2013年11月30日土曜日

攻殻機動隊 ARISE

border:2 Ghost Whispers

 前日譚シリーズの第二話目が予定どおり公開されました。順調に進行しているようで安心。
 今回は Microsoft との妙なコラボは無かったようで、劇中にはタブレットPC「Surface」は登場しませんでしたねえ。上映前のPVもありませんでしたし、アレ一回限りだったのか。
 まぁ、電脳空間に自由に出入りできる身でありながら、外部のデバイスを使用するというのも不自然ですけど(あえてローテクにこだわる理由があれば良かったのに)。

 黄瀬和哉総監督の下で、今回の監督を務めるのは竹内敦志。過去、数々のアニメに作画やメカニックデザインとして関わってこられましたが、本作が初監督作品になるようです。
 脚本とシリーズ構成は、一貫して冲方丁ですね。
 しかしやはり監督が代わると、エピソードの演出も監督の色が出てしまうものでして、本作は第一話「Ghost Pain」よりもアクション重視、カーチェイス重視であるように見受けられました。

 ストーリーの時期的には、草薙素子(坂本真綾)が退役し、まだフリーだった頃ですね。公安9課から誘いを受けてはいるものの、まだ応じる気にはなれない。そもそも「自分の部隊」を持つ為の人選もまだ定まっていない状況です。
 だから素子さんは9課からの依頼を請けるコンサルタント業として動いている。しかし見た目はもう公安9課のエージェントも同然のような印象を受けます。まぁ、荒牧部長(塾一久)とタメ口なのは昔も今も変わらないし、メンバーが揃っていないだけで、既に「一人攻殻」状態。
 このあたりの状況に、もう少し差を付けられると良かったのにと思わざるを得ませんです。前日譚の筈なのに、事件を追い始めると、いつもと変わらぬ『攻殻機動隊』なエピソードになってしまうのが、ちょっと残念でした。
 もう少し、権限に制限が付くとか、不自由な状況になるとか、すれば良かったのに。

 まずは最高裁判所でソガ大佐(沢木郁也)なる人物の死刑判決が確定する場面から幕開けです。あまり傍聴人のいない、軍法裁判のような印象です。
 紛争地帯での難民に対する非人道的行為と云うのが罪状。どうやら虐殺事件の首謀者であるらしい。こういうのは、近未来でも変わらぬ出来事のようです。
 俯いていたソガ大佐が顔を上げると、目の無い異様な風貌であります。眼窩にはナニやら電脳デバイスらしきものが埋め込まれている。どこかで見たようなデバイスです。

 両眼をサイボーグ化して電脳デバイスにする、と云うと攻殻機動隊のメンバーの中では、バトー(松田健一郎)、ボーマ(中井和哉)、サイトー(中國卓郎)といった連中に共通の設定です。この時代の軍隊──一部の特殊部隊か──には共通の仕様だったのでしょうか(サイトーの目はまたちょっと違いますが)。
 案の定、ソガ大佐とはバトーやボーマの上官であるのが、あとで判ります。

 アバンタイトルを経て、キャラクターの紹介を兼ねたオープニングなのは前回と同じですね。今回のシリーズの音楽を担当するコーネリアスのオシャレでポップなメロディがとてもサイバーなSFアクション映画らしからぬ曲で、イイ感じにミスマッチしています。
 今回はバトーに加えて、ボーマ、サイトー、イシカワ(檀臣幸)といった面々も登場です。
 おっと、これでもう六人全員が出そろってしまうのか。全四話ですからあまりメンバー集めに尺を割くわけにも行きませんですか。
 前回未登場だったメンバーが出てくる代わりに、トグサ刑事(新垣樽助)だけは一回お休み。
 今回は完全に軍隊関係者(退役を含む)のみだけで進行するエピソードになります。

 ソガ大佐への判決と並行して、何者かが公安9課のシステムにハッキングをかけた疑いが生じたところから素子さんにお呼びがかかる。素子さん担当のロジコマの電脳に、ナニカがアクセスした模様。
 当初はハッキングの件で調査を依頼される素子さんですが、高速道路上でいきなり襲撃を受けます。このあたりは一話が六〇分に満たないので、かなり展開が早い。
 もう早速にロジコマが狙われています。相手は前回も登場したバトーと、その仲間達。

 今回はバイクを走らせながらのアクション演出と並行して、電脳空間内での描写も進行するのがSFぽいところですが、バイクを運転しながらも意識だけがヒョイとまったく関係ない空間にアクセスしている演出は、SF者にはすぐに理解できても一般の人には理解できるのかと心配になりました(杞憂かしら)。
 特に本作では、電脳空間が水中であるかのように演出されるのが印象的でした。
 光の差し込み方や、髪や衣装がユラユラとたゆたうように動いています。なかなか幻想的な光景です。もうワイヤーフレームを使った描写は古臭いのですね。

 高速道路上での襲撃から更にビルの地下駐車場へと移動し、ナニやらごついミリタリー仕様な装甲車まで登場します。レールガンをぶっ放したり、人型に変型したりするのが面白いデスが、こんなスゴイものを前日譚に登場させていいものか。
 このレールガン装備の装甲車が、劇場版に登場した多脚戦車より性能が良さげであるのに、ちょっと違和感を感じました。あまり前日譚らしからぬメカのような気がして。
 本作に登場するメカは、素子さんのバイクを始めとして、竹内監督自身のデザインによるもののようです。それだけに監督のカラーが作品に投影されるのはいいとしても、シリーズものの辻褄というか、整合性は二の次になっているような気がします。

 そこで思わぬ助っ人が登場し、バトーらの追撃を振り切る素子さんとロジコマ。この助っ人が本作のゲストキャラであるヴィヴィー(藤貴子)。米軍情報部特殊作戦部隊所属のエージェントであると名乗り、ロジコマにハッキングした本人であると云う。
 超絶美人ですが、この時代の人の外見はいかようにも作れてしまうので、あまり見た目で判断は出来ませんねえ(世間的な美醜の感覚はまだ変わらないようで)。
 このあたりから事件がソガ大佐の件とリンクします。

 バトー達はソガ大佐の無実を信じ、冤罪を晴らす為に動いているらしい。難民虐殺が政府のデッチ上げであることを証明する為に、ソガ大佐自身が行動を起こし、バトー達はそれを支援する為に動いている。
 かつての上官の汚名を晴らすと云うのが、前作「Ghost Pain」の素子さんの行動とダブっておりますが、やはりマッチョな野郎共のすることは素子さんとは違って直接的です。
 政府の極秘情報を納めたデータベース、通称〈パンドラ〉をこじあけ、政府の汚い仕事を洗い浚いブチ撒けてしまおうとするソガ大佐。
 ソガ大佐とバトーらの求める暗号解除キーを、ヴィヴィーがロジコマの中に隠したのが、発端だったと云うわけで、素子さんに依頼された件はこれで片付きましたが、そのままなし崩しに事件に巻き込まれていきます。

 監獄の中からでも電脳空間にアクセスし、身柄を拘束されても〈パンドラ〉へのハッキングが止まらない。ソガ大佐はハッカーとしても超一流であるようです。さすがバトーらの上官。人間離れしております。
 たった一人で首都圏の交通システムを乗っ取り、何万人もの一般市民を人質に取りながら、〈パンドラ〉解除までのタイムリミットが迫る。
 果たして素子さんより一枚も二枚も上手を行くソガ大佐に打つ手はあるのか。

 ここで素子さんに協力するのが、前作で登場し、素子さんの人柄に惚れ込んだパズ(上田燿司)。
 他にバトーの軍隊仲間だったサイトーを強引にスカウトしますが、サイトーの描き方がかなり変わっているので意表を突かれました。
 いや、サイトーはもっとストイックな人だと思っていたのですが。元海兵隊のエース・スナイパーであり、戦後は暇をもてあましてギャンブル中毒となって──ロシアン・ルーレットでギャンブルするあたりに『ディア・ハンター』(1978年)へのオマージュを感じます──借金で首が回らない状態というのは、かなり私の知っているサイトーとは違うような。

 しかし腕の確かな狙撃手であるのはいいとしても、敵に回ったバトーから更に高額を提示されると、コロリと裏切ってしまう。サイトー、そんな軽い男だったのか。モヒカン頭も如何なものか(この前日譚シリーズではヘアスタイルに問題ある人が多いような……)。
 ドラマの展開としては、バトー、ボーマ、イシカワ組に対して、素子、ヴィヴィー、パズ、サイトー組のチーム戦の様相を呈して来ますが、サイトーが寝返る一方で、イシカワの説得に成功したりします。
 このあたりは敵味方がくるくる入れ替わって、なかなか面白い趣向ではありました。
 欲を云うなら、もう一転くらいしてもらいたいところでしたが、尺の都合もありますか。それにバトーとサイトーが目立っているのに、ボーマの影がかなり薄いのも気になりました。次回あたりでボーマにもスポットを当ててやってください。

 そしてようやく、ことの真相が見えてくる。そもそもの難民虐殺の真実とは……。
 この前日譚に通底する設定として、「記憶の改ざん」があります。事実と信じていたことがデタラメだったというところで、何もかもが不確かで不安定になっていく。前作の素子さんと同様、バトーやイシカワ、更にはソガ大佐までもが記憶を操作されていたことが明らかになる。
 前作で登場した謎のウィルス〈ファイア・スターター〉が関係しているのは明かです。更にソガ大佐の記憶を操り、行動させていた黒幕が現れる。

 自らを自我を持った人工知能であると称し、人間そっくりの電脳義体を動かして人間になりすましていたもの。
 実は素子さんは『攻殻機動隊』の本編に登場する〈人形遣い〉に、もっと前に接触していたらしいと云うことが判るワケですが、これは前日譚としてどうなんでしょうね。あまり本編にリンクするようなネタも善し悪しであるような気がします。
 辻褄合わせばかりやっていると、ストーリーがそればっかりになって面白さが半減するような気がするのですが。

 まぁ、本作では自分が何者に出遭ったのか、素子さんには判らないようになっていますし、本当にあれが〈人形遣い〉だったのかも明言はされませんが。あるいは、「いずれ〈人形遣い〉になるもの」だったのかも知れません。
 自分がいいように操られていたことを知り、更に黒幕を止める最善の手段として、躊躇うことなく自決するソガ大佐。最後まで天晴れな軍人でありましたが、残された部下達がちょっと哀れです。
 偽りの記憶に悩まされるバトーに、素子さんが救いの手を差し伸べるところで、次回に「つづく」。いよいよメンバーも出そろって、攻殻機動隊結成間近であるようです。

 次回の第三話「Ghost Tears」は来年(2014年)の六月公開予定とな。
 予告編を見る限りでは、今度はトグサ刑事も戻ってきてくれるようです。
 ほぼ半年に一回のペースですが、もう少し早いと良かったのに。まぁ、楽しみが続くと思えばいいか。




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