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2012年9月19日水曜日

バイオハザードV/リトリビューション

(Resident Evil : Retribution)

 製作ポール・W・S・アンダーソン、監督ポール・W・S・アンダーソン、脚本ポール・W・S・アンダーソンと云う、ボクらのポール・W・S・アンダーソンの映画デス。そして主演はもちろんポール・W・S・アンダーソンの嫁。別名、ミラ・ジョヴォヴィッチ(以下、ミラ姐さん)。

 毎度お馴染みの連続シリーズ『バイオハザード』の第五作。原題には数字など付いておりませぬ──シリーズを通じて数字なし──が、ヘンな副題は止めにして、シンプルに数字だけ付けた方が良いのに、どうせこの先もどんどん続くのでしょうから。
 と、思ったら何と監督は「次回で完結」宣言しておられます。ホンマかいな。
 とりあえず本作だけでは終わりませんので、堂々と「前回のつづき」から開幕し、投げっぱなしで「次回につづく」。それだけは観る前から判っていましたけど。
 実に清々しい。
 あまりに清々しいが、あのラストでホントに次回完結するのか心配デス。

 たまに『エイリアンVSプレデター』(2004年)とか、『デス・レース』(2008年)とか撮ってしまって、本シリーズを他の監督に任せてしまったりしたこともありましたが、第六作で完結するならシリーズ全作を一人で監督して戴きたかった(いや、ラッセル・マルケイも好きですけど)。
 完結宣言した以上は、終わるまではそれ以外の映画は撮らなくていいです。いや撮ってはイカン。撮ったら罰金を科そう。
 別の映画が撮りたくなったら、影武者ポール・アンダーソン監督に任せましょう。きっと素敵な文芸作品を撮ってくれますから。
 本当に完結するまで、ボクらのポール・W・S・アンダーソンは『バイオハザード』以外の製作禁止。別に第六作で終わらなくて、続いていく分には一向に差し支えは無いのですがねえ。

 本作は、もういちいち説明しなくても判るよな的にアルカディア号襲撃場面から始まります。アルカディア号が何か知らない人は本作を観たりしないから大丈夫です。一見さんお断り。
 さすがにそれではイカンと思ったのか、ミラ姐さんがちょこっとナレーションで自己紹介しつつ、過去作品をダイジェストで説明してくれますが、主にミラ姐さん無双であることのさりげない自慢話にしかなっていません。
 さすが脚本もポール・W・S・アンダーソン。

 本作はポール・W・S・アンダーソン監督の「俺の嫁自慢」ですから(シリーズ全部そうか)。
 だからアルカディア号がアンブレラ社の攻撃部隊に制圧され、ミラ姐さんは捕虜となるワケですが、その際に裸にひん剥かれ、全裸より恥ずかしい金太郎ハラマキの刑に処せられます。
 夫婦のプライベートな羞恥プレイを金払って劇場で見せられているようです(もっとやれ)。
 しかもミラ姐さんは、3Dで鑑賞するには大変残念な体型(げふんげふん)。いや、スレンダーな引き締まったボディは素晴らしいデスネ。
 羞恥プレイが一段落した後は、今度はSM風ボンテージ・ファッションですよ。嫁さんをイジって楽しんでおられるのがひしひしと感じられます。

 本作はポール・W・S・アンダーソン監督が初心に戻ろうと考えられた所為か、かなり第一作の雰囲気を取り戻しております。即ち、ストーリーがアンブレラ社の秘密基地から決死の脱出を図る「だけ」のシンプルなものになっている。
 世界は滅亡の淵に立たされている筈なのに、その状況はとりあえず脇に置いたまま、物語は進行していきます。
 序盤に基地全体の構造を説明し、場面が変わる都度にワイヤーフレームなCGの見取り図を表示して、「今ここにいます」と教えてくれるのが親切ですね。

 いつの間にやらアンブレラ社に内部分裂が起こっていたという設定が唐突です。
 アンブレラ社は無敵超人となったウェスカー議長(ショーン・ロバーツ)のワンマンな組織になったと思いきや、どうやら人工知能〈レッドクィーン〉が反旗を翻したらしい。
 このコンピュータも第一作以来、忘れ去られていた設定ですが──そもそも第一作で基地と一緒にメインフレームは吹っ飛んだ筈なのでは(どこかにバックアップが残っていたのか)──、本作でアンブレラ社全体を統括する巨大な人工知能として再登場しました。
 なにやら『ターミネーター』(1984年)の〈スカイネット〉ばりに巨大なシステムになっている。

 当初はモチーフに『不思議の国のアリス』を持ってきたいという思惑があったそうです。しかし巧くいかずその名残として、主人公にアリス、コンピュータに〈赤の女王〉と云う名前が残っていただけの筈なのに──と、第一作のDVDで監督自身が音声解説で白状しています──、もう一度〈レッドクィーン〉を復活させたりして、どうするつもりなのか。
 元の『不思議の国のアリス』路線に戻せる算段が付いたのか。とてもそうは思えませぬが。

 したがいまして、ストーリーの流れは「〈レッドクィーン〉の制御する秘密基地からの脱出」という第一作をなぞるような展開になります。
 実はジル(シエンナ・ギロリー)を洗脳して配下に置き、アルカディア号を襲撃したのは〈レッドクィーン〉の陣営であって、ウェスカーの思惑とはまるきり関係なかったと云うオチでした。強引な展開です。
 だから〈レッドクィーン〉陣営に拉致されたミラ姐さんを、敵であるウェスカーの側が救出しようとする。その上で「手を貸してくれ」と利用するつもりなのがミエミエです。
 何だかんだ云いながら、コンピュータに支配されるのはイヤなのか、人類側に寝返るウェスカーの変わり身の早さが見事です。
 恨み辛みはあれど、とりあえず脱出する為には共闘も止む無しと割り切るミラ姐さん。

 ウェスカーの意を受けた救出部隊のメンバーに、本シリーズ初登場のレオン(ヨハン・アーブ)がいますね。無精髭が生えてゲーム版よりワイルドな感じデス。
 他にもゲーム版キャラとしてはエイダ(リー・ビンビン)が初登場。割とこちらは似せた役作りをしておられます。
 次回で終わらせるつもりがあるからか、今までのシリーズ中に登場したキャラが本作で大挙登場なのもファンには嬉しい……のかなぁ? 前作に引き続きルーサー(ボリス・コジョー)が登場するのは良いとしても、死んだ筈のキャラまでもガンガン出ます。
 レイン(ミシェル・ロドリゲス)や、カルロス(オデッド・フェール)どころか、ワン隊長(コリン・サーモン)まで再登場とな。
 やはりワン隊長の「サイコロ・ステーキ斬り」の場面はシリーズ屈指の名場面ですからね(人気あったんですねえ)。
 逆に、登場しないのはクリスとクレアのレッドフィールド兄妹ですが、それは次回完結編のお楽しみでしょうか。
 名前の無い「第一感染者」役の中島美嘉も再登場です。今度はミラ姐さんとのアクションもあります。このあたりは監督の趣味の世界ですねえ。中島美嘉は本作のエンディングで主題歌も歌っておりますが、作品のテイストに合っているのかビミョーです。

 本作は、基地内部からの脱出を図るアリス&エイダのお姉さんチームと、基地外部からの救出に向かう野郎チームが各々、障害を乗り越えながら(ステージをクリアしながら)合流を目指して進んでいくという趣向です。ゲームを意識してリスペクトしている演出なのが伺えます。
 登場するクリーチャーも、巨大化したリッカーに、処刑マジニ、スーパー・アンデッドな兵隊さんと盛り沢山です。
 あまりにも賑やかに登場するので、本作がホラー映画であることを忘れてしまいます。多分、きっともうホラーじゃ無いです。

 その上、主人公自身のクローンが何体でも作られた経緯がある以上、どんなキャラでも復活可能な設定になっています。ナンデモアリか。
 だからミシェル・ロドリゲスが何人も登場します。良いミシェルと悪いミシェル(笑)。
 バーチャル環境も充実した設定になっておりますので、アリスとカルロスが所帯を持ってラブラブな家庭を築いているという、お笑いの展開まで披露してくれます。選りに選ってカルロスが旦那ですか!
 次で終わらせるから好き勝手します的な日常描写は、アンダーソン監督も〈~オブ・ザ・デッド〉とタイトルに付くような作品も撮ってみたかったと云う願望の表れか。

 他にも時代劇『必殺』シリーズのパロディみたいな場面もあります。プラーガ寄生体を自分に注射して、バオー来訪者状態になるミシェル(悪い方ね)が、格闘で男共をバッタバッタと薙ぎ倒すクライマックス場面。今度はミシェル無双。
 実にカッコ良いのですが、パンチが決まると人体のレントゲン写真がアップになって(CGですが)、肋骨や内蔵にダメージが及ぶところを詳しく見せてくれます。
 まさに〈念仏の鉄〉。実はアンダーソン監督は山崎努のファンだったのか。

 ミラ姐さんの機転で全滅は免れたが、ミシェルも破れ去ったわけではない。
 「戻ってくるわよ」と捨て台詞を残して御退場。決着は完結編に持ち越しです。ターミネーターですな。
 案外、ラスボスはウェスカーではなくて、ミシェルになりそうな予感が……。

 最後にウェスカーの元に到着し、いよいよ人類の生き残りをかけてゾンビと〈レッドクィーン〉に戦いを挑む──と云うところでエンドですが、生き残った人類陣営はあまりにも少数。果たして如何あいなりますか。
 それにしても再会したウェスカーの場当たり的対応には笑ってしまいます。またミラ姐さんを超人状態に戻してしまうとは、御都合主義展開も極まれりですわ。
 監督、ちゃんと脚本は先のことを考えて書きましょう(笑)。

 今回初登場で、次回にも登場してもらいたいのがミラ姐さんの娘(と云う設定な)ベッキーちゃん(アリアーナ・エンジニア)。完結編にもちゃんと登場してもらいたいが、設定自体に取って付けた感があるから無理かしら。
 それよりホントに次回で完結するのかしら。甚だ心配デス。


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