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2010年12月5日日曜日

キス&キル

(killers)

 平凡なアメリカ人女性が偶然出会ったイケメン青年は、実は腕利きのスパイであり、殺し屋であった……。
 はて。ちょっと前にもこんな映画を観た覚えがあるぞ(笑)。

 OPからして路線が明確なので笑ってしまいました。
 もう『シャレード』とか『北北西に進路を取れ』のようなロマンチック・サスペンス映画が撮りたいのであるというのが非常によく判る──って、そこもまた『ナイト&デイ』とカブッてますケド?。
 イマドキ、この手のOPはかえって新鮮。実に七〇年代的でした(笑)。

 しかし『ナイト&デイ』とネタがカブっているからって、邦題まで似せる必要はないと思うのだが、原題が味気ないから仕方ないか。オマケにこんなラノベみたいな邦題。
 いっそ本当にラノベ的に「&」抜きにして、「☆」でも入れて平仮名表記にすればいいのに。
 『きす☆きる』──いいかも(爆)。

 『ナイト&デイ』と比較するのも可哀想だとは思いますが(予算のケタが違うのがよく判る)、もうちょっと配役に気を付けようと云いたい。配役でネタバレになる。

 つまり主役がアシュトン・カッチャーとキャサリン・ハイグルであるのは、別にいいのであるが、冒頭から登場するヒロインの父親──世のカレシにとっては天敵になる「カノジョのパパ」──役が、トム・セレックなのである。
 うわ、懐かしッ。
 かつては「トム様」と云えば「クルーズ」ではなく「セレック」だった時代があったのじゃよ。
 今もセクシー俳優ナンバーワンだった頃からほとんど変わっていないとは素晴らしいです。今でもアクション映画の主役が充分、張れると思いますぞ。

 でも物語の設定からするとね……。
 トム・セレックほどの俳優が、ただの脇役である筈がなかろう。

 この映画は「カレシが実はスパイでした」というのが肝なのであるが、そこにトム・セレック。見ろ、アシュトン・カッチャーと並んでも負けていない……と云うか、アシュトンが駆け出しの若造に見える。
 これはもう「実はパパも……」というオチなのは明白ではないか。

 ファースト・シーンからイヤな予感がしたのですが、まさかそんなベタオチは無かろう。脚本家だって監督だってバカじゃないんだから……と必死に不安を押さえつけていたのですが……。

 ──そうだ。意表を突いて、パパはノーマルだがママ(キャサリン・オハラ)の方がスパイというオチに違いない。それはそれで楽しいかも……。

 でも考えすぎだった。
 モロまんまなオチでした。なんだ、その安易すぎる展開は。

 だが、私としては拳銃を構えるトム・セレックの勇姿が実に凛々しく、ある意味では満足でした。
 まあ、大抵の観客の目的はアシュトン・カッチャーの見事な肉体美なのかも知れませぬがね。うーむ。あの見事に割れた腹筋はCGではないのか?

 スパイであることに疲れ、平凡な世界に憧れたカッチャーだったが、過去のしがらみは見逃してはくれなかった。足抜け宣言したカッチャーの首に賞金が掛けられる。
 かくして職場の同僚が、隣家の奥さんが、町内会の会長が、宅配業者の兄ちゃんが、ある日突然、刺客と化して襲いかかってくる。もはや誰も信用できない。
 この疑心暗鬼に陥った描写がおもしろく、結局は何でもないスーパーの店員とかが滅茶苦茶に怖い(ように見えるだけ)。

 ……なんだけど、いいのかなあ。
 コメディ・タッチに描かれているので悲惨な感じはまったくありませんが──大体、これらの隣人やら同僚役はコメディアン出身の役者さんが多いのであるから仕方ない──、気がつけば死体の山が築かれていくのである。血塗れな描写はないけどね。
 七〇年代ロマンチック・サスペンス路線なのだから、まぁいいか。

 でもなあ、ちょっと脚本が雑な感じがしたぞ。
 ドラマは自分に賞金を掛けた黒幕を捜し出して撤回させようと云う方向に転がっていくのであるが、かつての殺し屋の上司ですら殺されてしまい、誰が黒幕なのか判らなくなって……そこで黒幕がパパらしいということになる。
 実はパパは引退した裏稼業の人だったのだ。

 「パパ、どうして彼に賞金なんて掛けたの」
 「彼の方が私の命を狙う刺客だと思ったのだよ」
 「何故そんな」
 「いやまぁ、私も昔はちょっとね。政府のために働いていたことが……」

 すべてはパパの誤解だったのだ──ってね。死体の山ができた後にソレかいっ。
 いいのか?
 半分ギャグにしても、なんか違和感が……。

 結局、「娘は父親にそっくりな男に恋をする」という昔ながらの法則が繰り返されたのであった……というオチでした。
 うーむ。なんと云うか。

 トム・セレックがカッコ良かったので許すか。


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