2012年6月8日金曜日

BLOOD-C The Last Dark

(BLOOD-C The Last Dark)

 「どんな銃器よりも日本刀の方が強い」と云う〈日本刀最強伝説〉は、いつ頃から広まり始めたのでしょうか。私の記憶では既に初期の『ルパン三世』にも見受けられましたが、世界的に広まったのはクエンティン・タランティーノ(以下、タラ公)の『パルプ・フィクション』(1994年)くらいからでしょうか。
 タラ公は『キル・ビル Vol.1』(2003年)でもユマ・サーマンに日本刀を持たせておりました。そのタラ公が大好きな日本のアニメのひとつが、Production I.G製作の『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(2000年)。
 「少女」が、「ヴァンパイア」を、「日本刀」で、ぶった斬るというコンセプト。
 このあたりから〈日本刀最強伝説〉はエスカレートしていき、いまや更なる上位の概念〈制服帯刀娘最強伝説〉にまで至っているような感があります。同じ日本刀でもセーラー服を着ていると威力倍増。もはや日本刀はセーラー服とセットのアイテムなのか。
 ザック・スナイダー監督がこの概念の信奉者であることは『エンジェル ウォーズ』(2011年)を観ても判ります(笑)。

 オリジナルの『BLOOD THE LAST VAMPIRE』はその後、別設定で『BLOOD+』(2005年)としてTVシリーズ化されたり(全50話)、『ラスト・ブラッド』(2009年)で実写長編映画化されたりしました。
 でもって昨年(2011年)、またまた別設定で『BLOOD-C』としてTVシリーズ化され(全12話)、その続編がこのたび劇場版として製作されるに至ったワケで、メディアミックスされた展開にはほとんどついて行けませぬが、とりあえず映像化された〈BLOOD〉ものについては遺漏無く観ておこうと思う私としては、見逃すわけには参りません。

 『BLOOD-C』は、もはやかつてのシリーズとの接点など無いに等しいくらい別物になっておりますが、主人公の名が「小夜」で、「セーラー服」で、「日本刀」を振るえばOKか。
 敵ももうヴァンパイアでは無く、日本の伝奇ものぽい物の怪になっている。〈古きもの〉とな。
 でも「制服帯刀娘」こそが最強であると云う概念はしっかりと受け継がれておりますね。

 劇場へ足を運ぶ前に全十二話を観ておいて良かったです。完全な続編ですから。元は第二期シリーズになるところだったのでしょうか(最初から二部構成の予定だったのか)。
 TVシリーズを観ていないと、小夜が七原文人を仇と狙う理由がはっきり判りませんですね。最低限の説明はセリフにもありますが、言葉だけではあのエゲツなさは伝わらんでしょう。

 登場人物としては、小夜(水樹奈々)と文人(野島健児)以外はほぼ新キャラですし、ある程度ドラマも仕切り直しになるので判りにくいと云うことはないです。
 巨大企業を牛耳ってなにやら大きな計画を進めている文人に対して、それを阻止しようとする地下組織と小夜が共闘するという図式。TVシリーズでは語られなかった文人のバックボーンなども説明されて、ようやく腑に落ちるところもありました。

 新キャラの声優さんも、神谷浩史、中村悠一、花澤香菜、甲斐田裕子等々と豪華メンバーでありますが……ただ一人だけ問題な配役がありますね。
 地下組織の一員で小夜と心を通わせようとする少女で、いわば準ヒロイン。これを橋本愛が演じています。

 橋本愛と云うと『貞子 3D』(2012年)で主役の怨霊貞子を演じて「次世代の貞子は可愛すぎる」と評判になり、今夏公開予定の『アナザー』の実写版でも主役の眼帯少女を演じています。
 でもアニメの声優としてはどうなんでしょ。今回が初挑戦ですし。
 ぶっちゃけ、浮いていると云わざるを得ませんです(公開初日の舞台挨拶によると、御本人も自覚されているようですが……)。あの浮き具合は強烈です。
 こういう「大人の事情的配役」は止めて戴きたいものです。
 ほんの端役なら我慢できないことも無いが、準ヒロインでは出番も多い。どうにも水樹奈々と橋本愛の会話シーンとか、聞いていて辛いものがあります。せっかくのドラマが……。
 こういう大きな役をやるのは、もう少し修行してからにするべきだと思うのですが。ファンにしてみれば貴重な資料になるんですかね。
 出来ればDVDリリースの際に、別キャストのバージョンも制作して収録なんて──無理か。 

 作画については文句の付けどころもございません。
 非常にリアルで丁寧で美しい。加えてアクションの演出も巧い。
 冒頭の地下鉄駅構内での〈古きもの〉と小夜の対決シーンなど、オリジナル版へのオマージュ的展開も感じられ──小夜の制服も何故かオリジナル版に忠実なセーラー服だし──、実にスピーディで迫力あります。見応え充分。
 ああ、そうか。これはつまり橋本愛のキャラが本格的に喋り始める前までの場面だからか。最初は単なる通りすがりの被害者の女性のように登場したので、すぐに退場するのかと思っていました。

 主役の二人以外は、ほぼ新キャラで一新されていますが、TVシリーズの登場人物もほんの僅かですが出番がありました。
 眠っている小夜が悪夢に見舞われるシーン。ちょっと懐かしかったです。セリフはほとんど無かったですけどね(藤原啓治と福圓美里にもっと出番をーっ)。
 他に数少ない生き残り組として、優花さん(浅野真澄)も登場してくれます。劇中では初めて年齢が明かされますが、二八歳かあ(そりゃちょっとキツいわなぁ)。
 逆に云うと、優花さんは二八歳で都知事になるワケで、それはそれで凄いことですが。

 もう一人の再登場組が福山潤の演じる「怪しげな店の店主」。TVシリーズでは「人語を解する子犬」の姿でしたが、本作では人間として登場です(犬は使い魔のようなものでしたか)。
 ナニやら意味ありげに登場していると思ったら、キャラクターデザインを担当したCLAMPの別作品『xxxHOLiC』のキャラクターでしたか。ヘンなところでクロスオーバーしますね。
 私は『xxxHOLiC』は未見だったので、いまいちピンと来ませんでした。

 とりあえず雰囲気だけ漂わせて、小夜に戦う為の刀を授けるだけの役。
 背景設定なんて詳細に説明しろとは申しませぬが、TVシリーズからの小夜との関係で、ひとつだけ釈然としないことがありました。
 TVシリーズでは劇中、水樹奈々と福山潤の間で何度か繰り返される問答がありました。

 「皆を守ると約束したのに……」
 「誰と。それは誰と交わした約束だ?」

 約束の内容は覚えているのに、約束の相手が思い出せない。
 小夜は人を襲う人外の化け物〈古きもの〉を狩る娘ですが、自分も人外のもの。にも関わらず、小夜は人を襲わず、仲間である筈の〈古きもの〉から人を守っている。何故か。
 これについてはTVシリーズではさっぱり明かされず、本作に於いてもスルーです。
 スルーするだけなら、何も意味ありげな台詞など必要無いとは思うのデスが、脚本の大川七瀬と藤咲淳一の中では設定として決められているのでしょうか。

 膨大な背景設定があるのは察せられますが、劇場版としての短い尺の中で(たった一一〇分しかない)、アレコレ説明して大団円を迎えるのは至難の業でしょう。だから本筋だけ残して、あとは全スルーです。ある意味、潔い態度ではあります。
 太古からの約定〈朱食免(しゅじきめん)〉が何なのかだけは判りましたが、世界的企業〈セブンスベヴン〉を裏から操る謎の秘密結社〈塔〉の目的とかは、よく判らないままです。何が目的だったのか。よくある「不老不死の研究」といったところでしょうか。
 一方、七原文人の目的はもうハッキリしており、これについてだけは完結します。〈セブンスベヴン〉も〈塔〉も利用されていただけか。組織としてそれは如何なものか。

 「世界を手に入れる」と文人は云うが、「世界」とは何か。人それぞれですね。
 金と権力である場合もあるし、ただ一人の女性である場合もある。
 グレゴリー・ペック主演の古い映画『世界を彼の腕に』(1952年)なんてのを思い出しました。
 ある意味、これは傍迷惑な純愛物語か(しかも怖ろしく一方的な)。

 観終わって振り返ると、そこまでしてやらなきゃいけないことなのかとか、無理がありすぎるのではと云う、ツッコミ処も多々見受けられ、どうにも釈然としませんです。元から文人は精神的に壊れているような人でしたが。
 説明されずに残った設定で第三部なんてあり得るのでしょうか。それは無いか。

 どうにも〈BLOOD〉シリーズは、コンセプトは面白いし、映像やアクション演出はそれなりに見応えあるのに、脚本的にイマイチなものばかりのような気がします。メディアミックスなので故意に穴を開けて、別のところで補完しないといかんのでしょうか。補完できるならそれでもいいが、どうにも出来そうには思えませぬ。

 水樹奈々の歌う主題歌「METRO BAROQUE」はいい歌なんですけどね。「純潔パラドックス」と合わせて聴いております。




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