2012年9月6日木曜日

るろうに剣心

(RUROUNI KENSHIN)

 和月伸宏の原作コミックは連載当時、よく読んでおりました(あの頃はよく雑誌を立ち読みしていたのです。和月先生、ごめんなさい)が、実はアニメ版の方はサッパリ観ておりませんでした。でも絶大な人気を博していたことは存じております(当時のコミケのカタログを眺めると、関連するサークルが何頁も続く有様でしたからねえ)。
 しかし連載終了後、もう十三年も経つのか。早いなー。かなり記憶が曖昧になっていますが、朧気でも何とかなりました。大丈夫です。

 本作は時代劇アクション映画として出色の出来であると申せましょう。殺陣の演出が今まで観た時代劇とは一線を画しております。ワイヤーアクションも駆使した殺陣は、実にスピーディです。飛び散る血飛沫の描写も迫力あります。
 監督は大友啓史。NHKの大河ドラマ『龍馬伝』の監督でしたか。他にも『ハゲタカ』の演出なんかも手掛けておられましたね。
 うーむ。『龍馬伝』も、ちゃんと観ておけば良かったか。佐藤健も岡田以蔵役で出演していたのに。

 配役がなかなかハマっておりました。
 主役の緋村剣心が佐藤健。個人的に佐藤健と云えば、仮面ライダー電王。劇場で佐藤健を観るのは『さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』(2008年)以来です。いや『GOEMON』(2009年)も『TRICK 霊能力者バトルロイヤル』(2010年)も観ましたが、記憶に残ってない(汗)。『BECK』(2010年)は観ていなかったし……。

 本作は何を置いても主演の佐藤健の演技力が素晴らしく、「暢気な流浪人」でいるときの柔和な表情と、「殺伐とした人斬り」でいるときの荒んだ顔つきが完全に別人です。さすが『仮面ライダー電王』で一人六役以上演じ分けた実力派ですねえ。
 ただクライマックスで完全に元の〈人斬り抜刀斎〉に戻ったときの凄みがズバ抜けていたので、どうにも序盤のコミカルな台詞との落差に違和感を感じてしまうのも事実でして。もう少しマンガチックな描写は控えても良かったのになあと思われました。
 劇中でちゃんと剣心の頬の十字傷の由来まで説明が入ったのはお見事でしたが、その一方で、己の非道を悔いて「不殺(ころさず)の誓い」を立てる経緯はちょっと端折られてましたね。
 何から何まで説明すると理屈ぽくなるし、サラリと匂わせるだけで充分か。

 ヒロインの神谷薫が武井咲。モデル出身の女優さんですが、それなりに演技は達者なようで(少なくとも大根と云うほどではない)。『愛と誠』(2012年)も観ておけば良かったか……。

 剣心の仲間と云うか相棒役になる相楽左之助が青木崇高。この人も『龍馬伝』に出演されていましたか。でも出演作の中では『時をかける少女』(2010年)くらいしか存じませんデス。私、〈海猿〉シリーズも完全にスルーしておりまして(汗)。
 佐之助は自分を売り込む為に剣心に喧嘩を売ろうと登場し、いつの間にやら仲間になってしまうのが急展開ですが、竹を割った性格だから良し。
 本作では前半で斬馬刀を振り回し、後半では拳闘家として暴れてくれるので一粒で二度オイシイか。ちょっと斬馬刀の扱いが小さかったかしら。個人的には「斬馬刀」と云うと、永井豪の『バイオレンスジャック』を思い起こしてしまいますので(スラムキングが振り回していたアレね)、もっと豪快に破壊力のあるところを見せて戴きたかったデス。

 このあたりまでは割と原作に忠実な役作りでした。
 もう一人の仲間というか、ライバルである斎藤一が江口洋介。ちょっとキャラクターが明るくなり過ぎたようで、若干違和感を覚えます(許容範囲内かなぁ)。ちゃんと〈牙突〉の構えも披露してくれますし(但し、構えるだけですが)。

 本作で登場する剣心の敵は四人。
 一番判りやすいのが悪徳実業家、武田観柳。香川照之が演じています。コミックスを実写映画化するときは、香川照之にお呼びが掛かるのは既定路線なのか。近年では『あしたのジョー』(2011年)が忘れ難いです。いつも通りの安定した悪役の上に、コミカルな面も見せてくれるます。ガトリングガンをバリバリ撃ちまくって楽しそうです。
 原作のキャラクターはもっと痩せた優男でしたが、もはや外見を似せることよりも、「お金がすべてな成金」である本質が体現されておりました。本作で一番印象的なのがこの人です。
 武田観柳の配下に、雇われた剣客が三人いますが、そのうち二人はちょっと扱いが小さかったのが残念です。

 剣客その一。戌亥番神が須藤元気。『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』(2010年)でも印象的な方でした(「キライじゃないワ!」は名台詞だなぁ)。ルナ・ドーパント大好きデス。
 今度は格闘家の役なので、そのまんま。どちらかと云うと剣心の敵と云うよりも、左之助の敵でしたね(原作でもそうでしたか)。
 左之助とのスポーツマンシップ(笑)に則ったシンプルなドツキ合いは短い出番でも激烈でした。

 剣客その二。外印が綾野剛。仮面の形状が若干異なりますが、実写版のアレンジなんですかね。確かこの人、ドクロの仮面を脱ぐと老人だった筈ですが、本作では綾野剛のイケメンになっている。特殊メイクで顔面に醜い傷跡がありますが、あまり怖くないです。
 どこかで観た顔だと思ったら、綾野剛は『GANTZ』(2011年)の〈黒服星人〉の人でしたね。
 出番が短いので、原作にある機巧人形や屍人形といったギミックは省略されてしまったのが残念。その代わり、若返ったおかげでアクロバティックなアクションを見せてくれます。
 「何故、こんなことをする」と剣心に問われ、サラリと「食っていけないからさァ。手前ェらの作ったヌルい世の中じゃあな」と応える短いやり取りが決まってます。

 剣客その三。本作で最大の敵となる鵜堂刃衛に吉川晃司。個人的には吉川晃司は斎藤一の役でも良かったかなと思うのですが、殺人に耽るサイコな剣士もなかなか板に付いておりました。
 問答無用に警察署へ白昼堂々の単身殴り込みをかけて警官隊を皆殺しにするターミネーターっぷりが素晴らしいです。台詞も極力少なめに、ひたすらに斬って斬って斬りまくっている。
 本作はクライマックスのあとに、もう一段、主人公の個人的最終決戦が用意されているドラマ構成となっていて、佐藤健と吉川晃司の差しの勝負が素晴らしいデス。
 ちゃんと原作の描写に則って、鵜堂刃衛は〈背車刀〉の技を見せてくれますし、緋村剣心は飛天御剣流奥義の抜刀術も披露してくれます。それをちゃんと判るように、殺陣の振付に組み込んで、スピーディな演出で見せてくれる。アニメよりカッコいいかも(いや、アニメ版は観ていないんですけど)。

 ドラマとしては、目立ちまくりの香川照之に対して、冒頭から顔見せしてくれるものの、須藤元気と綾野剛の扱いが活躍はクライマックスの対決のみというだったのが残念でしたが、バランスを考えればやむを得ないでしょうか。二人とも敵組織の用心棒というヤラレ役に徹しているのが、逆に潔いデス。

 他には高荷恵役に蒼井優、明神弥彦役に田中偉登、それから山県有朋役が奥田瑛二といったところです。恵さんは本筋に絡んだ役でしたので、まだ少しは出番がありましたが、弥彦くんは完全にお子様扱いで見せ場なしなのが残念。ちょっとリアルなチャンバラになると少年剣士では殺陣の振り付けが難しいのかしら。弥彦くんにも続編でのリベンジを……(実写では難しいか)。
 それにしても明治初期の物語には山県有朋の存在は欠かせませんねえ。

 全体のストーリーは原作のエピソードを幾つかミックスした形でアレンジされておりましたが、脚本はきちんとした体裁にまとまっていました。
 実は結構、本筋はシンプルな物語でしたね。基本設定を説明するのに尺のかなりの部分を必要としたせいでしょうか。主要登場人物の説明が丁寧に語られる分、ドラマが長くなって全体で一三〇分を超えるボリュームですが、クライマックス前に悪党側の悪巧みが明らかになったとき、あまりのシンプルさにちょっと拍子抜けしてしまいました。

 要は悪党は、神谷道場を含めた下町一帯の土地の買い占めを進めており、買い取りに抵抗するヒロインに対して、ゴロツキを雇って執拗な嫌がらせを続けていたと云うのが真相。
 そこへヒロインと知り合った素性の知れない流浪人が、亡き父の残してくれた道場を守るヒロインを助けて悪党どもを退治する……。
 「道場」を「牧場」と言い換えると、簡単に西部劇のシチュエーションになりますね。剣心はシェーンだったのか(笑)。あるいは日活の〈渡り鳥〉シリーズのようでもあります。
 いっそのこと武田観柳も、強力な新型阿片なんか製造せずに、純粋に事業の拡大を狙った悪事だったと云うことにすれば、もっとシンプルになったのに(それだと恵さんの存在意義が無くなるか)。

 剣心もヒロインを助け、自身の因縁にも決着を付け、そのまま流浪人として去って行けば、もっと綺麗に終わったのかなあと思わぬでもありませんが、そこまで原作は無視できないか。続編も製作可能にしておかないと行けませんしね。
 是非、続編では志々雄真実も登場させて下さい。

 ついでに『武装練金』も実写劇場版化されないかなー。アニメよりインパクトあると思うのですが、蝶野くんを演じられる役者を見つけるのは大変か(笑)。


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