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2012年4月28日土曜日

タイタンの逆襲 (3D)

(WRATH of the TITANS)

 ダイナメーションの神様レイ・ハリーハウゼン大先生の後期傑作『タイタンの戦い』(1981年)をルイ・レテリエ監督がリメイクし(2010年)、更にその続編に当たるのが本作です。レテリエ監督はリメイク版は三部作化するのだと云っておられましたが、これがその第二部に当たるのか。でも三作目もあり得るのか、ちょっと心配ではあります。
 何故か監督が交代しており、本作ではレテリエ監督に代わって『世界侵略 : ロサンゼルス決戦』(2011年)のジョナサン・リーベスマン。これはこれでなかなかよろしいのですが。

 前作はなんか評判、悪かったみたいですねえ。
 ド派手なCGでブチかます大怪獣映画に仕上がっていたので、私はそれなりに満足したのですが、世間一般的にはそうはいかなかったようで。
 やはり流行りだからと云って、安直に3Dにしたのが拙かったのか。フツーに撮影したフィルムを3D変換した〈疑似3D〉映画でしたからね。
 二〇一〇年当時の映画評によると、最高の3D映画は『アバター』、最低の3D映画は『タイタンの戦い』と云われておったそうで、特にドリームワークスのJ・カッツェンバーグからはボロクソに評されていたとか。
 「これ以上、『タイタンの戦い』を下回る品質の3D映画を作ってはいけない」とはまた、エラい云われようです(でも結構、その後もコレを下回る品質の映画は沢山あったような……)。

 本作もまた無意味に3Dで上映されております。エエんかいな。懲りてないのか。
 そりゃ『アバター』のように全編を通して3Dを体感できるようにするのは、制作費の額から云っても無理でしょう。私は2D上映で充分な気がするのですが。怪獣映画として巧く作られていたなら、それで充分よ。
 その意味では、本作もまた個人的には合格水準に達していると申せましょう。前作に続いてハリーハウゼン作品をリスペクトした怪獣達のデザインは観ていて嬉しくなります。
 キメラや、サイクロプスも最新CGで格段にパワーアップしております。特に青銅巨人タロスが、より異形になっているのがいい。ザクザク人間を斬り刻んでくれます。

 ところで、監督は交代してしまいましたが、メインの配役は変更ありません。
 ペルセウス役は、サム・ワーシントンのまま。でも前作のように丸刈りにした「古代ギリシアの海兵隊員」のような風貌から一転、長髪化しております。
 ゼウス役が、リーアム・ニーソン。
 ハデス役が、レイフ・ファインズ。
 ポセイドン役が、ダニー・ヒューストン(まぁ、今回もポセイドンはあまり出番がありませんが)。

 でもアレス役がタマー・ハッサンからエドガー・ラミレスに、アンドロメダ役がアレクサ・ダヴァロスからロザムンド・パイクに変更されました。これは割と良い方に変わったような。
 今回はアレスが「ゼウスのもう一人の息子」としてクローズアップされ、ペルセウスとのライバル関係になります。その代わり他の神々──アポロやアテナ等──は整理されて、姿を消してしまいました。
 前作から十数年後、民衆の信仰心が失われつつあるという設定になり、オリンポスの神々も存在が危うくなっている。もはやオリンポス神殿の荘厳な佇まいは失われてしまいました。
 だから前作で、レテリエ監督が『聖闘士☆星矢』へのオマージュとして神々に着せた「光り輝く鎧」も、もはや随分とくすんでしまっています。輝く後光の描写もありません。

 前作でペルセウスと結ばれたイオ(ジェマ・アータートン)は既に亡くなり、ペルセウスは一人息子と漁を生業に暮らしている。
 一方、アルゴスの都も王様が代替わりし、アンドロメダが女王となり治めている。ロザムンド・パイクがなかなか凛々しい女王様になっています。逞しさでは前作のアレクサ・ダヴァロスの方が上でしょうが、古代ギリシアにそんなに「強い女性」ばかりいると云うのも如何なものか。

 オリンポスの神々の力が弱まると、かつて地底に封じたタイタン族が蠢き始める。ターセム・シン監督の『インモータルズ/神々の戦い』(2011年)でも登場した地底の牢獄〈タルタロス〉が本作でも登場です。ターセム監督の異様な美的センスに比べると、本作の〈タルタロス〉は割と真っ当な美術で描かれております(つまりフツー)。
 特にタイタン族の中でもハデス、ポセイドン、ゼウスの三兄弟の父であるクロノスに復活の兆しがあると云うので、クロノスを再度封じようとゼウスとポセイドンがハデスの協力を求めて冥界を訪れる。〈タルタロス〉は地底にあるので、冥王ハデスの領分と云うのは尤もです。

 このクロノスと云うのがまた物凄い化け物で、ホントにあんたらの親父なのかよとツッコミたくなるくらい。さすがは大地の神です(時間の神であるクロノスは別人、いや赤の他神ね)。
 しかし……。
 そもそも長兄ハデスが貧乏くじ引いて冥王となった経緯が末弟ゼウスの計略だったというので、ハデスはゼウスを恨んでいるワケですよ。だから前作でもハデスはオリンポス乗っ取りを企んだりしたのに。
 その兄弟の確執をそのままにして、「それはそれ、これはこれだから、力を貸してくれ」と云ったところで、ハデスが素直に協力してくれるワケ無かろうに。

 いや、常識で考えて、そんな甘い期待はしてはイカンでしょう。まずゼウスの方が先に詫びを入れてから、協力を要請するならともかく。
 おまけに己の領域にある〈タルタロス〉の異変に、ハデスが気付かぬはず無かろう。それを放置している時点で、怪しいと云う考えは浮かばないのか。
 案の定、クロノス復活はハデスの目論見で、ゼウスは捕らえられて幽閉される。
 どうにもゼウスが愚かすぎて、せっかくのリーアム・ニーソンが勿体ない感じがしました。

 おかげでとばっちり喰らうのは地上の人間達。崩壊しかけている〈タルタロス〉から涌いて出る化け物共への対応に苦慮するアンドロメダ女王。一介の漁師として暮らしていたいペルセウスの村も怪物に襲われ、息子の身が危うくなるに及び、遂にペルセウスも重い腰を上げる。
 同じ半神であるアゲノール(トビー・ケベル)の協力を得て、まず目指すはオリンポスから追放された神ヘパイストス(ビル・ナイ)が隠遁する島。
 〈タルタロス〉の設計者であるヘパイストスに、地下迷宮を抜けて〈タルタロス〉に至るルートを教えてもらい、ゼウスを救出しにいこうと云う次第。アンドロメダ女王もこれに同行する。
 しかし行く手にはゼウスを裏切り、ハデスに協力するアレスの妨害が待ち受けていた。

 本作ではもう、あっちでもこっちでも親子関係やら、兄弟関係が複雑に交錯しております。さすがギリシア神話。
 ペルセウスとアレスは異母兄弟ですね。アレスは自分の方が正妻の子なのに、ゼウスがペルセウスばかり気に掛けるのでグレている。
 アゲノールはポセイドンが人間との間に設けた息子。いわばペルセウスの従兄弟です。品行方正なペルセウスと違って、女たらしの盗賊あがりと云うダメ息子。お調子者だが、なかなか憎めない奴です。

 最終的にクロノスを封じるには、ゼウス、ハデス、ポセイドンが持つ神器をひとつに合わせた〈三重の槍〉が必要であると。はいはい。
 そして冒険の過程で、各種アイテムやら情報を入手していき、ラスボスであるクロノスとの決戦に臨もうというワケで、特にハラハラ気を揉むことはありませんです。のほほんと鑑賞して差し支えございません(むしろそうするべき)。

 でも特筆すべきはクライマックスで復活したクロノスの描写ですかね。前作のクラーケンを凌ぐ大迫力でしょう。CG美術、頑張ってますねえ。
 全身がマグマが固まって出来た巨神であり、腕の一振りで溶岩が飛び散り、火山弾となって降り注ぐ。まさに「火山の噴火」が擬人化されております。

 そしてペルセウスの決死の活躍により、遂にクロノスを倒すのですが、同時にオリンポスの神々の力も消失し、「神々の時代」は終わりを告げ、「人間の時代」が到来するのであった……って、アレ? これじゃ三作目はどうなるんでしょ。
 あっけなくゼウスとハデスも和解しちゃうし、ゼウスはラストで入滅しちゃったみたいですし、もうここでお終いですか。
 個人的に、本作でもハリーハウゼンのオリジナル版に登場していたメカふくろう〈ブーボ〉が拝めたのが嬉しいのですが、またしてもチラ見せだけで活躍してくれませんでした。
 〈ブーボ〉の為だけにでも完結編を(無理か)。


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