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2012年10月21日日曜日

宇宙刑事ギャバン THE MOVIE

(GAVAN THE MOVIE)

 東映メタルヒーロー『宇宙刑事ギャバン』三〇周年記念作品として、まさかの単体劇場版である以上、観に行かねばなりませぬ。私以外にも、これが義務となっている方は沢山おられるでしょう。
 ですが正直、これは如何なものか。かなりビミョーな出来でして、オールドファン向けとも云い難いし、小さなお友達の新規ファン獲得もちょっと難しそうです。どっちつかずと云うか。

 特に冒頭部分が、お子さまドン引き必至のホラー展開。アバンタイトル部分だし、タイトルが表示されてしまえば「いつもの東映特撮もの」ではあるのですが……。
 最初の数分は、マジで怖いです。別の映画のようです。血しぶきもビシビシ飛び散るし、ホラーとしては合格でしょうが、まずここに耐えられず、観るのを止めてしまう幼年のお友達は沢山いることでしょう。
 子供にせがまれて劇場に連れて来たはいいが、始まってたったの数分、まだタイトルも出ないうちに「パパ、怖い。もういいよ」と云われた親はどうすればいいのだ。
 だからパパは一人で観たかったのにーッ。

 サイドカーレースの場面から始まり、二人の主人公を紹介するのは、特に問題なしですが。
 無茶し過ぎな熱血野郎(石垣佑磨)とクールな相棒(永岡卓也)。そして二人の男に挟まれているヒロイン(滝裕可里)と云う、三角関係な図式。これもまぁ、お子さま向きとは云い難い設定ですけどね。
 二人は宇宙飛行士であり、日本初の有人火星探査にロケットで飛び立つ。そして火星軌道上で異変に遭遇し(ワームホールって便利だなあ)、消息不明に。
 ここまではいいでしょう。問題はここから。

 一年後。二人の宇宙飛行士の生存は絶望視されていたが、ヒロインは健気にも彼らの帰還を信じ続けていた。
 ヒロインはどこかの研究所の職員で、何か宇宙関係の研究をしているところで、ある夜、何者かの襲撃を受ける。
 突然の停電。でもPCのモニタだけは点いているのが笑えます(一応、そうしないとマズい理由があるのは判りましたが不自然デスね)。
 そして男性職員が何者かに襲われる。駆けつけた警備員も暗闇の中で、片端から血しぶきと悲鳴を上げて倒されていく。
 事情がつかめぬヒロインは恐怖におびえて逃げまどう。
 やがて暗闇から現れる怪人の姿に、観客から悲鳴の一つもあげさせたいと作り手は思っておられるのでしょうが(多分、それは成功でしょう)。
 でも小さなお友達は怯えまくり。ちょっとヤリスギな感じが……。

 まぁ、そこからは定番展開ですけどね。
 間一髪でヒーロー登場。ちゃんと高い場所から現れる。
 「ぬう。貴様、何者だぁッ」のお約束の台詞。
 そしてポーズをキメて名乗りを上げると、タイトルがバーン。
 宇宙刑事のコンバットスーツは夜間撮影が映える。逆光のシルエットにポーズをキメた姿は、そりゃお見事ですが、ここまで来るのに何人のお子さまが脱落したのか。

 宇宙刑事の正体は消息不明になった宇宙飛行士の片方、十文字撃だった。火星軌道上で遭難したところを銀河連邦警察に救助され、そのまま宇宙刑事見習いとして居着いちゃったらしい(助かったなら帰って来いや)。
 見習いのまま出動したことで咎められる二代目ギャバン。コム長官(西沢利明)もお歳を召されてます。
 長官が三〇年近く現役のまま在職されていることに軽く驚きました。いかに懐かしいとは云え、銀河連邦警察には人材がいないのか。いや、それよりも長官の任期に制限は無いのか。
 長官は現役で在職しているのに、残念ながらミミーとか、アニーはまったく登場いたしません。ちょっと残念。新たなパートナー、シェリー(森田涼花)はコム長官の姪という設定ですが。

 ところで、行方不明になった二人のうちの片方が宇宙刑事。では相棒の方はどうなったのか。
 実はドン・ホラー復活を企むマクーの組織の中に、仮面を被った謎の男がいて、三人の幹部を従えて指揮を執っている。こいつは誰だ。
 判りやすいと云えば判りやすいですねえ(笑)。
 でも、男女の三角関係を物語の中に入れてしまったのは、お子さまには退屈なだけかも知れません。また、シェリーがヒロインに軽く嫉妬する描写もあったりして、男女関係が強調されているような気がします。
 ドラマの対象年齢がよく判りませんです。

 紆余曲折ありまして、マクーの狙いは研究中の特殊な隕石であると判る。その名もアクシオン隕石。
 これにナニカすると、時空が歪んでワームホールが生成され、ドン・ホラー(声は勿論、飯塚昭三ね)がこちらの時空に顕現できるのであるという説明に、色々とツッコミたいところですが、スルーしましょう。
 隕石強奪に現れたかつての相棒は、一緒にヒロインも拉致していく。マスクを外して正体を明かすまでもありませんが、手続きですから。
 火星軌道上での事故の際に、相棒に対して負い目が出来た主人公は──いや、不可抗力でしょう。そこまで責任を感じる必要は無いのでは──強く出られず、そこをつけ込まれてピンチに陥る。
 そして、割り切れない態度の二代目に業を煮やして初代の登場です。

 一文字烈(大葉健二)としては、こんな若造に二代目を襲名されては叶わんのでしょう。
 激烈な特訓が始まります。まぁ、アレが特訓と呼べるのか否かはさておき、殴りあって拳と拳で語り合うのは、マッチョの美しい伝統ですね。
 それにしても大葉健二のライブアクションも冴えていますね。

 一方、魔空城(三〇年経ってボロボロだ)ではワームホールを発生させるドン・ホラー復活の儀が着々と進行していたわけですが、ヒロインをさらった怪人と云う構図が妙に『オペラ座の怪人』(2004年)を思わせて、ちょっと笑えます。

 さて、その間にもギャバンを抹殺せんとするマクー幹部の攻撃があるのですが、もはやマクー空間が遊園地のアトラクションと化したかのようです。
 二人揃って片付けてやると、マクー空間に吸い込むのはいい。そしてここでは自分のパワーが三倍になるのだと宣言して、圧倒的優位を見せつけるのもいいでしょう。しかしなかなか止めを刺さない悪党の悪い癖が出てますよ(お約束と云えばお約束デスが)。
 次から次へ奇天烈なシチュエーションのシュールな戦闘シーンをつないだ演出は面白いのですが、最後に爆発のショックで現実世界に戻ってくるので、ナニしに行ってたのかよく判りませんです。自分のパワーが三倍になっている間に、ちゃんと倒せよ。楽しんでいたぶっているから逃がしてしまうのではないか。

 挙げ句、「凄かったろう、マクー空間。いやぁ、三〇年ぶりだなあ」などと云う、初代ギャバンの余裕の発言に笑ってしまいました(流石は初代と感心するべきなのか)。
 マクー空間は絶叫マシンか(笑)。
 そして態勢を立て直した新旧ギャバンがふたり並んで変身です。〈ダブル蒸着〉の図はそれなりに熱いです。細かい部分で新旧コンバットスーツのデザインが異なっているのも興味深い。やはり二代目のコンバットスーツはLEDで光るのか。
 小林清志のナレーションもそのままですね。
 そのままと云えば、渡部宙明サウンドに串田アキラの主題歌も嬉しいところです。

 空の彼方にワームホールが生成されるのを目撃し(意外と近いところにあるな)、魔空城へ急行する二代目。
 こういう場合、主人公を行かせる為に初代が「ここは任せろ。お前は行けッ」と盾になるのも定番ですね。初代の見せ場としてはここまでですが、やはりレーザーブレードからの必殺技のキメは、初代の方がドスが効いているように思えるのは贔屓目でしょうか。

 そして敵の組織が、ボス一名に幹部三名と云う構成であるので、こちらも初代と二代目ギャバン以外にも、もう二人の助っ人が必要であることは明白ですね。
 もっとも、本作は『宇宙刑事ギャバン』の劇場版でありますので、シャリバンもシャイダーも、ほんのチョイ役です。日向快(三浦力)も烏丸舟(岩永洋昭)も友情出演。台詞もほとんどありません。
 序盤の銀河警察の場面で顔見せ的に登場した後は、クライマックスのマクー要塞に救援に現れるまで、まったくこれっぽっちも登場しません。
 そしてその現れ方もまたハンパなく唐突です。主人公の方が驚くくらい。
 「お前達、何故ここに」と問われてもニヤリと笑うだけで説明なし。スルーですかッ。観ている俺達には説明してくれよッ。

 見せ場だけあればいいだろう的映画ではありますから、深くは追求してはイカンですか。
 残った二名の幹部に対して、シャリバンとシャイダーが迎え撃つ。カッコいいことはカッコいいが、やっぱり付け足し的な感じがするのは否めないです。二人の出番もここまでですし。
 あわやドン・ホラー復活と云うところまでいきますが、なんとか事態は収拾されて一件落着(ホントか?)。

 日曜朝のテレ朝スーパーヒーロータイムでは、映画の宣伝も兼ねて『特命戦隊ゴーバスターズ』にゲストでギャバンが登場するエピソードが二話ほどありましたが、ドラマの時系列としては、本作はそれ以前の物語となるのですね。
 見習い宇宙刑事が二代目ギャバンを襲名するまで。
 すると、ゴーバスターズのエピソードにも宇宙犯罪組織マクーの怪人が登場していたところをみると、ギャバン、シャリバン、シャイダーの三人が活躍しても尚、マクー撲滅には至らなかったのか。
 細かいツッコミを入れると、ゴーカイジャーの劇場版『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン』(2011年)との整合性も取れていないのではないか──時系列的に矛盾する台詞がある──とか色々ありますが、それらは皆スルーですね。今更そこだけツッコミ入れても仕方ないと云うか、全編ツッコミ処な映画ですから。
 また、低予算な特撮映画であるのはやむを得ないとは思いますが、ロケット打ち上げシーンに、別の映画──『北京原人 Who are you?』(1997年)か──のフィルムを使い回すと云うのも、ちょっと……。
 『北京原人』は東映としては「無かったことにしたい」映画でしょうに、いいのかしら。

 来場者にはレーザーブレードのストラップをプレゼントと云うことで、ありがたく頂戴いたしましたが……。
 意外と小さくてショボイ感じがするのも、残念なところでした。


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