2013年5月7日火曜日

ラストスタンド

(The Last Stand)

 何はともあれ、アーノルド・シュワルツェネッガー大先生が銀幕に復帰したのが嬉しいデスね。二〇〇四年からカリフォルニア州知事となり、二〇一一年に任期終了となるまで、ほとんど映画には出演しておりませんでした。色々スキャンダルとかもありましたし。
 よく考えると主演作は『ターミネーター3』(2003年)が最後でしたか。ジャッキー・チェン主演の『80デイズ』(2004年)にチョイ役で顔出しもしておりましたが。
 『ターミネーター4』(2009年)ではCGキャラでしたし、『エクスペンダブルズ』(2010年)もカメオ出演でしたからね。

 それが本作で久々の主演。しかもアクション映画。十年一日とは、まさにこのことです。
 でもちょっと老けたか。劇中では「もう歳だな」なんて自虐ネタもブチかましてくれますが、もうしばらくは頑張って戴きたい。
 できれば出演作品のジャンルもレパートリーも増やしてくれるなら、それに越したことはありませぬが、どう考えてもアクション映画か、さもなくばコメディ映画くらいしか似合わないような気がします。いや、味わい深い人生ドラマにも挑戦してもいいとは思いマスが、基本的にシュワルツェネッガー大先生は大根ですから……。
 本作でもかなり大味な演技を披露してくれます。だが、それがいい。

 さて、本作の監督は韓国人のキム・ジウン監督。ホラー映画の『箪笥』(2003年)とか、イ・ビョンホン、ソン・ガンホが出演した韓国ウェスタン『グッド・バッド・ウィアード』(2008年)、あるいは『悪魔を見た』(2010年)の監督さんですが、今までスルーしておりました。
 本作がジウン監督のハリウッド進出第一作となります。

 ストーリーはシンプルそのもの。カーチェイスとガンアクションのみのB級映画。
 逮捕されていた南米の麻薬王が手下の手引きで脱走、ラスベガスから猛スピードでメキシコ国境へ向けて南下していく。そのあまりのスピードには、FBIのヘリですら追いつけない。手下共の逃走幇助もぬかりなく、足止めの為の検問や、追跡部隊も片っ端から撃破される。州兵への出動要請も間に合わず、もはや打つ手なし。
 このまま国境外への逃亡を許してしまうのか。
 しかしひとつだけ残った希望が、国境手前にある小さな田舎町ソマートン。爆走する逃亡犯の阻止は、田舎町の保安官とその仲間達の手に委ねられる。

 云うまでも無く、この田舎町の保安官役がシュワルツェネッガー大先生です。事件らしい事件の起こらない、平和そのものの田舎町の保安官にしては、観察力があり、機転が利き、腕っぷしも強い。
 田舎のグータラ保安官だろうとナメてかかった悪党共が、痛い目を見るというのは、お約束過ぎる展開です。
 実は保安官は、かつてLAの麻薬捜査班で鳴らした猛者であり、部下を殉職させた責任を感じて、引退までの残りの期間を静かな田舎町に埋もれて過ごすことを決意していたのだった。ただのコックだと思ったら、元CIA捜査官だったという某セガールと似たような設定ですね。

 共演となる保安官事務所の面々が、ジェイミー・アレクサンダー、ルイス・ガスマン、ザック・ギルフォードの三人。気の強い姉御、メタボな親父、未熟な若造と、それぞれにパターンな設定です。
 ジェイミー・アレクサンダーは、アメコミ映画『マイティ・ソー』(2011年)で、浅野忠信らと一緒にソーの仲間の一人を演じておられました。今回もなかなか勇ましい女性を演じております。
 ルイス・ガスマンは安定のバイプレイヤーですね。お人好しの警官か、マフィアのチンピラのどちらかばかりと云う感じデスが、『センター・オブ・ジ・アース2/神秘の島』(2012年)なんかにも出演しておられました(ガバチョ役ね)。コメディ・リリーフとしては申し分なし。
 ザック・ギルフォードは若手俳優なので、本作以外に存じませんでした。ジェームズ・ガン監督の『スーパー!』(2010年)にも出演しているそうですが、覚えが無い……。

 これに加えて、仲間になるのが、ジェイミーの元カレで、たまたま前の晩に泥酔して保安官事務所に留置されていたロドリゴ・サントロ。ブラジルでは絶大な人気のイケメン俳優だそうです。実は『300〈スリーハンドレッド〉』(2007年)では、ペルシア帝国のクセルクセス役だったと知って、ちょっとビックリ。
 そして田舎町のガンマニア役として登場するのが、ジョニー・ノックスビル。MTVのお馬鹿番組『ジャッカス』(2002年~)のメインキャストで知られております。本作でも、ちょっとイカれた人の役です。
 何故、メキシコ国境沿いの田舎町に、やたらと銃器に詳しく、武器博物館を設立できるほどコレクションを溜め込んだガンマニアがいるのか──なんて設定は、B級映画では問うてはならん事ですね。

 麻薬王の逃亡を手助けする組織の武装集団を向こうに回し、この街で好き勝手はさせんと戦いを挑むのが、少人数の保安官事務所の面々。
 どこかで観たような展開です。ぶっちゃけ、ハワード・ホークス監督でジョン・ウェイン主演の傑作西部劇『リオ・ブラボー』(1959年)のリメイクのようです。
 シュワルツェネッガー大先生がジョン・ウェインであるのは当然として、酔いどれのロドリゴ・サントロがディーン・マーティンだったり、若造のザック・ギルフォードがリッキー・ネルソン的なポジションになるのか。
 でも本作でのザックは活躍の機会もなく初っ端に撃たれて退場してしまいますが。
 「最年少の若造が真っ先にやられ、オヤジ達に怒りの炎が燃え上がる」図と云うと、『エクスペンダブルズ2』(2012年)と同じ構図です。

 ジウン監督は『グッド・バッド・ウィアード』でも、『続・夕陽のガンマン』(1966年)を翻案しておりましたから、今度もその手を使ったのか。しかし翻案と云うには、モロにそのまんまと云う感じなのですが。
 『リオ・ブラボー』の現代的翻案と云うと他にも、ジョン・カーペンター監督の『要塞警察』(1976年)なんかが思い浮かびますが、本作の方が元ネタに近いと云うか、判り易いです(それはいいことなのか?)。
 また、刻々と麻薬王が街に近づいてきており、立ち向かえるのは自分達しかいないと云う展開が、フレッド・ジンネマン監督の『真昼の決闘』(1952年)のようでもあります。

 その他の配役として、FBIの陣頭指揮を執るのが、フォレスト・ウィッテカー。今回はあまり出番はありませんが、独特の存在感です。
 逃亡する麻薬王役が、エドゥアルド・ノリエガ。『バンテージ・ポイント』(2008年)で、フォレスト・ウィッテカーとも共演しておりましたですね。麻薬組織の三代目首領であり、若い頃からの道楽で運転技術はプロのレーサー並みという設定。劇中で見せるシボレー・コルベットのカーアクションは見せ場のひとつです。気合いの入ったカースタントでした。
 そして国境である渓谷に橋を架けてボスを出迎えようとする武装集団のリーダー役がピーター・ストーメア。こちらも色々な作品に──主に悪役で──出演されている名バイプレーヤーですね。今回もまた安定した悪役です。クライマックス前までの銃撃戦で、保安官事務所の面々と撃ち合う中ボス的ポジションです。
 もう一人、名脇役というと、最初に殺される農夫の役で、ハリー・ディーン・スタントンがチラッと顔見せしてくれました。

 ガンアクションが見せ場でありますので、本作の銃器考証はマニアックに設定されている……ようですが、私にはよく判りませんでした(汗)。
 パンフレットの解説記事によると、保安官達の武装には往年の名器が多く、悪党共には最新式の銃器が配され、色分けが明確になっているようです。
 まぁ、あまり銃の知識がなくても、ヴィカーズ重機関銃やトンプソン・サブマシンガンが骨董品であると云うのは判ります(マニアのコレクションですし)。
 しかしさすがに戦時中の重機関銃は、銃社会のアメリカであっても「実包を撃った瞬間に法律違反になる」と前置きされます(でもバリバリ撃っちゃう)。

 また、いかにソマートンが田舎町であるとしても、街中の往来でド派手に銃撃戦を展開して人死にが出ないと云う描写の為に、冒頭で布石を打っております。
 地元の高校アメフト・チームの試合の応援の為に、町民のほとんどが出払って明日まで帰ってこないと云うことになっている。おかげでその日のソマートンはほぼ無人状態。残っているのは試合に興味の無い一握りの住民のみ(主に老人)。
 劇中での時間経過は、麻薬王の逃走が深夜の三時頃で、ソマートンでの決着が朝の七時頃になると云うスピード展開です。

 あまり深く考えずにバリバリと銃撃戦を楽しむ脳筋映画でありますが、劇中で気になった描写がひとつ。
 麻薬王到着までに抵抗する保安官達を排除しようと、朝っぱらから銃撃戦が行われるワケですが、悪党の一人が民家に侵入して射撃位置を確保しようとする。民家にはロッキングチェアに腰掛けた婆さんが一人。
 婆さんを脅しつけた後に表通りの様子を窺う悪党を、背後の婆さんがやおら傍らにライフルを取り出して一撃食らわし退治する。
 思わぬ助っ人にシュワルツェネッガー大先生も目を丸くすると云うユーモラスな場面ですが、アメリカでは婆さんですら手の届くところにライフル置いてるのか(少なくともそれが不自然では無いと云う演出になっている)。うーむ。怖ろしい。

 中ボスであるストーメアと武装勢力を退治し終わった頃、コルベットを駆る麻薬王が到着します。
 実は冒頭で、アメフト観戦に出払う町民の中に町長もいて、町長の愛車が表通りに乗り捨てられているという、実に判り易い伏線が張られております。しかも真紅のシボレー・カマロ(スーパーチャージャー仕様)。
 これがクライマックスで、麻薬王の駆る漆黒のシボレー・コルベットとの激烈カーチェイスに使用されるというテッパンの展開です。外しませんねえ。善玉カーと悪玉カーが共にシボレーであるのが作為的ですがキニシナイ。
 尤も、田舎道でのカーチェイスであり、トウモロコシ畑を薙ぎ倒しながらの爆走になるので、スピード勝負にはならなかったのがちょっと残念です。

 銃撃戦、カーチェイス、更には国境に架けられた橋の上での肉弾戦と、必要なメニューはすべてこなしております。
 とても還暦過ぎているとは思えぬ活躍ぶりです。多少、くたびれた感は漂っておりますが、州知事時代のブランクを感じさせないのはお見事でした。

 一件落着後、FBIがようやく追いついてきたり、試合観戦から帰ってきた町長が街の惨状と愛車の無残な姿を前に呆然とすると云う、お約束のオチまでしっかり付けてくれました。
 意外な展開はほとんどなく、安心して楽しめるB級映画であります。観終わった後には何も残らず、キレイさっぱり忘却して一切差し支えないのが、いっそ清々しい。




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