2013年10月10日木曜日

レッド・ドーン

(Red Dawn)

 ジョン・ミリアス監督の『若き勇者たち』(1984年)がリメイクされました。うわ、懐かしッ。
 何故か題名が原題をカタカナにしただけのお手軽邦題です。ちゃんと『若き勇者たち』と題して戴きたかった。
 しかし題名はともかく、日常生活が突然、終わりを告げ、他国の支配する土地となった故郷を開放せんと戦い始める若者たちを描いた、青春&ミリタリなアクション映画と云うオリジナル版の雰囲気はうまく踏襲されておりました。

 近頃は色々なものがリメイクされていきますが、よもや『若き勇者たち』がリメイクされて公開されるときが来るとは思いませんでした。数年前にリメイクされると聞いた憶えがありますが、さっぱり続報を聞かないのポシャったのかと思っておりました。
 そりゃまあ、時代背景がね、八〇年代当時の冷戦時代ではありませんですしね。当時でも「アメリカがソ連(ロシアではない)に占領される」と云う筋が、かなり無茶なストーリーに感じられたものですが、イマドキは更に無茶でしょう。大体、ソビエト連邦はもうありませんし。

 リメイクするに当たってそのあたりは考慮されたらしく、敵はソ連ではなく、ロシア単体でもなく、中国であるとされたそうな。まぁ、昨今の世界情勢を考慮した妥当な変更ではあります。
 しかし製作中にどこやらからかクレームが付いたのか、中国市場に配慮しなければならないという大人の事情が出てきたのか、途中で設定が変更されてしまいました。
 敵は中国ではなく、北朝鮮に……って、いやそれは如何なものか。

 おかげで本作は二〇〇九年にクランクインしているにも関わらず、さっぱり公開されないままお蔵入りとなりました。撮影終了後に設定を変更したものだから、画面上の中国の国旗やら軍服を全部、北朝鮮仕様に変更していく修正作業に追われていたのだとか。
 なかなか無茶な修正をするものですが、公開された本作を観る限りでは、見た目の違和感はまったく感じません。これはこれでCGアーティストの技術の高さを感じさせる見事な腕前です。
 劇中の中国語の台詞も、すべて朝鮮語に差し替えられておりますし。

 その代わり、ストーリーの方に違和感がバリバリ出てしまっているのは御愛敬……では済まない気がするのですけれど。
 戦争映画やスパイ映画に敵を作りにくい時代になったと云うのは判りますが、北朝鮮と云うのがイカニモ不自然に感じられてしまいます。あの国が、大国アメリカをそこまで怖れさせるほどの国かよ、ツッコミ入れたくなるのはごく自然な反応でしょう。
 それならいっそ異星人の侵略とかにした方がマダシモであるような(まさにそういう映画も沢山ありますし)。

 無茶な設定を強引に通す為に、冒頭で「世界中からアメリカが孤立する」状況が語られます。
 これは旧作でもやっておりましたが、アメリカ孤立の過程を字幕説明でものすごくあっさりと流した旧作に比べて、本作ではトンデモな設定に少しでもリアリティを持たせようとしてか、割と詳細に説明されたりしております。
 世界的な不況のニュースが劇中の報道番組として語られ、続いて外国からのサイバーテロのニュースや、北朝鮮での指導者の交代(ちゃんと金正恩になってます)、ロシアとグルジアの小競り合いといった虚実入り乱れるニュースが流されていき、頑張ってリアルな世界観を構築しようとしております。
 ロシアのグルジア侵攻をきっかけに米ロ関係が白紙になる一方で、北朝鮮が不可侵条約を無視した行動を取り始めるといった経過も語られます。

 それにしても中国についてまったく触れられませんので、逆にそこが物凄く不自然でした。あまりにも注意深く中国をスルーした結果、却って不自然な状況になってしまった気がします。
 世界情勢が風雲急を告げているというのに、一言も中国については語られないとは何としたことか。やはり単に国名を差し替えただけでは無理だったのか。
 それに、劇中では北朝鮮軍にはロシアの特殊部隊(スペツナズ)の軍事顧問が付いております。北朝鮮の侵攻にロシアが荷担しているという設定は問題ないのかしら。中国を気にしすぎる割に、ロシアはそのままか。なんか片手落ちというか中途半端な気の使い方ですねえ。

 ともあれ、北朝鮮はハリウッドでは「お手軽に設定できる敵国」として、イランに並ぶ地位を獲得したようです。
 北朝鮮が敵として描かれるというと、アントワーン・フークア監督の『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)なんてのもありましたが、本作と比較するならあちらの方がまだマシでしょうか。
 大統領官邸の制圧だけなら、アメリカ全土を制圧するよりもまだ何とかなりそうな気がします(ならんか)。
 本作は、そのあたりのヘンなところに気を遣った所為でトンデモになってしまった背景設定に目を瞑りさえすれば、若手俳優達による青春ミリタリ映画として、なかなか見応えのある作品として仕上がっております。

 まぁ、公開時期が三年も遅れた所為で、若手俳優と紹介するのも如何なものかという方もおられますけどね。クリス・ヘムズワースもお気の毒に。
 『キャビン』(2012年)もそうですが、『マイティ・ソー』(2011年)以前に公開されて然るべき作品が遅れまくっているとは何としたことか。
 おかげで『スノーホワイト』(2012年)や『アベンジャーズ』(同年)では主役のひとりであったクリス・ヘムズワースが、途中で撃たれて退場してしまう映画を今になって観ることになってしまい、なんか妙な感じであります。

 設定やら公開時期やらで、どうにもズレたところの多い本作ですが、敵国の設定がオリジナル版に輪をかけてトンデモになってしまった以外、大きな変更はあまり見受けられません。
 主要な登場人物の設定も、ほぼそのままです。

 ジェド兄貴と弟マットの役は、オリジナル版ではパトリック・スウェイジとチャーリー・シーンでありましたが、本作ではクリス・ヘムズワースとジョシュ・ペックの兄弟になっております。
 クリス・ヘムズワースは既にビッグになってしまいましたが、ジョシュ・ペックはまだこれからの人のようですね。今後の活躍に期待したいところです。

 この手のリメイク映画に、旧作の出演者がカメオ出演するのは、半ばお約束であると思うのですが、残念ながらチャーリー・シーンのカメオ出演はありませんでした。残念。
 出来るなら、チャーリーには「レジスタンスを支援する一般市民のオヤジ役」としてチラ見せくらいして戴きたかった(パトリック・スウェイジは既にお亡くなりなので無理としても)。

 かつてハリー・ディーン・スタントンが演じた兄弟の父親は、ブレッド・カレンでした。海外ドラマ『LOST』に出演したり、『ゴーストライダー』(2007年)ではニコラス・ケイジの父親役だったりしておりますが、脇役として安定した方ですね。

 その他、C・トーマス・ハウエルが演じたレジスタンスの仲間役が、今度はジョシュ・ハッチャーソンであったり、マットの恋人エリカ役がリー・トンプソンからイザベル・ルーカスになったりしております。
 ジョシュ・ハッチャーソンも既にそれなりに名も売れてきておりますが、イザベル・ルーカスはまだそれほどでもないか。『インモータルズ/神々の戦い』(2011年)で女神アテナの役だったくらいしか観ておりませんです。
 でも割と眉毛の太い可愛い女優さんです。リリー・コリンズと並ぶ俺的眉太美少女に登録しておきましょう。

 それにしても、C・トーマス・ハウエルとか、リー・トンプソンとか、旧作の配役がイチイチ懐かしいです(それだけこちらが歳を食っていると云うことか)。
 でもC・トーマス・ハウエルの方は『アメイジング・スパイダーマン』(2012年)、リー・トンプソンは『J・エドガー』(同年)に脇役として出演していたそうな(うーむ。さっぱり思い出せぬ)。

 旧作ではレジスタンスに身を投じた若者たちの敵となるソ連軍人にも、それなりに人間的な描写が見受けられたりしたのですが、リメイク版に於いては敵側の人間的な描写はありません。旧作では占領軍側の将校にも常識的な人間がいると云う描写に、製作サイドの良心を感じたりもしたのですが、本作ではそのあたりはスルーです。
 個人的にはもう少しウェットな描写も欲しかったところなのですが。
 これは監督の方針によるものでしょうか。

 アクション演出は冴え渡っているのですが、精神的にウェットな描写は避けられているように思われました。
 例えば旧作と同じく、郊外の山間部に潜伏した主人公達が食料調達の為に鹿狩りを行い、屠った鹿の血を飲むという場面もあります。
 旧作では「シカの魂を宿した血を飲む」ことはハンターとして獲物に敬意を表する、シリアスで神聖な場面として演出されていたと記憶しておりますが、リメイク版では冗談にされてしまっていたのが、ちょっと残念でした。

 本作は『007/慰めの報酬』(2008年)などのアクション演出を手掛けたダン・ブラッドリーの初監督作品です。ダン・ブラッドリーは他にも『ボーン・アルティメイタム』(2007年)や『スパイダーマン3』(同年)のアクションを手掛けておりましたので、アクション描写については、何の問題もありません。
 序盤の北朝鮮侵攻の問答無用な展開から、主人公達が包囲を破って郊外の山林に脱出するまでの住宅街でのカーチェイス描写も実に緊迫しております。

 敵側の将校も、悩みを抱えた人間として描かれる代わりに、頭の切れる手強い敵として描かれておりまして、直接の敵となる北朝鮮軍の指揮官役をウィル・ユン・リーが演じております。
 ウィル・ユン・リーは『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)では日本語がイマイチなニンジャ役でしたが、今回はちゃんとした朝鮮人役です。
 え。でも当初の設定では中国軍人役と云うことになる筈ですが、設定変更によってここだけは逆にマトモになったのか。

 それにしても、ウィル・ユン・リーは本作でもウルヴァリンに悩まされておりますね。
 旧作と同じく、本作に於いても若者たちのレジスタンス組織の名前が〈ウルヴァリンズ〉であるからで、その由来は主人公達の高校のフットボール・チームの名前であると説明されます。
 旧作では台詞のみの説明が、リメイク版では冒頭に試合の場面が挿入されて、〈ウルヴァリンズ〉を名乗る経緯がより自然に感じられる展開になりました。
 劇中でも〈ウルヴァリンズ〉の名前は全米に希望の火を灯す象徴として描かれていきます。

 登場人物の生死は旧作とは異なっていて、あちらでは生き延びた人がこちらではお亡くなりになったり、やがて戦争は終結し、抵抗した若者たちの名を刻んだ記念碑が建立されるラストから、戦いはまだ終わらず抵抗は続いていくラストに変更されたりしております。
 どちらも感動的ですが、戦い続けるリメイク版の方が力強い感じがいたします。基本設定さえトンデモでなければ、良かったのにねえ。




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