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2013年3月15日金曜日

オズ はじまりの戦い (3D)

(OZ : The Great and Powerful)

 云うまでもなく『オズの魔法使い』とは、ライマン・フランク・ボームの名作ファンタジー小説であります。サイレント映画時代から何度も映画化され、映画以外でもアニメ化されたり、舞台化されたり、TVドラマ化されたりもしておりますが、一番有名なのはジュディ・ガーランド主演の不朽の名作ミュージカル映画(1939年)でありましょう。
 でも長大な原作シリーズの中で映画化されるのはいつも最初の巻ばかり。

 舞台化された『ウィキッド』も、シリーズ第一作の番外編と云うか、前日譚ですし(作者もボームではなく別人)。なかなか名作の続編を製作するのは難しいようです。
 一度だけディズニーが続編の『オズ(“Return to Oz”)』(1986年)を製作しましたが、こちらはあまり評判にはならなかったようで。アレに登場するオズマ姫が超絶に可愛かったのにッ。

 個人的にファンタジー映画の中で、可愛いお姫様と云うと『オズ』のオズマ姫と、『ネバーエンディング・ストーリー』(1984年)の〈幼心の君〉を挙げたいデス。
 最近ではこれに『白雪姫と鏡の女王』(2012年)の白雪姫(リリー・コリンズだと少しお姉さんになりますが)を足して三大美少女姫として私の心の中で奉っております。

 本作もまた『ウィキッド』と同じく、『オズの魔法使い』の前日譚に当たるオリジナル・ストーリーで、正編に続くように辻褄を合わせております。
 でもドロシーがオズの国に到着する前の物語なので、ドロシーやトトは登場いたしません。しかもジュディ・ガーランドの『オズの魔法使い』はMGM製作でありますので、ディズニー製作の本作とはビミョーに食い違うところがありますが、著作権的にやむを得ないところがありますね。
 個人的には前日譚ばかり製作するのではなく、シリーズのもっと後の方の巻も映画化して戴きたいところです。と云うか、オズマ姫をもう一度スクリーンに出してくれェ。

 さて、皆様御存じの通り『オズの魔法使い』で、ドロシー御一行様が艱難辛苦の末に、エメラルドシティに辿り着いてみると、偉大なるオズの魔法使いとは「デカい顔をスクリーンに投影して大音響の声で喋る」だけの虚仮威しに過ぎず、その正体は「貧相なペテン師の小男」でした──と云うオチだったワケで、このネタは後に色々なところでオマージュを捧げられておりますですね。
 パッと思い浮かぶところではショーン・コネリー主演でジョン・ブアマン監督のSF映画『未来惑星ザルドス』(1974年)とか、近いところではジュード・ロウ主演でケリー・コンラン監督のSF映画『スカイキャプテン/ワールド・オブ・トゥモロー』(2004年)などと云う作品が挙げられます(SF映画ばかり例に挙げておりますが御勘弁を)。
 本作は前日譚でありますので、どうしてそうなった的な理由が語られていくと云う趣向。併せて『ウィキッド』とも繋がるような仕掛けが施されております。

 とは云うものの、さすがにディズニー製作なファンタジー大作の主役を「貧相な小男」にするワケにもいかず、本作で〈偉大なるオズ〉を自称するのはジェームズ・フランコです。『127時間』(2010年)以降、主役の貫禄が付いてきましたね。
 監督がサム・ライミでもありますし。旧〈スパイダーマン〉三部作でも一緒に仕事しておりました仲ですから(でも当初はロバート・ダウニー・Jr.とか、ジョニー・デップといった候補もあったとか)。
 監督の旧友としては、本作にもブルース・キャンベルがチョイ役で出演していたのが微笑ましいデス。リメイク版の『死霊のはらわた』でも頑張って戴きたい。

 本作では、音楽をダニー・エルフマンが務めており、それもまた旧〈スパイダーマン〉シリーズのコンビ復活であるのが嬉しいです。一時期はサム・ライミとダニー・エルフマンが不仲になったとも伝えられておりましたが、和解したのか。
 本作の楽曲はいつもの安定したエルフマン節ですが、ストーリーの邪魔にならず、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)のスコアよりも、ちょい抑えているように思われました。
 ファンタジー映画の劇伴と云えばエルフマンが定番なのでしょうが、ちょっと手堅すぎるような気がしないではないデス。

 ジェームズ・フランコのお陰で、オズの魔法使いもそれなりにイケメンになりました。但し、外見が優男になった分、精神的なダメさ加減が一層強調されているような感じがします。
 もう、口先だけの実に残念なイケメンです。ヘタレの小心者ではありますが、根は善良であるのが救いか。
 本作は、お調子者でヘタレな奇術師が、吹きまくったホラのおかげで抜き差しならなくなり、遂には腹を括って悪に立ち向かう勇気を振り絞ると云う、実に定番でお約束なストーリーになっております。
 ディズニー映画ですから、王道であるのは当たり前ですけどね。

 共演するオズの国の魔女達が豪華です。
 〈西の魔女〉がミラ・クニス。〈東の魔女〉がレイチェル・ワイズ。〈南の魔女〉がミシェル・ウィリアムズ。皆さん、実にお美しい。
 壮大かつ華麗なCG満載の背景美術に負けず、華のある魔女ばかりですわ。衣装のデザインも豪華な上に凝ってます。ファンタジー映画らしいカラフルな衣装も見どころでしょうか。

 原作では「オズの国には東西南北に四人の魔女がいる」事になっておりますが、ビミョーに方角の設定や、姉妹の設定が変わっております。でも「東西が悪い魔女で、南北が良い魔女」と云う点は変わらず。
 また、四人の魔女のうち三人までしか登場しないのも、ミュージカル版の通りか(原作では四人登場しましたけど)。

 その中でも、ミラ・クニスが〈西の魔女〉。
 『オズの魔法使い』では、竜巻に家ごと吹き飛ばされたドロシーがオズの国に到着してみると、真っ先にお亡くなりになっていた悲運の人でした。
 しかもどんな姿をしていたのかは家の下敷きになっていて判らず(足しか見えない)、そのまま塵になってしまうと云う呆気なさ。
 後に『ウィキッド』では、そのあたりの設定が作られて、トンガリ帽子にホウキという古典的スタイルであると描写されておりました。しかも全身が緑色。
 でも本作でのミラ・クニスは全然、グリーンじゃなーいッ。どうするのかと思っていたら、ちゃんと劇中で緑に染まってしまう顛末が描かれておりました。ナルホド。
 そのあたりの誕生秘話的なエピソードが語られるのも前日譚らしいです。

 同様に〈東の魔女〉も、原作での登場時には「醜い老婆」でしたが、これまた本作では美しすぎるレイチェル・ワイズ。個人的には三人の魔女の中で、一番美しいと思われます。
 だから当然、劇中では最後に「あの姿」になってしまうのもお約束。脚本が辻褄合わせに頑張っているのが判ります。
 でもサスガに「弱点は水だった」と云う設定までは、巧い説明を思いつけなかったようで、ここだけスルーされてしまいました。まぁ、〈東の魔女〉がレイチェル・ワイズでいる間は、水に溶けてしまうワケにもいきませんしねえ。

 多少、ストーリーの決着として弱いと思われるのが、これらの魔女の扱いでして。
 『オズの魔法使い』に悪い魔女がちゃんと登場している以上、本作で決着を付けてしまうわけにもいかないと云うのは理解できますが、どうにもスッキリしない終わり方です。
 また、王道展開とは云いながら、文明の利器を知らない未開の(異文化のと云うべきか)住民達を、奇術のテクニックで煙に巻くのがクライマックスで本当にいいのかと思ってしまいます。このあたりは、サム・ライミ監督の『キャプテン・スーパーマーケット(死霊のはらわた3)』(1993年)に通じるものがありますが。
 イマドキ、そのオチはちょっと古臭いのでは……。それとも一周回って逆に新しいのか。
 欲を云うなら、途中までは作戦どおりでも奇術の仕掛けを見抜かれてピンチに陥り、そこをまた予想外の手段で一発逆転を果たすくらいの展開を期待したかったです。でもそれをすると、『オズの魔法使い』に繋がらなくなってしまうし、辻褄合わせという制約があるのがイカンともし難いか。

 色々と守らなくてはならない約束事が多いのが前日譚の苦しいところでしょうか。
 全体の構成がMGM版『オズの魔法使い』に則っているのは、雰囲気が合ってよろしいのですけどねえ。
 冒頭のカンサスでのサーカス興業の場面はモノクロで(しかも画面のサイズが4:3)、気球に乗って竜巻に巻き込まれ、オズの国に到着すると画面が色彩を帯びてフルカラーになる(同時にスクリーンも広がって16:9になる)と云うのが、なかなか面白かったデス。色彩だけじゃなくて、スクリーンのサイズにも拘るあたりが凝ってますね。
 モノクロのオープニングクレジットのグラフィックがなかなか雰囲気があって良かったです。

 また、冒頭のカンサスに登場した人物達が、一人二役となってオズの国に登場すると云うのもお約束ですね。昔と違って、今ではファンタジーなキャラクターはCGキャラになってしまうことも多いので、演じている役者さん達の二役にはなりませんが、声は同じだし面影も多少は残してある(と、思う)。
 個人的には、車イスに座った足の不自由な少女が、セトモノの国の女の子として登場したのがツボでした。
 「翼の生えたサル」も、迫力のCG特撮でしっかりリニューアルされております。旧作と見比べると興味深いかも。
 総じて、楽しい冒険活劇でありますので、愛のないツッコミは控えて広い心で楽しむのがよろしいのでしょう。

 ところで本作は3Dと2Dで公開されておりますが、私は3D日本語吹替版で鑑賞しました。
 本作の日本語吹替版は、特に芸能人を起用したりする奇を衒った配役になっていないのが好感が持てるところです。ディズニーは作品のイメージの方を重要視し、そんな小手先の吹替版で話題作りなんてしないのがいいデスわ。
 本作のジェームズ・フランコの吹替は花輪英司、ミラ・クニスは小林沙苗、レイチェル・ワイズに甲斐田裕子、ミシェル・ウィリアムズが園崎未恵です。
 アニメや洋画の吹替で経験のある中堅とベテランを揃えていれているので、安心でした。こういう吹替ばかりだと嬉しいのですけどねえ。




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