2013年5月8日水曜日

死霊のはらわた

(Evil Dead)

 サム・ライミ監督の長編デビュー作であり、「スプラッタ・ホラー」のジャンルを確立した『死霊のはらわた』(1981年)がリメイクされました。『ハロウィン』(1978年)や『13日の金曜日』(1980年)や『エルム街の悪夢』(1984年)がリメイクされていく中で、遂にコレもか。
 個人的には第一作『死霊のはらわた』よりも、『死霊のはらわた2』(1987年)から『死霊のはらわた3/キャプテン・スーパーマーケット』(1993年)へと続く流れの方が好きなのですが──『~2』は実質的に第一作のセルフ・リメイクですし──、本作はシリアス路線なリメイクになっております。

 うーむ。元は「はらわた」がヨジレるくらい笑えるホラー映画だった筈なのに(「恐怖と笑いは紙一重」ですからねえ)。
 しかし、だから本作がイカンと云うつもりは毛頭無く、これはこれで実に真摯で真面目なホラー映画に仕上がっておりました。他のリメイク作品──『13日の金曜日』(2009年)や『エルム街の悪夢』(2010年)──なんかより、ずっと出来が良いと思いマス。
 R-18+指定のゴア描写に耐えられるホラー好きの方にはオススメと申せましょう。

 かつての監督であるサム・ライミや、主演のブルース・キャンベルが製作総指揮に名を連ねておりますが、監督は新人のフェデ・アルバレスと云う方。広告業界出身であるそうで、映像にもコダワリを持っておられるようです。
 流行りのCGを使わず、リアルに特殊メイクで押し切ろうという姿勢がなかなか頼もしいです。おかげでかなり真に迫ったダークなビジュアルに仕上がりました。もう低予算B級ホラーとは呼ばせないと云う意気込みが感じられます。
 飛び散る血飛沫も、血反吐も、元祖スプラッタの名に恥じぬくらい大量です。まさに血の雨を降らすが如きイキオイです。
 脚本はサム・ライミが直々にリライトしたようですが、共同脚本としてアルバレス監督と、監督とコンビを組んでいる脚本家ロド・サヤゲスの名前が挙がっております。

 冒頭のアバンタイトル部分が、オリジナル版をなぞるような演出でありながら、新たなストーリーの伏線にもなっているのが巧いです。
 とある鬱蒼とした森の中をさまよい歩く血まみれの少女。少女を追ってくる怪しげな男達。抵抗虚しく捕らえられ、何処とも知れぬ場所に拉致される。気がつくと、得体の知れない男女に囲まれ、絶対の窮地。
 哀れ、少女は怪しげな儀式の生贄にされるのか……と思いきや、実は少女の方が死霊憑きであり、少女を捕らえた男女の方が多大な犠牲を払っていたらしいと判る。火あぶりにされる直前に少女は正体を現し、口汚く相手を罵り、呪い、また帰ってくるぞと嘲りながら炎に巻かれるところで、タイトルがドーン。
 そこから年月が経過し、本筋ドラマの幕が開くワケですが、個人的にはこのアバンタイトルに至るまでの前日譚を詳細に知りたいと思ってしまいました。雰囲気だけで流してしまうには、ちょっと勿体ないくらい面白そうな感じでしたのに。惜しい。

 本作の主演はオリジナル版と同じく、五人のティーンエイジャー。
 ジェーン・レヴィ、シャイロ・フェルナンデス、ジェシカ・ルーカス、ルー・テイラー・プッチ、エリザベス・ブラックモア。
 申し訳ありませんが、誰一人よく存じませんデス。有名俳優を一切使わないのがお約束ですね。辛うじてシャイロ・フェルナンデスだけは、『赤ずきん』(2011年)でアマンダ・サイフリッドの恋人役だったのを観ておりますが、他は……。
 役名は全員、新たに設定されていますが、かつてブルース・キャンベルが演じたアッシュに相当するのがシャイロ・フェルナンデスらしいと云うのは、割とすぐに見当がつきます。

 リメイク版ではバカンスを楽しもうという脳天気な雰囲気は最初から無く、陰鬱な森の中に捨てられたように放置された荒れ山荘に、ある決意をもって皆が集まります。
 実は、ジェーンは薬物依存症であり、それもかなり重症。何度セラピーを受けても、途中で薬物の誘惑に屈してしまう。ならば最初から人里離れた山荘に、あえてカンヅメになって、禁断症状を克服するまで滞在しようという計画です。相当な荒療治ですね。
 こんなオバケが出そうな──実際、出るンですけど──不気味な山荘に籠もろうという理由付けがなかなか巧いです。
 同行してくれる友人達も付き合いが良い。一応、看護士の資格を持った人もおります。
 ジェーンの兄、シャイロはこれを機に疎遠にしていた妹との絆を取り戻そうとしているらしいが、なかなか前途多難な様子が序盤で紹介されます。

 治療に使われる山荘が、アノ山荘です。ビジュアル再現度も高い。
 本作を観る為に旧作の復習をしなかったのですが、本作を観ると『キャビン』(2012年)のパロディ度がハンパでは無かったことがよく判ります。そっくりだわ。
 しかし真面目に妥協すること無くセットを再現しているのに、どうにも懐かしいビジュアルにちょっと笑ってしまいます。きっと旧作を御存知ない方には、不気味でおどろおどろしい雰囲気に感じられるのでしょうが、スレたオールド・ファンはもはやそれを感じることが出来ないのが辛い。

 そして旧作と同じく、山荘の床に地下室へ続く扉を発見し、お約束どおりに地下室探検。
 ここでアバンタイトルの展開と繋がる仕掛けです。この地下室が冒頭で死霊憑きの少女を葬り去った場所であり、儀式の痕跡が残されている。そして若者達はアレを発見してしまう。
 厳重に封印された包みですが、旧作を御存じなら中身が何なのか最初から判ってしまうのが笑えます。
 本作ではテープレコーダーはなく、包みを解いて「死者の書」を解読してしまうのが、死霊を呼び出す契機になります。

 どう見ても尋常では無い不気味な装丁の本に、御丁寧に「読むな、書くな、唱えるな」と警告が付けられているのに、やっぱり読み上げてしまう。人間、禁じられるとやってしまいたくなるものですねえ。
 劇中では、何故そんなアブないアイテムを、見つけて下さいと云わんがばかりに放置してあったのかまでは、説明がありません。せめてもうちょっと隠しておくとか出来なかったのか。
 破壊も焼却も出来ない魔道書であると云うのは劇中で描かれますが、どこかに埋めるくらいのことはしておけと云いたくなるくらいあからさまデス。真面目なホラーなのに、つい笑ってしまいます。

 この世には邪悪な霊が存在し、魔道書の呪文を唱えることで、それを呼び寄せてしまうと云う設定なのは旧作と同じ。
 呪文を唱え始めると、お馴染みシェイキーカムの高速移動ショットが入るのもお約束デスね。死霊視点で森の中を突っ走る演出が懐かしい。
 そしてたまたま山荘の外にいたジェーンが、まず取り憑かれる。

 死霊が取り憑き、奇行が目立ち始めるジェーンですが、友人達は禁断症状が現れたと思い込んでまともに取り合おうとしない。なかなか巧く理由を付けながら、破局へ向かって突き進んでいきます。
 本作での死霊は、ある種のウィルス感染のように対象に取り憑いていく設定です。
 ゾンビ映画にはありがちですね。噛まれたところから、じわじわと身体が侵食されていき、やがて魂を乗っ取られる。
 しかし取り憑かれると、ゾンビと云うよりも『エクソシスト』(1973年)にオマージュ捧げたような感じになります。これはアルバレス監督の好みのスタイルなのでしょうか。

 一人が手を噛まれ、指先から侵食されていく場面があります。ここで取り憑かれた腕を切断すると云う、オールドファンが喜ぶ演出も踏襲してくれます。やはり『死霊のはらわた』と云えば、腕の切断ですよね。
 これをギャグに走らず、シリアスに描写するのが、なかなかにエグい。迸る鮮血がイタそう。

 でもシリアス展開なので、切断された腕が勝手にチョコチョコ走って逃げたりはいたしません。ちょっと期待はしたのですが。
 あくまでもコメディ要素を排したシリアス描写。
 他にも、切ったり、突いたり、刺したり、痛い描写はテンコ盛りです。グサグサ、ザクザクいきます。
 ナイフで斬りかかって来られるよりも、注射針を振りかざして刺しまくられるのは御免被りたい。無論、日曜大工の釘打ち銃で五寸釘をブスブス打たれるのも勘弁して(泣)。
 痛そうな描写を、痛そうに演出することにかけては、本作はなかなか巧く出来ております。

 呼び出された死霊が五人分の魂を喰らい尽くすと、現世に顕現することが出来ると云う設定なので、誰か一人でも助かるなら望みはありますが、片っ端からやられていきます。
 頼みの綱は、原因となった「死者の書」のみ。ここには死霊召喚の呪文も書かれているが、対応策もまたきちんと書かれていたワケで、魂を乗っ取られた死霊憑きを倒す三つの方法も明記されていた。
 即ち、火あぶり、五体切断、そして生き埋め。本作ではこれがフルコースで実行されます。

 火あぶりと五体切断は、どうやっても憑かれた人間も死んでしまうが、生き埋めならば蘇生させることも可能だろうと、妹を救う為に兄シャイロが頑張ります。このあたりは旧作には無かった展開です。
 結末もまたオリジナルで、麗しい兄妹愛が描かれた末に、妹ジェーンは解放されるが、逆に兄の方が犠牲になる。生き残るのは妹の方でしたか。
 更に、助かったと思わせておいて、怒濤のラストバトルへ雪崩れ込む展開は、黄金のパターンですね。勿論、ホラー映画の定番アイテム、チェーンソーも大活躍してくれます。
 チェーンソーが出てこない内は、まだクライマックスではないと云うのは、真理なのか。

 死霊との壮絶バトルに勝利し、何とかヒロインが生き延びたところで、エンドです。
 なかなか余韻のあるエンディングでしたが、既に続編が製作決定されているとか。でも、あそこからどう続けるのでしょうねえ。
 脳天気に『キャプテン・スーパーマーケット』にはならないと思うのデスが……。

 ところで本作にはブルース・キャンベルがカメオ出演しているとの前情報があったのですが、どこに出ていたのか判らなかったなぁ……と思っていたら。
 エンドクレジットの最後に、ようやく真打ち登場です。最近は最後の最後まで観ていないと損する演出が増えました。
 素晴らしい。イカスぜ、アッシュ(そのまま続編に登場して下さい)。




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