2013年9月14日土曜日

鷹の爪GO

~美しきエリエール消臭プラス~

 監督、脚本、キャラクターデザイン、ついでに主な声の出演全般までこなすFROGMANによる人気のFLASHアニメ『秘密結社 鷹の爪』シリーズの劇場版第五作目です。
 劇場版としては、本作で四作目になると思っておりましたが、三作目のあとにいつの間にやらOVAで四作目が出ていたようで、まったく気付きませんでした。つまり「THE MOVIE」シリーズとしては五作目ですが、劇場公開作品としては四作目になるという……。ややこしいな。
 まぁ、どこから観てもあまり変わらないというか、基本設定さえ承知していれば、ストーリーは一作毎に完結しているので大丈夫ですね。

 全シリーズつぶさに観ているわけではありませぬが、「吉田くんが郷里の島根県では、ジャスティスと呼ばれている」とか、「フィリップがリモコンのスイッチで、死んだり生き返ったり出来る」くらいを承知していれば問題は無いでしょう。
 ついでにTOHOシネマズでは『秘密結社 鷹の爪』の劇場マナーCMも流されているし、全く知らない人は少ないのではないか(TOHOシネマズ派でない方、ごめんなさい)。
 しかし「シネコンの座席のカップホルダーは右側を使う」のがルールだったとは存じませんでした(ホンマかいな)。では一番、左側の座席のカップホルダーは……なんてツッ込んではいけませんね。

 それにしても、テレ朝で放送していたアニメだと思っていたのに、いつの間にやら新シリーズがNHKで放送されており(しかも総合ではなくてEテレの方とは)、これをうちのムスメらが観てファンになっておりました。うーむ、まさか視聴していたとは。
 ある日突然、ムスメらが「た~か~の~つ~め~」と云いだしたときは驚きましたが、総統と吉田くんのギャグは小学生にも受けているらしいです。島根県ネタも判っているのかな。
 おかげで録画する番組がひとつ増えちゃったよ。

 当初はタイトルが『鷹の爪GO ~吉田、秘密結社やめるってよ~』と云う、あからさまに『桐島、部活やめるってよ』(2012年)のパロディでしたが、途中でタイトルが変更されてしまいました。サブタイトルのネーミングライツを大王製紙が購入したそうで(まぁ、エリエールですから)、「美しきエリエール消臭プラス」となりました。
 一応、「総統は二度死ぬ」、「私を愛した黒烏龍茶」、「 http://鷹の爪.jp は永遠に」、「カスペルスキーを持つ男」に準じて、また007シリーズの邦題のパロディというスタイルは踏襲されております。
 でも、ストーリーはエリエール消臭プラスとはまったく何の関係もございません。いや、かなり強引に劇中で「エリエール消臭プラス」を引用する場面があり、これはネーミングライツが買われてから、無理矢理脚本にねじ込んだ展開なのであろうことが伺えます。
 素晴らしく強引でした(笑)。

 しかし強引な商品名の引用が本作では、まったくごく自然に行われているのは、劇場版でのお約束ですね。今回もまた、例によって例の如く「バジェットゲージ・システム」が導入され、スクリーン上のゲージが減ってくると、突如として登場人物達が不自然に企業名や商品名を連呼しはじめます。
 登場人物達が自分達の映画の予算がどこまで減ってきているか知っているというのは、実にメタな演出です。
 本作では更に、商品に関連したキャラクターまで劇中に登場させるという強引さ。あまりにあざといギャグの連発で、何だか本編は半分以上、CMになってしまっている感さえあります。
 シリーズの中で一番、宣伝があざとい作品になりました(多分)。

 個人的には、求人情報誌タウンワークスのマスコットキャラである、ブタの「ジョブーブ」が登場してくれたのが笑えました(ジョブーブ、好きなんです)。
 他にも伊藤ハムの商品キャラクターやら、地方の御当地ゆるキャラが大挙して登場するので、だんだんワケが判らなくなっていきますが、気にしない。人間キャラの比率がどんどん下がっていって、「地球人の定義」が曖昧になっていきますが、そこも気にしない。
 更に、途中でカプコンのアクションゲーム『モンスターハンター4』のゲーム画面になって、各キャラもゲーム仕様になり、遂には「モンハンの中の人」まで登場します。うーむ。モンハンは宇宙的に有名なゲームだったのねえ(公開日初日が新作ゲームの発売日でしたねえ)。

 メインのストーリーは、「宇宙の彼方で悪の帝国に侵略された惑星が鷹の爪団に助けを求めてくる」と云う、よくあるSF映画のパターンですね。もう全体的に『スター・ウォーズ』やら、『トランスフォーマー』やら、『インデペンデンス・デイ』やらのパロディが炸裂しております。
 機械生命体の棲む惑星ゴゴゴが、悪のネマール帝国に侵略され、レジスタンスの一員である冴えない中年「オキテマス・スマイル」とその娘「オキテマス・ヨルニー」が、伝説の救世主となる男を求めて地球を訪れる。でもって、鷹の爪団の総統こそがその救世主であったという、強引な展開です。
 そこから地球と島根県を巻き込んだ壮大なストーリーが展開するのですが……。

 ぶっちゃけ、悪のネマール帝国を撃退してハッピーエンドになるのはお約束デスね。
 もう劇中で登場人物が早々にネタをバラしてしまいますから、書いても差し支えないですね。
 しかもバラすのが本作のヒロイン(だよな?)である、ヨルニー(河北麻友子)ですから間違いない。河北麻友子は本作がほぼアニメ初出演だそうで、何となく演技が浮いているような感じがしましたが、そこも含めて演出されているようで、あまり違和感は感じませんでした(まぁ、『鷹の爪』ですし)。

 大方の登場人物は監督のFROGMAN自身が手を変え品を変え、一人で何役でもこなしておりますが、さすがに劇場版ともなると監督以外にも声の出演がいます。でもその所為で予算を喰っているのでしょう。それでなくても、凝ったCGの巨大円盤なんかが登場する度にスクリーン上のバジェットゲージもどんどん減っていくのですが。
 河北麻友子の他にも、本作のゲストとして稲川淳二や、鈴木あきえ等がチョコチョコと登場しております。
 そしてクライマックスの大ネタに、大山のぶ代と佐野史郎を持ってくるのがスゴイ。
 大山のぶ代は予告編でもチラリと登場した巨大ロボの声だったりするわけですが(ロボのメカデザインも大山のぶ代本人です)、佐野史郎本人が登場したときには意表を突かれました。

 FLASHアニメに、凝ったCGのメカを出すギャグは前作でもやったネタですから、その次が「実写版」になるのは、ある意味当然か。
 では次回作では最初から佐野史郎が実写のままコスプレして登場し、アニメの部分は少しだけになってしまうのでしょうか。
 本気で実写化された総統や吉田くんが楽しみデス(もうそうなると信じてますから)。

 いや、でも次回作は既に『秘密結社鷹の爪/鷹の爪シックス ~島根は奴らだ~』と云うことになっているので、実写化は第七作目ですね。実は第六作目は劇場入口で来場者特典としてDVDが配布されておりました。
 ちなみに、この来場者特典として配布されていたDVDもまたメタなハナシでした。

 来場者特典に次回作のDVDを付けたのはいいが、バカな企画にスポンサーが付かず、それでもやっぱり「劇場版」の端くれである以上、バジェットゲージが表示されており、登場人物達が節約に節約を重ねてストーリーを進行させる内容でした。
 なんかメル・ブルックス監督のコメディSF『スペースボール』(1987年)を思い出させるギャグでした。あちらは「まだ本編の撮影途中なのに、既に海賊版の方が完成している」と云うメタ展開でしたが。

 この六作目は「突如として凶暴化した島根県が鳥取県を襲撃する」と云う、シュールなストーリーでしたが、謎解きに入る前に予算が尽きかけ、そこへ突然、田原俊彦が登場してしまい、アッと云う間にゲージがゼロになって終わってしまいました(確信犯的犯行です)。
 おかげで、この超短編な第六作は半分以上がED主題歌を歌う田原俊彦のPVと化してしまいました。しかもストーリーは投げっぱなし。
 それでも次の劇場版は「第七作」になると云い張っているのが素晴らしいデス。

 本編の方に話を戻しますが──。
 色々とアホなネタもアレコレ散りばめられておりますが、ひとつだけ心配なのは「土星はサタンの星である」と云う、誤った認識が広がることですね。
 ネマール帝国の最終兵器、惑星よりも大きな巨大ロボ〈ネマール・ジャイアント〉に対抗する為に、レオナルド博士が土星を改造して作った〈鷹の爪サターン〉──これが大山のぶ代の役ね──を指して、「帝国の滅びの予言にある悪魔の星とは、この土星ロボのことだったのだあッ」と云う下り。
 えーと。色々とツッ込みたいのは山々ですが──「地球の近くにそんなバカでかい質量を持ってくるんじゃねぇ」とか──、それを全部スルーしても「土星が悪魔サタンの星」と云うのは如何なものか。

 いや、判ってやっているのは重々承知しておりますよ。ちゃんとパンフレットの解説記事にも「土星の名の由来はローマ神話の神であるサトゥルヌスを由来とする」旨のフォローが載っていましたし。
 でもきっと、そんな訂正はほとんどの人の目に止まらず、「やっぱりサターンはサタンのことだったのね」とトンデモな知識を抱えたまま劇場を後にする人の方が圧倒的だと思いマスが……。吉田くんの云うことを真に受ける人の方が迂闊なのか(まぁ、『鷹の爪』ですし)。

 ちなみに、サトゥルヌスは農耕神で、ギリシア神話のクロノスと同一視されているのだとか。
 するとサム・ワーシントンが主演したファンタジー・アクション映画『タイタンの逆襲』(2012年)のクライマックスで登場したCG全開で溶岩弾を飛ばしまくっていた、あの神様のことですね。あの神様、土星だったのか(なんか語弊があるな)。

 全編、ナンセンスなギャグばかりかと思っていると、なんとなく良いハナシっぽく泣かせ処も用意してくれるのも劇場版のお約束ですね。
 本作でも、総統の底抜けの善人っぷりと、そんな善人ばかりが貧乏くじを引いてしまう世間の不条理さが描かれております。
 また、ダメ親父オキテマス・スマイルが体裁を取り繕って娘のヨルニーについていた嘘がバレるも、娘の方はそんな父親の嘘なんぞ、とうの昔からお見通しで、ずっと騙された振りをしていたのだと云う下りで、親子の絆が感動的に描かれたりもします。
 親子云うと、総統の出生の秘密から、鷹の爪団内部の意外な血縁関係まで明かされたりしております。フィリップ、そうだったのか。知らんかったー。

 本作のED主題歌「IRONY」がまた、鷹の爪団らしくない、オシャレでポップな曲調であるのもギャグです。
 劇中では予算不足になって、総統のデッサンがどんどん雑になっていくギャグもありましたが、このエンドクレジットは手抜きなし。この部分の映像が本作中で一番グラフィカルで綺麗でした。
 しかしホントに次の劇場版は『鷹の爪セブン』になるのかしら……。




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