2013年2月8日金曜日

ゴーストライダー2

(Ghost Rider : Spirit of Vengeance)

 マーベル・コミックスのヒーローの中では最もアナーキーなヒーロー、ゴーストライダーがまたまた映画化されました。前作(2007年)の出来はイマイチでしたが、近年のアメコミ映画のリブートのペースは早いですね(こんなことをするのはマーベル・コミックスだけか)。ハルクやパニッシャーに次いでゴーストライダーもか。
 主演が同じくニコラス・ケイジなので続編のようでありますが、まるで別物です。

 どうせリブートするなら主演を代えればいいのに。副題に「復讐の精霊」と付けるくらいだから、主人公もジョナサン・ブレイズ(初代)からダニエル・ケッチ(二代目)になるのかと思われましたが、ライダーはそのままニコラス・ケイジ演じるジョナサンのままです。
 リブートなのか続編なのかよく判らんです(中途半端とは云いたくないが)。

 さて、本作の監督は前作のマーク・スティーヴン・ジョンソンに代わりまして、マーク・ネヴェルダインとブライアン・テイラーのコンビ監督です。
 この二人組は『アドレナリン』(2006年)や、『GAMER』(2009年)の製作総指揮から監督、脚本までこなし、ハイテンションなバカB級映画を撮らせたら右に出る者がいないと思う監督なので、これはこれで期待するところ大でありました。
 ジョンソン監督版も嫌いじゃなかったんですけどね。

 とにかく前作の残念なところは、シリーズの第一作にありがちな「ヒーロー誕生の経緯」を長々と描いてしまったことに尽きます。キャラクターを描こうと苦心されているのは判りますが。
 そのあたりの反省も踏まえ、本作では冒頭のナレーションで経緯を説明し、スパッと省略してくれたのは有り難かったです。これは『ハルク』(2003年)が『インクレディブル・ハルク』(2008年)にリブートされた流れと全く同じですね。
 ナレーションはニコラス・ケイジのモノローグで、劇中に所々挿入される解説もニコラス。
 劇画調のイラストを駆使しながらコミックブックのように流してくれる演出がなかなか面白かったデス。

 前作と雰囲気をガラリと変えてヨーロッパで撮影されており、ルーマニアやトルコでのロケがなかなか良い味を出しておりました。やはり「地獄」とか「悪魔」とか、宗教絡みのモチーフが入ってくると、古いヨーロッパの石造りの街並みの方が背景として合っていると云うか、オカルト的でいい感じデス。
 またバイクを使ったカーチェイスも曲がりくねった狭い山道でやる方が、緊張感があります。

 もう場所も違うし、設定も異なるので、正直「続編じゃない」感の方が強いです。ここまでするなら、敢えてニコラス・ケイジの続投にしなくても良かったのでは。
 でもニコラス・ケイジのアメコミ好きは有名ですし、本人もノリノリで演じているようだから、まあいいか。薄い頭髪にどうしてもヒーローぽさが感じられないので、いっそのことスキンヘッドにしてしまうのが潔いと思うのデスが……。
 前作では変身してしまうと、スタントマンとCGだったゴーストライダーも、本作ではニコラスがしっかり「中の人」としてキャプチャーされておるようです。するとゴーストライダーが時折、首をカクカクと捻るガイコツぽい動作も、ニコラスの演技なのか。そのあたりの演技力はお見事。

 父の命を救う為、悪魔と契約してしまったという設定はそのままですが、悪魔もメフィストフェレスではなく、ロアークと云う奴になっている。「悪魔は沢山の名前を持つ」から構わないのだと強弁しております(笑)。
 悪魔役がピーター・フォンダではないのも、ちょっと残念。本作の悪魔役はキーラン・ハインズ。割と色々な作品に出演されているのを観ております。名バイプレーヤーですね。『裏切りのサーカス』(2011年)では、モグラ容疑をかけられた英国諜報部の四幹部の一人──〈ソルジャー〉役──だったのが記憶に新しいところです。
 でも一番、印象深いのは海外TVドラマ『ROME [ローマ]』のカエサル役ね。
 設定上、他人の身体を次々に乗換ながら生き続けているので、俳優が代わっても不自然ではないとは云え、やはり劇中での主人公との関係からしても、前作とは別の悪魔であるように感じられます。

 前作では恋人役だったエヴァ・メンデスは出番なし(だからロマンス要素も皆無)。
 また、ストーリーの舞台もアメリカからヨーロッパに移されたので、西部開拓時代の先代ライダー(サム・エリオット)も出番なし(前作で昇天しちゃったか)。
 代わって悪魔の陰謀を阻止せんとするバチカンの秘密組織みたいなものが描かれ、ゴーストライダーに協力を要請する型破りな黒人のモロー神父役でイドリス・エルバが出演しております。マーベル・コミックスの映画化作品では『マイティ・ソー』(2011年)で、アスガルドの門番ヘイムダルを演じておりましたね。

 本作ではピーター・フォンダのような有名俳優のゲスト出演はないのかと思われましたが、中盤からクリストファー・ランバートが登場してくれたのがサプライズでした。
 しかも、怪しげな古代遺跡──カッパドキアでのロケと云うのも新鮮ですわ──に集う修道僧らのリーダーと云う役。修道僧らは体中にキリスト教の聖句をタトゥーにしているらしく、顔面にも文字を彫っています。
 位が上がっていくほどタトゥーの数も増えていく設定のようで、僧長であるクリストファー・ランバートに至ってはもう「耳なし芳一」状態。そんなヘンテコな役で堂々と登場してくれるなんて、素晴らしいデス。

 でも正直、アクション場面のスケール感は、他のマーベル・コミックスの映画化作品と比べると、かなり地味な印象です。ビルを壊したり、空を飛んだり、「世界を救う」とか、そんな感じではありません。軍隊とかも出動しませんし。
 地味は地味なりに、雰囲気出しながら低予算映画の味を活かした演出になっているのは巧いと思いマスが。
 戦闘シーンでは〈ペナンス・ステア(贖罪の目)〉を使った演出はごくあっさりで、それよりもアナーキーに、チェーンを振り回して戦う場面の方が強調されております。特に地獄チェーンでブッ叩かれた悪党が、瞬時に焦げ付いて爆砕する演出が味わい深いデス。
 これは監督の趣味ですかね。

 ゴーストライダーの外見にも変更が加えられました。「革ジャンを着込んだ燃えるガイコツ」なのは変わりませんが、前作のような「きれいな炎」ではありません。
 モクモクと黒煙吹き出しながら不完全燃焼しまくり。吹き出す黒煙が実に禍々しくてよろしいですねぇ。革ジャンの質感にも手が加えられ、変身中の革ジャンは焦げまくってバリバリになっている。CGの質感の描写が見事です。
 前作では暗い場所でないと変身できなかった(夜間とか日陰とか)設定も、いつでも変身できるようになりました。「燃えるバイク」は夜間走行シーンが映えるのは判っておりましたが、本作では煙を噴きながら走るので白昼堂々の走行でも迫力充分。
 ゴーストライダーの愛車もハーレーダビッドソンではなく、ヤマハの至宝VMAXに。
 ヤマハのバイクが燃えさかる地獄仕様で突っ走ります。

 更に燃えるのはバイクだけではない。ゴーストライダーが操作するものは、すべて地獄仕様になると云う設定(チェーンもそうですし)が拡大され──前作でも散弾銃を地獄ショットガンにして撃ってましたが──、本作ではバイク以外にも色々なものが炎を吹き出し、燃えさかります。
 例えば、中盤の採石場での戦闘シーン。
 アメコミの映画化作品なのに、日本の特撮番組のように採石場とか、造成地とかで敵と戦う場面があるなんて信じられませんでした。そんなに予算がなかったのか……。でも親近感が湧きます(笑)。
 そこでゴーストライダーは現場に置かれてあった大型掘削用重機(バケットホイール・エクスカベーターなる物凄い掘削機)に乗り込んで悪党共に立ち向かう。途端に、ホイール・ブームやキャタピラが炎を吹いて、地獄マシーンと化す。これは意表を突いた演出で、感心しました。
 同様に、カーチェイスをしながら敵のトラックを奪った途端、トラックが地獄仕様になる場面もあって、なかなか楽しいデス(これがホントの『地獄のデビルトラック』か)。

 日本の特撮番組のような演出は他にもあって、変身が解除されたあとのニコラス・ケイジが、やたらと水分補給する場面がありました(前作よりも大量にガブ飲みしている)。
 そりゃまあ、先刻まで「燃えさかるガイコツ」だったわけですから、喉が渇くのも当然ですが、古いSF者としては、やはりここは『アイアンキング』かと、ツッコミ入れねばなりますまい。
 ついでに云うと、変身の際の狂気に囚われたような高笑も、やはり日本人としては別のものを連想してしまいます。「笑うガイコツのヒーロー」ですし。
 監督は日本映画がお好きなようですから、判ってやっているのかしら。

 出生の秘密を持って悪魔に追われている少年(ファーガス・リオーダン)とその母(ヴィオランテ・プラシド)を保護するのが本筋なので、劇中ではニコラス・ケイジが少年と親しくなる過程もきちんと描かれます。
 主人公がバイクのスタントマンと云う設定が巧く取り込まれております。そして親しくなった少年が変身中のことをアレコレ訊きまくる。
 質問の中には「(身体中が燃えていたら)変身中のオシッコはどうするの?」なんてヘンな質問もある。『アイアンマン2』(2010年)でもあった質問デスね。
 しかしそれに真面目に答えるニコラス・ケイジ。
 「そりゃあもう、大変なことになる」
 そこでしっかりと、「火炎放射器のような立ち小便するゴーストライダーの図」を挿入してくれるあたり、青少年の教育上よろしくなくてもヤッちまうぜ的な監督の姿勢が見受けられて素晴らしいデスね。
 本作がアメリカでPG13(十三歳未満の年少者の鑑賞には親の強い同意が必要)指定を喰らっているのは、どう見ても「ゴーストライダーの立ちション」シーンが原因であるように思われてなりませんです(大事なシーンなので二回出ますし)。

 緩急つけながらもサクサク進むドラマなのはよろしいのですが、悪魔との決着も含めてクライマックスの戦闘がちょっと淡泊な感じがしたのが残念でした。尺も九五分と短めです。
 エンディングまで潔くスパッと終わってしまうので、ちょっと物足りなくもあります。個人的には地味ながら巧くまとまった佳作であると思うのデスが。

 マーベル・コミックスの映画化作品ではありますが、スタン・リー御大のカメオ出演はありません。前作にも無かったし、やはりキャラクターの原案がスタン・リーではないから遠慮されたのでしょうか。
 しかもスパイダーマンのリブートと同じく〈アベンジャーズ〉とは関係なさそうであるのも残念。同じマーベル・コミックスのヒーローなのだから、ゴーストライダーも『アベンジャーズ2』の仲間に入れて戴きたいところですが、どうもその予定はないようです。
 お馴染みのエンドクレジットあとのオマケシーンも付いておりませんでした。ちぇっ。

● 追記
 劇場では何故か、入場前にグリコのレトルトカレー「LEE(辛さ二〇倍)」を配っておりました。激辛カレーを食べてゴーストライダー気分を味わおうというタイアップ企画らしいです。
 うーむ。確かに辛い。タダとは云え、これはキツかった(汗)。




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