2013年1月20日日曜日

テッド

(TED)

 見た目は可愛いが中身はオヤジなテディベアが巻き起こすドタバタなコメディ映画です。あまりにも下品な下ネタが頻出するので、R15指定を喰らっておりますが、日本でもヒットおりますね。
 しかもやたらと映画ネタのギャグが連発されるのも意外でした。ネタも濃いし。
 クマちゃんの見た目の可愛さにダマされた一般人の観客は楽しめたのでしょうか。実に不安デス。でもSF者には全く問題ありませんでした。
 また、ごく自然に動くテディベアの映像に、CG合成の見事さを改めて感じます。実にリアルです。昔はこういうストーリーはアニメでないと出来なかったのに、もはや実写でも不自然さはまったくありません。

 マニアックな内容の映画に相応しく、字幕監修が町山智浩でした。その所為か、かなり字幕がフリーな状態で、「くまモン」とか「ガチャピン」とか「星一徹」とか、絶対に原語の台詞では云っていないような言葉が表示されたりします。判りやすさ重視ですね(笑)。
 本作の日本語吹替版の方はどうなっているのでしょうか。有吉弘行が主役のテディベアの吹替なのがイマイチ不安です。
 原語の方では、監督であるセス・マクファーレン自身がテッド役を担当しております。
 その上、セス・マクファーレンは声だけじゃなくて、テッドの動きのモーション・キャプチャーもこなしており、完全に「中の人」状態。本作ではセス・マクファーレンが製作・監督・脚本・主演と大活躍しております。

 しかし監督本人に馴染みがない……。
 どちらかと云うと、セス・マクファーレンは映画監督であるよりも、俳優、声優、アニメーター、脚本家、コメディアン、プロデューサー、歌手であることの方が有名な人だそうな。多芸です。
 私が知っている範囲では、ギレルモ・デル・トロ監督の『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008年)でヨハン・クラウス(エクトプラズム状態な博士)の声を担当しておられました。
 今年の(2013年・第85回)アカデミー賞授賞式では司会を務める予定であるそうなので、これからブレイクしてくれるのでしょうか。アカデミー賞司会でまたアブないギャグをブチかましてくれそうな気がします。

 その他の配役では、テディベアの相棒(雷兄弟)である三十路野郎がマーク・ウォールバーグ、その恋人がミラ・クニスと云う布陣。ジョエル・マクヘイル、ジョヴァンニ・リビシといったバイプレーヤーが脇を固めてくれておりますが、チョイ役のカメオ出演な人達の面子が凄い。
 トム・スケリット、ノラ・ジョーンズ、ライアン・レイノルズ、ブランドン・ラウス、テイラー・ロートナーといった人達が本人役で出演してくれております(一部は写真だけですが)。
 でも一番なのは、サム・ジョーンズ。いや、この人はもうカメオ出演ではありませんね。堂々たる共演。或いは隠れた主役か。

 SF者としてはサム・ジョーンズと云えば『フラッシュ・ゴードン』(1980年)。と云うか、それ以外は存じません。『テン』(1979年)とか『アメリカン・バイオレンス』(1996年)と云われましても、記憶にありませんデス(第一、『アメリカン・バイオレンス』は1981年の猟奇ドキュメンタリの方しか覚えてない……)。
 SF者でない方には、本作の鑑賞前に是非、『フラッシュ・ゴードン』を復習しておくことを強くお薦めします。でもアレは今観るとかなりユルユルな脱力系SF映画なんですけどねえ(チョイ役で若い頃のティモシー・ダルトンが顔見せしていて、失笑してしまいます)。
 ベン・アフレック監督・主演の『アルゴ』(2012年)で使われた劇中劇の元ネタみたいなものですが……。
 下ネタ満載のコメディ映画で、『フラッシュ~』をネタに使うなら、セットで『フレッシュ・ゴードン』(1974年)にも言及してもらいたかったところですが、それはナシ。と云うか『フラッシュ~』を冒涜するようなパロディ作品は許さないのか。

 本作では『フラッシュ・ゴードン』への過剰なまでのリスペクトが炸裂しております。監督の趣味かしら。
 もう、サム・ジョーンズが登場した瞬間、ちゃんと「フラッシュのコスチューム」を着用し、おまけにクィーンの「フラッシュのテーマ」が流れてくるのがサイコーに可笑しいです(妄想ですが)。
 やはり「フラッシュのテーマ」は名曲だ。『ハイランダー/悪魔の戦士』(1986年)の「プリンシス・オブ・ザ・ユニヴァース」と並んで、クィーンの中でも好きな曲です。
 お歳を召されてもサム・ジョーンズがお変わりなくマッチョのようで嬉しかったです。

 でも年代的に考えても、八〇年代に少年時代を送った世代が夢中になるSF映画と云えば、まずは『スターウォーズ』だと思うのデスが……。あるいは『スタートレック』(1979年)か『スーパーマン』(1978年)のシリーズとか。
 まぁ、劇中では『スーパーマン』に対するリスペクトとして、『スーパーマン リターンズ』(2006年)と主演のブランドン・ラウスをクソミソにケナすネタがありましたけどね(そこまで云われるほどヒドい出来ではなかった思いマスが……)。
 ついでにライアン・レイノルズは、やはり『グリーン・ランタン』(2011年)のネタで揶揄されておりました。

 それからトム・スケリットも本人役です。いまだに『トップガン』(1986年)のバイパー役が代表作と見なされているのは、ちょっと可哀想ではあります。
 ほら、『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)とか、『コンタクト』(1997年)とか、他にもあるだろうに。ケイト・ベッキンセールと『ホワイトアウト』(2009年)にも出演していましたが……。
 やっぱり一番は『トップガン』なのか。しかもアノ作品ではトム・クルーズの「父親の親友」役で、あまり出番も無かったようなのに。

 振り返ると本作では、使用される映画ネタのほとんどが八〇年代のものでしたね(一部、七〇年代後半のものもありましたが)。やはりオヤジ世代へアピールするには、この年代のネタになるのか。
 監督が自分と同じ世代の観客に向けてネタ振りしているように見受けられます。若い世代の観客には通じているんでしょうか。「自転車の前カゴにテディベアを載せる」のが『E.T.』(1982年)のパロディだってのは……判るよね(心配しすぎか)。
 でも「ダースベイダー・マーチ」や「ナイトライダーのテーマ」は今でもちゃんと通用するのが素晴らしい(続編やらリメイクやらありますから)。

 SF映画が色々とネタにされておりますが、クマのぬいぐるみが命を得て動き出すことに、合理的な説明はありません。
 いじめられっ子の孤独な少年が星に願いをかけたら、テディベアに命がやどる。
 この世の中で「少年の願い」ほど強いものはないのだから(アパッチ攻撃ヘリの超強力兵装には負けるとしても)。
 パトリック・スチュワートのナレーションでそう云われてしまったら納得するしかありません(吹替版では是非、麦人にお願いしたいところですが……残念、富田耕生ですか)。

 最初は可愛かったテディベア──一九八五年当時は八歳──も、二七年が経過すれば中身はオヤジに。一時は全国的に有名になるが、世間の流行は移ろいやすい。あっという間に飽きられ、もはや近所の人達もテディベアが動いていてもまったく動じない。
 少年は成長しマーク・ウォールバーグとなり、今でもクマと一緒になってハッパ吸ってハイになり、映画を楽しんでいる。ある意味、理想的な生活ではあります。

 序盤のマーク・ウォールバーグのヘタレっぷりがなかなか笑えました。三〇過ぎて職場で平社員同然なのも肯ける。このあたりは観ていて非常にイタい。あまりにも頼りない。
 劇中で『007 オクトパシー』(1983年)の主題歌「オール・タイム・ハイ」を歌うマークの音痴っぷりも素晴らしかったです(これも八〇年代の映画ですねえ)。まぁ、ノラ・ジョーンズのステージを観に来て、こんな歌を聴かされた観客が大ブーイングするのは無理からぬ事ですが。

 一応、それなりに恋人との将来を考えてはいるものの、堅実な生活設計とは言い難いし。
 しかしマークの恋人であるミラ・クニスはそれを許さない。このままダラダラ同棲していても結婚は出来ない。かくなる上は、自分とクマのどちらかを選べと迫る。
 野郎同士の親密な関係に女性が割り込んで来て破局に至ると云うのはよくあるハナシです。

 そしてノラクラと惰性で生活している男が一念発起。マトモになろうとして、クマにも独立を促し、アパート暮らしをさせようとする。必然的にクマも家賃を払う為に働かざるを得なくなる。
 でも、バイト先のスーパーで上司に生意気な口を叩けば叩くほど昇進していく、と云うのはナンでしょうね(そんな職場があったら俺も転職したいわ)。
 そこへ「生きているテディベア」を我が物にしようというサイコな親子が登場し、クマの拉致誘拐から劇的な救出劇に至ります。クライマックスでは結構、迫力のカーチェイスがあったり、ヒッチコックばりのサスペンス展開もあったりして、なかなか面白かったデス。ちよっと泣かせようとするところも巧い。

 紆余曲折の末、クマのおかげで破局に至った恋人同士が、再びクマの取り持つ縁でヨリを戻すという、誠にラブコメの王道を行くような展開でありました。
 しかしハッピーなエンディングを迎えようとするときに、身体障害ネタなギャグをブチかますあたり、毒も忘れておりません。
 ラストはサム・ジョーンズ立ち会いの下にめでたしなハッピーウェディング。いやぁ、フラッシュ・ゴードンが祝福してくれる結婚式と云うのも凄いですねえ(SF者の夢かな)。
 ところで最後のオチに持ってこられたテイラー・ロートナーは……アレで納得しているのでしょうか(笑)。




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