2012年9月10日月曜日

神弓 ─ KAMIYUMI ─

(최종 병기 활 最終兵器 弓)

 二〇一一年の韓国興行収入ナンバーワンだったという歴史アクション映画です。でも正直、観に行こうか迷うところがありました。
 云うまでもなく、韓国の李明博大統領が竹島に上陸して以降、日韓関係が悪化しているからデス。最近のアノ国の日本に対する態度には目に余るものがありますからね。エエかげんにせいッ。当分の間、韓国映画の鑑賞を控えて、個人的に出来る範囲で彼奴らに制裁を加えてやろう。そうだそうだ。
 しかしその強硬な姿勢も二週間と続きませんでした(意思、弱ッ)。まあ、映画は映画だし。

 中国四千年──最近じゃ五千年とか半万年とか云うのか──の歴史とは云うものの、〈元〉と〈清〉は漢民族の国家ではない。〈元〉はモンゴル族だし、〈清〉は満州(女真)族ですね。
 満州族と朝鮮族もまた別の民族であったという描写が興味深いです。今まであまり深く考えていなかったが、云われてみればその通り。
 劇中では朝鮮語と満州語のバイリンガルな演出が観られます。

 西暦一六三六年と云うと、満州に興った国家〈後金〉が国号を〈清〉と改めた頃ですね。北京が陥落して〈明〉が滅びる(1644年)ちょっと前か。
 朝鮮は〈後金〉の創始者ヌルハチ(太祖)の後を継いだホンタイジ(太宗)の皇帝即位を認めないことを表明した為に、〈清〉に攻められることになった。これが本作で描かれる〈丙子胡乱〉。
 中華文明圏の朝鮮にとっては、東北の蛮族に攻められ──〈丙子胡乱〉の「胡」の字は異民族への蔑称の意味がある──、国王仁祖は〈清〉に服属を余儀なくされたという屈辱の歴史。

 このあたりの歴史的背景は、あまりくだくだと説明されません。韓国の人なら自明のことだからですか。
 同様に、冒頭のプロローグ部分では、一六二四年の頃がちょっと描かれます。李王朝で仁祖が即位した年ですね。主人公の父は謀反の嫌疑を掛けられ(仁祖の即位に反対だったのか)、幼い兄妹だけを逃がして父親は処刑されるという場面。
 「外交を知らぬ新政権ではいずれ必ず戦が起こる」と云う台詞もあったりして、十数年後の〈丙子胡乱〉を予言しているようです。
 序盤から子供達の決死の逃亡が描かれたりして、アクション描写はしっかりしております。

 時は流れて一六三六年。
 幼い兄妹は開城(ケソン)に住む父の親友の屋敷に匿われ、兄ナミ(パク・へイル)は弓の名手として、妹ジャイン(ムン・チェウォン)は評判の美人として成長する。しかし逆賊の子供では、出世は望めない。ナミは弓の腕を磨きながらも、屋敷の使用人達と酔って騒ぎを起こすなど荒んだ生活を送っている。
 一方、兄妹と一緒に育った屋敷の跡取り息子ソグン(キム・ムヨル)は、ナミにジャインとの結婚を許可してくれと頼み込む。
 その妹の婚礼の当日に、〈清〉が侵攻してくる。

 大軍の前にあっけなく開城は陥落。〈清〉の兵士らによる殺戮と略奪。そして人民の多くが捕虜として連行されていく。新郎新婦もまた捕虜となっていた。
 このあたりの描写には特に韓国語の字幕もナレーションも入りませんが、何故か日本語字幕で歴史的な状況説明が入ります。やはり日本人──と云うか、韓国以外の外国人全般──には画だけでは判りづらいと思われたのでしょうか。
 確かに、そのおかげでずっと判りやすくなりました。本作では日本語字幕が結構、丁寧です。オリジナルにはない説明字幕と思われるものが所々に見受けられます。

 山にいて難を逃れた兄ナミは(妹の婚礼の日に何故、山にいたのかについては、複雑な事情があるんですよ)連れ去られた妹を追って、単身で敵の軍団に戦いを挑んでいく。
 しかし正直、「一人 vs 一〇万人!」という宣伝文句は大袈裟すぎます。全然、事実じゃないデス。
 確かに侵攻した清軍の兵力は一〇万人だったそうですが、それを全部相手にするワケでは無い。主人公の目的はあくまでも妹一人の救出であり、捕虜として強制連行された開城の人民を救うことでも無い。まぁ、結果的に何人かは救われますが。
 けれど、それは監督や脚本家の責任ではありますまい(日本の配給会社の責任かしら)。
 本作は中世韓国版『ランボー』(1982年)といった趣です。

 個人的に「弓を射るキャラ」は嫌いじゃありません。『ランボー』を観て以来、近代装備の軍隊に弓矢で戦いを挑むヒーローには好感を持ってしまうようになりまして。
 ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』(2001年)でもレゴラスが好きデス(オーランド・ブルームだし)。
 最近でもハリウッド超大作『アベンジャーズ』(2012年)に、ホークアイが登場してくれたのが嬉しい(ジェレミー・レナーだし)。
 他にも今年は『メリダとおそろしの森』とか『ハンガー・ゲーム』といった、弓矢で活躍する女の子の映画があって、大変喜ばしいデス。
 更に私はSF者ですから、ジョージ・R・R・マーティンらによる競作SF〈ワイルドカード〉シリーズ(東京創元文庫)では、ドクター・タキオンやタートルよりも、ヨーマンが好きなのです(ネタがマイナー過ぎますか)。

 本作でも弓矢によるアクションがこれでもかと描かれ、大変満足いたしました。
 しかし、確かに「弓矢アクション」が主体ではありますが、邦題の『神弓』も大袈裟すぎる。これではターセム・シン監督の『インモータルズ/神々の戦い』(2011年)に登場した〈エピロスの弓〉のような、神々の手になる超強力な大量破壊兵器を想像してしまいそうですが、全然そんなことありませんでしたね。確かに名器ではあるのでしょうけど。
 原題の漢字表記「最終兵器 弓」も、「拳銃は最後の武器だ」程度の意味じゃないのかしら。
 本作はどうにも宣伝の過程で、大袈裟に尾鰭が付いているような気がします。まぁ、それはそれとして──。

 基本的に弓矢は相手に見えないところから、静かに敵を射る為に使うという描写がいいです。使用する矢も、小型のシンプルなものから、〈六両弓(リュクシンタ)〉という重量級の矢まで、各種を使い分けています。
 小型の細い矢で敵兵を一人、殺さぬ程度に傷つけ、救援に駆け寄ってきた兵士と共に、重量級の矢で二人を同時に射抜いて倒す。
 弓矢による狙撃ですが、トム・ベレンジャーの『山猫は眠らない』(1993年)なんかを彷彿といたしました。

 更に、主人公は矢の軌道をカーブさせる曲射の名手でもある。森の中で木の幹に隠れた敵も、苦もなく倒すという名人芸。
 これを荒唐無稽の技ではなく、リアルに描く演出が巧いです。下手すれば『ウォンテッド』(2008年)のような劇画ぽい描写になりそうなところですが。
 更にCGに頼らず、高速カメラによる撮影で矢をしっかり捉えているのもお見事です。
 本作の監督及び脚本はキム・ハンミンと云う方ですが、存じませんでした。本作がまだ長編第三作と云う監督です。
 他の作品も観たくなりました。長編デビュー作の『極楽島殺人事件』(2007年)はDVD化されているそうなので、探してみようかな。

 さて、妹ジャインらを捕らえていった部隊は、〈清〉の王子トルゴン(パク・ギウン)の部隊だった。ナミは国境である鴨緑江を渡って〈清〉領土内まで追っていく。
 ホンタイジにそんな息子がいたかどうかは定かではありませぬが(この設定はフィクションですかね)、演じるパク・ギウンがなかなかのイケメンでした。美形の上に態度も尊大で、敵役としては貫禄充分。
 更に王子の部隊には猛将ジュシンタ(リュ・スンリョン)がいて、これが敵ながら天晴れな武将です。この人が主人公ナミの最終的な敵となる。
 本作では満州族は皆、満州語を話していますが、現代に於いては消滅の危機に瀕した言語であるそうな。キム・ハンミン監督は言語学者の助力も仰いで復元に努めたそうで、時代考証も怠りなしです。

 しかし韓流ドラマとかにはてんで疎いもので、登場する俳優さんにはサッパリ馴染みがありません。皆さん、TVドラマには色々出演されているそうですが。
 辛うじて主人公のパク・ヘイルに見覚えがあるくらい。でも『殺人の追憶』(2003年)に出演していても容疑者役だったので、ソン・ガンホほどに印象に残っておりませんデス(汗)。
 日本人の俳優さんも出演しておりました。大谷亮平と云う方は韓流ドラマで活躍されている方だとか。本作では台詞を一切、喋らずに、手話で会話する斥候兵を演じておりました(この手話の会話も、日本語字幕だけ)。

 新郎新婦を助け、先に逃がした後は、単身で山中を駆け回り、ジュシンタ将軍の追跡部隊を相手に弓矢で敵兵を屠っていく。
 断崖絶壁を飛び越える等のアクション描写が秀逸です。まさにランボーさながら。
 しかし山中には虎がまだ生息していると云う描写はいいのですが、序盤の伏線とクライマックスに登場する虎については、よく考えると場所が随分離れすぎていたような……。

 壮絶な死闘の果てに、助け出した妹は何とか戻ってこられましたが、ほとんどの人はスルーと云うのは史実を考慮してのことですね。
 「強制連行された国民について国は尽力せず、一部が自力で帰還したのみであった」と云う、ちょっと重たいラストでしたが、アクションは素晴らしかったです。

 それからこれは劇場の問題ですが、本作はデジタル上映でした。聞こえはイイけど、要はDVDを再生してスクリーンに投影しているだけなので、画質がイマイチであったのが残念でした。
 特に暗い場面になると、モアレ(干渉縞)が出るのが気になって仕方がない。字幕やエンドクレジットの文字も粗いし、どうにかならないものでしょうかねえ。


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