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2012年4月28日土曜日

Black & White/ブラック & ホワイト

(This Means War)

 『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)や『ターミネーター4』(2009年)のマックG監督らしい、アクション・ラブコメ映画デス。
 CIAの腕利き(?)エージェントのコンビが、同一人物の女性に惚れてしまう。「彼女がカブって」しまっても、男同士の友情は変わることがない──って、本当か?
 「彼女がどちらを選ぼうと、恨みっこ無しだ」「おう。お前は俺の相棒だぜ」──と、口では云うものの心中穏やかで無い野郎同士が、紳士協定そっちのけで嫉妬の炎メラメラと国家予算を無駄遣いしながら、お互いに彼女とのデートを邪魔し合う。

 予告編の出来が非常によろしいのか、本編もそのまんまでした。いや、予告編の方が短い分、インパクトあるし、面白そうだし、本編まで観る必要はあまり無かったのではないか。

 主演は、クリス・パインとトム・ハーディとリース・ウィザースプーン。
 クリスは『スター・トレック』(2009年)のカーク船長役やら『アンストッパブル』(2010年)で馴染み深い。軽口叩きながらアクションをしっかりこなす役が板に付いております。
 トムは『インセプション』(2010年)よりも、最近観た『裏切りのサーカス』(2011年)の方が印象深いです。スパイとしては正反対な役柄ですが。英国人らしくちょっと堅物な役が巧い。
 リースはやはりラブコメ女優の方が似合いますねえ。『恋人たちのパレード』(2011年)も悪くはありませんが、なんとなく本作の方が生き生きしているような(笑)。

 冒頭、スパイ・アクション映画らしく、香港のとある超高層ビルで開催されるパーティに正装したクリスとトムが乗り込んでいくところから始まります。
 世界的な武器商人の取引現場を押さえて身柄を拘束するのがミッション。テロリストへの武器供給を絶とうというのが目的らしいですが、一流のスパイと呼ぶにはまだちょっと修行が足りない二人は、肝心な場面で正体を感づかれ、「騒ぎを起こさず身柄を拘束」する筈だったのに、大騒ぎにした挙げ句、ド派手な銃撃戦へと発展。それはそれで楽しい展開ですが。
 大乱闘の末、標的の一人──武器商人もまた二人組で、兄弟という設定──である兄貴の方を捕り逃し、もう一人の弟の方はビルから転落して絶命。
 弟の無惨な死体に復讐を誓った兄貴は逃亡。CIAの極秘ミッションは大失敗。
 クリスとトムは謹慎処分の末、内勤を命じられてしまう。

 本筋はラブコメなので、ド派手なアクション場面はここまで。逃亡した武器商人の復讐も、しばらく忘れ去られます。
 まぁ、この兄貴がクライマックスで再び登場してくるのは火を見るよりも明らかですし。実にお約束な伏線でニヤニヤしてしまいます。

 一方、平凡なアメリカ市民であるところのリースは、彼氏イナイ歴も長い一般的なOL。とある企業の商品開発部門で、ライバル会社の製品との比較評価をしている。
 また、この手の物語では、ヒロインには「とてもお節介な親友」がいることになっており、本作でもハズしません。リースに断り無く、恋人募集の告知を出会い系サイトに登録してしまう。
 これが縁となり、まずはトムと知り合う。

 続けて今度はレンタルビデオ屋でクリスと遭遇し、ナンパされる(レンタルビデオ屋にいる女性はデートの予定が無いハズだからナンパの成功率も高い──と云うのは本当か?)。
 リースが何をレンタルしようかと物色していると、クリスが話しかけてくるのですが、この場面は映画好きにはちょっと楽しい場面です。やたらと二〇世紀フォックスの映画が画面に映るし。
 ちなみにクリスのオススメは『バルカン超特急』(1938年)。
 「ヒッチコックにハズレなしさ」 おお、よく云った。そのとおりだ!

 かくしてリースは二人の男と同時に付き合うようになる。偶然とは云え、デキスギな展開ですが、そもそもこのシチュエーションが本作の売りなので、御都合主義でもそこはスルーです。
 そして予告編でもお馴染みの、あの場面。
 退屈なデスクワークの合間に、新しく出来たカノジョの写真をPCに映して和んでいる。偶然だな、俺もだぜ。よし二人同時に見せ合おう。一、二の三。あれ? カブった?

 まぁ、全ての元凶はリースにあるわけで、長いことカレシが出来なかったところに、いきなり二人も現れたのでちょっとイイ気になっている。加えて「お節介な親友」が、横から無責任なアドバイスを入れてくれるので更に混乱していく。
 「イマドキ、二股なんて当たり前よ」──って、こらこらこら。
 職業柄、「製品の比較評価」をしているので、「恋人も比較評価しよう」という姿勢が仇になる。両天秤をかけてイイ気になっているうちに、次第に泥沼化していくワケで……。

 おかげで国家予算を投じた監視対象にされてしまい、リースの私生活はCIAに筒抜け状態。いやぁ、個人情報保護なんて毛ほども気にしていませんねえ(笑)。
 監視衛星やら無人偵察機やら動員して、あの手この手。
 楽しいと云えば楽しいデスが、国家がその気になればここまで出来るのよという描写が、よく考えると怖いデス。
 このあたりの描写は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『トゥルーライズ』(1994年)のまんまです。ここまで剽窃しちゃってエエんかいな──と思いましたが、あれも二〇世紀フォックスの作品でしたか。だからいいのだ(ホントに?)。

 ところで、最終的にこの恋のさや当てがどっちに転ぶのか。
 私としてはどっちも失恋してしまって、二人して新たに登場したカレシに鳶に油揚状態になれば楽しかろうと思っておったのですが、製作サイドはそうは考えなかったようです。
 なので、どうにも先の展開が読めてしまう設定が出てきてしまうのが、チト興醒めでした。

 つまりクリス・パインは最初から独身なのですが、トム・ハーディには離婚した奥さんと子供がいるという設定が……ねえ。
 加えてトムはスパイであることを奥さんと子供にも秘密にしていた──と云う設定も『トゥルーライズ』のまんまですなあ。離婚していても幼い息子との面会には出かけていくトム。
 「旅行代理店に勤めている」と偽っているトムは、息子の前でも腕っぷしが強いところを見せることが無い。おかげで息子は「腰抜けのパパ」には失望を禁じ得ない。

 こんな設定が顔を出すとどうなるか。
 そりゃもう、ラストでパパが復権する流れになるのは理の当然と申せましょう。
 案の定、クライマックスを前にして復讐を誓う武器商人がクリスとトムの前に現れ、リースを人質に誘拐するワケですが……。
 リース救出に、それまで争いあっていたコンビが復活。実に息の合ったアクションで、白昼堂々のカーチェイスを展開する。このあたりはマックG監督の十八番とも云えるシチュエーションですね。スピーディなアクション・シーンは安心して観ていられます。
 そしてそれを上空から報道機関のヘリが撮影している。
 となれば、お昼のニュースに流れるカーチェイスを息子が見ているのもお約束。ええ、ハズシません。
 「ねえ、ママ。あれ、パパだよねえ?」

 激烈カーチェイスの末にリースは救出され、CIAが追っていた悪党も図らずして退治され、万事めでたし。リースを監視する為に無駄遣いしていた国家予算も、結局は目的通りの成果を上げたので問題にならず(いいのかなぁ)。
 そしてリースを射止めたのはクリスの方。まぁ、そうなるよね。
 トムは失恋するワケですが、息子からは称賛の眼差しを向けられ、別れた奥さんとヨリが戻るような展開になる。
 双方共にハッピーエンド。うーむ。あまり意外な結末ではありませんでしたねえ。

 本作はシチュエーションを楽しむ作品ですので、そこに至るまで展開とか、その結末など二の次と云う姿勢が実に潔い。清々しいと云えば清々しいけどねえ。さすがマックG監督作品と云うべきか。

 そんなワケなので、印象に残ったのは主演の三人では無く、脇役に過ぎないローズマリー・ハリスでした。
 劇中で登場するクリスのお祖母ちゃんの役。サム・ライミ監督版の『スパイダーマン』シリーズで一貫してメイ伯母さんを演じておられた方ですね。今回もまた品の良い老婦人の役です。
 クリス・パインが自分の家にリース・ウィザースプーンを連れてきて紹介するという場面。恋人のいなかった孫にやっと彼女が出来たというのでニコニコしている。
 このお祖母ちゃんが語る台詞は、なかなかの人生訓です。
 「人生に失敗など無い」とか「 “いい男” を選ぶのでは無い。自分を “いい女” にしてくれる男を選びなさい」とか。
 さすが人生の大先輩です。本筋にはまったく&これっぽっちも関係ありませんが。


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