2014年2月28日金曜日

ホビット/竜に奪われた王国 (3D)

(The Hobbit : The Desolation of Smaug)

 J・R・R・トールキン原作のファンタジー小説の金字塔、『指輪物語』の前日譚『ホビットの冒険』の映画化第二弾ですね。毎年一作公開の予定で、第一作『ホビット/思いがけない冒険』(2012年)に続き、欧米では丁度一年後に公開されたのに、何故か日本では三ヶ月も延ばされてしまいました。けしからん。
 邦題は「スマウグの荒らし場」から「竜に奪われた王国」に変更になりました。こちらの方が判り易いでしょうか。
 本作の撮影自体は、前作と合わせて三作分まとめて行われていたようで、登場する皆さんもまったくお変わりないのが嬉しいデス。音楽もハワード・ショアの壮大なスコアがまたまた鳴りまくりで、観始めた途端にまったくブランクなく中つ国に引き戻されました。

 今回は前作の続き、霧降山脈越えを果たしたトーリン・オーケンシールド(リチャード・アーミティッジ)率いるドワーフ御一行様が、闇の森を抜けて湖の街エスガロスに至り、遂に離れ山にまで到着し、エレボールの地下宮殿で火龍スマウグと対決するまでが描かれます。
 原作での描写があまりなかったビヨルンさんもちゃんと登場し、迫力のCG変身でクマになります。ガンダルフ(イアン・マッケラン)の盟友、ラダガスト(シルヴェスター・マッコイ)もまたまた登場してくれます。
 また、オークの首領としてアゾグが登場したので、息子のボルグには出番なしかと思われましたが、本作ではボルグも登場して、トーリン達を追撃してくれます。
 そして新キャラ、弓の名手バルドもいよいよ登場です。ルーク・エヴァンズが実に男前です。

 当初の二部作の予定を三部作化したことが本作では顕著に表れており、前作にも増して「原作に無い」場面のオンパレードとなっておりますが、『ホビットの冒険』以外のトールキンの著作からの映像化なども含まれますので、原作愛読者には嬉しい追加ですね。
 冒頭に、ブリー村──粥村と云いたいッ──でのトーリンとガンダルフの出会いの場面を挿入してくれたのが嬉しい演出でした。『終わらざりし物語』まで持ってくるか。
 他にも、ピーター・ジャクソン監督(以下、ピージャク)の解釈が実に丁寧で納得できるものになっている為、原作通りではなくても、観ていてまったく差し支えございません。
 むしろ、『指輪物語』の前日譚である以上、アレやコレも存在していないとマズイでしょう的な辻褄合わせに腐心されているようでした。当然、長命なエルフとしては、レゴラスもこの時点で存在していないとイカンですしね。

 おかげで、本作は『ホビットの冒険』には出てこないレゴラス様が大活躍するストーリーになっており、オーランド・ブルームのファンの皆さんは必ずや満足されることでしょう。特にドワーフ達が樽に乗って川下りをするところにレゴラスが絡んでくるのですが、原作にある展開とは云え、あれほどのスペクタクルになるとは予想外でした。
 しかしレゴラス大活躍の場面は多けれど、必要以上にトーリンやビルボ(マーティン・フリーマン)と接点があるようには描かれず、なるべく原作の筋は変えずに追加だけ行うように心がけているように見受けられました。
 ピージャクの基本方針が「追加はすれども省略せず」であるのがよく判ります。
 まぁ、そのお陰で物語があちこちで同時進行していくようになり、時々本筋の方を忘れてしまいそうになるのは御愛敬ですが。

 ガンダルフも原作では、途中でトーリン一行から離れて別行動を取りますが、本作ではそこもきちんと追いかけ、ドル・グルドゥアで邪悪な死人使いと対峙し、その正体を垣間見たりします。当然、そういう展開がないと『ロード・オブ・ザ・リング』(以下、LOTR)には繋がらないよね的な場面が多いです。
 また、死人使いが甦らせた死者が何者だったのかにも言及され、ナズグルの起源が示唆されているのも芸が細かい。でも、ドル・グルドゥアの地下に葬られていたと云うのはピージャク的解釈でしょうか。
 いわば本作はピージャク版『ホビットの冒険』の追補編といった趣ですね。
 しかし結構、調子に乗って追補しております。放っておいたら際限なく追補しまくりになるのでしょう。本作の尺は前作よりちょっとだけ短い一六一分ですが、きっとまたDVD化の際にはエクステンデッド・エディションが出て、三時間越えを目指してくれることでしょう。

 本作では遂に映画オリジナルのキャラクターまでも登場し、それなりに活躍してくれます。
 レゴラスと一緒に登場するエルフの守備隊長タウリエルを、エヴァンジェリン・リリーが演じております。やはり追加するなら女性キャラでないとイカンか。只でさえ野郎ばかりの物語ですからね。
 エヴァンジェリンは『リアル・スティール』(2011年)では、ヒュー・ジャックマンの恋人役でしたがイマイチ印象が薄かったです(そもそも、あれは父と息子の物語でしたし)。
 本作では、レゴラスと一緒にトーリン達ドワーフ組を捕縛し、エルフの王国に連行します。その過程で、なんとキーリ(エイダン・ターナー)と関わりを持つようになります。さすが、ドワーフ組の中では一番のイケメンであるキーリに目を付けるとは。
 ロマンスと呼べるほどの関係ではありませぬが、おかげでキーリが今回はちょっと目立っております。

 他のドワーフらも少しずつキャラが立ち始め、レゴラスとグローイン(ピーター・ハンブルトン)が言葉を交わす場面は、『LOTR』ファン向けのサービスですね。
 グローインが懐中に忍ばせていた、愛妻と息子の肖像を見て「醜い生き物だ」と一蹴するレゴラスが笑えます。そいつはあんたの終生の友になる男ですよ(笑)。
 しかし特筆すべきはボンブール(スティーヴン・ハンター)でしょう。前作で、私は「ビルボより足手まといなキャラである」と評してしまいましたが、すんません撤回します。ボンブール強いです。ボンブール無双です。あの大回転技は凄いデス。

 そしてレゴラスの父であるスランドゥイル王も、本作で本格的に登場してくれます。演じているリー・ペイスは、ターセム・シン監督の『落下の王国』(2006年)の山賊さんでしたか。エルフのメイクをしても太い眉毛は変わりませんですね。
 スランドゥイル王は裂け谷のエルロンド卿や、ロスロリエンのガラドリエル様とも異なる、シンダール・エルフの真骨頂を発揮してくれます。うわー。そんなことするから「エルフは信用できん」なんて評判が立つのでは。
 総じて闇の森のシンダール・エルフはスランドゥイル王だけでなく、下っ端に至るまで妙に生臭いところがありますね。酔っ払って居眠りするエルフの図なんてものが拝めるのは、ここだけでしょう。
 よくレゴラス王子は父王に似ずに育ったものです。反面教師なのかな。

 スランドゥイル王はトーリンにしてみれば、エレボール陥落の折に自分達を見捨てた遺恨のある相手です。劇中でも二人が対面した際に、トーリンがそのことを非難する場面があります。
 その際に、一瞬だけ激昂したスランドゥイル王の人相が醜く崩れる場面があって驚きました。実は王様のイケメンぶりは幻術による見せかけなのか。
 「竜の怖ろしさはよく知っているとも」と云い放ち、過去に竜と戦ったことがあるのだと察せられます。これはピージャク流の解釈によるものか。
 ドワーフ達を見捨てた理由もそれなりに理解できる演出になっているのが巧いです。

 そして前作のアンディ・サーキスによるゴラムに続いて登場するモーション・キャプチャなCGキャラが、ベネディクト・カンバーバッチ演じるところの火龍スマウグ。本作における最大の敵キャラですが、これをモーション・キャプチャで作成する意味がよく判りませんです。
 確かに怖ろしげだし、迫力あるのですが、ドラゴンですよ。CGのドラゴンに声を当てるだけでも良さげなのにねえ。技術的に凄いと云うのは判りますが。
 でも、ベネディクト・カンバーバッチ気合い入れまくりのモーション・キャプチャは、イアン・マッケランも絶賛したとか(実際にはマッケランはスクリーンテストを見ただけだそうですが)。
 つまり、カンバーバッチさんは緑色の全身タイツにマーカーを付けまくった姿で、ピージャクの前で爬虫類的な演技を披露し、それを元にスマウグが作られたのか。そのメイキング映像はちょっと観てみたいですねえ。DVDの特典映像に付かないものか。

 本作では遂に全身を現すスマウグのデザインが私好みであるのが嬉しいデス。
 ディズニーの実写特撮映画『ドラゴンスレイヤー』(1981年)や、マシュー・マコノヒー主演の『サラマンダー』(2002年)などに登場する「前肢の延長に皮膜があって翼になるタイプ」のドラゴン。いわゆる「ワイバーン」的な竜ですが、こちらの方が生物学的に理に適った形態であると思います。
 『ドラゴンハート』(1996年)や、『エラゴン/遺志を継ぐ者』(2003年)なんかの、トカゲの背中に翼のある竜とは違います。

 このスマウグがエレボールの地下宮殿で、トーリン達と戦う場面が本作のクライマックス。
 実は原作にはこんな場面はありません。ビルボと問答したスマウグは早々に湖の街を焼き払いに行ってしまうのですが、それではドワーフ達に見せ場がない。
 広大なエレボールの内部でスマウグとドワーフ達が決死の戦いを繰り広げる。そもそも王国奪還の為にここまで来たわけですし、何もせずに逃げ出すことは出来ませんね。
 ここで映画独自の設定によるエレボール内部の様子、なかんずくドワーフ達の作り上げた地下工房の壮大さが見どころでしょう。山の底まで通じる巨大な縦穴の様子などが、3D上映を考慮した画面構成になっています。
 最近の3D映画では、飛びだすだけでなく、奥行きが感じられるようにしているものが多いデスね。

 また、『LOTR』との関係を強調する為に、「トーリンがアーケン石に異様に執着する」演出が盛り込まれているのも興味深いです。原作でも割とアーケン石にこだわっていましたが、映像になってみると一層強調されていたように思われます。
 これは明らかにビルボと指輪の関係に対比する為でしょう。
 何となく、この先ビルボが指輪を所持しながらも、指輪に心奪われることなく過ごせたのは、ここでアーケン石にこだわりすぎたトーリンの末路を見てしまったからなのではないかとも推測できる描かれ方でした。ピージャクも色々と辻褄合わせに苦労しているようです。
 トーリンの末路については原作を読んでいる身としては、完結編『ホビット/ゆきて帰りし物語』で予想できるだけにちょっと切ないです。
 今回、アゾグの息子ボルグが新たに登場したように、次回ではトーリンの従兄弟ダインにも出番があるのでしょうか。

 ドワーフ達の健闘虚しく、スマウグを退治することは叶いませんでしたが、このクライマックス戦闘はなかなかに迫力ある見せ場になっておりました。そして遂にスマウグは湖の街エスガロンを焼き払うべく、はなれ山から飛び立つ。
 解き放たれた炎と死がエスガロンに向かって悠々と飛んでいく場面で「つづく」。
 果たしてバルドはスマウグにどう対抗するのか。伏線張りまくりですから、判ってはいるものの、早く続きが見たいところです。
 そしてドル・グルドゥアから進撃を開始したオークの大軍団との決着は──と云うところで、完結編で盛大に繰り広げられるであろう「五軍の戦い」もまた早く観せて戴きたいです。今年中の公開は……無理でしょうか(どうして日本公開は遅れてしまうのだあッ)。




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