2013年12月29日日曜日

永遠の0

 

 「暁の水平線に勝利を刻む」某オンラインゲームなんぞにハマってしまったおかげで、最近は妙にミリタリー関係の用語や関連商品に敏感に反応するようになってしまいました。他にもあのアニメや、このアニメのおかげで、ミリタリー関連で陸海空制覇ですよ。
 本作は予告編が公開の随分と前から劇場で流され、全国百三十万を越える「提督」の一員としては、公開されたら観に行かねばなるまいと心に決めておった次第デス。
 何となく、観ている最中に「俺の嫁が沈むうッ」と悲痛な叫びを上げる提督も多数おられるのではないかと予想しておりましたが、それはなかったですかね。基本的に戦闘機乗りの物語ですから。
 ああ、でも「誘爆を防いでえッ!」くらいは心の中で叫んでしまいましたね(汗)。

 本作は百田尚樹による同名小説の映画化作品です。出版された当初(2009年)はそれほど話題にはならなかったそうですが、徐々に人気が出て最終的にはミリオンセラーを達成(2012年)しました。今や映画化だけでなく、コミカライズまでされているとか(全然、読んでないのですが)。
 原作小説は随分と前から書店で見かけておりましたが──今でも文庫本が山と積まれております──、最初はタイトルの「0」が零戦のゼロのことだとは気付きませんでした。
 本作は太平洋戦争当時の日本を描いた、紛う事なき戦争映画です。

 毎年のように、真夏と年末には戦争に関連した映画が公開されますが、シーズンものの映画と云えなくもないですね。春や秋に公開するよりも興行成績もよろしいでしょうし。
 監督は山崎貴。『ジュブナイル』(2000年)とか『リターナー』(2002年)といったSF映画は好きでしたが、どうにも『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズは「CG特撮満載のお涙頂戴映画」に思えて、今に至るもスルーし続けております。
 SF者としては『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010年)の監督だと云うだけでも忘れ難い。この先も、岩明均のSFホラー『寄生獣』の映画化にも監督が決まっているようで、期待していいのか心配するべきなのか、実にスリリングです。
 映像的なセンスはあるので、CG特撮の場面なんかに心配する要素はないのですが。

 さて、本作は零戦のパイロットを描いたストーリーでして、まず現代から始まり、ある青年が自分のルーツを辿って、祖父がどんな人物だったのかと調べていきながら、過去と現在が交互に語られていくと云う趣向です。
 物語の語り手となる孫を演じているのは、三浦春馬です。フルCGアニメ『キャプテンハーロック』(2013年)では、アルカディア号に乗り込む若者マヤの役でした。アニメでも実写でも頑張っておられますね。
 三浦春馬が様々な人に聞き込みを行う過程で、語る人毎に回想シーンが展開していき、戦時中の出来事が綴られていきます。
 同じ場面でも、視点の異なる人によって別の角度から再度描かれている演出が面白かったです。だから時系列も少し前後したりしますが、特に混乱するようなことはありません。

 そして本作の主演となるのが回想シーンにしか登場しない零戦パイロットの岡田准一です。近年は『SP』シリーズや、『天地明察』(2012年)、『図書館戦争』(2013年)と、主演映画を立て続けに観ております。もう立派な俳優ですね。NHK大河ドラマの主役も務めていますし。
 実は数年前までは私は岡田准一には懐疑的でしたが、今では何の心配もしておりませんです。と云うか、次の出演作も躊躇わずに観に行く所存です。

 まずは冒頭、いきなり零戦が海面すれすれに米軍の空母に向かって突っ込んでいく壮絶な場面から。激しい対空砲かをかいくぐり、空母に肉薄していく。CG特撮でも迫力あります。
 オープニングのクレジットが縦書きになっているのも、日本の戦争映画らしくていいですね。欲を云うなら、エンドクレジットも全部、縦書きのまま押し通してしまえば良かったのに。
 そこで場面がプツリと途切れ、ドラマが始まります。

 現代。祖母の葬儀が営まれ、その席で祖母が再婚していたことを知る孫(三浦春馬)。今の祖父は、自分と血の繋がった祖父ではなかったのだ。
 そこから実の祖父は戦時中に特攻隊員として戦死していたと知る。最初は意に沿わないルーツ調べだったが、今の祖父(夏八木勲)からも調査を勧められ、存命中の関係者らへの聞き込みが始まる。

 この「今の祖父」を演じているのが、夏八木勲です。『終戦のエンペラー』(2013年)で関屋貞三郎役だったのが印象に残っておりますが、既にその時点でお亡くなりでしたね(2013年5月11日逝去)。
 他にも『脳男』(2013年)や『そして父になる』(同年)と、逝去の前後にも出演作が立て続けに公開されておりましたが、本作が遺作になるのでしょうか。
 味わい深い名優でしたが、これで見納めになるのかと思うと残念です。

 三浦春馬が聞き込みを行う相手が、平幹二朗、橋爪功、山本學、田中泯といった面々。
 岡田准一とは同じ航空隊仲間だった人達で、回想シーンでは青年時代を別の役者が演じていたりします。戦後は、ある者は大企業の取締役だったり、癌を患い余命幾ばくも無い状態だったり、反社会的勢力の重鎮に納まっていたりして、人生の歴史を感じさせてくれます。

 そこで知ったのは、実の祖父は「海軍一の臆病者」で「恥さらし」で、命を惜しむヘタレであったというネガティブな事実。
 あまりの否定的証言に、調査の続行が躊躇われるが、そんな男が「特攻隊に志願して散華」するものだろうか。事実と証言の内容に矛盾を感じて、孫の調査が進んでいくわけで、やがて実の祖父の実像が明らかになっていきます。
 このあたりはミステリ要素もあって、なかなか興味深い展開でした。

 聞き込む相手によっては、戦友だった時期が異なるので「真珠湾攻撃時代」、「ミッドウェー海戦時代」、「ラバウル航空隊時代」と、太平洋戦争の戦局もかい摘まんで描かれていきます。
 岡田准一の為人を知るためのストーリーなので、戦闘シーンの続きが気になっても終わってしまうのが残念でした。構成上、ダイジェスト的になるのは仕方ないでしょうか。

 CG特撮はさすがの出来映えで、日本の戦争映画もリアルかつダイナミックになったものだと感心します。こういう場面での山崎貴監督の腕は冴えておりますね。
 特に真珠湾で米軍の戦艦〈アリゾナ〉の砲塔がドカーンと吹っ飛んだり、ミッドウェー海戦で空母〈赤城〉が誘爆を起こす爆発シーンなどがお見事でした。
 戦争映画なので悲惨なシーンも多々ありますが、思っていたほどお涙頂戴映画にはなっておりませんし、必要以上に「戦争=悪」だと強調することも無かったように思われます。

 逆に、「神風特攻は自爆テロとは違う」と明確に主張されていたりして、近年の世相を良く反映しているように思われました。戦時中で、標的は兵器で、死ぬのはどちらも軍人で、明らかに平時に一般市民を巻き込む無差別な殺戮ではないのだ、と語られております。
 この一点だけでも、これまでの戦争映画とは随分と印象が異なるものになりました。
 ここは過去と現在の対比の方が強烈な場面でした。あの不幸な時代に、覚悟を決めて出撃していった人達の犠牲があってこその現在に、のうのうと生きているチャラ男共に活を入れたくなるように演出されております。
 お前ら、もっと祖先を敬え。
 これが戦争賛美になるのかと云うと、それはちょっと違う気がしますねえ。

 ダイジェスト的な戦闘描写に、過去と現在が交錯する演出であるので、戦争映画としては少し物足りなくもありますし、時としてCGが重厚さに欠けるきらいがあるのも否めませぬが、総じて良く出来ていると思いマス。
 ただ、よくよく考えると、やがて明らかになる岡田准一の真相にちょっと違和感を感じます。

 岡田准一は臆病者と誹られようと、信念を曲げない立派な男であった、と云うのはいいです。実は海軍一の凄腕パイロットであったというのもいい。大体、「一航戦の戦闘機乗り」だった男が、ヘタレである筈もなかろう。少し考えただけで判りそうなものじゃなイカ。
 うーむ。ここで「一航戦」と云う用語をフツーに使ってしまう自分は相当、重症でしょうか。
 また、実在のエースパイロット坂井三郎の空戦テクニックをそのまま引用していることも大きな問題ではないか(あからさま過ぎますが)。

 しかし「本当に戦闘忌避していた」と云う描写はどうなんでしょ。出撃しても、会敵した途端に戦闘空域を離脱し、仲間がやられていくのも見捨てて、戦闘終了後にまた合流する。
 断腸の想いで信念を貫いているのは判りますが、そんなことを繰り返していたら明確な敵前逃亡と見做されて、帰還後直ちに銃殺になったりしませんか。
 逃げ回ってばかりで戦わないというならともかく、端から離脱してしまうのは如何なものか。
 そのあたりの描写に不自然さを感じてしまうのですが、原作小説の方ではどうなっているのでしょう。

 そして真実が明らかになり、更に今の祖父との関係と、戦後に祖母が辿った数奇な運命までもが語られていく。遂には過去と現在がきちんと繋がるラストは、なかなか感動的でした。
 夏八木勲の演技も忘れ難いです。
 エンドクレジットと共に流れる主題歌、サザンオールスターズの「蛍」もいい感じで、無理に「泣かせよう」と云う意図は……少しくらいはありましたかね。でも、思ったよりも爽やかな仕上がりでした。

 そして最後の最後に、冒頭の場面の続きがやってきます。
 やはりあの特攻機は岡田准一の零戦であり、空母に向かって突っ込んでいく。岡田准一の凄みのあるアップでストップ。最後の瞬間の眼力に震えました。

 劇中では触れられておりませんが、原作では(未読ですが)この空母は〈タイコンデロガ〉であるそうな。
 しかしながら、史実では〈タイコンデロガ〉は終戦時に戦艦〈ミズーリ〉と共に日本の降伏文書調印式にも立ち会っています。沈没しなかったのか。
 してみると、岡田准一の超絶技巧を持ってしても、あの空母は沈まなかったことになるわけで……。それを考えるとちょっと興醒めでしょうか。神風特攻が虚しいものであると云うのは判りますが。
 劇中での描写が壮絶であっただけに、現実の史実を知ると、何だかやるせないデス。




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