。
 他にもフォーゼ対スカイライダーの空中戦や、ブラック対ジョーカーの「黒ライダー対決」なんて対戦もあり、組み合わせの妙がファンサービスになっております。

 ストーリーとしては、平成ライダーの集結要請を断り、戦いを忌避しようとする乾巧に、神敬介が人生の先輩として訓を垂れると云うドラマがひとつの柱になっております。
 もうひとつの柱として、一人の少年をめぐって仮面ライダー鎧武と劇場版用の新ライダーが対決するストーリーがありまして、こちらが本筋です。
 新登場の仮面ライダーフィフティーンに変身するのは、なんとビックリの板尾創路でした。しかし過去には、渡辺裕之や堀内健も変身してましたし。

 フィフティーンは平成ライダー十五人分の能力を併せ持つとされ、クウガから鎧武までの各々のライダーにフォームチェンジするという設定です。仮面ライダーディケイドも十人分のライダーにチェンジできますが、やはり後発の方が有利になるのはやむを得ませんね。劇中ではフィフティーンとディケイドが何度か戦いますが、やはりディケイドは劣勢でした。
 しかしフィフティーンのマスクは、頭の上に「十五」と書かれた飾りが付いていて、ちょっと笑ってしまいます。どこの戦国武将だ。直江兼続か。

 まずは冒頭、昭和ライダーと平成ライダーが熾烈な戦いを繰り広げているところから始まり、どうしてこうなった的に遡って事の発端が語られると云う趣向です。
 沢芽市でユグドラシルコーポレーションが進める工事現場に、地底へ続く亀裂が生じると云う事件があり、葛葉紘汰(佐野岳)と高司舞(志田友美)が調査に出向いてみると、亀裂はヘルヘイムの森に繋がるクラックではなく、地球内部の「もう一つの世界」に通じていた。
 地球空洞説が採用されておりますが、地底世界は何から何まで地上と瓜二つの世界です(理由は不明ですが)。そこで紘汰は地下帝国バダンに追われている少年シュウと出会う。
 シュウを助けて地上に戻ると、紘汰の前に本郷猛が現れ「その少年を地上に連れ出してはならん」と告げる。

 「何でも裏返しに出来る」と云う、どこぞのスタンド使い的な能力を持つ少年シュウをめぐって、バダンと昭和ライダーと平成ライダーが三つ巴の戦いを繰り広げることになるわけで、かなり強引な展開ではあります。しかもシュウは記憶を失い、何故追われているのかも判らない。
 尺の都合もありますし、説明している暇も無く平成ライダーを敵視する昭和ライダー。
 更に紘汰の前に門矢士が現れる。どうやら「鎧武の世界」で、この事件を解決するのが士の今回の使命のようですが、ディケイドはまだ旅を続けておったのですね(終わらないか)。
 士が現れると必然的に鳴滝さん(奥田達士)も「おのれディケイド!」と現れて「昭和ライダーに対抗するには、平成ライダーの力を結集せよ」とアドバイスしてくれます。敵なのか味方なのか判らない人です。

 とりあえず人捜しには探偵の力を借りようと鳴海探偵事務所に出向く士と紘汰。沢芽市と風都は意外と近いようデス。
 あいかわらずハーフボイルドな左翔太郎(桐山漣)ですが、探偵の調査で何でも判ってしまうのが素晴らしい。と云うか、本作では調査シーンも何もないまま、「シュウと云う名の少年に心当たりは?」と訊かれただけで、もう身元も何もかも全部判ってしまう超展開。

 実はシュウは既に交通事故で亡くなっており、この世に残した未練が元で「何でも裏返す能力」を手に入れたのだという。必然的に、地底にあるもう一つの世界とは、単なる地球空洞説的な世界ではなく、死者達の世界「黄泉の国」だったのだと明かされます。だんだんワケが判らなくなってきました。
 つまりショッカーの遺志を継いだバダン帝国とは、とてもスピリチュアルな組織ということか。死者の魂とか怨念も秘密結社を作ったりするようデス。
 一応、バダンの怪人として、ヤマアラシロイドとタイガーロイドが登場してくれたのは嬉しいし、地獄大使の従兄弟である暗闇大使も登場します。
 前作、『スーパーヒーロー大戦 Z』では、シャドームーンだけが登場し、ジェネラル・シャドウやジャーク将軍には出番がありませんでしたが、今度はその逆でシャドームーンには出番なし。ローテーションを組んでいるのか。
 バダンはシュウの能力を増幅させて、生者と死者の世界をひっくり返す「メガ・リバース計画」を企んでいたのだあッ。

 もの凄く判り易く、「地球の表面がミカンの皮でも剥くようにめくれていく図」が挿入されて、「地球全体が裏返しになる」シミュレーションが表示されます。
 いかにイメージ優先とは云え、そんなことで死者が生き返ったりするものなのか。そもそも地底世界が地上と瓜二つなら、裏返さずとも構わないのでは……なんてツッコミはスルーです。
 そして死んだ息子を生き返らせるためにシュウの父親はバダンに協力し、仮面ライダーフィフティーンとなったのだ……と明かされますが、板尾創路は息子が生き返ると今度は自分が死んでしまうことには思い至らないようです(承知の上か)。

 何もかも初耳な事実ですが、昭和ライダー達は「バダンを生み出した原因は平成ライダー達にある」と主張して譲りません。もはや難癖付けているような感じですが、本作の脚本には、因果関係とか背景説明とか云う言葉は存在しないようです。
 長々と説明したりせずに、とにかく怪人とライダー、ライダーとライダーの戦いで見せ場を繋いでいきます。説明シーンを極力省き、見た目のイメージで納得させる演出は清々しいまでに強引です。
 但し、見せ場作りに傾注する余り、戦闘シーンばかりになってしまうのは如何なものか。

 ライダー同士の対決も、色々と組み合わせの妙があるのはいいのですが、「ライダー同士の対決」に思い入れの無い方は、なかなか楽しめないのではないか。
 事実、うちのムスメらは観ている内にだんだん飽きてきた様子でした。そもそも昭和ライダーに思い入れが無いから、どのライダーとどのライダーが戦っても、結局は同じに見えてしまうようです。

 最終的にはバダンによるメガ・リバース計画が発動し、それを阻止するために全ライダーが共闘する流れになるのですが、これもまた『スーパーヒーロー大戦』と同じで、「敵を欺くにはまず味方から」理論によって、仮面ライダー達は同士討ちで自滅したのでは無いと明かされる。
 すべてはバダン総統を欺くための仮面ライダー1号とゼクロスの策略だったのだ。
 判ってはいましたが、脚本的には安易な印象は否めませんです。黄金のパターンなのか。

 そこから先はもうお祭り騒ぎもいいところで、バダン総統が真の姿を現すと、巨大な恐竜の化石のような怪獣だったり、恐竜が現れたのでキョウリュウジャーが乱入して来たり(ダイゴとガブティラだけ)、「同じ1号が力を貸すぜ」とトッキュウジャーも参戦して、カオスな展開です。
 『~ feat.スーパー戦隊』なのでやむを得ませんし、巨大な敵に立ち向かうにはスーパー戦隊の巨大ロボの方が画にはなるのでしょうか。
 トッキュウオーと電ライナーが合体するわ、その上からガブティラもかぶって合体するわと、凄いことになっていきますが、おかげで仮面ライダーの中で唯一巨大化できるJが忘れ去られてしまいました。

 バダン総統を倒し、シュウの魂も安らぎを得て昇天し一件落着。
 と云うところで、最後に改めて「昭和と平成で決着を付けよう」などと、取って付けた展開が用意されています。これはエンディングをどちらにするか、公開前のファン投票によって決めるという企画があった所為ですが、僅差で「平成勝利バージョン」のエンディングとなったそうな(圧倒的に昭和優勢だと思ったのに)。
 「昭和勝利バージョン」も観てみたい(ブルーレイの映像特典かしら)ですが、どっちになっても最後は和解し、「ライダーに昭和も平成もない。これからも世界のために共に戦い続けよう」的な締めになるので、どっちでも同じでしょう。
 個人的には、エンドクレジットで「サイクロンを駆って疾走する本郷猛の図」が拝めたので、どっちの勝利でも構わないデス。


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