2013年7月23日火曜日

飛びだす 悪魔のいけにえ 

レザーフェイス一家の逆襲 (3D)
(Texas Chainsaw 3D)

 トビー・フーパー監督による伝説的ホラー映画『悪魔のいけにえ』(1974年)の続編であります。でも正直、このシリーズは続編だったり、リメイクだったり、前日譚だったりする作品が多すぎて、いまいち取り留めが無い感じがします。それだけ人気があると云うことですけれど。
 「チェーンソー」をホラー映画の必須アイテムにしたシリーズですからね。

 ざっと復習すると、第一作後のシリーズが『悪魔のいけにえ2』(1986年)、『悪魔のいけにえ3/レザーフェイス逆襲』(1990年)。
 次に、リセットされた設定の『悪魔のいけにえ/レジェンド・オブ・レザーフェイス』(1994年)。
 更に再々リセットされたリメイク版の『テキサス・チェーンソー』(2003年)と、その前日譚『テキサス・チェーンソー ビギニング』(2006年)と続く。
 本作はそれらとはまた異なるシリーズであり、元祖『悪魔のいけにえ』の続編と云う設定で、三回目のやり直し。第四版。平行世界設定としても、分岐しすぎなのでは(笑)。
 今回の監督はジョン・ラッセンホップ。犯罪アクション映画『テイカーズ』(2010年)の監督さんですが、そっちは未見でしたので本作が初めてになります。

 元祖以外のすべての作品を無かったことにして始まるわけで、デニス・ホッパーの怪演が光る『~2』をスルーするとは何としたことか。せめて登場する保安官の名前くらい踏襲するとか、保安官役にはデニス・ホッパー似の役者さんを起用するとかの配慮を見せて戴きたかったところです(ぷんぷん)。
 まぁ、そうは云っても、正統的な続編にしようと云う製作サイドの真摯な姿勢が伺える作品でして、これはこれでアリなのではないかと思われました。保安官の名前も「フーパー保安官」でしたので、これは元祖のトビー・フーパー監督へのリスペクトですね。
 血飛沫バリバリなスプラッタ・ホラーでありますが、家族の絆とかも描かれ、ちょっとイイハナシぽいところもあります。いや、その所為でツッコミ処がいろいろと噴出してしまうのですが、そこも含めてイイ感じのB級映画です。

 如何なものかと思うのは、このヘンテコな邦題ですねえ。3D上映が前提なのは判りますが、「飛びだす」と云う前時代的なフレーズはギャグなのか。本作には、別にコメディ的なところなどありません。真っ当なB級ホラー映画です。
 一応、3Dの効果を狙って、レザーフェイスさんが振り回すチェーンソーが、画面に向かって突き出されたりする演出もあります。それなりに「飛びだして」はくれますが、そういう演出は劇中の所々にしかなく、別にわざわざ3Dで観なくても良さげな作品であるのも正直な印象です。

 アバンタイトルで、元祖『悪魔のいけにえ』をダイジェスト的に紹介する演出がスピーディで判り易いです。撮り直しではなく、元祖のフィルムを使用しているようです。
 人間の皮膚を剥いでつぎはぎした仮面の大男が登場し、五人の若者達が災難に遭うと云うシンプルな筋書き。最後に一人生き残った女の子が脱出に成功し、難を逃れる。ここを観れば、第一作を全部見直さなくても大丈夫。
 そして通報を受けたパトカーが殺人鬼の家の前に到着し、保安官と殺人鬼一家が対峙する。
 本作は第一作の直後から幕開けとなります。

 殺人鬼一家と云っても、全員が人殺しではない。と云うか、殺人鬼なのは一人だけで、残りの皆さんは理性的な人達です。ただ、身内にいる異常者を匿っているだけ。
 通称「レザーフェイス」と呼ばれているのは、このソーヤーさん一家の息子ジェドでありまして、保安官が家の外から「ジェドを引き渡せ」と呼びかけても、一族の者達は頑として譲らない。一族の結束は固く、手に手に銃を持って立て籠もっている。
 結構、沢山の人達が登場します。このへんが新しいところですね。家長である爺さん(やっぱりグランパがいる)と、その息子たち、息子たちの奥さん、生まれたばかりの赤ん坊……。
 ここでソーヤー一家を演じている役者さん達は、元祖に出演していたジョン・デュガン(同じグランパ役)、ガンナー・ハンセン(初代レザーフェイス役)、『~2』でレザーフェイスの兄弟役だったビル・モーズリーといった面々です。してみると『~2』を全スルーしているわけでは無かったのか。

 冷静なフーパー保安官(トム・バリー)の粘り強い交渉が実を結び、ようやくグランパがジェドの引渡に応じようとしたところへ、余計な茶々を入れに現れる一団。何とも独善的な地元の自警団(自称)の連中。
 おかげでまとまるハナシもまとまらなくなり、挑発がエスカレートして、遂には銃撃戦に。
 正義は我にアリと狂信的な自警団達は、ソーヤー一家皆殺しの惨劇を引き起こしてしまう。
 異形の殺人鬼よりも、ともすれば理性的な一般人の方が凶暴で、正義を信奉するが故にどんな残酷なことも平気でやってしまう、と云うのはよくあることです。クライヴ・バーカー監督の『ミディアン』(1990年)をチラリと思い出しました。

 ソーヤー一家は皆殺しとなったが、現場では赤ん坊が一人だけ生き残っていた。子供のいない自警団員がそれを我が子として連れ帰る(まだ息のあった母親から強引に取り上げるあたりが外道です)。
 焼き払われ、炎上するソーヤー家。一族は皆、討ち死に。だが頑丈な地下室があったことを知る者はいない。……そして二〇年の歳月が流れた。

 ヘザーと名付けられた赤ん坊が成人したある日、見知らぬ親戚が亡くなったと報せが届く。遺産相続の手続きと併せて、出生の秘密を解き明かそうと友人達と共にテキサスへ向かうことになる。途中で拾ったヒッチハイカーと併せて、五人の若者達がテキサスの地へ。
 「五人の若者達」と云うのが、元祖をなぞる展開です。もう最初から犠牲者フラグ立ちまくり。

 B級ホラー映画ですから、演じる俳優さん達にはまるで馴染みがありません。アレクサンドラ・ダダリオを始めとして、トレイ・ソングス、タニア・レイモンド、ケラム・マレッキ=サンチェス、ショーン・サイポス。知らない人達ばかりです。
 しかし、この中に未来のヴィゴ・モーテンセンや、マシュー・マコノヒーがいるのかも知れません。あるいはレネー・ゼルウィガーとか。ジェシカ・ビールも『テキサス・チェーンソー』で売れ始めましたし、将来有名になる人が……いないとも限らないか。
 他にも、本作には既にちょっと有名な若手俳優がおりました。テキサス到着後に登場する若い保安官を演じているのが、スコット・イーストウッド。かの名匠クリント・イーストウッドの息子さんですねえ。父上もB級映画の端役だったこともありますし、頑張って戴きたい。

 冒頭でソーヤー一族は全滅したのではと思われましたが、大富豪に嫁いだ祖母がいたようです。そして相続した豪邸には、地下へ通じる奇妙な隠し扉がある。祖母は館の地下に、ある人物を長年、匿い続けていたらしい。
 回想シーンでチラリと登場するお祖母さん役は、元祖にも出演していたマリリン・ヴァーンズでした。あの絶叫クィーンも上品にお歳を召されていますねえ。
 このあたりの事情を知っていそうな素振りの弁護士は、関わり合いになりたくないらしく「祖母からの手紙を読むように」と念押しして、逃げるように去って行く。もちろん、ことの真相が書かれた手紙が簡単に読まれる筈が無いのはお約束ですね。

 隠し扉を見つけて、独りでホイホイ地下に降りていった不用心な野郎から、血祭りに上げられると云うテッパン展開。長年、地下に幽閉されていたレザーフェイスこと、ジェド・ソーヤーが遂に解き放たれるときが来たのだ。レザーフェイスさんが死ぬワケ無いのは判ってましたともさ。
 ここで不思議なのは、亡くなったお祖母さんはレザーフェイスには襲われなかったことです。むしろ毎日、食事を運んで養っていたらしい。レザーフェイスも身内は襲わないのか。
 二〇年前、焼け跡から孫であるレザーフェイスを助け出し、今まで館の地下に匿っていたことが察せられます。
 お祖母さんが存命中は、言いつけを守って地下でひっそり暮らしていたレザーフェイスさんですが、お祖母さんが亡くなった以上、もはや止めるものは誰もいない。

 と云うわけで、相続した豪邸の中ではしゃいでいると、片っ端からヤラれていきます。エッチなことするバカップルがいるのも安心の定番展開。
 しかしこのまま館の中で、こじんまりと惨劇が進行していくわけではありませんでした。逃げ出した主人公を追って、チェーンソー持ったまま街中へ飛びだすレザーフェイスさん。むう。ある意味では邦題は正しかったのか。

 後半に入ると二〇年前の因縁がむくむくと現れてきます。この街の町長こそ、当時の自警団の団長だったのだ。ハートマン町長(ポール・レイ)は「死んだ筈のジェド・ソーヤー」が街中でチェーンソー振り回して騒ぎを起こしたことを知り、激怒する。
 「今度こそ、ソーヤーの一族を根絶やしにしてくれる」と誓う町長です。なんだか「ハートマン家VSソーヤー家」と云う図式が成立するのですが、劇中では町長がここまでソーヤー家を憎む理由が判りません。
 このあたりは、もし更なる続編が製作された暁には、後付けで設定されるのでしょうか。

 一時的に警察に身柄を保護された主人公は、フーパー保安官が保管していた二〇年前の事件の記録から、遂に自身の出生の秘密を知る。殺人鬼レザーフェイスは自分の従兄弟だったのだあッ。
 更に、レザーフェイス抹殺を企む町長の陰謀にも巻き込まれ、クライマックスのハートマン家対ソーヤー家の対決へと雪崩れ込みます。
 まさかそんなストーリーになるとは予想外でした。「レザーフェイス一家の逆襲」と題されながら、冒頭で一族皆殺しにされ、もはや一人しかいないのに「一家」じゃないだろうと思ってましたが、ソーヤー家の生き残りとして主人公も参戦することになろうとは。

 主人公が自分の年下の従姉妹であると判った瞬間、レザーフェイスさん大人しくなっちゃいます。やはり血族の絆は大切ですね(「年下の従姉妹」に萌えたのか)。
 なんか先日観た『サイレントヒル : リベレーション』(2013年)と似たような展開です。情け無用の殺人鬼が、一転して主人公を守る強力な守護者となる。

 そして激闘の末、遂に二〇年前の恨みは晴らされる。暴虐の限りを尽くしたハートマン町長とその一派は天誅を喰らい、主人公は相続した館の新しい主人として、レザーフェイスさんと末永く幸せに暮らすのでした。めでたしめでたし……って、そんな。
 いやいや。家族の絆は大切ですし、生き別れの従兄弟と再会できたのも、自分のルーツを確認出来たのも、めでたいことではありますけどね。
 でもその前に、その従兄弟のお兄さんはチェーンソーで貴方の友達を切り刻んだりしているのですけど、そこはスルーですか。それでいいのか。
 なんかウヤムヤの内にハッピーエンドになってしまいました。うーむ。テキサスとはそんな理不尽なことが起こっても不思議ではない土地柄なのでしょうか。懐が深い……いや、ヘンだ。

 エンドクレジット後にオマケが付きます。今日もチェーンソーは絶好調のようデスねえ。




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