2013年2月14日木曜日

ダイ・ハード/ラスト・デイ

(A Good Day to DIE HARD)

 今日はダイ・ハード日和。思い立つ日がダイ・ハード。ダイ・ハードは続くよ、どこまでも。
 もはやクリスマスとは何の関係も無く、二月十四日の日米同時公開ですがバレンタインデーともまったく関係なく、とうとうアメリカ国内から飛び出してしまいましたシリーズの第五作であります。第一作(1988年)からほぼ四半世紀。長く続きますねえ。
 ブルース・ウィリスのアップに四半世紀の年月を感じました(スキンヘッドなのはともかく、無精髭が白いッ)。
 邦題には「ラスト・デイ」と付けられておりますが、特にシリーズ最終作であることを匂わせるような展開は毛ほども感じられませんデス。

 第一作にチラリと出てきたマクレーン家の家族写真には、パパとママと二人の子供達が映っておりました。子供は男の子と女の子。その後、夫婦は離婚し、どうやら子供の親権は奥さんに取られてしまったようでした。
 前作『ダイ・ハード4.0』(2007年)では成長した娘ルーシー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)が登場しましたが、息子の方は出番なし(と云うか、設定未定)。
 それが遂にマクレーン家に残った最後のひとり(かどうかは判りませんけどね。そのうち、親戚や孫が出てくるのでは……)である長男ジャックが登場です。
 ジャックを演じるのはジェイ・コートニー。トム・クルーズ主演の『アウトロー』(2012年)で、殺し屋役として登場しておりましたが、今度は主役デスよ。

 監督はジョン・ムーア。『エネミー・ライン』(2001年)や『フライト・オブ・フェニックス』(2004年)の監督さんですね。スタイリッシュな映像とアクションには定評のある方ですが、本作でもド派手なアクション演出に遺憾なく腕を振るっておられます。
 いや実際、回を追うごとにアクションをエスカレートせざるを得ないのはシリーズものの宿命ではありますが、抜擢された監督には相当なプレッシャーでありましょう。
 しかし今回もまた、素晴らしくド派手にカーチェイス、銃撃戦、大爆発が描かれます。ヘリもちゃんと墜落します。高所からも飛び降ります。ガラスの破片も雨あられ。
 シリーズのお約束を守って、必要なことは全部やってます。アクション演出に死角なし。

 但し、脚本についてはこの限りではない……。
 うーむ。もはや開き直ってしまったのか。なんか「ツッコミ処までシリーズ最大」になっているような感じさえいたします。
 おかしい。第一作があれほど緻密な脚本であったのに、回を追うごとに粗くなっていくとはどうしたことか。脚本の緻密さとアクションの派手さは反比例するようです。
 本作の脚本はスキップ・ウッズ。『ソードフィッシュ』(2001年)とかは良かったのですが、『G.I.ジョー』(2009年)や『特攻野郎Aチーム』(2010年)もこの人ですし……。

 アクションは凄いが、ストーリー自体はそれ程ではないと云うのは、尺にも現れております。本作の上映時間はシリーズ最短の九八分。潔いというか、何と云うか。
 最初から、「ド派手なアクションだけですよ」と断りを入れられたようで、脚本に文句を付けるのも筋違いのような……。
 確かに脚本上にもシリーズのお約束的な展開は盛り込まれております。「味方だと思ったら敵だった」とか、「実は敵の目的は○○○ではなくて、□□□だった」とか。
 一応、そんな展開があるにはありますが、どうにも表面をなぞっただけのように感じられてなりませんです。
 伏線を張らずにイキナリな仰天展開をぶちかましてくれるので、その瞬間は意表を突かれますが、よくよく考えるとそれってヘンじゃないのと、ツッ込まずにはおられません。

 前作で娘ルーシーとの関係を修復出来たマクレーン刑事は、今度は息子ジャックとも関係修復を図っていたようです。疎遠になっていた息子の消息がようやく掴めたと思ったら、息子はモスクワで殺人容疑で逮捕され、裁判にかけられることになっていた。
 これを知って黙っている親父ではない。早速、ロシアへ飛ぶことに。
 空港まで見送ってくれたルーシーから「お願いだから騒ぎを起こさないでね」と釘を刺されはしたものの、生まれついての不運はロシアへ行っても変わることがなかったのだった。

 はて。「マクレーン刑事は飛行機が苦手」という設定はどうしちゃったのか。長年の間に克服されたのでしょうか。息子の為なら国際線に乗っても耐えられるのか。
 もう「靴を脱いで裸足になる」ことはしませんね。あのジンクスを信じて酷い目に遭ったワケですから、そうしないのは判りますが。

 問題の裁判は、実はロシアの元大物政治家コマロフ(セバスチャン・コッホ)の裁判であり、ジャックはコマロフに不利な証言をする為に出廷が決まっていた。しかしコマロフの政敵チャガーリン(セルゲイ・コルスニコフ)は、そもそもコマロフを証言台に立たせる気など毛頭なく、次期ロシア大統領の座を守る為に手下共に裁判所を襲撃させる。
 またしても運悪く現場に居合わせたマクレーン刑事は、裁判所襲撃のテロ犯から被告コマロフを守って脱出しようとしている息子ジャックと遭遇する。
 このあたりの展開は秘密なんぞほとんどなく、ジャックの殺人容疑もコマロフの裁判に一緒に出廷する為の偽装工作だったとあっさり明かされてしまいます。息子が殺人容疑で逮捕されたと思い込んでいた親父は、急転直下の成り行きに面食らいはしますが、そこは長年の職業柄から、身体が先に動いてしまうようです。
 逃走する息子と、それを追うテロ犯を見たマクレーンは直ちに自分も追跡を開始する。

 前半の激烈カーチェイスが本作の白眉でしょうか。かなり凝ったシークェンスで、片っ端から車をクラッシュさせながら、車を乗り換え(一般市民の車をかっぱらいつつ)、追いつ追われつを繰り返してくれます。
 敵も白昼堂々、路上でロケット砲をぶっ放すし、やりたい放題。
 激烈カーチェイスの果てに息子を助けてみれば、仕事を邪魔したと責められる。まぁ、ワケも判らず介入したのだから当然か。
 コマロフを連れてマクレーン親子はモスクワ市内にあるCIAのセーフハウスに転がり込む。

 実はいつのまにやら息子はCIAのエージェントになっており、コマロフ保護の任務を帯びていたのだった。次期大統領候補のチャガーリンには何やら後ろ暗いところがあるらしく、裁判でコマロフがその証拠となるファイルに言及するのを怖れていたのだ。
 CIAはチャガーリン政権の誕生を望まず、ファイルと引き換えにコマロフを亡命させようとしていたのだ。
 ザックリ説明が終わると同時に、セーフハウスが襲撃されます。安全な筈のセーフハウスの所在が敵に漏れている──と云うのはデンゼル・ワシントン主演の『デンジャラス・ラン』(2012年)みたいですが、あっちと同様に「情報をリークしたのは誰なのか」と云う疑問が残ります。
 おかげで疑心暗鬼に陥り、大使館に救援を求めることなく、マクレーン親子の暴走が始まる……のは良いとしても、謎が謎のままというのは居心地悪いです。
 この疑問はスルーせずにきちんと対処して戴きたかった。

 仲が良いのか悪いのか、言い争いながらも危機に際しては息の合った親子なのはお約束。
 かつてコマロフとチャガーリンが関わっていた後ろ暗い過去とは、チェルノブイリ原発の核燃料に関わることだった。チャガーリンの不正の証拠となるファイルもその街の金庫の中に隠されていると云う。
 敵の手中に落ちたコマロフを助け、証拠のファイルを手に入れる為に、マクレーン親子は最終決戦の地、チェルノブイリへ向かう(正確にはチェルノブイリ原発があったプリピャチか)。

 でも、チェルノブイリってウクライナとベラルーシの国境近くにありますよねえ。
 モスクワからだと、車でも半日以上かかる場所ですし、国境も越えねばならないのですが、大丈夫なのか。とてもそんな準備をしているようには思えませんが。
 一応、ジャックがパスポートを何冊も持っている場面があるにはあったが、親父の方はどうしたのか。ほぼシャツ一枚状態でしたが、財布も旅券も持っていたのかしら。そんな細かいツッコミはスルーです。
 モスクワの当局はナニしてるのとか、警察に追われないのかとか、そんなツッコミもスルーです。本作ではロシア警察に出番はありません(あれだけのカーチェイスと銃撃戦をやらかして、よくモスクワの街から脱出できるなあとか、云っちゃダメ)。
 ストーリーは怒濤の勢いで突っ走ります。序盤に登場したフレンドリーなタクシーの運転手が再登場するものと期待していたのに、そこをスルーされたのが一番の不満です。

 実は本作は、始まってから終わるまでが一昼夜しかかかっていない(ように見えます)。マクレーン刑事のモスクワ到着から裁判所襲撃は午前中らしい。セーフハウス襲撃から、金庫の鍵の入手までが午後(夕方)。そして廃墟と化した無人の街で、金庫の中身をめぐってドンパチが始まるのが、恐らく深夜あたり。
 場面毎に少しずつ時間が経っていくのが暗示され、強引に一日の出来事のように見せかける編集の手腕が、逆にお見事でした。

 ラストは原発事故の所為で無人となったプリピャチ(だろう、多分)の街で大暴れ。
 うーむ。悪党達は放射能防護スーツを着ておりますが、マクレーン親子はまったく何の準備もしておりません。大丈夫なのか。
 濃縮ウランが山と積まれた倉庫の中で、脳天気にいつもの格好をしております。このあたりはもう、観ているこちらがハラハラと落ち着きません。いや、絶対コレは被曝してるだろ。
 漢の筋肉祭りに放射線は無用である、と云うのは『エクスペンダブルズ2』(2012年)でもやってましたけどね。
 一応、台詞の中には放射能を気にしている素振りも見せますが、「まぁ、髪の毛が抜けるくらいさ」とジョークで済ませてしまう。スキンヘッドの親父には影響ないらしい。

 アメリカってホントに放射能には無頓着ですねえ。こういう映画を観て育った世代が核物質についての間違ったイメージを刷り込まれ、将来的にエラいことになってしまうような気がしてなりませんデス(映画の影響は大きいぞ)。
 悪党達も、最初のうちこそ厳重に防護スーツを着込んでおりましたが、何だかよく判らない「放射能中和ガス」を散布して、もう安心だと防護スーツを脱いでしまう。えー。

 どうにもカーチェイスと銃撃戦だけは緻密すぎるほどに段取りを組み立てているのに、それ以外の部分についてはまるで無関心な脚本です。
 いつから『ダイ・ハード』は『エクスペンダブルズ』の同類になってしまったのか。本作はシリーズ屈指のB級映画テイストを漂わせております。これはあんまりだ。
 発生する様々な問題を収拾することなく、悪党を退治しただけで、強引にハッピーエンドに雪崩れ込んで終わってしまいました。今後もシリーズを続かせる気満々ですねえ。

 ところで、本作は通常の字幕版で鑑賞いたしました。
 シネコンでは日本語吹替版も上映されておりますが、この吹替版は如何なものか。ブルース・ウィリスの声に中村秀利、ジェイ・コートニーの声は野沢聡が配役されています。
 テレビ朝日版ではマクレーン刑事は野沢那智でしたから、野沢那智亡き後のマクレーン刑事とその息子役に、野沢那智ゆかりの人を起用すると云うのも判らなくはない(中村秀利は野沢那智の弟子で、野沢聡は実子だそうな)けど、なんかこの吹替版はテレ朝の陰謀臭い。

 個人的にブルース・ウィリスの吹替は樋浦勉だと思います(荻島真一だとも云いたいが、こちらもお亡くなりですし)。中には磯部勉や、内田直哉を推す方もおられましょう。
 ただでさえブルース・ウィリスの吹替声優は沢山いるのに、これ以上増やしてどうする。
 せめて「ジョン・マクレーン刑事だけ」は樋浦勉に固定して戴きたい。DVD化の際には別バージョンの吹替が付くのでしょうか。そこがちょっと心配です(一応、揃えておきたいし……)。




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