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2013年6月8日土曜日

G.I.ジョー/バック 2 リベンジ (3D)

(G.I. Joe : Retaliation)

 たまに主役が交代するシリーズものがあります。
 私が知っている一番顕著な例は、B級スリラー映画『マニアック・コップ』(1988年)でして、第一作で主演したブルース・キャンベルが、続編であっさり殺されたときには目がテンになりました。その後、これはこのシリーズのパターンとして踏襲されることになったそうですが……。
 よもや『G.I.ジョー』(2009年)でもそれをするとは思いもよりませんでした。

 いや、予告編の段階からブルース・ウィリスとか、ドウェイン・ジョンソンとか、あからさまに新キャラが幅を利かせていたので、前作の主役チャニング・テイタムは出演しないものと思い込んでおりました。
 そしたら、ちゃんとチャニング・テイタムも出演している。しかもなんかドウェイン・ジョンソンと仲よさそう。これは一体、どうしたことかと思っていると、前半の早い段階で……。

 最強部隊 〈G.I.ジョー〉 全 滅 。一緒にチャニング・テイタムも 殉 職 。

 潔いと云えば潔いが、そんなことするなら最初から出さなくても良かったのでは。殉職しちゃうとパート3で復帰できなくなってしまうではないか。
 前作のスティーヴン・ソマーズ監督が降板し、ジョン・チュウ監督に交代したので、リブートされる考えもあったそうですが、ギリギリ続編と云うことで、設定はそのまま踏襲されました。
 プロローグ部分で、前作の「ナノマイト事件」もサラリと語られますし、コブラコマンダーとデストロは逮捕されて収監中、ストームシャドーは逃亡中であると説明されます。

 本作の脚本は、『ゾンビランド』(2009年)のレット・リースとポール・ワーニックが担当しており、前作よりは楽しいものになっております。少なくとも「氷山が沈んでくる」なんぞと云う、トンデモ展開は今回はありませんでした(ちょっと残念)。
 監督のジョン・チュウは、ダンス映画『ステップ・アップ2 : ザ・ストリート』(2008年)とか、ジャスティン・ビーバーのドキュメンタリー映画を監督したりしている方だそうですが、どちらも観ておりません。それが突然、まるで畑違いの娯楽大作を監督するとは、大抜擢です。
 でもちゃんと作品として仕上げているし、腕は確かな方です。

 前作からの続投組で、チャニング・テイタムのように殉職しない方と云うと……。
 まずは、スネークアイズ役のレイ・パークです。でもやっぱりマスクして台詞がありません。その分、見事な体術を披露してくれます。
 仇敵ストームシャドーも、イ・ビョンホンのままです。これを変えるわけには参りませんね。
 コブラ側のキャラとして、前作で大統領とすり替わったザルタンもそのままですので、アーノルド・ヴォスルーが続投しておりますが、ずーっと変装しているので実は出番が少ない。
 もっぱら活躍しているのは、入れ替わられた大統領役のジョナサン・プライスです。こちらが一人二役で頑張っておられる。

 コブラコマンダーも登場しますが、今回は端からマスク着用、声も合成ボイスなので、中の人はジョゼフ・ゴードン=レヴィットではありません。ちぇっ。
 おまけにデストロにも出番なし。一応、姿だけはチラ見せされますが、「お前にはもう用はない」とコマンダーの非情の一言で、台詞も何もないまま御退場です。だから、中の人もクリストファー・エクルストンですら無かったデスねえ。

  G.I.ジョー側のメンバーでは、レイチェル・ニコルズも、マーロン・ウェイアンズも、忘れられております。司令官役のデニス・クエイドもか。こうなるとチャニング・テイタムだけ殉職させられた展開には、悪意を感じますね。
 代わって、新キャラとして登場するのが、 ドウェイン・ジョンソン、ブルース・ウィリスと云った面々。いや、これはもうナニカ別の映画でしょうと云うくらい、おかしな感じデス。
 それからコブラ側の新たな刺客として、レイ・スティーヴンソンが登場しております。こちらは新キャラでも馴染みやすい。やっぱりこの人は、悪役の方が板に付いてますね。

 前作のラストで、「ナノマイト事件」は解決したが、大統領は偽物にすり替えられ、今後の不安な成り行きが案じられると云う展開でしたので、それがそのまま引き継がれて進行していきます。やはりボツにするには惜しいネタでしたか。
 偽大統領ザルタンの仕掛けた罠により、〈G.I.ジョー〉部隊は全滅。組織は解体。
 アメリカは新設の特殊部隊〈コブラ〉によって守られるのだと宣言される。

 かろうじて生き残ったドウェイン・ジョンソンら数人のメンバーは、初代ジョーであるブルース・ウィリスの助けを借りて、コブラの陰謀を阻止せんと戦いを挑んでいく。
 ドウェイン達が引退したブルースの住居を訪問するくだりが、『RED レッド』(2010年)のようです。引退してもなお油断なく、家中に武器を隠し持っているブルースがアブない人です。

 まぁ、そこまではいいのですが……。
 今回、何が驚いたかと云って、ストームシャドーの扱いがガラリと変わったのが驚きでした。本作でのストームシャドーは、実は敵ではありません。
 スネークアイズとのライバル関係はそのままですが、コブラのメンバーになっていたのは成り行き上、仕方のないことだったのだと説明される。前作の「師匠殺し」の汚名も、実は誤解。
 海外ドラマによくある「本当はこうだった」解説が素晴らしく強引で笑ってしまいました。

 本作の前半は、G.I.ジョー部隊全滅だとか、コブラコマンダーの脱獄だとかと平行して、もうひとつのプロットが進行していきます。
 それが「ストームシャドー捕縛作戦」。東京に今なお生き続ける、現代ニンジャ〈嵐影一族〉──ちゃんと「アラシカゲ」と発音されている──の師範の命を受けたスネークアイズとジンクス(エロディ・ユン)は、不始末しでかした不肖の弟子ストームシャドーを捕らえるべく、ヒマラヤに派遣される。
 ちなみに、ジンクスはストームシャドーの従姉妹と云う設定(笑)。
 あ。「アラシカゲ」だから「ストームシャドー」だったのか(いや、逆か?)。

 予告編で盛大に流されるヒマラヤの断崖絶壁でのニンジャ戦闘は、実は本筋には無関係と云うのが笑えます。まぁ、本作はストーリーなんて、あって無きが如しですから、アクションの見せ場が凄ければ、それでいいのですが。
 ここはなかなか3Dで鑑賞するには、よく考えられた画面と演出です。CGとは云え、奥行きのある描写でした。
 何故、ヒマラヤの奥地にニンジャ軍団──「忍者」ではないよな──がアジトを構えているのか、なんて訊いてはいけませんね。

 すったもんだの末にストームシャドーを捕らえて、東京で尋問してみれば、師匠殺しは濡れ衣だったと判明する。実はコブラのザルタンの計略だったのだ。
 ザルタンに騙され人生を狂わされたストームシャドーは、今回ばかりはスネークアイズに協力して、コブラの陰謀阻止に共闘することを承諾する。そしてストームシャドー、スネークアイズ、ジンクスの三人が、ドウェイン達と合流です。
 あれ。イ・ビョンホンがブルース・ウィリスと仲間になってしまいましたよ?

 予告編ではブルース・ウィリスが拳銃を撃つと、イ・ビョンホンが弾丸を空中でぶった斬る場面がド迫力でしたが、本編にはそんな場面はありません。関係ない二つの場面を編集し、さも二人が直接対決するかのように思わせた予告編だったのです。
 確かに、各々の場面はちゃんとありますけどね(別々に)。予告編詐欺だッ。

 前作では、東京と云いながら「日本じゃないドコカ」が紹介されていましたが、本作ではちゃんと西新宿の高層ビル群を映して「東京」と紹介してくれるので、日本人としては嬉しいです。
 でも、あの新宿上空からの空撮だと、いかにも〈嵐影一族〉の秘密道場は、新宿の京王プラザホテルの中にあるように思われるのですが……。

 ともあれ、コブラの陰謀は着々と進行していき、核保有国だけによる「核サミット」が開催される運びとなる。参加するのは、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、イスラエル、インドと北朝鮮の八カ国だから、N8とか云うんですかね。
 ホントにこの八カ国だけなのか。パキスタンとか、イランは入れなくて良いのか。一応、劇中ではパキスタンの核ミサイルは、G.I.ジョーが全回収していたので、もう保有国とは認められないのか(笑)。
 サミットに出席する北朝鮮代表が、何となく金正恩に似ているのが微笑ましいデス。

 ここで合衆国大統領(に化けたザルタン)による強権発動で、各国の核武装を強引に解除する手際が、なかなかお見事でした。相当、危ない橋を渡る作戦ですが、ホントにこの手を使えば全世界の核弾頭を一掃できそうだと思えてしまいました(一瞬だけ)。
 ダメか。潜水艦に搭載された弾頭のことを考慮していなかったか。
 それに電磁パルスの影響についてもスルーされていましたからね。

 強引に「核なき世界」を作り上げるところまでだと、「コブラって、世界平和の為に頑張っていそう」と錯覚してしまいますが、実はその後がちゃんとある。
 核に拠らない攻撃兵器が用意されていて、既に衛星軌道上に展開済であると宣言される。ドウェイン達がモタモタしているうちに、コブラは着々と準備を進めていたようです。

 色々とツッコミ処のあるストーリーですので、いちいちツッコミ入れていては疲れるだけなのですが、核エネルギーを使用しない質量兵器と云うのが、何となく理に適っているようです(いや、それについてもちょっと訊きたいことが多々あるんですケド……)。
 超高密度のタングステン弾頭を軌道上から落としてやるだけで、都市なんぞ一発で消滅。
 デモンストレーションでいきなりロンドンが壊滅してしまいました。CGを使うとナンデモ出来ますねえ。荒唐無稽とは云え、大迫力の映像と音響でした。

 まぁ、最後は最強助っ人のブルース・ウィリスが囚われの大統領を救出し、ドウェイン・ジョンソンらがコブラの軌道兵器を破壊して世界を救うワケなので、クライマックスのドンパチは安心して観ていればよいでしょう。
 部下に後始末を任せて、コブラコマンダーだけ一足先に脱出するのもお約束です。
 レイ・スティーヴンソンとドウェイン・ジョンソンの決着も付き、イ・ビョンホンは自らの汚名を雪ぎ、万事めでたしのハッピーエンド。
 でも質量兵器を軌道上で爆破したのはマズかったのでは……なんてツッコミもスルー。
 世界に平和が戻ったのはいいけれど、イギリスに対するフォローが全くないのも清々しい(笑)。




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