2013年5月10日金曜日

L.A.ギャング ストーリー

(Gangster Squad)

 四〇年代から五〇年代にかけて、ロサンゼルスで警察がギャング達と抗争を繰り広げていたと云う同名の実録ルポ小説を基にした映画化作品です。原作者のポール・リーバーマンは、ピュリツァー賞受賞歴もあるベテランのジャーナリストであるそうで、この原作も真実の記録であると銘打たれております(早川書房刊)。
 これに脚色を施して、古式ゆかしい犯罪映画に仕立てたのが本作。
 冒頭、「これは事実に着想を得た物語である」と、前置きが入ります。「事実に基づく」と「事実に着想を得る」では、若干ニュアンスが異なりますが、フィクションの度合いが違うのか。

 監督はルーベン・フライシャー。『ゾンビランド』(2009年)で監督デビューし、『ピザボーイ/史上最凶のご注文』(2011年)を経て、本作の監督と製作総指揮を務めております。
 『ゾンビランド』のようなホラー・コメディから、今度は一転してシリアスな犯罪映画です。本作は、実に懐かしいギャング映画の趣です。
 ギャングが車から身を乗り出してトンプソン機関銃を撃ちまくる図なんてのは典型的ですね。他にも、街角の靴磨きの少年から情報を得る、なんて描写もあって、パターンすぎるような気もしますが、時代背景の描写に雰囲気があるのでヨシとしましょう。
 豪華なクラブのセットもそうですが、喫煙描写が多いのも興味深いです。

 本作に登場するミッキー・コーエンは、実在した有名なギャングですね。
 バリー・レビンソン監督で、ウォーレン・ベイティが主演した『バグジー』(1991年)では、ハーヴェイ・カイテルがミッキー・コーエンを演じておりました。
 また、カーティス・ハンソン監督で、ラッセル・クロウが主演した『L.A.コンフィデンシャル』(1997年)では、ポール・ギルフォイがミッキー・コーエン役でした。
 そうかー。ブラス警部もギャングだったのねえ、と云うのは『CSI : 科学捜査班』のファンでないと判らんですね。

 本作でこのギャングの親玉ミッキー・コーエンを演じているのは、ショーン・ペンです。ユダヤ系で、若い頃はボクサーとしても鳴らしていたと云う経歴を、見事に演じております。漂う威厳と貫禄が流石デス。
 もう初っ端から、対立するシカゴの組織の手下を一人、無残に処刑したりしております。文字通りの、八つ裂きの刑です。エゲツない。
 シカゴのマフィアと云うと、有名なのはアル・カポネですが、この時代には亡くなっているので、敵対しているのはカポネの後継者の誰かか。

 さて、ギャングがのさばり、麻薬、売春、賭博、殺人が横行する、何でもござれな悪徳の街がロサンゼルスです。司法も警察も賄賂を受け取って、見て見ぬ振りですが、しかし正義を貫く者がいないわけではない。
 それが本作の主人公、熱血刑事ジョシュ・ブローリン。身重の奥さん(ミレイユ・イーノス)がいるのに、無茶やって暴走する熱血ぶりです。

 強引な捜査で新聞沙汰を起こしたりしておりますが、それがロス市警本部長の目に止まる。
 本部長役はニック・ノルティでした。先日もジェイソン・ステイサム主演の『PARKER/パーカー』(2012年)でお見かけしました。まだまだ現役なのは嬉しいデスが、最近はチョイ役で脇を固めるのに徹しておられるのか。
 本作でもニック・ノルティはジョシュ・ブローリンに指令を与えますが、直接活躍したりはしませんです。

 本作の惹句に「ロス市警が、キレた」とありますが、より正確にはニック・ノルティがキレました。もはや悪党共には我慢ならん。特別捜査班を組織し、ギャング共から街を取り返すのだ。
 現代では考えられませんが、逮捕の必要は無く、証拠の書類も残さず、ゲリラ戦を挑んで敵の組織を叩き潰せ、とはまた無茶な指令です。古き良き時代……だったのか。
 骨のある正直な警官であることを見込まれたジョシュは特命を受け、特捜班を結成する。

 ちょっと気になるのは、劇中で本部長がLAの街について言及する下りです。
 「この街はインディアンからメキシコ人が奪い、メキシコ人から白人が奪った。しかし今ではギャング達に奪われている。何としても街を取り戻さねばならん」
 まったく同じフレーズをショーン・ペンも繰り返しております。インディアン>メキシコ人>白人ときて、今は俺様のものだ、と云うワケですが、そんな侵略の歴史を強調してどうする。
 登場人物は四〇年代のキャラですから、特に罪悪感があるわけでは無いのでしょうが、現代の映画として製作者は「正しい歴史認識」を持っていますよぉ、と云うアピールなんですかね。
 なんか重要なことらしいので、劇中では二回繰り返されております。そうする理由が日本人にはイマイチ、ピンと来ませんが。

 特捜班を結成するに当たってのメンバー集めがお約束的な展開です。
 当初は市警の中から「成績優秀なもの」を候補に選ぼうとしていたジョシュですが、奥さんから一蹴されるのが笑えます。奥さん曰く、「優秀な人達はすぐに出世するから、ギャング達の買収の標的にされるわ。選ぶなら買収されそうにない人の中から選びなさい」
 即ち、人事考課では問題アリな不良警官ばかりとなるのですが、いずれも一芸に秀でた癖のある奴らです。この奥さんの人選が的を射ていたのは、後の展開で証明されます。素晴らしい内助の功。

 かくして特捜班は独立愚連隊も同然となり、〈ギャングスター・スクワッド〉と命名される。
 いちいち名前を覚えるのは面倒ですが、キャラの立った連中ばかりなので識別するのは簡単です。

 黒人でナイフ投げの達人、アンソニー・マッキー。
 老齢だが銃の名手、ロバート・パトリック。
 諜報活動に秀でた学者肌、ジョヴァンニ・リビシ。
 無口なメキシコ系、マイケル・ペーニャ。
 そしてイケメンで女たらしの遊び人、ライアン・ゴズリング(以下、ゴズりん)。

 なんかもう、『太陽に吠えろ』でも観ているようで、全員ニックネームで呼び合った方が似合っていそうです。一人ずつ「○○デカ」と命名してもいいくらい。
 実際の特捜班はもっと大勢いたそうですが、映画化に際してキャラが整理集約されました。
 他にもミッキー・コーエンの情婦役として、エマ・ストーンが出演し、ゴズりんと深い仲になったりします。しかし画面に花を添えてはおりますが、終盤近くまでエマ・ストーンの扱いが小さいのが残念。

 そして彼らはバッジを外し、警官であることを伏せて、組織に戦いを挑んでいく。でもコレって、手段を選ばぬ無法な捜査ですね。いや「捜査」と呼ぶよりも「襲撃」と呼ぶべきか。
 令状なしにミッキー・コーエンの屋敷に侵入し、盗聴器を仕掛けたりもしますし。
 違法なカジノを襲い、麻薬取引現場を襲い、ギャングの収入源をことごとく断ち切ろうとする。派手な銃撃戦やカーチェイスといったアクション・シーンも外しません。

 中盤は、この〈ギャングスター・スクワッド〉の活躍ぶりがユーモアを交えて描かれていきます。緒戦でヘマしでかして学習したり、次第に調子が出てきたりするのも定番の展開。
 このあたりを観ていると、ブライアン・デ・パルマ監督で、ケビン・コスナー主演の『アンタッチャブル』(1987年)を思い起こします。
 と云うか、本作は全体的に作品の作りが『アンタッチャブル』に、かなり似ております。パターンを踏襲すれば、自然と似てしまうのはやむを得ないところでしょうか。

 劇中でミッキー・コーエンの最大の収入源として描かれるのが、電信事業を利用した競馬の賭博です。レース結果の着信に時間差を設けてイカサマを可能にすると云うシステムは、ジョージ・ロイ・ヒル監督の『スティング』(1973年)のようです。
 情報を制する者が世界を制する、と云う先見の明があるあたり、ショーン・ペンの演じるミッキー・コーエンはキレ者であります。
 しかしナンでしょうかねぇ。いちいち『アンタッチャブル』のようだとか、『スティング』のようだとか、過去の作品が容易く思い起こされてしまうと云うのも如何なものか。

 調子の出てきた特捜班に対して、ギャングが逆襲に転じるのもお約束。最初は敵対する同業者の仕業だと思い込んでいたミッキー・コーエンも、拠点を襲撃されても金銭が強奪されていないことから不審を抱き、やっと市警察が絡んでいるのだと思い至る。
 そして『アンタッチャブル』でチャールズ・マーティン・スミスが犠牲になるように、本作でも殉職者を出してしまいます。やはりチーム内に頭脳役たる学者くんがいると、真っ先にヤラレてしまうのか。

 コーエンの差し金による圧力がかかって本部長は辞任を余儀なくされ、特捜班は解散が決定される。しかし正式な解散は明日である。最後の夜に、コーエン殺人容疑の証拠を掴んだジョシュ達は、乾坤一擲の反撃を試みる。
 クライマックスはミッキー・コーエンが立て籠もる要塞のようなホテルへの殴り込み。まるで香港ノワールと云うか、ジョン・ウー監督作品の様相を呈してきます。そこまでするなら、ハトも飛ばして欲しかった。
 堂々と殴り込みをかけて銃を撃ちまくるのは男らしいですけど、なんかアタマ悪そうです(チームの頭脳が失われてしまったからか)。

 バリバリと弾丸を撃ち、バラバラと空薬莢が床にこぼれ、バタバタと悪党共が倒れていきますが、味方は死なない。いや、一人だけロバート・パトリックの爺さんが撃たれますが、これも『アンタッチャブル』のショーン・コネリー的ですね。
 最後にはショーン・ペンとジョシュ・ブローリンが、ホテルのロビーの両端に立って、互いに機関銃を撃ち合いますが、周囲への被害は甚大でも本人達は無傷。一発くらい当ててよ。
 しかもそのあと、殴り合いの肉弾戦と云うサービスも付きます。

 ボロボロになりながらも、遂にショーン・ペンに手錠を掛けるジョシュ。暴力でのし上がった者は、暴力の前に敗れ去る。
 史実としては、ミッキー・コーエンは脱税の罪で実刑判決を受けるそうで、アル・カポネと同じ末路なわけですが、さすがにそこまで同じでは『アンタッチャブル』のパクリと呼ばれてしまいますか。でも実話なんだし構わないのでは……。

 街に平和が戻り、特捜班は解散。生き残ったメンバーは再び、一般の警官に逆戻り。しかし殉職した仲間の形見を身につけてパトロールするメンバーの表情は明るい。
 ゴズりんはエマと結ばれ、ジョシュも奥さんと幸せな余生を過ごすのであった……と、およそ実録犯罪ドラマにあるまじき超ハッピーエンドを迎えたりするのですが、楽しかったのでイイか。
 鑑賞中に『アンタッチャブル』の件は念頭から消し去っておければ、なお良しです。




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