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2013年11月30日土曜日

PERSONA3 THE MOVIE

 #1 Spring of Birth

 あまりゲーム方面には詳しくないのですが、九〇年代に『デジタル・デビル物語 女神転生』なるゲームがあったことは存じておりました。でもプレイすることなくスルーしておりました(あの頃はゲーム機もファミコンだったか)。同名のラノベが出版されたり、OVA化もされましたが、記憶が曖昧です(OVAは観たような気がするのですが)。
 のっけからこの為体なので、ゲームの発売元が変わったことでタイトルが『真・女神転生』となったとか、そこから更にスピンオフした『女神異聞録ペルソナ』が出ても、スルーし続けたのでした(この頃になるとプイステーション用のゲームになりましたが)。

 スピンオフの当初は本家と同じ「女神」が付いていましたが、人気が出て続編が出るあたりで、ただの「ペルソナ」になりました。でも相変わらずスルーし続け。
 しかしもはや本家を凌ぎ、独立したシリーズとなった「ペルソナ」は今や四作を数え、今冬にも第五作目がリリースされるそうな(次はプレイステーション3用だとか)。
 それだけ人気のあるゲームだとメディアミックスはもはや必然であり、ノベライズやらコミカライズやらパチンコにまでなったとか(いやぁ、パチンコにされてもそっち方面にも疎いしねえ)。

 とうとう第四作目である『ペルソナ4』がTVアニメ化され、実はこれは録画しておりますが、まだ未見デス。そろそろ消化しないといつまでもHDDの容量を圧迫し続けるのでヤバイです。
 そして『ペルソナ4』放送終了と同時に、遡ってシリーズの第三作目が劇場用長編アニメーションとなると発表されて、今般ソレが公開されたという次第デスが、さてこれを観たものかどうしたものか。
 今までスルーし続けてきたのに、今更ポンとこれだけ観ても理解できるのかしら。

 迷うところでしたが、たまたま『攻殻機動隊 ARISE border:2 Ghost Whispers』(2013年)を観に来たシネコンで上映しているのを見かけ、ついついイキオイでハシゴして観てしまったのでした。
 結果的には問題なし。
 スピンオフといいながら、この第三作目から設定が変わったり、従来のシリーズからは並行世界的別物になったりしたそうで、経緯を知らなくてもちゃんと判るようになっておりました。それならもう「3」なんて番号は外してもらっても良さげであると思うのデスが、長年のファンの手前、それは出来んか。
 私が鑑賞したときには、劇場内満員御礼でしたしね。『攻殻機動隊 ARISE』より混んでいましたよ。人気あるんですねえ。

 しかしちょっと勘違いしておりました。私はこれも『攻殻機動隊 ARISE』と同様、一篇が六〇分弱の中編のシリーズなのであろうと思っていたのです。最近はよくあるパターンですからね。
 でも本作は、堂々九二分のちゃんとした長編映画でした(とりあえずパート1ですが)。

 監督は秋田谷典昭。TVアニメの演出が多い方だそうで、私の知っている作品だと『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』でも多くのエピソードを担当しておられますが、本作は初の劇場用長編監督作品になるようです。
 脚本は熊谷純。『AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~』(2013年)に続いて劇場用作品二作目の脚本です。
 製作は老舗のAICですから、クォリティについても問題なしです。

 現代日本のとある高校──私立月光館学園──を舞台に、超常的な能力を持つ高校生達の冒険を描くというストーリーです。
 出演はゲーム版と同じ配役のようです。石田彰、豊口めぐみ、鳥海浩輔、能登麻美子等、よく聞く方達ばかりですね。名前を拝見しているだけで安心です。
 上級生の役で、緑川光と田中理恵がおりました。素晴らしい。特に緑川光が相変わらずクールな美形キャラ(でも実は熱いヤツ)だったので嬉しい限りデス。
 田中理恵も落ち着いた良家のお姉様キャラですし。このテッパンな配役。

 一方、「ペルソナ」と云うのが、本作に於ける超能力の名称のようです。各人が特徴的な能力を持っていて、発動時にはこれが人型のキャラクターとして顕現する。
 うーむ。まるで荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』のような。これも新手のスタンドか。
 タロットカードがモチーフになっていたり、ネーミングの由来がギリシャ神話だったりするので尚更デスね。
 各々が一体のペルソナを使役し──でも主人公だけ何故か複数のペルソナを操れる。なんかズルイぞ──、敵と戦う。各ペルソナも近接戦闘型とか、遠距離支援型とか、索敵に特化していたり、属性も炎だったり氷だったり……実に判り易い。まるでゲームのようだ(ゲームですけど)。

 しかしペルソナを呼び出す方法がなかなかにアブない演出になっていて、笑いました。
 「召喚器」なるアイテムを使用するのですが、これが見た目には拳銃そのものです。銃口を向けて、引き金を引くと、弾丸(のようなもの)が発射される仕掛け。どこに向けて撃つかと云うと、自分の頭。
 まぁ、直感的に「ペルソナとは各人の意思の力」が具現化した姿であろうと察せられますので、自分の頭の中からソレを引きずり出す、押し出す、打ち出す……なんかそんな感じで召喚します。
 なので、戦闘になると、どう見ても皆が自分の頭を拳銃で撃ち抜く場面が続出します。見た目に実にアブノーマルと云うか、不健康そうな戦い方でした。

 基本的に自分達は戦闘指揮をするだけで、召喚したペルソナが敵と戦います。ロボットを戦わせるようなものか。
 でもペルソナは一回攻撃すると、そこで消滅するらしい。続けて攻撃する際には、召喚者は自分の頭を何度もバンバン撃ちまくります。うひー。
 ゲームの方もそういう演出になっているのでしょうか。良い子は決して真似しないで下さい。

 実弾ではないと判っていても、やはりこの召喚方法には抵抗があるらしく(そりゃそうだ)、劇中では危機に陥ってもペルソナの召喚を躊躇うといった場面もあります。やはりこのアイテムは設計が悪い。もう少し抵抗なく使用できるような形状に出来なかったものか。
 このあたりの「誰が作ったのか」とか、そもそも「何と戦うのか」といった背景の説明は本作ではスルーされています。とりあえず第一作では、基本設定と登場人物の紹介のみです。

 敵は「シャドウ」と呼ばれる異形のクリーチャーですが、これは真夜中に出現し、人間を喰らう化け物です。
 実は一日は二四時間ではない。真夜中に「影時間」なる時間が挟まっていると説明されますが、一般の人間はコレを認識できない。影時間中は人も機械も静止しているからですが、中には影時間を認識して、止まった世界の中を動けるものもいる。
 更にその中には特殊能力ペルソナを持つものもいる。と云うわけで、ペルソナを使えるものは、影時間の中に迷い込んでしまった一般人を助け、シャドウと戦うことを義務づけられていると云う設定。
 シャドウに喰われた人間は精神が失われるのか、現実世界では突如として無気力になってしまい、次第にそれが社会問題化している(謎の五月病)。 

 何故、このような時間帯があるのか。謎を解く鍵は影時間中にだけ出現する〈タルタロス〉と呼ばれる迷宮の中にあるらしい。
 この〈タルタロス〉、昼間は私立月光館学園の校舎なのに、夜中になるとムクムクと変型して巨大な城塞のような形になります。アレックス・プロヤス監督のSF映画『ダークシティ』(1998年)を彷彿するビジュアルです。
 ペルソナ能力者は月光館学園の特別課外活動部のメンバーとなり、シャドウと戦い、この迷宮を探索し、影時間の謎を解かねばならないのだ。

 ──と云う、判ったような判らないような説明を聞いて、特に疑問に思うこともなく承諾してしまう主人公(石田彰)が素敵デス。感情の起伏が乏しく、何だかよく判らないけど断る理由も無いから引き受けます的な実に受動的なキャラクターです。
 そのおかげでそもそもの理由は素っ飛ばして、ドラマは進行していきます。怪しいところは一杯ありそうなのに、とりあえず全スルー。それでいいのか。
 大体、自分の通う学校の校舎が変型するとか、特別課外活動部の顧問が学園の理事長その人であるとか、どうにも怪しすぎる(ゲームの方をさっぱり知らないままテキトーなこと書いてマス)。
 でも主人公が気にしてくれないので観ている側にも謎のままです。

 本作はサブタイトルが「Spring of Birth」となっているだけに、描かれる季節は春になっています。
 新学期に主人公が転入してくる四月から始まり、六月の初夏で終わる三ヶ月間のストーリー。特別課外活動部のメンバーとなってシャドウと戦い始め、次第に仲間が増えてきて、人付き合いの悪かった主人公の態度にも変化が現れる。
 すると二作目以降も季節がタイトルに付いて、四部作で一年間の物語になるのでしょうか。

 とりあえずバラバラだった仲間の結束が深まり、夏が到来するところで、ひとまずは「つづく」です。
 本作は主に、主人公と周囲の仲間達の紹介にドラマの尺が割かれており、肝心な謎はまったく解かれておりません。まだまだ先は長いようですしね。
 各キャラの背景にも何やら曰くがありげですし、影時間中だけに主人公の前に現れるファルロスと名乗る謎の少年とかも謎のまま。それらもおいおい明かされていくのでしょう。

 謎と云えば、まったく意味が判らない謎めいた「ベルベットルーム」なる場所も描かれますが、これがどこなのか謎のままです。誰かの見ている夢の中なのか。
 ベルベットルームの主は「イゴール」と名乗る老人で、ペルソナについて色々と知っていそうなのに、何も教えてくれません。イゴールと云えば、ドラキュラ伯爵の召使いと同名ですね。特に吸血鬼とは関係なさそうですが、いかにもホラー映画に出てきそうな白髪の老人であるのが笑えます。
 このイゴール役が田の中勇でした。目玉おやじがこんなところに。
 しかもこの爺さん、美人のアシスタントを侍らせています。エリザベスと名乗る美人アシスタントを演じているのは、沢城みゆきでした。
 うーむ。単なる狂言回しにしてはちょっと豪華すぎるような。

 第二話は来夏(2014年)公開予定。なるべく早い内にお願いします。

● 余談
 本作鑑賞後、録画しておいた『ペルソナ4』をチラリと観てみました。第一話のファーストシーンから、ベルベットルームとイゴール老人が登場してくれました。『3』と『4』は繋がっているのかしら。
 でもアシスタントのお姉さんがエリザベスさんじゃなくて、マーガレットさんでした。あれ、いつの間に交代したのだ。




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